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第6章
126,後片付けと魔道具
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圧縮空気で打ち出された氷の螺旋槍が削り取った大地と、オーククイーンを転がして出来た掘り返したような地面。
死体はオークキングとオーククイーン、最小限の力で討ち取った残党のデミオークとオークしかない。
全体の10分の1くらいだろうか。
他は圧倒的なオーバーキルで消滅してしまっている。
これらの死体は当然残しておく必要性はないので解体作業に移る事にした。
デミオークやオークの使っていた武器は解体してもオーバーキルでも残っているがほとんどはぐちゃぐちゃになっているかバラバラに分解されてしまっている。
原型を留めている方が少ないくらいなので適当に集めて初級魔法:火で溶かして1つにしてから中級魔法:水で冷やしてアイテムボックスに収納することにした。
そのままアイテムボックスに入れたら容量がとんでもないことになっているアルでも入らないからね。
破片1つで1つ扱いとかひどい。
バラバラになった装備は鉄製ばかりではなく、木材を使っている物も大量にあったがその辺はさすがに放置しても大丈夫だろう。
ただ鉄以上の物はなく、はっきりいって大した装備でもない。
アルが解体作業を担当し、その間にレーネさんと2人でバラバラになった鉄材を回収する。
途中で魔法で風を起こして集めたら早いんじゃないかと思ったが木材も集まりそうだったのでやめておいた。
蜂蜜みたいな選り分けは無理そうだし。
そこそこの時間をかけて適当に拾い捲ったおかげで大体は片付いた。
集めた鉄材を中級魔法:風で結界を作ってから中に大量のMPを注ぎ込んで一気に溶かした。
風の結界を作ってからやらないとたぶん熱波ですごいことになりそうだったからだ。
巨大な鉄の塊が完成し、こんなのどうすればいいんだろう、と思ったけれどランカスター家に寄付すれば問題ないだろう。
ネーシャの練習材料にもちょうどいいかもしれないし。
あ、そうだ。今まで溜めてきた素材なんかもネーシャの練習に使ってもらおう。たっぷり素材あるし。
中級魔法:水で風の結界内に水を大量に注ぎ込むとあっという間に蒸発して凄まじい水蒸気が放出されて危なかった。
まるで汽笛みたいに水蒸気が吹き出ている様は凄まじい。穴を予め開けて中の水蒸気を逃がすようにしていなかったら危なかったかもしれない。
まるで圧力鍋の圧力抜きのように水蒸気が音を立てて抜け続けている。
これを応用すれば圧力鍋のような物が出来るんじゃないだろうか。
でもアルの調理は奇跡的なほどに早いし、あっても変わらないだろうか。いや作っているのはアルだし聞いてみたらいいじゃないか。
「アル、圧力鍋とか欲しい?」
「答えは是。時間短縮にもなりますし、試せないレシピを試す事が出来る可能性が高いため是非とも欲しい1品でございます」
「じゃあ今度ゴーシュさんにでも頼んでみようか。出来るかどうかはわからないけど」
「恐悦至極にございます」
慇懃に頭を下げるアルに微笑むと、小首を傾げているレーネさんに圧力鍋とは何かを教えてあげる。
すごい調理器具があるのですねぇ、と感心しているレーネさんだがレーネさんは料理はしない。出来ないわけではないが、そんなに得意ではないそうなので興味も薄いようだ。
帰ったらゴーシュさんに圧力鍋の説明をして、素材や鉄材を渡してネーシャの練習に使ってもらって……。
色々やることが出来たなぁ。
「あ、そういえば、アル。キングとクイーンの素材ってなんだったの?」
「はい、こちらになります」
打てば響くアルの行動。
レーネさんとの連携もかなりのものになってきたけど、やっぱりアルとの以心伝心っぷりは一味違う。
「魔結晶が2つと爪と牙と肉か。どれどれ」
アルが持っている素材は特殊進化個体から手に入る素材のような巨大なものではなく、それなりの種類あるのにアルが両手で持てる量でしかない。
爪も牙も普通のサイズだし、肉はブロック単位だけどそれほど大きくはない。魔結晶は元々小さいくらいのサイズだし。
鑑定で見てみたが特にこれといってすごいものではないようだ。
特殊進化個体と比較してしまっているからかもしれないが能力的にも大したことない。
『闇の衣』を使われて本体が強化されていただけで、素材自体には影響がないということだろう。
まぁそれでも一応希少な素材らしい。レーネさん談。
肉は豚系だけあって豚肉のようだ。
思いっきり人型だったけど豚肉なのだ。この世界――ウイユベールでは人型だろうが肉は肉。結構気にせず食べている。
まぁ解体したら全然違う物になってしまうのはよくあるので気にしたら負けだ。
すっかりこの世界に毒され……慣れてしまった。
魔結晶についてはどちらも豚王だった。
クイーンでも豚王だった。もうどっちがクイーンの魔結晶なのかキングの魔結晶なのかわからない。
今日だけで豚王が2つも手に入った。
そろそろ魔結晶もそれなりの量になったし、武器防具の変更も全然してないから空きスロットに使うことを考慮してみよう。
砕いて食べてしまうのもいいかもしれないが空きスロットを開けっ放しなので勿体無い。
この辺はランカスター魔道具店ではやってないのでエンタッシュ辺りに聞いてみよう。
「さて、後片付けも済んだし、帰ろうか」
「はい!」
「畏まりました」
当初とは景色が一変している周囲を軽く眺めて取りこぼしがないか確認し、アルが使う帰還用魔道具で屋敷へと帰還した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ネーシャー、やっほー」
「お嬢様ー!」
「ネーシャちゃん、ストップストップ! ワタリちゃんが汚れちゃう汚れちゃう!」
「はわわわ! ごめんなさい、師匠……」
何をしていたんだかわからないけど、煤で真っ黒になっているネーシャ。はわわわ、なんて実際に言う人初めてみたよ。うちのネーシャちょーかわいい。
オレが訪ねて来て嬉しさのあまりに抱きついてしまいそうになるのをユユさんに止められている。
あのまま来たらオレも真っ黒だったろうな。
アルはユユさんが止めた段階でオレの前から身を引いていつも通りに控えている。多分帰ってからお説教だろうなぁ。
「あはは。相変わらずネーシャちゃんはワタリちゃんのことが大好きだねぇ」
「はい! お嬢様はお嬢様ですからお嬢様なんです!」
「そ、そうなんだ……」
ネーシャのよくわからない賛辞に曖昧な笑顔で返すユユさんだが、やっぱりこっちも煤で真っ黒だ。ネーシャほどではないけれど。
「2人共、何をしてたんですか? 真っ黒だけど」
「はい、お嬢様! 炉のお掃除です!」
「炉?」
「炉です!」
「炉かー」
「はい!」
たぶん鍛冶に使う火炉のことだろう。
鍛冶師に転職したネーシャは炉を使った鍛造や鋳造なんかも練習し始めたようだし。
今もニコニコと上機嫌でいるネーシャを見るに楽しんで出来ているようでよかった。
「おう、来てたのか。だがまだネーシャの修行終わりまで時間があるぞ?
今日は何か別の用事か?」
「こんにちは、ゴーシュさん。はい、ちょっと色々あります。いいですか?」
「おう、問題ないぞ。ここじゃなんだからこっちで話そう。
ユユとネーシャは早く掃除を済ませて水でもかぶってこい」
「はーい」
「はい、親方!」
ひょっこりと顔を出したゴーシュさんがいつものリビングの方を指して先に移動していく。
ネーシャはユユさんのことを師匠と呼び、ゴーシュさんを親方と呼ぶ。
ではトトさんはどうなのかというと……トトさんだ。
「じゃあまたあとでね~」
「はい、お嬢様!」
「またねぇ~」
2人に手を振ってリビングに行くとゴーシュさんが座って待っている。
すでにアルがお茶の用意を済ませていて全員分の極彩色のお茶がテーブルの上に乗っていた。
今日は蛍光色の紅茶ではないようだ。
「それで、どうした?
またいい素材が手に入ったか?」
「いい素材かどうかは別として、ネーシャの練習用に素材を提供させてもらおうかな、と」
「ふむ……。確かにネーシャには数を打たせるから物はいくつあっても足りん。ありがたくもらっておこう。
それでどんなのだ?」
「はい、とりあえず――」
溶かして纏めた鉄材はでかいのでリビングで出すわけにもいかないので口頭で説明していく。
他の素材もアイテムボックスに収納してある分はリストを見ながら説明していく。
アルの方に分散してある方が多いので大半はアルが説明したけれど。
「……そりゃぁまたずいぶん溜め込んでたな……」
「今までずいぶん魔物を狩りましたからねぇ」
「普通そういうのは売却するなり、装備に使っちまうなりするもんだがなぁ」
「お金に関しては問題なかったですし、装備も買った物や貰ったものなんかが現役ですからねぇ。
ほとんどダメージを受けることもなかったので修繕や交換の必要性もなかったですし」
「普通はありえねぇんだが、まぁおまえらだからな」
普通は魔物を狩るのにもダメージを受けないなんてことはまずない。
運良く奇襲できたり、ダメージを受けないような雑魚を狩るならその類ではないが、普通は無理だ。
雑魚に関しては金銭的にうまみがなくなってしまうだろうし。まぁそこそこ強くなればその限りではないけれど。
結果としてダメージを受ければ防具は損傷する。そのための防具なのだし当然だ。
その修繕や、酷いダメージなら防具を買い換える必要性もあり、素材は換金または材料にされる事が多く、オレ達のように溜め込むなんてのはほとんどありえない。
現にランクSの顎ですら屋敷に素材はほとんどなかった。
その代わり魔道具や装備が腐るほどあったけど。
「それと魔結晶がそんなにあるのか……。
何か魔道具で必要な物があったら作ってやるぞ? もちろん成功の保証はできないが」
「あぁそういえば道具類にも魔結晶って使えるんでしたっけ。
どんなのが出来るんですか?」
魔結晶は武器防具などの装備類だけでなく、道具にも使うことが出来る。
恐らくスロットが空いていれば基本的に何にでも使えるのだろう。
だがスロットを確認できるのがオレの特殊スキル:鑑定だけのようで存在自体がわかっていない。
なので成功の保証は当然できない。
逆にオレがスロットの空いている物を選べば成功する確率が高まるということだ。
まだスロット関係は手付かずだったので確実に成功するのかどうかはわからないが、魔結晶もそこそこの量あるので実験してもいい頃あいだろう。
お金もたくさんあるし、魔結晶を買って実験してみるのもいいかもしれない。
「そうだなぁ……。こんなのはどうだ?」
その後、ゴーシュさんに色々な魔結晶を使った魔道具を教えてもらった。
魔結晶自体が結構な金額することもあり、その魔結晶を使った魔道具は基本的に高額だ。
なのでレーネさんも手が出ない物がたくさんあったのでいつにも増して興味津々なレーネさんが見れてちょっと得をした気分だ。
「そんなにいっぱいあるんですか。
風魔法強化で洗濯機とか贅沢な使い方するんですねぇ」
生前の世界で普及していた家電製品もどきも魔結晶を使った魔道具ならあるみたいだ。
だがやはりどれも普通なら手が出ない高級品。
ランカスター魔道具店に売られている魔道具にはそういった生活用品はないので特注になるが注文するなら作ってくれるそうだ。
もちろん魔結晶のほかにもお金はかかるけど。
はてさてどんな魔道具を作ってもらおうか。
お金の心配がない現状でならどんなものでも大抵の物は注文できる。
持っていない魔結晶が必要な場合は日数がかかってしまうが制作に時間も多少かかるので誤差範囲だとゴーシュさんは言っていた。
お金に糸目をつけなければ魔結晶入手も容易らしい。
まぁこの辺は有用なレアアイテムといえども高額だから取っておく人が多いからだろう。
ただやはり需要の多い魔結晶は難しいらしいけど。
圧力鍋は確定として、レーネさんにも意見を聞き、圧力鍋以外の生活用品よりは冒険に役立つような物を作ってもらうことにして和気藹々と検討し始めるのだった。
========
名前:ワタリ・キリサキ BaseLv:43 性別:女 年齢:6 職業:魔法使いLv30
装備:黒狼石の短剣 笹百合のミスリルの篭手[火耐Lv5 風耐Lv5] 鬼百合のミスリルの靴[麻痺耐Lv5 毒耐Lv5] 鈴蘭のミスリルの胸当て[鈍化耐Lv5 石化耐Lv5 幻覚耐Lv5] 黄百合のミスリルベルト[土耐Lv5 水耐Lv5] 月陽のネックレス 狐の木彫りのペンダント
HP:200/200
MP:141/141#(+1)[+10]
筋力:35
器用:35
敏捷:65<+30>
魔力:36<+1>
回復力:116#(+1)[+20]
運:5
状態:健康
所有:アル#(従者) ネーシャ#(奴隷) その他
所持職業:町民Lv1 戦士Lv1 冒険者Lv1 治療師Lv12 魔法使いLv30 魔導師Lv1
残りポイント:42
所持スキル
成長率増加Lv10 スキルリセット ステータス還元
ウイユベール共通語翻訳#(自動筆記翻訳付き) 鑑定 クラスチェンジ
王族の不文律
筋力増加Lv5 敏捷増加Lv5 器用増加Lv5
魔力増加Lv5 回復力増加Lv10
HP増加Lv5 MP増加Lv10
鈍器スキルLv1
初級魔法:体力回復 中級魔法:水 中級魔法:風
単独転移Lv1
気配察知Lv1
詠唱破棄
筋力強化Lv3 回復力強化Lv3
アイテムボックス拡張Lv4 PT編成
死体はオークキングとオーククイーン、最小限の力で討ち取った残党のデミオークとオークしかない。
全体の10分の1くらいだろうか。
他は圧倒的なオーバーキルで消滅してしまっている。
これらの死体は当然残しておく必要性はないので解体作業に移る事にした。
デミオークやオークの使っていた武器は解体してもオーバーキルでも残っているがほとんどはぐちゃぐちゃになっているかバラバラに分解されてしまっている。
原型を留めている方が少ないくらいなので適当に集めて初級魔法:火で溶かして1つにしてから中級魔法:水で冷やしてアイテムボックスに収納することにした。
そのままアイテムボックスに入れたら容量がとんでもないことになっているアルでも入らないからね。
破片1つで1つ扱いとかひどい。
バラバラになった装備は鉄製ばかりではなく、木材を使っている物も大量にあったがその辺はさすがに放置しても大丈夫だろう。
ただ鉄以上の物はなく、はっきりいって大した装備でもない。
アルが解体作業を担当し、その間にレーネさんと2人でバラバラになった鉄材を回収する。
途中で魔法で風を起こして集めたら早いんじゃないかと思ったが木材も集まりそうだったのでやめておいた。
蜂蜜みたいな選り分けは無理そうだし。
そこそこの時間をかけて適当に拾い捲ったおかげで大体は片付いた。
集めた鉄材を中級魔法:風で結界を作ってから中に大量のMPを注ぎ込んで一気に溶かした。
風の結界を作ってからやらないとたぶん熱波ですごいことになりそうだったからだ。
巨大な鉄の塊が完成し、こんなのどうすればいいんだろう、と思ったけれどランカスター家に寄付すれば問題ないだろう。
ネーシャの練習材料にもちょうどいいかもしれないし。
あ、そうだ。今まで溜めてきた素材なんかもネーシャの練習に使ってもらおう。たっぷり素材あるし。
中級魔法:水で風の結界内に水を大量に注ぎ込むとあっという間に蒸発して凄まじい水蒸気が放出されて危なかった。
まるで汽笛みたいに水蒸気が吹き出ている様は凄まじい。穴を予め開けて中の水蒸気を逃がすようにしていなかったら危なかったかもしれない。
まるで圧力鍋の圧力抜きのように水蒸気が音を立てて抜け続けている。
これを応用すれば圧力鍋のような物が出来るんじゃないだろうか。
でもアルの調理は奇跡的なほどに早いし、あっても変わらないだろうか。いや作っているのはアルだし聞いてみたらいいじゃないか。
「アル、圧力鍋とか欲しい?」
「答えは是。時間短縮にもなりますし、試せないレシピを試す事が出来る可能性が高いため是非とも欲しい1品でございます」
「じゃあ今度ゴーシュさんにでも頼んでみようか。出来るかどうかはわからないけど」
「恐悦至極にございます」
慇懃に頭を下げるアルに微笑むと、小首を傾げているレーネさんに圧力鍋とは何かを教えてあげる。
すごい調理器具があるのですねぇ、と感心しているレーネさんだがレーネさんは料理はしない。出来ないわけではないが、そんなに得意ではないそうなので興味も薄いようだ。
帰ったらゴーシュさんに圧力鍋の説明をして、素材や鉄材を渡してネーシャの練習に使ってもらって……。
色々やることが出来たなぁ。
「あ、そういえば、アル。キングとクイーンの素材ってなんだったの?」
「はい、こちらになります」
打てば響くアルの行動。
レーネさんとの連携もかなりのものになってきたけど、やっぱりアルとの以心伝心っぷりは一味違う。
「魔結晶が2つと爪と牙と肉か。どれどれ」
アルが持っている素材は特殊進化個体から手に入る素材のような巨大なものではなく、それなりの種類あるのにアルが両手で持てる量でしかない。
爪も牙も普通のサイズだし、肉はブロック単位だけどそれほど大きくはない。魔結晶は元々小さいくらいのサイズだし。
鑑定で見てみたが特にこれといってすごいものではないようだ。
特殊進化個体と比較してしまっているからかもしれないが能力的にも大したことない。
『闇の衣』を使われて本体が強化されていただけで、素材自体には影響がないということだろう。
まぁそれでも一応希少な素材らしい。レーネさん談。
肉は豚系だけあって豚肉のようだ。
思いっきり人型だったけど豚肉なのだ。この世界――ウイユベールでは人型だろうが肉は肉。結構気にせず食べている。
まぁ解体したら全然違う物になってしまうのはよくあるので気にしたら負けだ。
すっかりこの世界に毒され……慣れてしまった。
魔結晶についてはどちらも豚王だった。
クイーンでも豚王だった。もうどっちがクイーンの魔結晶なのかキングの魔結晶なのかわからない。
今日だけで豚王が2つも手に入った。
そろそろ魔結晶もそれなりの量になったし、武器防具の変更も全然してないから空きスロットに使うことを考慮してみよう。
砕いて食べてしまうのもいいかもしれないが空きスロットを開けっ放しなので勿体無い。
この辺はランカスター魔道具店ではやってないのでエンタッシュ辺りに聞いてみよう。
「さて、後片付けも済んだし、帰ろうか」
「はい!」
「畏まりました」
当初とは景色が一変している周囲を軽く眺めて取りこぼしがないか確認し、アルが使う帰還用魔道具で屋敷へと帰還した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ネーシャー、やっほー」
「お嬢様ー!」
「ネーシャちゃん、ストップストップ! ワタリちゃんが汚れちゃう汚れちゃう!」
「はわわわ! ごめんなさい、師匠……」
何をしていたんだかわからないけど、煤で真っ黒になっているネーシャ。はわわわ、なんて実際に言う人初めてみたよ。うちのネーシャちょーかわいい。
オレが訪ねて来て嬉しさのあまりに抱きついてしまいそうになるのをユユさんに止められている。
あのまま来たらオレも真っ黒だったろうな。
アルはユユさんが止めた段階でオレの前から身を引いていつも通りに控えている。多分帰ってからお説教だろうなぁ。
「あはは。相変わらずネーシャちゃんはワタリちゃんのことが大好きだねぇ」
「はい! お嬢様はお嬢様ですからお嬢様なんです!」
「そ、そうなんだ……」
ネーシャのよくわからない賛辞に曖昧な笑顔で返すユユさんだが、やっぱりこっちも煤で真っ黒だ。ネーシャほどではないけれど。
「2人共、何をしてたんですか? 真っ黒だけど」
「はい、お嬢様! 炉のお掃除です!」
「炉?」
「炉です!」
「炉かー」
「はい!」
たぶん鍛冶に使う火炉のことだろう。
鍛冶師に転職したネーシャは炉を使った鍛造や鋳造なんかも練習し始めたようだし。
今もニコニコと上機嫌でいるネーシャを見るに楽しんで出来ているようでよかった。
「おう、来てたのか。だがまだネーシャの修行終わりまで時間があるぞ?
今日は何か別の用事か?」
「こんにちは、ゴーシュさん。はい、ちょっと色々あります。いいですか?」
「おう、問題ないぞ。ここじゃなんだからこっちで話そう。
ユユとネーシャは早く掃除を済ませて水でもかぶってこい」
「はーい」
「はい、親方!」
ひょっこりと顔を出したゴーシュさんがいつものリビングの方を指して先に移動していく。
ネーシャはユユさんのことを師匠と呼び、ゴーシュさんを親方と呼ぶ。
ではトトさんはどうなのかというと……トトさんだ。
「じゃあまたあとでね~」
「はい、お嬢様!」
「またねぇ~」
2人に手を振ってリビングに行くとゴーシュさんが座って待っている。
すでにアルがお茶の用意を済ませていて全員分の極彩色のお茶がテーブルの上に乗っていた。
今日は蛍光色の紅茶ではないようだ。
「それで、どうした?
またいい素材が手に入ったか?」
「いい素材かどうかは別として、ネーシャの練習用に素材を提供させてもらおうかな、と」
「ふむ……。確かにネーシャには数を打たせるから物はいくつあっても足りん。ありがたくもらっておこう。
それでどんなのだ?」
「はい、とりあえず――」
溶かして纏めた鉄材はでかいのでリビングで出すわけにもいかないので口頭で説明していく。
他の素材もアイテムボックスに収納してある分はリストを見ながら説明していく。
アルの方に分散してある方が多いので大半はアルが説明したけれど。
「……そりゃぁまたずいぶん溜め込んでたな……」
「今までずいぶん魔物を狩りましたからねぇ」
「普通そういうのは売却するなり、装備に使っちまうなりするもんだがなぁ」
「お金に関しては問題なかったですし、装備も買った物や貰ったものなんかが現役ですからねぇ。
ほとんどダメージを受けることもなかったので修繕や交換の必要性もなかったですし」
「普通はありえねぇんだが、まぁおまえらだからな」
普通は魔物を狩るのにもダメージを受けないなんてことはまずない。
運良く奇襲できたり、ダメージを受けないような雑魚を狩るならその類ではないが、普通は無理だ。
雑魚に関しては金銭的にうまみがなくなってしまうだろうし。まぁそこそこ強くなればその限りではないけれど。
結果としてダメージを受ければ防具は損傷する。そのための防具なのだし当然だ。
その修繕や、酷いダメージなら防具を買い換える必要性もあり、素材は換金または材料にされる事が多く、オレ達のように溜め込むなんてのはほとんどありえない。
現にランクSの顎ですら屋敷に素材はほとんどなかった。
その代わり魔道具や装備が腐るほどあったけど。
「それと魔結晶がそんなにあるのか……。
何か魔道具で必要な物があったら作ってやるぞ? もちろん成功の保証はできないが」
「あぁそういえば道具類にも魔結晶って使えるんでしたっけ。
どんなのが出来るんですか?」
魔結晶は武器防具などの装備類だけでなく、道具にも使うことが出来る。
恐らくスロットが空いていれば基本的に何にでも使えるのだろう。
だがスロットを確認できるのがオレの特殊スキル:鑑定だけのようで存在自体がわかっていない。
なので成功の保証は当然できない。
逆にオレがスロットの空いている物を選べば成功する確率が高まるということだ。
まだスロット関係は手付かずだったので確実に成功するのかどうかはわからないが、魔結晶もそこそこの量あるので実験してもいい頃あいだろう。
お金もたくさんあるし、魔結晶を買って実験してみるのもいいかもしれない。
「そうだなぁ……。こんなのはどうだ?」
その後、ゴーシュさんに色々な魔結晶を使った魔道具を教えてもらった。
魔結晶自体が結構な金額することもあり、その魔結晶を使った魔道具は基本的に高額だ。
なのでレーネさんも手が出ない物がたくさんあったのでいつにも増して興味津々なレーネさんが見れてちょっと得をした気分だ。
「そんなにいっぱいあるんですか。
風魔法強化で洗濯機とか贅沢な使い方するんですねぇ」
生前の世界で普及していた家電製品もどきも魔結晶を使った魔道具ならあるみたいだ。
だがやはりどれも普通なら手が出ない高級品。
ランカスター魔道具店に売られている魔道具にはそういった生活用品はないので特注になるが注文するなら作ってくれるそうだ。
もちろん魔結晶のほかにもお金はかかるけど。
はてさてどんな魔道具を作ってもらおうか。
お金の心配がない現状でならどんなものでも大抵の物は注文できる。
持っていない魔結晶が必要な場合は日数がかかってしまうが制作に時間も多少かかるので誤差範囲だとゴーシュさんは言っていた。
お金に糸目をつけなければ魔結晶入手も容易らしい。
まぁこの辺は有用なレアアイテムといえども高額だから取っておく人が多いからだろう。
ただやはり需要の多い魔結晶は難しいらしいけど。
圧力鍋は確定として、レーネさんにも意見を聞き、圧力鍋以外の生活用品よりは冒険に役立つような物を作ってもらうことにして和気藹々と検討し始めるのだった。
========
名前:ワタリ・キリサキ BaseLv:43 性別:女 年齢:6 職業:魔法使いLv30
装備:黒狼石の短剣 笹百合のミスリルの篭手[火耐Lv5 風耐Lv5] 鬼百合のミスリルの靴[麻痺耐Lv5 毒耐Lv5] 鈴蘭のミスリルの胸当て[鈍化耐Lv5 石化耐Lv5 幻覚耐Lv5] 黄百合のミスリルベルト[土耐Lv5 水耐Lv5] 月陽のネックレス 狐の木彫りのペンダント
HP:200/200
MP:141/141#(+1)[+10]
筋力:35
器用:35
敏捷:65<+30>
魔力:36<+1>
回復力:116#(+1)[+20]
運:5
状態:健康
所有:アル#(従者) ネーシャ#(奴隷) その他
所持職業:町民Lv1 戦士Lv1 冒険者Lv1 治療師Lv12 魔法使いLv30 魔導師Lv1
残りポイント:42
所持スキル
成長率増加Lv10 スキルリセット ステータス還元
ウイユベール共通語翻訳#(自動筆記翻訳付き) 鑑定 クラスチェンジ
王族の不文律
筋力増加Lv5 敏捷増加Lv5 器用増加Lv5
魔力増加Lv5 回復力増加Lv10
HP増加Lv5 MP増加Lv10
鈍器スキルLv1
初級魔法:体力回復 中級魔法:水 中級魔法:風
単独転移Lv1
気配察知Lv1
詠唱破棄
筋力強化Lv3 回復力強化Lv3
アイテムボックス拡張Lv4 PT編成
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父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜
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