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第7章
147,超巨大迷宮カトルゼ Part,3
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27階層の通路を進んでいると大分先の通路にチラッと光源が見えた。
魔物は光源を持っていないので冒険者だろう。別れ道もないし、すれ違うくらいなら別に問題ないだろうと思いそのまま進む事にした。
光源はオレ達が進んでいるから近くなってきているが、どうやら動いていないようだ。
相手が迷賊なりなんなりで不意打ちしてくるつもりなら光源をつけっぱなしの意味はないし、休憩するにもここは通路だ。光源外は暗闇が支配する空間となっているため、魔物がいつ出てくるかわかったものではない。
となると残っているのは戦闘中という選択肢。
近づくにつれてやはりその答えはあっていたようで、怒声と金属同士がかち合う音が聞こえてきた。
27階層には鉄の防具と武器で完全武装した二足歩行の山羊――アングリーゴートが大量に出てくる。
こいつらは防具を装備しているので結構強い。連携はあまり取れず、名前通りに怒り狂って怒涛の勢いで突撃してくる。
鉄の弾丸……というほど早くはないが数が多い上に鉄の防具で固めているのでなかなか対処に困る……らしい。
オレ達にとっては鉄の防具など大した意味もないのでまっすぐに突撃してくれるこの山羊達は他の魔物以上に楽勝だ。だが適正ランクの冒険者達にとっては手強い魔物なのだそうだ。
「アングリーゴートですかね?」
「恐らくはそうでしょうね。すでに乱戦にもつれこんでいるのではないでしょうか」
アングリーゴートは突撃から乱戦に持ち込んで数で押す戦法しか取らない。しかしこれがなかなか厳しいのも事実。
鉄の防具で固めているアングリーゴートに懐に入られ、数で押されるだけで壊滅していく冒険者PTは多い。
懐に入られ、連携を崩されると後衛を守る暇もなく押し切られる場合が多々あり、そうなると全滅が見えてくる。たとえアングリーゴートを退けられても後衛が大打撃を受けては次が危険だ。
そうやって捨て身の特攻しかしてこないアングリーゴートは冒険者から非常に嫌われている。
通路は斜めに曲がっているため光源は見えども冒険者や魔物の姿は見えない。だが光源から伸びる影は忙しなく動き回り、音と共に激しい戦闘の様子を伝えている。
別れ道もなく、別の道を行くには引き返すしかない。
戦闘が終わるのを待ってから追い越すのがよさそうだが、光源から伸びる影の様子と怒声と悲鳴から見て苦戦しているのはわかっている。
戦闘は勝利するだろう。だが被害はかなり大きそうだ。
そんな中を追い越していくのは何か嫌な予感がする。
「どうします?」
「戦闘終了後に進みましょう。このような場面を回避していてはこの先同じようなことがあるたびに回避しなければいけなくなってしまいますので」
「まぁそうですね」
レーネさんの言う事ももっともだ。
いちいち他の冒険者を回避していては攻略に時間がかかってしょうがない。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
しばらく待っていればやはり戦闘は冒険者達の勝利で幕を閉じたようだ。
しかしくぐもった呻き声や悪態を吐く声などが微かに聞こえる。
オレ達の光源も見える位置に来ているので、他のPTがいることはわかっているはずだ。
もう戦闘も終わっているし、さっさと追い越してしまおう。
通路を進み光源が見えてくるとボロボロの傷だらけになっている冒険者と床に倒れたまま動かなくなっている――恐らく死体――と、ほぼ無傷で傷だらけと死体の冒険者とは装備がまるで違う総勢15名ほどのPTが見えてくる。
【奴隷を矢面に立てているPTですかね?】
【そのようですね。しかしカトルゼの27階層であの装備では……】
【最初から捨て駒として使っていたんでしょうね】
奴隷を肉壁として迷宮を攻略するのはよくあることだ。
元ランクS冒険者『破滅の牙』のリオネットもそうやって150階層もの迷宮を攻略してみせ、ランクSとなったくらいだ。
お金にさえ糸目をつけなければ効率的ともいえるかもしれない。
しかもカトルゼのクリスタルの特徴としてPT単位で移動する事になるので、1PTに纏める必要がある。
大PTでの攻略は同じ階層でもランダムに飛ばされてしまうので効率がいいとはいえない。それどころか迷宮内で合流することすら出来ずに終わるのがオチだ。
しかし1PTには普通は6人までしか入れない。
普通ではない者――従者や奴隷――は5人で1人分という換算になるので、ソレらの者を使う場合は1PTに最大で26人まで詰め込む事も可能だ。
数は力。これはある程度このウイユベールでも共通している。
しかしオレやレーネさんのような一騎当千な存在も数多く存在することから完全ではない。
だがやはり一般的には十分な意味を成す。
目の前のPTもそういったPTなのだろう。
装備が違っていて無傷の冒険者達が主で、それ以外は奴隷か従者なのだろう。人数的にも15人もいるのだからそうなる。
オレ達が近づいてきた事から無傷の冒険者達は舌打ちしてこちらを睨み付けている。
しかしオレ達が3人、しかもうち2人は子供だと気づいてからは逆にニヤニヤし始めている辺り救い様がない。
【これは絡まれそうですねぇ】
【……そうなるかもしれません。奴隷がほとんど動けない状態ですし、回避しますか?】
【こんなところで捕縛しても意味ないですしね】
【では私が光球投げたら、複数転移をお願いします】
今回の回避は絡まれてこちらに被害が出る前にとっとと場所を移すという方法だ。
レーネさんが光球を投げるのは転移先の場所を確保するため。真っ暗だとターゲット出来ずに失敗してしまうのだ。
だがこれも絡まれたらの話で、絡まれなかったら普通に通って終わりだ。
だがやはりそんな甘い事はなかった。
というかオレの考えはさらに甘かったみたいだ。
せいぜいが何か言ってきて絡んでくる程度だと思っていたのだ。
いきなり襲い掛かってくるとは思ってもみなかった。
ボロボロの傷だらけの奴隷が一斉に通路の壁を利用して半円に包囲し、その後ろから無傷の冒険者達が下卑た笑い声と共に矢と魔法を放ってきた。
一瞬奴隷達の動きと矢と魔法に呆気に取られたが、アルによって全て弾かれ逸らされ、包囲している奴隷達へと流され数人が崩れ落ちる。
悪態と同時に怒声が響き渡り、包囲している奴隷達が押し寄せようと1歩を踏み出した時にはその半分の首が胴体と別れていた。
レーネさんの飛斬だ。
奴隷達もボロボロとはいえ防具を着込んでいる。
しかし鉄の防具で完全武装しているアングリーゴートをバターのようにさくさく斬ってしまうレーネさんの飛斬だ。ソレ以下の防具しか着ていない者が耐えられるわけがない。
首や肩から上――身長や体勢によりまちまちながらも――なくなった体から大量の血液が噴き出し、崩れ落ちる。
その様に一瞬動きが止まった残りの奴隷も同じ末路を辿っていた。
包囲が完全になくなり、残っているのは唖然としたままの無傷の冒険者のみ。
その頃にはオレも状況を理解し終わっていたので、無傷で残っていた冒険者3人の四肢に氷の矢を打ち込み終わっていた。
痛みにのた打ち回る冒険者3人。そのうちの立派そうな長剣を持っていた男が、腰から小さな試験管のような物を動かしづらくなった腕で取り出そうとしていたので、もう1発ずつ全員の手のひらに氷の矢を打ち込み地面に縫い付けておいた。
悲鳴と怨嗟の声を上げ、自分達の状況をまったく理解できていない冒険者に冷たい瞳を向けたレーネさんの腕がぶれる。
うるさいほどに響いていた声が止み、静寂が訪れた。
「なんというか、救い様がないやつらでしたね」
「はい。解体して先に進みましょう」
結局手を汚したのは全部レーネさんだったけれど、レーネさんの表情は別段曇ったりはしない。
騎士団に所属していた過去もあり、尚且つソロで冒険者をしていたレーネさんだ。こういうことは1度や2度ではなかったのかもしれない。
恐らくやつらはレーネさんを狙ったのだろう。レーネさん可愛いし。
あれ? でもレーネさんは人がいることがわかっていたからフードを深く被っていた。
……もしかして狙いはオレ? もしくはオレ達の装備や物資か?
どっちにしても糞野郎だったことには変わりないか。
あぁいう救い様がないやつらを助けてやるほど暇じゃない。
ここが街中だったら別だったかもしれないが、帰還用魔道具を持っていても騎士団の詰め所に突き出すのは面倒だ。
何よりここはカトルゼだ。ラッシュの街とは大分距離がある。突き出すならカトルゼの町の方になるだろう。
捕虜を引き連れて青いクリスタルを探すのはさすがに遠慮したいし、突き出しても貰える物は金貨1枚いくかどうかだろう。今更金貨1枚貰うくらいなら進んで魔物の素材をゲットした方が有用だ。
オレも大分こちらの世界に慣れてきたということだろうな。
まぁ奴隷の人達は気の毒だったと思わないでもないけれどね。
運が悪かったとしか言いようがない。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
人間も解体することが出来る。
解体すると装備品などと一緒にタグが残る。
これらを冒険者ギルドや商業ギルドに持っていくとお金が貰えたりする。
もちろんただ殺した場合は賞罰の記録が残ってしまうので街などに入る際につかまってしまう。
うまくやれば殺人で稼ぐ事も可能かもしれないが、もらえる額は大した額ではなくとてもじゃないが割には合わない。
もちろん今回は相手が先制しているので賞罰はつかない。
今回タグをギルドに届けるのは奴隷の分だけにする事にした。
主犯のゴミ達のタグはその場で破壊した。
タグは主成分が何なのかよくわからなかったが、グレートコーンでひと叩きしたら粉々になった。
奴隷達の分だけでもギルドに届ければ、遺族などが居たらそちらに渡ることになるだろう。
まぁ奴隷のタグなのでまず遺族に渡る事はないという話だけど。一応だ。
これもカトルゼの町の方に届ける必要があるので攻略が終わってからの話になるだろう。
それまでは仕方ないがアルのアイテムボックスの中で保管だ。
装備やアイテムボックスに保管されていたと思われるアイテムが床に散らばっていたが、それらも全て回収してある。
ポーターも数人混ざっていたようだが、生き残りはいないし、アルのアイテムボックスにはまだまだ余裕があるので問題ない。
むしろ着替えなどがあって、それらは明らかに悪臭を放っていたりしたので分けるのが面倒臭かった。
もちろん燃やしてやった。わざわざスキルを変更してから塵も残さず燃やしてやった。
ただっ広い迷宮なので多少燃やした程度では問題にもなりはしない。
悪臭も風を起こして散らしたので大丈夫。
回収作業も終わって要らない物は着替えなどと一緒に燃やしたので、もうほとんど何も残っていない。
あれだけ溢れていた血も解体すればなくなってしまうのだから不思議なものだ。
何もなくなった戦闘跡地を振り返ることなく、オレ達の迷宮攻略は続く。
魔物は光源を持っていないので冒険者だろう。別れ道もないし、すれ違うくらいなら別に問題ないだろうと思いそのまま進む事にした。
光源はオレ達が進んでいるから近くなってきているが、どうやら動いていないようだ。
相手が迷賊なりなんなりで不意打ちしてくるつもりなら光源をつけっぱなしの意味はないし、休憩するにもここは通路だ。光源外は暗闇が支配する空間となっているため、魔物がいつ出てくるかわかったものではない。
となると残っているのは戦闘中という選択肢。
近づくにつれてやはりその答えはあっていたようで、怒声と金属同士がかち合う音が聞こえてきた。
27階層には鉄の防具と武器で完全武装した二足歩行の山羊――アングリーゴートが大量に出てくる。
こいつらは防具を装備しているので結構強い。連携はあまり取れず、名前通りに怒り狂って怒涛の勢いで突撃してくる。
鉄の弾丸……というほど早くはないが数が多い上に鉄の防具で固めているのでなかなか対処に困る……らしい。
オレ達にとっては鉄の防具など大した意味もないのでまっすぐに突撃してくれるこの山羊達は他の魔物以上に楽勝だ。だが適正ランクの冒険者達にとっては手強い魔物なのだそうだ。
「アングリーゴートですかね?」
「恐らくはそうでしょうね。すでに乱戦にもつれこんでいるのではないでしょうか」
アングリーゴートは突撃から乱戦に持ち込んで数で押す戦法しか取らない。しかしこれがなかなか厳しいのも事実。
鉄の防具で固めているアングリーゴートに懐に入られ、数で押されるだけで壊滅していく冒険者PTは多い。
懐に入られ、連携を崩されると後衛を守る暇もなく押し切られる場合が多々あり、そうなると全滅が見えてくる。たとえアングリーゴートを退けられても後衛が大打撃を受けては次が危険だ。
そうやって捨て身の特攻しかしてこないアングリーゴートは冒険者から非常に嫌われている。
通路は斜めに曲がっているため光源は見えども冒険者や魔物の姿は見えない。だが光源から伸びる影は忙しなく動き回り、音と共に激しい戦闘の様子を伝えている。
別れ道もなく、別の道を行くには引き返すしかない。
戦闘が終わるのを待ってから追い越すのがよさそうだが、光源から伸びる影の様子と怒声と悲鳴から見て苦戦しているのはわかっている。
戦闘は勝利するだろう。だが被害はかなり大きそうだ。
そんな中を追い越していくのは何か嫌な予感がする。
「どうします?」
「戦闘終了後に進みましょう。このような場面を回避していてはこの先同じようなことがあるたびに回避しなければいけなくなってしまいますので」
「まぁそうですね」
レーネさんの言う事ももっともだ。
いちいち他の冒険者を回避していては攻略に時間がかかってしょうがない。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
しばらく待っていればやはり戦闘は冒険者達の勝利で幕を閉じたようだ。
しかしくぐもった呻き声や悪態を吐く声などが微かに聞こえる。
オレ達の光源も見える位置に来ているので、他のPTがいることはわかっているはずだ。
もう戦闘も終わっているし、さっさと追い越してしまおう。
通路を進み光源が見えてくるとボロボロの傷だらけになっている冒険者と床に倒れたまま動かなくなっている――恐らく死体――と、ほぼ無傷で傷だらけと死体の冒険者とは装備がまるで違う総勢15名ほどのPTが見えてくる。
【奴隷を矢面に立てているPTですかね?】
【そのようですね。しかしカトルゼの27階層であの装備では……】
【最初から捨て駒として使っていたんでしょうね】
奴隷を肉壁として迷宮を攻略するのはよくあることだ。
元ランクS冒険者『破滅の牙』のリオネットもそうやって150階層もの迷宮を攻略してみせ、ランクSとなったくらいだ。
お金にさえ糸目をつけなければ効率的ともいえるかもしれない。
しかもカトルゼのクリスタルの特徴としてPT単位で移動する事になるので、1PTに纏める必要がある。
大PTでの攻略は同じ階層でもランダムに飛ばされてしまうので効率がいいとはいえない。それどころか迷宮内で合流することすら出来ずに終わるのがオチだ。
しかし1PTには普通は6人までしか入れない。
普通ではない者――従者や奴隷――は5人で1人分という換算になるので、ソレらの者を使う場合は1PTに最大で26人まで詰め込む事も可能だ。
数は力。これはある程度このウイユベールでも共通している。
しかしオレやレーネさんのような一騎当千な存在も数多く存在することから完全ではない。
だがやはり一般的には十分な意味を成す。
目の前のPTもそういったPTなのだろう。
装備が違っていて無傷の冒険者達が主で、それ以外は奴隷か従者なのだろう。人数的にも15人もいるのだからそうなる。
オレ達が近づいてきた事から無傷の冒険者達は舌打ちしてこちらを睨み付けている。
しかしオレ達が3人、しかもうち2人は子供だと気づいてからは逆にニヤニヤし始めている辺り救い様がない。
【これは絡まれそうですねぇ】
【……そうなるかもしれません。奴隷がほとんど動けない状態ですし、回避しますか?】
【こんなところで捕縛しても意味ないですしね】
【では私が光球投げたら、複数転移をお願いします】
今回の回避は絡まれてこちらに被害が出る前にとっとと場所を移すという方法だ。
レーネさんが光球を投げるのは転移先の場所を確保するため。真っ暗だとターゲット出来ずに失敗してしまうのだ。
だがこれも絡まれたらの話で、絡まれなかったら普通に通って終わりだ。
だがやはりそんな甘い事はなかった。
というかオレの考えはさらに甘かったみたいだ。
せいぜいが何か言ってきて絡んでくる程度だと思っていたのだ。
いきなり襲い掛かってくるとは思ってもみなかった。
ボロボロの傷だらけの奴隷が一斉に通路の壁を利用して半円に包囲し、その後ろから無傷の冒険者達が下卑た笑い声と共に矢と魔法を放ってきた。
一瞬奴隷達の動きと矢と魔法に呆気に取られたが、アルによって全て弾かれ逸らされ、包囲している奴隷達へと流され数人が崩れ落ちる。
悪態と同時に怒声が響き渡り、包囲している奴隷達が押し寄せようと1歩を踏み出した時にはその半分の首が胴体と別れていた。
レーネさんの飛斬だ。
奴隷達もボロボロとはいえ防具を着込んでいる。
しかし鉄の防具で完全武装しているアングリーゴートをバターのようにさくさく斬ってしまうレーネさんの飛斬だ。ソレ以下の防具しか着ていない者が耐えられるわけがない。
首や肩から上――身長や体勢によりまちまちながらも――なくなった体から大量の血液が噴き出し、崩れ落ちる。
その様に一瞬動きが止まった残りの奴隷も同じ末路を辿っていた。
包囲が完全になくなり、残っているのは唖然としたままの無傷の冒険者のみ。
その頃にはオレも状況を理解し終わっていたので、無傷で残っていた冒険者3人の四肢に氷の矢を打ち込み終わっていた。
痛みにのた打ち回る冒険者3人。そのうちの立派そうな長剣を持っていた男が、腰から小さな試験管のような物を動かしづらくなった腕で取り出そうとしていたので、もう1発ずつ全員の手のひらに氷の矢を打ち込み地面に縫い付けておいた。
悲鳴と怨嗟の声を上げ、自分達の状況をまったく理解できていない冒険者に冷たい瞳を向けたレーネさんの腕がぶれる。
うるさいほどに響いていた声が止み、静寂が訪れた。
「なんというか、救い様がないやつらでしたね」
「はい。解体して先に進みましょう」
結局手を汚したのは全部レーネさんだったけれど、レーネさんの表情は別段曇ったりはしない。
騎士団に所属していた過去もあり、尚且つソロで冒険者をしていたレーネさんだ。こういうことは1度や2度ではなかったのかもしれない。
恐らくやつらはレーネさんを狙ったのだろう。レーネさん可愛いし。
あれ? でもレーネさんは人がいることがわかっていたからフードを深く被っていた。
……もしかして狙いはオレ? もしくはオレ達の装備や物資か?
どっちにしても糞野郎だったことには変わりないか。
あぁいう救い様がないやつらを助けてやるほど暇じゃない。
ここが街中だったら別だったかもしれないが、帰還用魔道具を持っていても騎士団の詰め所に突き出すのは面倒だ。
何よりここはカトルゼだ。ラッシュの街とは大分距離がある。突き出すならカトルゼの町の方になるだろう。
捕虜を引き連れて青いクリスタルを探すのはさすがに遠慮したいし、突き出しても貰える物は金貨1枚いくかどうかだろう。今更金貨1枚貰うくらいなら進んで魔物の素材をゲットした方が有用だ。
オレも大分こちらの世界に慣れてきたということだろうな。
まぁ奴隷の人達は気の毒だったと思わないでもないけれどね。
運が悪かったとしか言いようがない。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
人間も解体することが出来る。
解体すると装備品などと一緒にタグが残る。
これらを冒険者ギルドや商業ギルドに持っていくとお金が貰えたりする。
もちろんただ殺した場合は賞罰の記録が残ってしまうので街などに入る際につかまってしまう。
うまくやれば殺人で稼ぐ事も可能かもしれないが、もらえる額は大した額ではなくとてもじゃないが割には合わない。
もちろん今回は相手が先制しているので賞罰はつかない。
今回タグをギルドに届けるのは奴隷の分だけにする事にした。
主犯のゴミ達のタグはその場で破壊した。
タグは主成分が何なのかよくわからなかったが、グレートコーンでひと叩きしたら粉々になった。
奴隷達の分だけでもギルドに届ければ、遺族などが居たらそちらに渡ることになるだろう。
まぁ奴隷のタグなのでまず遺族に渡る事はないという話だけど。一応だ。
これもカトルゼの町の方に届ける必要があるので攻略が終わってからの話になるだろう。
それまでは仕方ないがアルのアイテムボックスの中で保管だ。
装備やアイテムボックスに保管されていたと思われるアイテムが床に散らばっていたが、それらも全て回収してある。
ポーターも数人混ざっていたようだが、生き残りはいないし、アルのアイテムボックスにはまだまだ余裕があるので問題ない。
むしろ着替えなどがあって、それらは明らかに悪臭を放っていたりしたので分けるのが面倒臭かった。
もちろん燃やしてやった。わざわざスキルを変更してから塵も残さず燃やしてやった。
ただっ広い迷宮なので多少燃やした程度では問題にもなりはしない。
悪臭も風を起こして散らしたので大丈夫。
回収作業も終わって要らない物は着替えなどと一緒に燃やしたので、もうほとんど何も残っていない。
あれだけ溢れていた血も解体すればなくなってしまうのだから不思議なものだ。
何もなくなった戦闘跡地を振り返ることなく、オレ達の迷宮攻略は続く。
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