幼女と執事が異世界で

天界

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第7章

127,で、デートじゃないし

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 蛍光色の紅茶を1口含み、その香りを楽しんでから喉を潤す。
 爽やかな味わいが少し甘味を残して消えていく。
 茶葉も淹れ方も高級感溢れる店内に負けず劣らずだがやはりアルが淹れてくれるお茶の方が美味しい。
 まぁお店に来てまでアルに淹れさせるのはさすがに店に悪いのでやらないけど。


「ここのチョコケーキ結構いけるね」

「エリザベートのお薦めなだけはあります。お土産に買っていかれますか?」

「子供達全員分だとお店が大変なことになりそうだねぇ~」

「では屋敷に戻りましたら再現致しましょう」

「なら材料買っていく? まだ屋敷にあったっけ?」

「答えは是。屋敷にある材料だけで十分にございます」

「そかそか。アルの作ったチョコケーキなら大人気になっちゃうね」

「恐悦至極にございます」


 お茶をもう1口飲んで微笑みながらアルを見る。
 少し曇っている天気でも輝いて見える銀の髪。
 短く刈り込まれたソレは活発な印象と清潔感に溢れ、アルにとても似合っている。爽やかさにかけても1級品だ。
 銀の髪とは対照的な漆黒の瞳は吸い込まれそうになるほどに美しく、魅惑的だ。
 少年らしさを漂わせるその容貌だが、目鼻立ちはすっきりしていて見ていて飽きない。

 今日は2人きりで買い物をしているので普段の燕尾服ではなく、少しラフな装いだ。
 オレもそれに習ってエリザベートさんが選んだ可愛めレイヤード風のトップスにタックの入ったスカート風のキュロットに小さめのリボンのついた水色のミュールだ。

 曇っているので暑くもなく、涼しすぎる事もなくちょうどよい温度で過しやすい。
 静かな店の中にはゆったりとした時間が流れている。

 オレもアルもその流れに逆らわずゆっくりとした時間に身を任せ、紅茶を飲みながら時折言葉を交わす。
 アル相手なら沈黙も苦にならない。
 その時間も含めて全てを共有し、楽しめる掛け替えのない時間だ。


「昨日ギルド行ったときはびっくりしたよね。ランカスター家に寄り道したとはいえ、その後すぐにギルドに行ったのにすでにグレーさん達から達に便宜を図るように言われてたり」

「さすがはランクSといったところでございます」

「そうだねぇ~。やっぱり成り立てとは違ったものがあるね」


 昨日ランカスター家からギルドへ報告に行くと、受付嬢からギルドマスターの方で対応されると言われた。
 ギルドマスターがグレーさんから色々報告を受けていたらしく、オレ達がクイーンやキングなどデミオーク、オーク混生軍を討伐したことやオークロードをグレーさんに譲ったことなども知っていた。
 特にオークロードを譲った件についてはS級依頼でもあったため、ギルドマスターの方でその辺は対処してくれるそうだ。
 本来オークロードを生きたまま譲るなどありえない。
 すぐにでも討伐してしまうべきだが、S級依頼という非常に難しい案件には様々な思惑が絡むため非常に面倒なことになる。
 その辺をギルドマスターが請け負ってくれたという事だ。
 もちろんその辺のフォローをグレーさんがしてくれたのでこうなっているわけだが。

 ついでにクイーンとキング、ならびに混生軍の討伐という本来ならA級以上を複数人と騎士団が出張ってくるような事態を解決したことによりランクCへの昇格試験は免除ということになった。
 昇格試験を一緒に受ける予定だったエイド君には悪いが面倒が減ったので喜ばしい。
 彼には是非自力で頑張っていただこう。これも修行だ。

 ちなみに今回アルと2人きりで買い物に来ているのはレーネさんがグレーさんの所に行っているからだ。
 別に最近すこぶる格好よいアルと2人きりになりたかったわけじゃない。別に何もしないし。
 一緒に雰囲気のいいお店に入ってのんびり談笑してるだけだし。
 で、デートじゃないし!



 閑話休題そうじゃなくて!


 ランクCへの昇格も無事済んでこれで当初の目的である中級の迷宮に入る事ができるようになった。
 だがすぐに迷宮に入るわけじゃない。
 帰還用魔道具リリンの羽根でいつでも屋敷に戻れるとはいえ、やはり準備は必要だ。
 それに休息も必要だ。何せあんな大群と強敵を相手にしたのだから。
 まぁ無傷だったし、全然疲れてないんだけどね。それはソレだ。

 今日から1週間ほどお休みしつつ、準備をすることになっている。
 その間にレーネさんはグレーさん達に会いに行ったり、オレ達は買い物やなんかを済ませる。
 レーネさんはグレーさんに会うのは久しぶりだと言っていたし、話したいこともあるといっていたので合流するのは明後日の予定だ。
 兄弟水入らずを邪魔するのはよくない。積もりに積もった話をたっぷりとして消化して来て欲しい。


 それとは別に実は今日の買い物は本当はもう1人参加する予定だった。
 何を隠そう孤児院エリザの院長様ことエリザベートさんも参加予定だったのだ。
 しかしオレの服のコーディネートをして満足したあと、いざ出発という段になって孤児院職員達に捕まり連行されていってしまったのだ。
 彼女の悲痛な、デートがぁぁ、という声は2秒後には忘れた。
 エリザベートさん的にはデートだったのだから、オレとアルの2人だけになったからといってそれがデートではないというわけではないかもしれないという可能性が微粒子レベルで存在しているかもしれないが……まぁ考えてはいけない。






      ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






 買い物の前に注文していたお皿が届いていたので取りにも行った。
 リューネの雑貨屋は以前来たとき同様に店先が他の店よりもずっと綺麗で清潔だ。
 ドアを開けてカランカラーン、という音に誘われるように中に入ればすぐに店員のお姉さんが対応してくれた。
 以前魅了されたあの白磁の皿はお金持ちになってから割りとすぐに買いに行った。
 でもそのときにはすでに売り切れていて取り寄せてもらう事にしたのだが、白磁の皿は同じ物は手に入らないらしかった。
 なので仕方ないがとりあえず似たものでいいから取り寄せてもらうことにして、やっと届いたのだ。
 取り寄せた白磁の皿は以前の皿よりも深皿タイプになっていた。
 それでもオレの心の奥底の何かに触れる美しさを持っていたので一目惚れ気味に即時購入。
 ちなみに金貨5枚。5万ラードだった。今なら即決即金な値段だ。

 せっかく手に入った白磁の皿。飾ってよし、眺めてよしの美しいこの皿だが、やっぱり食器なのだ。
 ならば使ってこその食器。
 深皿なので何がいいかとアルと一緒に考える事しばし。
 この世界――ウイユベールではまだ見たことないカレーを作ろうということになった。
 カレーなら大量に作るのも簡単だし、孤児院の子供達にも振舞いやすい。
 何よりカレーを嫌いな人はいないと言えるほどカレーは生前でも大人気だったのだ。
 こちらでは見たことないけど、食べればきっと大人気になること間違いなしだ。

 もちろんオレもカレーが好きだ。
 アルが作る料理はどれも絶品という言葉すら生ぬるいほど美味い。
 そんなアルが作ったカレーを是非食べてみたいのだ。


「さて、そろそろカレーの材料買いに行こうか」

「畏まりました」


 お会計を済ませてお店を出る。もちろん支払いはアルだ。
 そのまま手を繋いで市場に向かい、材料の購入を開始する。
 しかしやはりというか当たり前だが、カレーのルーは売ってなかった。
 そこで香辛料を手当たり次第に購入して1から作ってしまうことにした。
 もちろん作るのはアルなので、手当たり次第といってもアルが全て選ぶ。
 香辛料を選ぶアルの真剣な顔は普段の顔とは少し違う格好よさがあり、飽きない。
 いや、普段のアルも格好いいし飽きないけどね。

 様々な香辛料を購入して定番の材料も買い揃えた。当然ながら孤児院の子供達はかなりの人数なので購入した量もとんでもない。
 でも全部アルのアイテムボックスに入ってしまうのだからなんとも便利なものだ。
 もちろんアイテムボックスを拡張しまくっているアルだからこそ出来る芸当ではあるけど。

「これで買い物はばっちりだね。どうする? もう屋敷戻って準備始めようか?」

「答えは否。職員や子供達にも手伝って貰いますので時間は問題ありません。もう少し回っていきましょう」

「了解~」


 何でもオレの言う事ばかり聞いていたアルはもう過去の人だ。
 今のアルはずいぶん成長して人間っぽくなった。
 自己主張もちょっとだけどするようになったし、実にいい傾向だ。
 オレももうちょっとアルと一緒に見て回りたかったし。
 べ、別にアルともうちょっと2人きりでいたいとかそういうことじゃないし!

 で、デートじゃ……。



 どうなんだろう?






      ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






 夕食のカレーはあっという間になくなった。
 結構すごい量作ったのにあっという間だった。
 惜しむらくは米じゃなくてパンだったことだろうか。
 それでもみんなすごい勢いで食べてたけど。いやオレもすごい勢いで食べたけどさ。
 子供達も手伝ったとはいえ、アルの調合した特製香辛料により涙するほどではなかったとはいえ凄まじい美味さだった。
 きっとアル1人で作ったらみんな涙しながら食べた事だろう。
 まぁアルの料理は中毒性が高いから多少緩和しておかないと危険だし、ちょうどいいくらいだろうか。

 もちろん、レーネさんの分はきちんと確保してある。
 レーネさんは体格に見合った大食漢なので5人前分くらい確保しておいたので大丈夫だろう。
 もしかしたら足りないかもしれないけど。

 食後のデザートはチョコケーキだ。
 こちらはアル1人で作ったのだがお店のチョコケーキを再現しているので泣くほど美味いというほどではなかった。
 まぁ再現率が完璧すぎるからこそだけど。

 それでもケーキは別腹ということでこちらもみんな完食。

 でもちょっとだけ不満だったのは仕方ないだろう。
 今度アルに特製チョコケーキを作ってもらおう。

 カレーとチョコ臭い食堂にはお腹がいっぱいすぎて動けなくなった子供達が溢れかえっていたがみんな幸せそうな表情だった。

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