幼女と執事が異世界で

天界

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第6章

117,勇者とドリル

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 ネーシャの取得したスキルはユユさんの助言もあり、一般的な鍛冶全般が可能な構成になった。
 ユユさんは基本的に彫金をメインにしているので少し違う。
 例えば彫金には筋力はあまりいらないが、鍛造にはそれなりに必要。鋳造にも必要ではあるが鍛造よりはいらないそうだ。
 鍛冶全般に必須なのは当然ながら器用であり、これが1番伸ばされた。
 魔力や俊敏やMPはほとんど必要ないということでまったく手付かず。だが回復力は持久力にも繋がるので多少伸ばされている。
 HPはBaseLvが2に――オレは0スタートだったが一般人は1スタート――なったらまずあげるべきステータスだったようだ。その辺の常識ともいうべきものがなかったためネーシャのHPはずっと初期値のままだった。
 初期値でも一般人程度が即死するような攻撃を受ければあまりかわらないが、そんな魔物に出会うということ自体が一般人にとっては稀なので雑魚の攻撃を3,4発受けても問題ない程度にはHPをあげるものらしい。
 街でも危険がないわけじゃないからね。

 ステータスはこの辺にしてその他のスキルだが、基本的にステータスの増加でポイントを使い切ってしまったので取れたのは少ない。
 彫金スキルLv1を代表とした鍛冶系スキルだ。
 彫金は結構やっていて鍛冶神の加護のおかげでかなり腕を上げているネーシャでもやはりLv1スタートのようだ。
 でもきっとすぐ上がって素晴らしい物を作ってくれるだろう。楽しみだ。

 鍛冶Lv1と鋳造Lv1もリストにあったので取得したようだ。
 こちらは練習程度にトトさんが教えてくれていたようだ。

 鍛冶系スキルはこの3つが基本だそうで、あとはそれぞれ個人でスキルにはない技術を習得していくそうだ。
 攻撃系のスキルと違って生産系のスキルは発動させると対象への干渉力が大幅に強化されたり変化したりするものが多いらしい。
 ゲームのようにパーッと光って装備完成! とかはないらしい。残念。

 尚、予断だが高い装備に刻まれているサイズ調整の刻印は彫金スキルで彫られたものだそうだ。
 他にも様々な効果を付与することができる彫金スキルがあるらしい。
 ユユさんからお墨付きをばっちり貰うほどの成長力を見せているネーシャにはかなり期待できるだろう。いやうちのネーシャなんだから当然だけどね。


「それにしてもこんなに早くあがっちゃうなんて思わなかったなぁ……。
 お父さんから聞いてた話だと丸1日頑張っても1つ上がるかどうかって話だったのに」

「まぁ結構数狩ったし、3人分の祝福の恩恵がありますから」

「そうそれ! Lvを上げやすくする祝福なんて物語に出てくるような祝福持ってるんだもん。びっくりしたよ」

「頑張りましたから、ねぇ~レーネさん」

「はぃ……」


 レーネさんも大分慣れてきたのでユユさん相手だったら念話じゃなくてもなんとか話せるようになっている。
 穏やかな風が気持ちいいのでまだティータイムは持続したままだ。
 テーブルの上には紅茶の他にもアル特製のお菓子もあったのだがもうすでに跡形もない。
 アルが出した次の瞬間には狙い済ましたかのように手が伸びてきてすぐなくなってしまった。
 普段は遠慮がちなネーシャですら我先にと確保していたのがアルの料理の凄まじさを物語っている。


「それにしてもここは気持ちいいねぇ~……。
 魔物がいなければこうしてピクニックに来るのにちょうどいいところだったろうに」

「とはいってもラッシュの街からも結構離れてますからね。なかなか難しいですよ」

「リリンの羽根さまさまだねぇ~……。
 ……どこで手に入れたの?」

「ふふ……。秘密です」

「ちぇ~」


 帰還用魔道具リリンの羽根などの凶悪な性能の魔道具に関しては出所は秘密にしている。
 ユユさんは知っていたけれど、このクラスの魔道具は知名度が低い。というか便利すぎて秘匿されているというのが正しい。
 どこからでもいつでも移動できるというのはまさにチートアイテム以外の何者でもないからだ。

 なのでユユさんも好奇心はあるがこちらが秘密といえばそれ以上は突っ込んでこない。
 でもやっぱり魔道具店で彫金をやっているユユさんだ。いつかはこのクラスの魔道具を自分の手で作ってみたいのだろう。
 言葉には出さないがもっとじっくり見てみたいと目が語っている。


「仕方ないなぁ……。はい、壊したらだめですよ?」

「やったー! ワタリちゃんやさしー!」


 新しい玩具を買ってもらった子供のように瞳を輝かせて帰還用魔道具リリンの羽根を様々な角度から眺め始めるユユさん。

 最初は好奇心が抑えられない瞳だったのがだんだんと職人さんの鋭いソレに変わっていく。
 ネーシャもそんなユユさんのことを真剣に見つめ出し始めた。
 いや正確にいうならユユさんがどんなところを見て、何を調べようとしているのかを見極めようとしているのだ。
 職人の世界は技は盗むものというのがこちらの世界――ウイユベールでも共通事項なのだろうか。

 真剣になり始めた2人をしばらく眺めてユユさんが満足したところでラッシュの街へと帰るのだった。

 帰還用魔道具リリンの羽根を起動させたのはもちろん是非使ってみたいというユユさんだった。






      ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






 屋敷に帰ってユユさんを送ったあと戻るとなぜか応接間にマッチョエルフが居た。腱鞘炎はもう治ったらしい。


「来たか、キリサキ。
 おまえのおかげで貴族共を一網打尽にすることができた。今回はその報告と礼をしにきた」

「えぇと……孤児院建設にあたってもぐりこんでくるだろうネズミを一掃するっていう例のアレですか?」

「その通りだ。全てをこちらに委託してくれたおかげでスムーズに進めることができた」

「そうですかー」

「まぁ興味がないのはわかるがおまえ達にも関係あることなんだぞ?」

「はぁ、そうですかー」

「まぁいい。とりあえず報告書はこれだ。礼の方はこっちだ」

「はぁ、ありがとうございます。でもわざわざギルドマスターが来る必要はなかったのでは?」

「あぁ、実はな……。1つ依頼を引き受けてくれないか?」

「お断りしますー」

「話くらいは聞いてくれよ!」

「はぁ……どうぞ」


 やっぱり何かあるとは思っていたがギルドマスターからの直接の依頼とは……嫌な予感しかしない。

 ちなみに孤児院建設にあたってのアレコレとはこの屋敷は元ランクS冒険者の顎の持ち物だったので色々と探りを入れたい人は多い。
 しかも最近その顎が奴隷になったという情報が出回り出したのもあってその筋ではさらに注目を集めていた。
 そんな中出た孤児院建設。皆こぞって情報を集める為に様々な人員が送り込まれる事になった。

 その中にはラッシュの街を牛耳っている貴族達からの間者も当然ながらいて……。それらを逆に吊るし上げて牽制と排除を実行したのだ。


 結果的に冒険者ギルドなどに敵対的だった貴族のうちの大きな権力を持っていた一派が叩き潰された。
 それは中級以上の冒険者を多数動員した包囲作戦としてラッシュの街で大騒ぎになるほど大きな出来事にまで発展した。
 冒険者ギルドに敵対していたということは当然ながら冒険者からは完全に敵視されていて嬉々として叩き潰したそうだ。
 冒険者ギルドを利用する多くの住民達からも協力を得ることが出来、逃げようとした一派も虱潰しにされた。
 大騒動に発展させたのは当然ながら故意で、その目的は他の貴族達への牽制。
 冒険者ギルドが本気になったらどうなるか、というものを大いに見せ付けることができたようだ。

 ちなみに顎は先頭に立って敵の首領を討ち取ったそうな。どうでもいいけど。


 さて孤児院建設にあたって起こった事件ではあったが話の通りにオレはノータッチだったので正直どうでもいい。

 屋敷の警備も孤児院建設中の警備も全てエンタッシュに任せていたし、実際何ひとつ被害はなかった。
 まぁ最初は間者を集めるために色々と審査を緩くして人を集めていたり、その後の再募集ではかなり厳しく審査をして人を集めたりなどは報告を受けていたけれど、正直なところ、あ、そうなんだー程度にしか思っていなかった。


 閑話休題まぁそんなことより


「それで依頼っていうのは?」

「あぁもう聞いているかもしれないが王都から来ていた勧誘部隊が鉱山街――トルマネトで勇者候補を引き抜いた。
 それの見極めを頼みたい」

「トルマネト……? 確かドリ……アリアローゼさんの住んでる街だっけ」

「ほう、さすがに耳が早いな。そのアリアローゼ・シャル・ウィシュラウが勇者候補だ」

「アリアローゼさんが……?」


 あのドリルさんが勇者候補?
 というか勇者候補って何? この世界って割と平和だって創造神もいってたのに勇者って必要なの?


「……というか知り合いか?」

「えぇまぁ一応」

「ならば話が早いな。アリアローゼ・シャル・ウィシュラウが本物の勇者であるかを見極めて欲しい」

「ギルドマスター、私は勇者の目利きとか出来ませんよ?
 頼む相手を間違ってると思うのですけど」

「いや、間違ってはいない。
 何せおまえらはアリアローゼ・シャル・ウィシュラウと同じようにシトポーの祝福を受けたんだろう?」

「……どこから漏れたんですかねぇ?」

「冒険者ギルドの情報網を舐めてもらっては困る。だが安心しろ。これは特秘事項として緘口令が敷かれている。
 王都のバカ共のように勇者候補として喧伝するようなことは絶対にしない」


 ギルドマスターをちょっと睨みつけて見たが、さすがは冒険者ギルドアッシュ支部を纏めるギルドマスター、全然怯みもしない。


「……まぁいいです。
 シトポーの祝福を持っているだけでどうやって勇者の見極めが出来るんですか?」

「この辺は簡単だ。アリアローゼ・シャル・ウィシュラウがある程度育ったら本人を見てみればわかるらしい。
 文献にはそう書いてあった」

「……はぁ、それは物理的に見ればいいだけなんですか?」

「その通りだ」

「育ったらってことは長期的な依頼なんですよね?」

「もちろんだ。だがシトポーの祝福があるのだから通常よりはずっと早く成長するはずだ」

「まぁ、そうでしょうねぇ。
 じゃあもし受けるとしてもすぐに王都にアリアローゼさんを追いかけていくとかそういうのはないわけですね」

「まぁそうなるが、出来れば早めに確認だけでもしておいて欲しいところではある。
 どうだ?」

「王都かぁ……。アル、どう思う?」

「ワタリ様の為さりたい様に為さっていただくのが私の喜びにございます。ですがまずはレーネに確認を取るのがよろしいかと」

「そうだね。じゃあまずはレーネさんとも相談してみます。
 断っても恨まないでくださいね」

「わかっている。こちらとしても本物かどうかの確認が取りたいだけだからな」


 しかし、アリアローゼさんが勇者候補とは……世も末だなぁと思ってしまうのは仕方ないことだろう。

 ……二つ名はやっぱりドリル勇者だろうか。
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