幼女と執事が異世界で

天界

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第5章

99,野宿?

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 馬車は猛スピードで走っているけれど、たまに魔物に襲われることがある。
 たまにな上に猛スピードで走っているので大抵は攻撃が届く前に引き離してしまうので戦闘にすらならない。
 アルの操車テクニックは予想通りにすごかった。本当になんでもできる子だ。
 レーネさんもさすがにアルほどとは行かないものの猛スピードの馬車を横転させることもなく、しっかりと制御している。
 オレもやってみたかったがさすがにこの猛スピードで走っている馬車を操縦するのは事故を起こす事請け合いすぎたので暇が出来たらやってみよう。


 目的地までは片道で4日の予定なので明るいうちに距離を稼ぎ、暗くなったら帰還用魔道具リリンの羽根で屋敷に馬車ごと戻る予定だ。
 でも最初の日だけは野宿する事になっている。
 ネーシャの事は一旦屋敷に戻って疲労度の高い馬――この子達も足が6本ある怪獣みたいな種類だが馬らしい――を交換するときにつれてくる予定だ。
 ほんとはエリザベートさんに預かってもらおうと思ったんだが、


「お嬢様が野宿するのにあたしだけがベッドで寝るわけにはいきません!」


 と言って聞かなかった。
 帰還用魔道具リリンの羽根がなかったら今回みたいな長めの依頼は毎回野宿になってしまうのだが……と思ったがネーシャの心意気に免じて言わないでおいた。
 野宿するためのポイントは街道沿いにいくつか点在している広めの空き地みたいなところや、簡単な小屋みたいなところがある場合もある。
 オレ達が通ってきた街道は鉱山街へ行くルートの1つで交通量はないわけではなくすれ違った人や追い抜いた人なんかもそれなりの数いた。
 大半は積荷を積んだ馬車と商人、その護衛だったが3割くらいは冒険者風の人達だけだった。
 冒険者風の人達は全員徒歩でオレ達みたいに移動に馬車などを使っている人はいないみたいだった。


「今日はここに泊まるのかな?」

「答えは是。この小屋は誰でも使っていいものでございます」

「他には人もいないみたいだし、追い抜いてきた人達も今日中には追いつけないだろうし、あっち側から来る人くらいかな?」

【もう大分暗くなってきましたので私達だけだと思います】

「じゃあ貸切だね!」


 小屋はそれほど大きなものでもなく、中にはベッドもなく中央に焚き火が出来そうな囲炉裏があるだけで寝る場合は雑魚寝が基本のような状況だ。
 まぁ外で寝るよりは大分ましだろう。

 レーネさんが先行して中をチェックし、次に入れ替わりにアルが入って浄化をかけて綺麗にする。
 オレは特にやることがないのでそんな2人を眺めているのだが、なんというか役立たず感がすごい。
 移動中も荷台で物理的にごろごろしてるかレーネさんの匂いを嗅いでいるかしかしていないし、食事はアルが事前に作った物をアイテムボックスに入れてあるし、作るにしてもアルが作る。
 掃除なんかもアルの浄化があるし、罠や待ち伏せの警戒もレーネさんの方が得意だ。
 戦闘がなければ役に立たない感じがぷんぷんする。


「ワタリ様は存在するだけで我々に幸福を齎してくれるのです」

「……なんかマスコットみたい……」


 オレの心を的確に読んだアルが恭しい態度でそう言ってくれるが、それってマスコットだよね。マスコットだよね!?
 それ以上何も言ってくれないアルにジト目をしていると小屋の周りを回ってきたレーネさんが問題ないことを告げてくる。

 とりあえず気を取り直してネーシャを迎えに行く為に馬車に乗り込むと帰還用魔道具リリンの羽根を起動する。

 レーネさんは小屋に残るそうなので戻ってくる為のマーキングアイテムを渡して戻った。






      ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






 視界が切り替わるとそこは改装中の屋敷の庭にある巨大な車庫。
 やっぱりエンタッシュがすでにいて深々と腰を折って出迎えてくれた。
 馬車や馬のことは専用の使用人奴隷に任せてエンタッシュがすでに用意していた違う馬車でネーシャのお迎えに行く。


「お嬢様ー!」

「お待たせ、ネーシャ」

「おかえり~」

「ただいまです、ユユさん」


 相変わらずランカスター家が自分の家みたいになっているが特に問題ない。
 でも今日はお喋りしている暇はないのでネーシャを引き取るとすぐに屋敷に取って返す。
 馬車の窓から乗り出して手を振っているネーシャがちょっと危なかった。






      ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






 屋敷に戻ると馬の交換はしっかり終わっていた。
 というか馬車自体が交換されていた。ハイスピードな移動だからどこか壊れたのかと聞いたら最初から丸ごと交換する予定でしたので、と返されてしまった。そうだったの?
 その辺は全部アルとレーネさんにお任せしていたのでよく知らなかったがまぁ別に問題ないだろう。
 馬車は巨大な車庫にたくさん用意されているし。


 交換した馬車に乗り込み、レーネさんの待つ小屋に戻る為にMPを充填した帰還用魔道具リリンの羽根を起動する。

 深々と頭を下げているエンタッシュと使用人達の代わりに夕闇に染まった街道に視界が切り替わると外で待っていたレーネさんが小走りに近寄ってきた。


【おかえりなさい、皆さん】

【ただいま、レーネさん。特に変わったことはなかったですか?】

【はい、大丈夫です。この辺は野営地としても使えるように魔物避けの柵が設置してありますので】

【あ、そうなんですか】


 そういえばリール村にもあったような柵が小屋が建っている空き地のようなところを囲むようにあったような気がする。
 あまり気にしていなかったから良く覚えてないけれど。

 馬車から馬を外して繋ぎなおしてアイテムボックスから飼葉や水を出しているアルをネーシャと眺める。
 手伝おうにもやり方がいまいちわからなかったのでまずは見学だ。
 ネーシャも真剣にアルの作業を見て覚えようとしている。多分ネーシャがやることはないと思うけれど出来るようになるのはいいことだ。
 馬も全頭交換したので疲れていないだろうが、食事はまだ与えていなかったようでガツガツ食べている。
 前世の馬はもうちょっとはもはもしながら食べていたように思うのだが、なんていうかすごいがっついている。
 そんなにお腹が減っていたのだろうか。それとも元々こういう食欲旺盛な感じなのがこっちの世界の馬なのだろうか。まぁ怪獣見たいな見た目だからありうる。
 その後は軽く馬達の背中などをどでかいブラシでマッサージして終わりだった。
 ネーシャも少しやらせてもらい手ごたえを感じたのか大分満足していた。

 さすがにその日はレーネさんもいるのでアルによる全身ふきふきは遠慮して浄化をかけただけで明日に備えて眠った。
 だがいくら魔物避けの柵があっても強い魔物なら無関係に入ってくるし、盗賊やなんかには無意味だ。
 ここで役に立つのが警報機型の魔道具。
 魔物や人など生命体が近づくと警報を鳴らして教えてくれる優れものだ。
 範囲も細かく設定できる高級品を持ってきているので柵内に侵入した場合警報がなるようにセットしてある。
 それでも念のためにレーネさんとアルが交代で不寝番をするといったのでオレもしようとしたところアルに食い気味に却下されてしまった。

 やっぱり役立たずすぎるオレ……。
 あぁ早く魔物と戦いたい。活躍したいよぅ。






      ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






 翌日。
 ネーシャを抱き枕にしていたつもりが抱き枕にされていた事にちょっとショックを覚えながらも、また屋敷に戻ってネーシャを送り、今日も昨日と同じように猛スピードでの移動が始まる。
 その間ずっとレーネさんかアルにホールドされて今日はアトラクションを楽しむことはできなかった。

 暗くなると屋敷に戻りネーシャのお迎えに行ってそのまま屋敷でお風呂に入って海鳥亭に戻る。
 昨日が特別なだけでこれからはこんな感じになるはずだ。
 ちなみにエリザベートさんが1日会えなかっただけでものすごい引っ付いてきてアルに鼻フックからの掬い投げをされていた。



 そんなこんなで移動に4日。
 順調に進み、魔物との戦闘も1度もなく目的地に到着した。
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