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第7章
141,お話
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「ぅ……」
「どうしたのじゃ、レーネよ。妾とワタリをかけて戦うのじゃろう?」
オレを守るようにエストリア姫――エリアの前に立ちはだかっているレーネさんだが、彼女の挑発的な言葉に若干気後れしている。
元々レーネさんは人見知りが激しいし、強く出るようなタイプじゃない。きっとエリアと2人きりになったオレを心配しすぎて気が動転していたのだろう。
それが今はエリアを前にして頭が冷えてきたのかだんだんと普段通りに戻りつつある。
「あー……。エリア様、あんまりレーネさんのこといじめないでください」
「わ、ワタリさん……」
「む……。そうじゃな。すまんな、レーネ。さっきのは冗談じゃ」
「ぇ、ぁの……。はぃ……」
レーネさんの背後から顔だけ出してエリアに言ってやればさっきまでの挑戦的な言葉が嘘のように引っ込み、すぐに太陽のような笑顔で言葉が返ってきた。
レーネさんもその違いに呆気に取られて目を白黒させつつ頷くことしかできない。
まぁこれで一件落着だ。
頑張ったレーネさんには悪いけど、このまま戦うとかないから。
「じゃあ私達はこれで」
「うむ。いつでもソレで連絡するのじゃぞ。遠慮はいらぬぞ!」
「あー……はい」
胸を張って満足そうに踏ん反り返っているエリアに適当に返事を返して未だに困惑気味のレーネさんの手を引いてギルドを後にした。
……はずなのだが、なぜかエリアが付いてくる。
「あの……エリア様?」
「うん? なんじゃ?」
「いやその……。何平然と私達と一緒にいるんですか?」
「……あれじゃ! レーネがそんなに懐いているワタリのことがもっと知りたいのじゃ!」
「懐いているって……。レーネさんは私の家族ですから、普通です」
「普通のわけないじゃろ。レーネは騎士団にいたころはグレー以外と喋れないほどだったのじゃぞ?
そんなド人見知りがそんなに懐いているワタリはおかしいのじゃ!」
ド人見知りって……。ドのつけるところ間違ってないですかね。
てか、やっぱりレーネさんは騎士団ではグレーさんとしか喋れなかったのか。なんかこうすごく簡単に想像できる。ていうか今は多少マシになったけど、オレと親しい人以外には自分から喋りかけることなんて一切ないからなぁ。
「というわけで妾はワタリのことが知りたいのじゃ」
「知りたいといわれても……。レーネさんの精神の安寧のためにも帰ってください」
「な、なんかワタリが酷いのじゃ!? レーネと妾、どっちが大事なのじゃ!?」
「レーネさん」
「ワタリが酷いのじゃ!?」
なんだろうこのコント。
そもそもあなたとは中立であって味方じゃないんだからそんな話ではないだろうに。
「エリア様、そういうコントいらないので」
「むふふ……。やっぱりワタリはわかっておるのぅ。これじゃこれじゃ。こういうやり取りがしたかったのじゃ」
「……まったくそういうのは他所の人とやってください。うちのレーネさんを巻き込まないでください」
「ワタリはなかなか厳しいのぅ。いいではないか、レーネだって知らない仲でもないのじゃし」
「いや正直レーネさんにとっては騎士団を追い出した相手でしかないですからね、エリア様?」
「な、なんじゃと!? 妾は追い出したわけじゃないぞえ!
レーネ、違うのじゃ! 妾は決してそんなつもりではなかったのじゃ!
そ、そのあれじゃ! たまたまじゃ! たまたまグレーが相手じゃったから!」
「……ぇ、ぁ、ぅ……」
「はいはい、そこまでー。エリア様離れて離れて。レーネさんびっくりしてるし。近いし、離れろこら」
触れ合いそう……というには身長差があって近くないけど、背伸びして捲くし立てているエリアの膝に軽く蹴りを入れてバランスを崩させる。カクン、と膝を突かせて落ちてきた顔面に手を当てて鷲掴みにして引き離せばワタワタ、とリアクションを返してくれる。
なんだろう、やっぱりこのお姫様はわざとやってるよな。さっきのやり取りでも定番の、というか漫画や小説なんかにあるようなコントチックなやり取りがしたかったようだし。今もそうだし。
ワタワタ、と手を振るリアクションなんてまんまだし。
「むふふ……。かなり過激じゃが、やはりワタリはいいのぅ。これじゃこれじゃ!」
「いやだから……。はぁもういいです」
なんだかんだで結局付いて来てしまったエリアにため息を吐く。
かなり強引ではあるけど、本気で嫌なほどではない。これは相手の行動がある程度理解できているのと彼女の子供っぽい無邪気さによるものだろうか。
暴姫などと呼ばれるほどの危ない人という先入観があったから逆に今の彼女の行動が余計コミカルに映っているのかもしれないが。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
海鳥亭に戻ってくるまでにエリアは誰か――たぶん彼女の護衛か従者――にオレ達と一緒にいることを通信魔道具で伝え、その後はレーネさんをいじったり、オレを弄ろうとして返り討ちにあい、レーネさんをいじったり、レーネさんをいじったり、レーネさんをいじったりしていた。
ほんの数分だったはずなのに、海鳥亭に着いた時のレーネさんはもう大分ぐったりしていた。
そんなレーネさんとは対照的につやつやのお肌になったかのように晴れ晴れとしているエリアにジト目を送るがどうにも彼女はどこ吹く風だ。
ぐったりしているレーネさんを慰めつつ、宿に入る。
さてこのままでは本気で部屋まで着いてくるだろう。さすがにソレは遠慮してもらいたい。あそこはすでにオレのプライベートエリアだ。
そんなところにエリアを入れる気にはならない。いくら暴姫とはとても見えないような無邪気さがあろうとまだ彼女のことは良く知らないのだ、当然だ。
「おかえり、ワタリちゃん。そっちの綺麗な子は新顔だね。泊まりかい? それとも食事かい?」
「えーと、じゃあ食事……かな?」
「ふむ? 妾は部屋でもよいぞえ」
「いや、食堂にしましょうか。そうしましょう」
「まぁよいが……」
「そうかい? ゆっくりしていっておくれ」
案の定エリアはオレ達の部屋に行くのが当たり前みたいに思っていたみたいだ。
むしろその思考回路がすごい。いや一応お姫様みたいだし、唯我独尊的な感じが普通だったのか?
短い時間だけど強引な部分は結構……というか相当見てるしな。
とにかくあっちのペースに引き込まれるのはよろしくない。なので食堂だ。さぁ食堂に行こう。
あ、でもネーシャ達が心配するからアルは1回部屋戻ってね?
アイコンタクトでお願いすると軽く頷くアル。さすがはアルだ。何も言わなくてもばっちりだぜ!
念話使えばいいじゃん、とか思ったが伝わったのだから問題ない。むしろ以心伝心みたいでいいじゃない。
宿屋から食堂に繋がるドアを潜って中に入れば多少客が居る程度で、そんなに混んではいない。
食事時ではないタイミングだし、お昼も軽く摂るのが普通だからこの時間帯では混むことはほとんどないのだろう。
「ワタリちゃん、いらっしゃい。昼にはまだ早いけど、何か作るかい?」
「うーん、お腹も空いてないので飲み物もらえますか?」
「じゃあ絞りたての果物ジュースを作ってあげよう」
「お願いします、マスター」
カウンター近くのテーブルを確保すると、マスターから声がかかったので飲み物を注文することにした。
レーネさんも多少戻ったとはいえ、まだぐったりしているし何か飲ませて落ち着つかせた方がいいだろう。元凶のことは知ったことではない。
その元凶は食堂の中を見渡して満足そうな顔をしている。
「むふふ。ワタリはどうやら満喫しているようじゃな」
「満喫……。まぁ確かに満喫してるとは思いますよ」
「妾も満喫したいところなのじゃが、意外と姫という職業は暇がなくてのぅ」
結構好き勝手やっている印象だったけど、そうでもないのだろうか。
「36年もこっちにいるんですから、結構楽しんでるんじゃないですか?」
「それはソレじゃな。姫やってると冒険者みたいな生活はほとんどできんのじゃ。
せいぜいが魔物と戦闘するくらいしかやれんのじゃよ。
妾としてはこういう宿や食堂でたっぷり情緒を満喫したいのじゃ」
お姫様も色々大変らしい。
でも魔物との戦闘は出来るみたいだ。どういうお姫様だよ、と思ったけど漫画やゲームじゃお姫様が勇者のPTにいるなんてよくあることだったよな。きっとそれと同じようなもんだろう。どうでもいいし。
「それでじゃ、ワタリは他にはどんなことをしておるのじゃ?」
テーブルに乗り出すようにして楽しそうに聞いてくるエリアと適当に話しているとアルも戻ってきた。
その後はウェイトレスのお姉さんがアルを口説きに来て冷たい態度にゾクゾクしていたり、それを見たエリアが何やら感心していたりしたが人が増え始めたのでお開きにすることにした。
まだ話をしていたそうにしていたエリアだったがもうぶっちゃけ面倒くさい。
レーネさんはずっと喋らずにオレの隣で待機している感じになってしまっていたし、ネーシャ達も退屈しているだろうし。
「それじゃこの辺で」
「まぁ今日はこんなところじゃろう。次はいつ会えるかの?」
「……いや、次って……」
「つれないのぅ。ワタリと妾の仲ではないか」
いったいいつの間にそんな仲になったのか理解不能だ。
まぁこれもきっと狙った行動なのだろう。いつまでも付き合ってやることもないのでコレで終わりだ。
「はいはい、じゃあ終わりです。さっさと帰ってください」
「むぅ……。仕方ない、今日のところはコレで引くとしようかの。
じゃあまたのぅ、ワタリ、レーネ。……それとなかなか良い目をした執事」
なんだか最後に不穏な眼差しをアルに贈ってから強引姫は帰っていった。
食堂から出て行ったエリアのすぐ後に馬の嘶きが聞こえたことからすでに馬車が待っていたのだろうか。
まぁ海鳥亭の前の通りは馬車もそれなりに通るから偶然だろう。
もしくは……エリアが終わりを察して呼んでおいたのだろうか。考えすぎかもしれないがあのお姫様は案外侮れない気がする。
どこまでオレが許容するのかの線引きを楽しんでいたようにも感じられたのだ。
とにかくあのお姫様はアリアローゼさんのときのように適当にあしらっているだけではだめな気がする。
また面倒な人に目をつけられたと思いながらも、待ちくたびれているだろうネーシャとユユさんの元へと戻るのだった。
「どうしたのじゃ、レーネよ。妾とワタリをかけて戦うのじゃろう?」
オレを守るようにエストリア姫――エリアの前に立ちはだかっているレーネさんだが、彼女の挑発的な言葉に若干気後れしている。
元々レーネさんは人見知りが激しいし、強く出るようなタイプじゃない。きっとエリアと2人きりになったオレを心配しすぎて気が動転していたのだろう。
それが今はエリアを前にして頭が冷えてきたのかだんだんと普段通りに戻りつつある。
「あー……。エリア様、あんまりレーネさんのこといじめないでください」
「わ、ワタリさん……」
「む……。そうじゃな。すまんな、レーネ。さっきのは冗談じゃ」
「ぇ、ぁの……。はぃ……」
レーネさんの背後から顔だけ出してエリアに言ってやればさっきまでの挑戦的な言葉が嘘のように引っ込み、すぐに太陽のような笑顔で言葉が返ってきた。
レーネさんもその違いに呆気に取られて目を白黒させつつ頷くことしかできない。
まぁこれで一件落着だ。
頑張ったレーネさんには悪いけど、このまま戦うとかないから。
「じゃあ私達はこれで」
「うむ。いつでもソレで連絡するのじゃぞ。遠慮はいらぬぞ!」
「あー……はい」
胸を張って満足そうに踏ん反り返っているエリアに適当に返事を返して未だに困惑気味のレーネさんの手を引いてギルドを後にした。
……はずなのだが、なぜかエリアが付いてくる。
「あの……エリア様?」
「うん? なんじゃ?」
「いやその……。何平然と私達と一緒にいるんですか?」
「……あれじゃ! レーネがそんなに懐いているワタリのことがもっと知りたいのじゃ!」
「懐いているって……。レーネさんは私の家族ですから、普通です」
「普通のわけないじゃろ。レーネは騎士団にいたころはグレー以外と喋れないほどだったのじゃぞ?
そんなド人見知りがそんなに懐いているワタリはおかしいのじゃ!」
ド人見知りって……。ドのつけるところ間違ってないですかね。
てか、やっぱりレーネさんは騎士団ではグレーさんとしか喋れなかったのか。なんかこうすごく簡単に想像できる。ていうか今は多少マシになったけど、オレと親しい人以外には自分から喋りかけることなんて一切ないからなぁ。
「というわけで妾はワタリのことが知りたいのじゃ」
「知りたいといわれても……。レーネさんの精神の安寧のためにも帰ってください」
「な、なんかワタリが酷いのじゃ!? レーネと妾、どっちが大事なのじゃ!?」
「レーネさん」
「ワタリが酷いのじゃ!?」
なんだろうこのコント。
そもそもあなたとは中立であって味方じゃないんだからそんな話ではないだろうに。
「エリア様、そういうコントいらないので」
「むふふ……。やっぱりワタリはわかっておるのぅ。これじゃこれじゃ。こういうやり取りがしたかったのじゃ」
「……まったくそういうのは他所の人とやってください。うちのレーネさんを巻き込まないでください」
「ワタリはなかなか厳しいのぅ。いいではないか、レーネだって知らない仲でもないのじゃし」
「いや正直レーネさんにとっては騎士団を追い出した相手でしかないですからね、エリア様?」
「な、なんじゃと!? 妾は追い出したわけじゃないぞえ!
レーネ、違うのじゃ! 妾は決してそんなつもりではなかったのじゃ!
そ、そのあれじゃ! たまたまじゃ! たまたまグレーが相手じゃったから!」
「……ぇ、ぁ、ぅ……」
「はいはい、そこまでー。エリア様離れて離れて。レーネさんびっくりしてるし。近いし、離れろこら」
触れ合いそう……というには身長差があって近くないけど、背伸びして捲くし立てているエリアの膝に軽く蹴りを入れてバランスを崩させる。カクン、と膝を突かせて落ちてきた顔面に手を当てて鷲掴みにして引き離せばワタワタ、とリアクションを返してくれる。
なんだろう、やっぱりこのお姫様はわざとやってるよな。さっきのやり取りでも定番の、というか漫画や小説なんかにあるようなコントチックなやり取りがしたかったようだし。今もそうだし。
ワタワタ、と手を振るリアクションなんてまんまだし。
「むふふ……。かなり過激じゃが、やはりワタリはいいのぅ。これじゃこれじゃ!」
「いやだから……。はぁもういいです」
なんだかんだで結局付いて来てしまったエリアにため息を吐く。
かなり強引ではあるけど、本気で嫌なほどではない。これは相手の行動がある程度理解できているのと彼女の子供っぽい無邪気さによるものだろうか。
暴姫などと呼ばれるほどの危ない人という先入観があったから逆に今の彼女の行動が余計コミカルに映っているのかもしれないが。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
海鳥亭に戻ってくるまでにエリアは誰か――たぶん彼女の護衛か従者――にオレ達と一緒にいることを通信魔道具で伝え、その後はレーネさんをいじったり、オレを弄ろうとして返り討ちにあい、レーネさんをいじったり、レーネさんをいじったり、レーネさんをいじったりしていた。
ほんの数分だったはずなのに、海鳥亭に着いた時のレーネさんはもう大分ぐったりしていた。
そんなレーネさんとは対照的につやつやのお肌になったかのように晴れ晴れとしているエリアにジト目を送るがどうにも彼女はどこ吹く風だ。
ぐったりしているレーネさんを慰めつつ、宿に入る。
さてこのままでは本気で部屋まで着いてくるだろう。さすがにソレは遠慮してもらいたい。あそこはすでにオレのプライベートエリアだ。
そんなところにエリアを入れる気にはならない。いくら暴姫とはとても見えないような無邪気さがあろうとまだ彼女のことは良く知らないのだ、当然だ。
「おかえり、ワタリちゃん。そっちの綺麗な子は新顔だね。泊まりかい? それとも食事かい?」
「えーと、じゃあ食事……かな?」
「ふむ? 妾は部屋でもよいぞえ」
「いや、食堂にしましょうか。そうしましょう」
「まぁよいが……」
「そうかい? ゆっくりしていっておくれ」
案の定エリアはオレ達の部屋に行くのが当たり前みたいに思っていたみたいだ。
むしろその思考回路がすごい。いや一応お姫様みたいだし、唯我独尊的な感じが普通だったのか?
短い時間だけど強引な部分は結構……というか相当見てるしな。
とにかくあっちのペースに引き込まれるのはよろしくない。なので食堂だ。さぁ食堂に行こう。
あ、でもネーシャ達が心配するからアルは1回部屋戻ってね?
アイコンタクトでお願いすると軽く頷くアル。さすがはアルだ。何も言わなくてもばっちりだぜ!
念話使えばいいじゃん、とか思ったが伝わったのだから問題ない。むしろ以心伝心みたいでいいじゃない。
宿屋から食堂に繋がるドアを潜って中に入れば多少客が居る程度で、そんなに混んではいない。
食事時ではないタイミングだし、お昼も軽く摂るのが普通だからこの時間帯では混むことはほとんどないのだろう。
「ワタリちゃん、いらっしゃい。昼にはまだ早いけど、何か作るかい?」
「うーん、お腹も空いてないので飲み物もらえますか?」
「じゃあ絞りたての果物ジュースを作ってあげよう」
「お願いします、マスター」
カウンター近くのテーブルを確保すると、マスターから声がかかったので飲み物を注文することにした。
レーネさんも多少戻ったとはいえ、まだぐったりしているし何か飲ませて落ち着つかせた方がいいだろう。元凶のことは知ったことではない。
その元凶は食堂の中を見渡して満足そうな顔をしている。
「むふふ。ワタリはどうやら満喫しているようじゃな」
「満喫……。まぁ確かに満喫してるとは思いますよ」
「妾も満喫したいところなのじゃが、意外と姫という職業は暇がなくてのぅ」
結構好き勝手やっている印象だったけど、そうでもないのだろうか。
「36年もこっちにいるんですから、結構楽しんでるんじゃないですか?」
「それはソレじゃな。姫やってると冒険者みたいな生活はほとんどできんのじゃ。
せいぜいが魔物と戦闘するくらいしかやれんのじゃよ。
妾としてはこういう宿や食堂でたっぷり情緒を満喫したいのじゃ」
お姫様も色々大変らしい。
でも魔物との戦闘は出来るみたいだ。どういうお姫様だよ、と思ったけど漫画やゲームじゃお姫様が勇者のPTにいるなんてよくあることだったよな。きっとそれと同じようなもんだろう。どうでもいいし。
「それでじゃ、ワタリは他にはどんなことをしておるのじゃ?」
テーブルに乗り出すようにして楽しそうに聞いてくるエリアと適当に話しているとアルも戻ってきた。
その後はウェイトレスのお姉さんがアルを口説きに来て冷たい態度にゾクゾクしていたり、それを見たエリアが何やら感心していたりしたが人が増え始めたのでお開きにすることにした。
まだ話をしていたそうにしていたエリアだったがもうぶっちゃけ面倒くさい。
レーネさんはずっと喋らずにオレの隣で待機している感じになってしまっていたし、ネーシャ達も退屈しているだろうし。
「それじゃこの辺で」
「まぁ今日はこんなところじゃろう。次はいつ会えるかの?」
「……いや、次って……」
「つれないのぅ。ワタリと妾の仲ではないか」
いったいいつの間にそんな仲になったのか理解不能だ。
まぁこれもきっと狙った行動なのだろう。いつまでも付き合ってやることもないのでコレで終わりだ。
「はいはい、じゃあ終わりです。さっさと帰ってください」
「むぅ……。仕方ない、今日のところはコレで引くとしようかの。
じゃあまたのぅ、ワタリ、レーネ。……それとなかなか良い目をした執事」
なんだか最後に不穏な眼差しをアルに贈ってから強引姫は帰っていった。
食堂から出て行ったエリアのすぐ後に馬の嘶きが聞こえたことからすでに馬車が待っていたのだろうか。
まぁ海鳥亭の前の通りは馬車もそれなりに通るから偶然だろう。
もしくは……エリアが終わりを察して呼んでおいたのだろうか。考えすぎかもしれないがあのお姫様は案外侮れない気がする。
どこまでオレが許容するのかの線引きを楽しんでいたようにも感じられたのだ。
とにかくあのお姫様はアリアローゼさんのときのように適当にあしらっているだけではだめな気がする。
また面倒な人に目をつけられたと思いながらも、待ちくたびれているだろうネーシャとユユさんの元へと戻るのだった。
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