幼女と執事が異世界で

天界

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第7章

146,超巨大迷宮カトルゼ Part,2

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 超巨大迷宮――カトルゼは5階層毎に出現する魔物が変化する。
 1,2階層パターンでは魔物の種類はある程度固定され、量もそれほどではない。とはいえ迷宮自体が広いので全体量としては相当な数に及ぶ。
 されどパターン上では1番魔物が少ない階層とされている。
 そう、3,4,5階層のパターンは魔物の数が増えていくのだ。
 その数も目に見えて増えるので4,5階層あたりになると頻繁に戦闘になる。
 4,5階層パターンは1度の戦闘で20匹以上と戦闘するのは当たり前になる。
 まだまだ浅い階層では魔物の強さもさほどではないので、数で押してきてもなんとかなる。
 しかし浅い階層が終わり、そこそこ階層を増していくと物量に加え、単体の強さも上がってくるので攻略が難航する。
 さすがはランクC以上でなければ入る事すらできない迷宮である。

 初日は19階層で屋敷に戻ったので最初から魔物の数が多い状態でのスタートとなる。
 20階層も突破して21階層から2日目をスタートさせたかったのだが、数が数だけに時間がかかりそうだったので諦めた。
 とはいってもまだまだこの程度の階層ではオレ達の攻撃で即死するレベルだ。
 ただ数が多いので解体してからの素材集めなどに多少時間が取られたり、地図がないので道に迷ったりで思ったよりも時間がかかる場合もある。

 魔物の数が多いという事はその分レベルが上がりやすいということでもあるのだが、シトポーの祝福を持つオレ達でもこの程度の魔物では相当な量倒さないと上がってくれない。
 まぁそれでもBaseLvではなく職業Lvの方はクラスチェンジしてまだ間もないのもあってバカスカ上がっているけれど。

 トトさんのパワーレベリングで魔導師はLv10まで上がっていたが、ここでもバカスカ上がっている。
 さすがにあの超効率狩りほどの量ではないので凶悪なほどの上がりっぷりとは言えないが、昨日だけで魔導師のLvは13まで上がっている。

 魔導師の職業恩恵はMP中上昇、回復力大上昇、魔力中上昇だ。
 上位職だけあってLv3毎に上昇する量もかなり高い。
 中で2。大で3ずつ上がっていくようなので、上位職の基礎ボーナスと合わせてすでに結構な量の補正がついている。
 昨日のうちに回復力なんかの微調整が必要なステータスの調整も済ませているが、今日屋敷に帰ったらきっとまた調整が必要だろう。面倒ではあるがこれは喜ばしい事でもある。
 だって自分が着実に強くなっているのがわかるのだから。

 相変わらず突出している回復力だが、調整を済ませた今の段階で140ある。
 回復力強化Lv3は迷宮内では常時使用しているので常に280あることになる。
 移動中なら1分で28回復していることになる。一回の戦闘で大体氷の矢を10~20本程度使っているので多くても30いくかいかないかの消費だ。
 詰まるところMPは減らない。さすがに1分以内に再び戦闘になるなどというほど魔物の密度が高いわけではないからね。

 5階層パターンの1番魔物が多い時でもこのとにかく広い迷宮内が魔物でいっぱいになることはない。
 早くても5分おきくらいだろうか。
 5分歩いてれば出てくるときもあれば20分歩いても出ないときもある。まぁ一箇所に固まっているのは大部屋のパターンだけのようなので、通路では魔物も常に徘徊しているのだから当たり前だ。
 それでも5分は最低でも空きが出来るのだからこの迷宮は本当に広い。


「前方約200mに中型の魔物が20匹ほどでございます。
 バイトハウンドの群れかと」

「了解です」

「はいはーい。5階層パターンでは普通くらいの量だねー」

「えぇ、ですが油断は禁物です。バイトハウンドは稀にですが麻痺を引き起こす毒の牙をもつ場合がありますので」

「近づかせるつもりはないですけど、了解です」


 バイトハウンドはアルバイトの猟犬では当然ない。こんなところでバイトされてても困るし。
 オレの肩くらいの大きさの体格の猟犬で鋭い牙と爪が特徴。
 群れで行動するために5階層パターンでしか出てこない数で押すタイプの魔物だ。1匹1匹はそれほど強くない。
 でも連携は上手いので侮ってはいけない。レーネさんが言ったように稀に麻痺毒の牙を持つ個体もいる。
 でもこの特殊固体は別に魔結晶を持っていたりするわけではないそうだ。

 まぁ何はともあれ……照明魔道具の範囲に入った瞬間には氷の矢が的確に脳髄を貫き、見えない刃――飛斬――が横範囲に広く飛び、あっという間にバイトハウンドを壊滅させた。
 近づけないのは当然としてもアルの索敵能力により、あちらの鼻がこちらを捉えるよりも早く発見出来、近づいてくる頃には準備は万全なのだ。従って火力は十分どころか過剰なくらいなので照明魔道具の範囲に入ると同時に全滅する。

 さくさくと解体を済ませ、アルのアイテムボックスに収納していく。
 触れて念じるだけで解体できるというのはものすごく時間節約になる。普通にナイフなどで解体していたらこれだけの数だ。面倒この上ないだろう。


「ワタリ様、魔結晶にございます」

「おぉ~。やったね。
 魔結晶【猟犬】か。数が多いから魔結晶稼ぎもしやすいかもねぇ~」

「ワタリさん、おめでごうございます。ですが普通はそうでもないんですよ」

「そうなんですか? もしかして迷宮では魔結晶が出にくいとか?」

「それもありますね。でもコレだけの数ですと戦闘が終了する前に迷宮に死体が取り込まれてしまうのですよ。特にカトルゼは吸収速度が速いというのもあります」


 オレ達みたいに出会った瞬間に全滅させられるならともかく、普通は時間をかけて倒すだろう。
 それでもそれなりに強ければ短時間で倒せる。だがここは迷宮だ。
 迷宮は生きているので死んだモノを吸収しようとする。それは魔物でも人であっても同じだ。
 だが普通はそれほど短時間で吸収されたりしない。
 カトルゼは超巨大なために吸収速度が異常に早いそうだ。そうでもしないと維持が出来ないのかもしれない。
 解体されてしまうと吸収できる部分が大分減ったりするのだろう。現に素材しか残らないので物質的に減る。そういったモノを無駄にしないために吸収速度が速いのかもしれない。

 だがそれはこれだけの物量で押してくる魔物から得られる物が減るということに他ならないため、冒険者からはものすごく嫌われる。
 苦労して倒していざ解体しようとしたら死体が吸収されて残っていないのだから当然だろう。
 まぁ迷宮にとって冒険者のご機嫌など知った事ではないだろうが。

 ついでにカトルゼでは物量で押してくるくせに魔結晶の入手頻度は高くない。
 なぜなら魔結晶は時間をかけて生成されるものだからだ。
 超巨大迷宮でもかなりの人数が毎日ランダムな場所に押し寄せてくるのだ。早々長い間は生き残ってはいないということだろう。
 生き残っていても魔結晶を生成する固体は珍しいので益々少なくなる。
 まぁ魔結晶自体がレアドロップなので仕方ない。魔結晶を目当てに大量に魔物を狩ろうという者はかなり珍しいのだ。
 そんな戦力があるならもっと深い階層で魔物を狩った方が利益率が高いし、深い階層なら長く生き残っている魔物も増えるので魔結晶を入手する確率が高くなる。


 第20階層では1度に30匹近い魔物が押し寄せてくるがやはりオレ達の敵ではない。
 今まで通りに照明魔道具の範囲内に入る頃には全滅している。






      ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






 第25階層で相変わらず押し寄せてくる魔物を瞬殺しながら進んでいると、この迷宮に入って初めて冒険者と出会った。
 彼らは大部屋で戦闘中でこちらに気づいてはいたがそのまま戦闘を続行している。
 動きは悪くない。全員の装備もそこそこいい物のようだ。
 前衛4人に後衛に魔法使いらしきエルフと回復職っぽい獣人。
 魔法使いのエルフはオレのような膨大な回復力とMPで押すような戦い方ではなく、ちまちま隙を狙って一撃を叩き込むやり方のようだ。
 1度魔法を放つと第2射までの時間が非常に長い。
 回復職っぽい獣人も前衛が怪我を負って下がるとすぐに回復しているが、回復してもらっている方は相当痛がっている。
 MPを痛み軽減に回すほどの余裕がないのだろう。

 大部屋での戦闘は先の通路を塞がれるようにして行われているのでオレ達も立ち往生している状態だ。
 戻って違う通路を行くにも時間がかかる。
 ふさがれている通路は3箇所あるみたいだし、戦闘が終わればばらける事が可能なので待っている状態だ。

 手助けすれば一瞬で片がつくだろうけど、それをやると絶対揉める。なので面倒でも待つほかないわけだ。

 しばらく眺めていると道を塞ぐように占拠していた魔物の群れ――大部屋についたときには100匹近くいた――の数も大分減ってきた。
 数が減っていくに連れて冒険者の方はダメージを受ける事が減り、倒す速度が上がっている。回復職っぽい獣人が暇そうにしているのが印象的だ。本当に回復特化なのだろう。

 冒険者の戦闘を眺めているだけというのも暇だったので大部屋も一通り観察している。
 戦闘要員は6人だが、ポーターっぽい荷物持ちの人がいることもわかっている。ポーター達は冒険者が倒した魔物を邪魔にならないようにすぐに解体しているようだが、戦闘に巻き込まれないようにしているので、そう大した数を解体できているわけではなかった。
 オレ達が見ている間に出来た解体は10に届かない程度だろう。倒した数はその6倍以上はあったのに。
 解体できなかった死骸は迷宮に吸収されてすでに残っていない。
 冒険者達も死骸を移動させたり、場所を移したりするほど余裕はないようだ。

 これが普通なんだろう。
 大部屋だから敵の数も多いがそれにしたって解体できている数が少なすぎる。これじゃあ魔結晶稼ぎどころではない。

 大体オレ達が到着してから1時間くらい経っただろうか。最後の1匹を叩き潰して大部屋での戦闘は冒険者の勝利に終わった。
 数が少なくなってからは解体もほぼ出来ていたようで最終的に解体できたのは30匹程度だろうか。それでもかなりの量の荷物になっただろう。
 ポーターがどの程度アイテムボックスを拡張しているか知らないが、うちのアルなら苦にもならない量だな。


「それでは行きましょうか」

「ほーい」


 戦闘を終えた冒険者達は一旦大部屋の端によって休憩を取るようだ。
 オレ達はそんな冒険者達に一礼だけして1番離れた通路を進む事にした。
 特に用もないし、距離を取っておいた方が双方共に安心できるだろうと思ったからだ。

 休憩中の冒険者達の視線を一身に浴びながら大部屋を抜ける。
 そりゃ彼らは戦闘要員6人プラスポーター2人の大所帯で、年もそれなりに重ねているPTのようだし、どう見ても幼女なオレを含むたった3人のPTでは注目するだろう。
 しかしそんな視線はもう慣れっこだ。
 絡んでこないだけマシというもの。
 まぁこんな迷宮の中で、しかも幼女を含む3人でここまで来れているPT相手にそんな馬鹿な事をするのは得策ではないのはわかっているのだろう。


 ……だがしかし、そういう馬鹿は意外といるものなようだ。


 27階層でそんな馬鹿に出会ってしまった。


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感想 22

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