幼女と執事が異世界で

天界

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第7章

140,転生者

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 目の前にいる人形のように整った顔を面白そうに歪めている人物が言い放った言葉は確かにオレの知っている言葉だった。
 創造神から貰った特殊スキル――ウイユベール共通語翻訳#(自動筆記翻訳付き)では変換されなかったその言葉は確かに生前の母国語で聞こえた。

 『転生者』……だと?

 こんな言葉が出てくる時点で相手はそれなりの情報を有している事を示唆している。
 どう動くべきだろうか。
 『転生者』だと知られることによるメリット、デメリットはなんだろうか。
 まずメリットは神と直に話したことがあるなどの神の使者として見られる点だろうか。いやこれメリットじゃないし。
 他にメリットは思いつかない。
 逆にデメリットは色々と思いついてしまう。
 神の使者などと呼ばれたりすることや崇められたりしたら面倒この上ないだろう。
 その他にも生前の世界の進んだ科学知識や技術知識などだろうか。
 魔法をうまく使えば銃や簡単な車なんかは作れそうだ。危険な反面便利な物も多い。
 しかし便利なだけではすまないのも想像がつく。

 オレが『転生者』だと知られることの方がデメリットが遥かに多い。


「そう怖い顔をせんでも大丈夫じゃ。『転生者』や『トリッパー』などの言葉はわかるやつにしかわからんものじゃ」

「あー……」

「うむ。これで決まりじゃな。どれ場所を移すとしよう。
 バルドよ。部屋を借りるぞえ」


 エストリア姫から発せられた『転生者』や『トリッパー』などの生前の母国語での言葉はその意味をウイユベールの人達が普通は理解しているわけがないのだ。
 その言葉自体がウイユベールには存在しないものなのだから。
 だがそれだけで確定するようなものではない。しかしそれでも関係者であることはわかるというものだ。


 場所を変える事には異存は無いので着いて行くと、受付などで申請すると冒険者に貸し出される会議室のような部屋に案内された。


「キリサキと妾だけで話したい。他は遠慮してくれるかえ?」

「わ、ワタリさん……」


 部屋の前でエストリア姫がそう言ってくるが当然レーネさんは心配そうにこちらを見て拒否するように、と視線を送ってくる。
 でもここはオレも情報が欲しい。
 エストリア姫がどうして『転生者』や『トリッパー』といった言葉を知っているのか。
 まぁ簡単に考えたら彼女がオレと同じく『転生者』なんだろうけど、知識だけで知っている場合もある。

 障壁の魔道具も常に待機状態になっているし、気を抜くつもりもないので不意打ちをしてきても対処可能だろう。


「大丈夫ですよ、レーネさん。ちょっと行ってきますね」

「ワタリさん……。はい……」


 レーネさんの瞳をじっと見つめ、安心させるとわかってくれた。
 アルにもアイコンタクトを送り、ギルドマスターの監視についてもらう。

 部屋に入ると以前エリザベートさんが使った遮音の魔道具を起動させ、向かい合うように席に着く。


「さてまずは聞きたいこともあるじゃろうが妾の話に付き合ってくれ。
 妾は36年前にこの世界に『転生』したのじゃ」

「36……年?」

「うむ。妾はこうみえても36歳じゃ。見えんじゃろ?」

「はい、どうみても11か12歳くらいにしか」

「うむ。そうじゃろうそうじゃろう。これは妾の肉体年齢が12歳で止まっておるからじゃ。
 あー心配せんでも大丈夫じゃ。これは妾の『ユニークスキル』の力じゃからの」


 いきなりのエストリア姫の告白にびっくりするが、『ユニークスキル』は特殊スキルのことだろう。


「貰ったじゃろう? そなたも『ユニークスキル』。
 妾の『ユニークスキル』は『肉体操作』じゃ。すごいじゃろ?」

「は、はぁ」

「まぁこのスキルのすごいところは好きな歳で肉体を固定できる点じゃが、他にもいろいろあるんじゃぞ?
 1つしか貰えない『ユニークスキル』なのじゃし、便利なのは当たり前じゃがな」


 1つしか……?
 あれ? 『ユニークスキル』と特殊スキルって違うのかな。
 だってオレ、特殊スキルなら6つも持ってるし。


「それで、そなたの『ユニークスキル』はどんなスキルなのじゃ? 妾も教えたんだから教えてたもれ」


 勝手に喋った癖にこちらにもスキルの開示を要求とか、ちょっと強引だ。
 しかし瞳を輝かせて前のめりにこちらの言葉を待っているエストリア姫になんだか毒気を抜かれてしまう。
 教えても問題ない特殊スキルを教える程度で済まそう。彼女も1つしか貰えない・・・・・・・・と言っていたし1つでいいだろう。


「まぁいいですけど……。私のは鑑定です」

「おぉ! 鑑定とな!
 それはアレか! 漫画や小説でお馴染みのヘルプ機能かの!? 相手のステータスとか見れちゃうのかの!?」

「あー……。物なんかはヘルプ機能っぽい説明文は出ますけど、人相手だとステータスは全然ですね。
 名前と職業とLvくらいなもんですよ。あーあと備考」

「備考? なんじゃそれは?」

「例えば加護とか特殊な能力を持っていたりすると表示されるみたいですよ」

「ほほぅ。便利じゃが、ステータスは見れないのか……。残念じゃのぅ」


 鑑定で人を対象とすると表示される項目は非常に少ない。
 ステータスどころかスキルすらも表示されない。
 その上、物を鑑定するときの消費MPは1なのに人を対象とするとものすごく消費MPが上がる。
 しかもBaseLvがオレより上だと失敗する。
 あまり使い勝手がいいとは言えないスキルだ。なので最近はほとんど使っていない。むしろ存在そのものを忘れていたくらいだ。


「じゃが鑑定とはなかなか『テンプレ』を押さえておるのぅ。よいぞよいぞ!
 他のやつらと違って期待できる!」

「他のやつら?」

「あぁ言っておらなんだな。キリサキよ。そなたの他にも『転生者』を妾は2人見つけておる。
 まだ確定はしておらぬが『転生者』疑惑があるやつも合わせれば2人+5人じゃ!
 あ、そなたも含めると8人じゃの。もちろん妾は抜きじゃ」

「2人……。疑惑ってことはまだ確定してないってだけでそれっぽいんですか?」

「うむ。実はグレーも疑惑の人なのじゃ」

「もしかして……。グレーさんに襲い掛かっていたのって……」

「う、うむ……。そなたのように割と簡単に乗ってくれるやつもいればそうでもないやつもおるのじゃ。
 グレーはそれっぽいんじゃがなかなか尻尾を出さんでな」


 どうして『転生者』の割り出しで襲い掛かることになったのかは知らないがそういう理由だったのか。
 じゃあ話にあったような凶暴なお姫様というわけではない、ということなのか。
 まぁ話してみて全然そんなことないから不思議には思ってたけど。


「キリサキよ。妾がどうして『転生者』を探しておるか不思議かえ?」

「いえ、『ユニークスキル』関連でしょう?」

「うむ。その通りじゃ。
 『ユニークスキル』は強力なものが多い。妾の『肉体操作』もそうじゃが、妾が見つけた『転生者』の2人の『ユニークスキル』も非常に強力じゃ。
 それ故に把握し、仲間に引き入れたいのじゃ」

「……入らない場合は?」


 『ユニークスキル』が強力なスキルなのは十分知っている。
 それ故に敵対せず仲間にしたいと思うのは当然だろう。アドバンテージが違いすぎる。
 しかしそんな強力なスキル持ちが仲間にならないとしたら?
 敵対するのは危険だが、野放しにしておくのはもっと危険ではないだろうか。


「……妾としてはこんなことは言いたくないのじゃが敢えて言わねばならぬじゃろう事はわかっておる。
 仲間にならぬなら……。どんな手段を使ってもスキルを封じさせてもらう」

「……まぁそんなところですかね。
 すぐに殺さないだけでもまだマシな方でしょう。
 仲間にはならないけど、敵対もしないっていうのはどうですか?」


 殺してしまった方が禍根も残さずに済むと思うが、確かに短慮であるのは否めない。
 心変わりする事だってあるはずだ。

 オレとしては仲間になるつもりはない。
 でも敵対するつもりもない。要するに中立。
 エストリア姫は味方か敵かの極端な話しかしていないので一応提案という形で言ってみた。


「もちろんじゃ。妾も敵対しなければ問題ない、と思っておる」

「それはよかった。じゃあ私は中立ということで」

「うむ。了解した。何か助けが必要ならば遠慮なく連絡するがよいぞ。
 これは妾に繋がる魔道具じゃ。有効範囲が限られておるが、市販の魔道具よりは遥かに広い範囲で使えるのじゃ。
 まぁさすがに『携帯』とまではいかぬがの」

「ありがとうございます」


 渡されたのはオレがネーシャに持たせている通信魔道具のような物だが範囲はもっと広いらしい。軍事用のものだろうか。
 中立という中途半端な立ち位置をあっさり了承したのは、とりあえず敵対しなければいいと思っているのか、それともこの魔道具・・・・・で居場所がわかるようにでもなっているのか。
 まぁどちらにしても屋敷に置いておいて持ち歩いたりはしない方がいいだろう。


「ところでキリサキよ。
 そなた勇者としては活動せんのか?」

「いやさっきもいったように私は勇者じゃないですから」

「ウィシュラウはそなたはすごい魔法使いだと自分のことのように自慢しておったぞ。
 そなたの従者については熱に浮かされたようにしてまさに恋する乙女じゃったがの」

「あー……。まぁ……。色々あるんですよ」

「むふふ……。なかなか面白そうなことになっておるようじゃの。
 妾も混ぜて欲しいところじゃが、あの従者は妾の好みではないのでの」

「あはは……」


 悪戯ッ子のようにニシシ、と笑うお姫様に苦笑しか出てこない。
 まぁアルを狙うようであればオレを倒してからにしてもらうけどね。


「さてこれ以上レーネに心配をかけるのもなんじゃしの。
 キリサキよ……。いやワタリと呼んでええかえ?」

「あ、はい」

「妾のことはエリアと呼ぶがよいぞ。もちろん呼び捨てで構わぬ。
 ではワタリ、これからよろしく頼むぞ」

「あ、はい。よろしくお願いします?」


 晴天の太陽のような笑顔で右手を差し出してきたのでつい握手を交わしてそう答えてしまったが、オレは中立だぞ? いったい何をよろしく頼まれるのだろうか。
 まぁ問題ありそうなら断ればいい。あくまでオレは中立だ。

 手を離して遮音魔道具を解除して部屋を出ると心配そうにしていたレーネさんがすぐに駆け寄ってきてエリアから引き離すようにオレの前に出る。

 おぉ……。なんだろうレーネさんがすごく頼もしい。
 成長したなぁ……レーネさん……。


「ぇ、エストリア姫様……。ワタリさんは渡しません」

「ふむ。よい度胸じゃ、レーネ。妾と戦うつもりならいつでも相手になってやるぞ!」


 レーネさんの成長に感動していたらなんだか雲行きが怪しくなってきた。
 あれ? いったいどうしてこうなった?
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