幼女と執事が異世界で

天界

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最終章

162,訓練場の叫び声

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 鬼刃を倒し、迷宮から脱出して数日。
 大事をとって迷宮探索はしばらくの間休みとなった。

 今オレはネーシャとレーネさんと一緒に孤児院がよく見えるバルコニーでお茶をしている。
 もちろん淹れているのはアルだ。

 1晩ぐっすりと寝て気持ちの整理がついたのか、アルに対していつも通りに接する事が出来ていたのはちょっと自分でもびっくりした。
 もちろん数日経過した今でもいつも通りだ。

 ……表面はだけど。


「それでコレが鬼刃の固有素材ですか……。とても綺麗ですね」

「えぇ、綺麗ですけど……。さすがは魔結晶7つ持ちの素材というだけあって凄まじいですよ。
 どう、ネーシャ? 加工できそう?」

「はい! お任せください、お嬢様!
 鍛冶神様から教わった技術で問題なく加工できます!
 鍛冶神の御手もありますので、失敗することなくお嬢様のご要望どおりのものが作れると思います!」

「そっか、よろしくね」

「はい!」


 迷宮探索はお休みだが、別に迷宮の話をするのがだめなわけではない。
 それどころかオレは2つあったメイン武器をどちらも失っている上に防具も全損状態だ。

 まぁメイン武器とはいっても、本当のメイン武器は魔法なんだけど。

 それでもグレートコーンの代わりになる物を見繕っておく必要がある。
 今回手に入れた鬼刃の固有素材――鬼紫刃華を使って作ってもらうつもりなのだが、この鬼紫刃華は7つ持ちの固有素材だからか……かなり凄まじい。

 迷宮で一体どれほどの時間をかけて成長したのか想像が出来ないほどの存在の固有素材だ。当然といえば当然かもしれない。

 鑑定結果はこんな感じ。


        ■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 鬼紫刃華
 迷宮内で長い年月をかけて魔結晶を複数生成し、異常に成長した鬼刃の核。
 硬質な紫の華は花弁が刃のように鋭く、魔力を紫の雷へと変える。
 紫電を操る力を有し、形状を自在に変化させる事ができる。
 一定以上の魔力を込める事により、力の解放を行える。
 第1段階、紫電槍。
 第2段階、紫電纏。
 第3段階、紫幻装身。
 第4段階、無紫刃華。

 付与効果:筋力+44 魔力+55 器用+11 回復力+33
 固有スキル:紫電槍 紫電纏 紫幻装身 無紫刃華

        ■□■□■□■□■□■□■□■□■□


 どうやらあの鬼刃はまだ2回変身を残していたようだ。
 実際には変身ではなく、解放だけどまぁいい。似たようなもんだ。

 筋力、魔力、器用、回復力と4つものステータスに対して付与を与えるのも凄まじいが固有スキルを4つも持っているのは初めてみた。

 紫電槍と紫電纏は見たのでわかるが、紫幻装身と無紫刃華はどういったものなのだろうか。
 こういった固有の名前を持つスキルは大抵強力なスキルなのだから楽しみだ。

 鍛冶神の御手をもつネーシャなら鬼紫刃華を活かしてさらに強力な物を作ってくれるだろう。
 この鬼紫刃華を使ってどんな装備を作ってもらうか悩んで、いつの間にか数日経ってしまったがその分構想は練りに練れた。
 完成が非常に楽しみだ。






      ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






 さらに数日後、キリサキ邸ではいつものお茶タイムが催されていた。
 しかし普段と若干違うこともあった。それはどこかから……いやエイド君や戦闘奴隷達が訓練に勤しんでいる訓練場からなんだけど、とにかくそこから聞こえるいやにテンションの高い叫び声だろうか。

 ……ですわ口調が非常に耳障りだ。


「また……来ているんですね……」

「……えぇ……また来てます」


 オレの向かい側に腰を下ろしているレーネさんが困ったように呟く。オレもこめかみを押さえて頭の頭痛が痛い。

 ですわ口調のお人――アリアローゼ・シャル・ウィシュラウことドリルさんは案の定、エステリア姫にオレの情報を聞き出したらしい。
 そして屋敷へと突入してきたのが昨日の事。

 相変わらずの唯我独尊っぷりで屋敷の中を自分の家のように堂々と歩いてきたドリルさん。
 満面の笑みで遊びに来ましたわ! と言いながらオレの部屋に侵入してきたので、そんなに遊んで欲しいならうちの戦闘奴隷から1本取れたら遊んであげます、と言ってみた。
 もちろん勇者の装備有りではいくらうちの戦闘奴隷の皆さんが強くても負けるので当然なしだ。

 しかし勇者の装備なしだとドリルさんはただ器用が高いだけ。
 それでもその高い器用を活かしてかなり善戦したみたいだけど結局戦闘奴隷のTOPから10人くらいまでに全敗していた。最後には当て身をモロにもらって気絶したところを馬車に突っ込んで帰した。


 ちなみにエイド君には勝ったみたい。
 エイド君は安定して弱いなぁ……。


 そして昨日に引き続き今日もドリルさんは戦闘奴隷達から1本を取るために頑張っているというわけだ。うるさいけど。


「しかしほんとうるさいですね」


 そんなに叫ぶ必要があるのかと思うくらいに気合の入った声が聞こえてくる。
 訓練場からオレの部屋のテラスまで結構な距離がある。しかしそれでもばっちり聞こえるほどなのだ。

 ……近所迷惑になってるよね、コレ。


「むーん、仕方ない。ちょっとうるさいのを注意してきますか」

「はい」


 しかしオレ達が訓練場に到着する前にドリルさんの近所迷惑な叫び声は途絶えていた。どうやらまた気絶したみたいだ。
 ちょうどいいのでそのまま馬車に突っ込んで帰してしまおう。






      ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






「あ、ワタリちゃん。ちょうどよかった。
 またウィシュラウさんが気絶しちゃったんだけどどうしたらいい?」

「馬車を回してもらってるのでそのまま昨日みたいに乗せちゃってください」

「りょうかーい」


 訓練場に着くとさっそくエイド君が聞いてきたので来るまでに手配しておいた馬車に突っ込んでもらっておく。
 馬車には付き人の1人のアンさんがいるので突っ込んでおけばあとは勝手に処理してくれるだろう。昨日もそうだったし。


「いやぁウィシュラウさんに参ったよ。技巧派なのはいいけど気合入りすぎだよねぇ」

「そのことで来たんですよ。次来たらうるさくするの禁止にしてください。
 うるさくしたら今度は屋敷に入れませんって言っておけばたぶん大丈夫です」

「あはは。孤児院の子達も何事かと何人か見に来たほどだからねぇ。
 ちゃんと伝えておくよ」

「それで今日は1本取られた人はいました?」

「えーと……ボクだけ」

「なら大丈夫ですね。エイド君も1本取られないように頑張って強くなってくださいね」

「い、いやぁ……なかなかうまいんだよぉ」

「はいはい、言い訳は聞きませんよ。
 ほら、行って来なさい」


 戻ってきたエイド君を訓練場に送り出してしばしボコボコにされている彼を眺める。
 あんまり成長してないように見えるけど、多少はマシになっているのかな? レーネさんが何度か頷いている場面があった。

 エイド君がボコボコになっているいつもの訓練風景を眺めながらそろそろ迷宮探索を再開したいなぁと思う。
 なくなってしまった装備に関しては明日完成予定だ。
 ネーシャ達が今回も張り切って作ってくれている。

 その装備を受け取って慣らしをしたら再開の予定。
 ただ転移虫などの対策は常に3人共接触しているくらいしかないというのが限界だった。
 常に接触しているなんて無理なのでなかなか難しい。せいぜい紐でも結んでおくくらいだろうか。

 あとは非現実的だが帰還用魔道具リリンの羽根を複数用意する、とか。
 ドリルさんがエステリア姫から貰っているみたいなので頼めばくれるかもしれないがあまり接触したくないのが本音だ。

 対策を取る事は大事だが、今回オレが見舞われたトラブルはかなり低確率な代物だ。
 また同じ事が起こるとはとても思えない。

 ……まぁまたドリルさんに会ったらありうるかもしれないが。
 その時はまた特殊進化個体モンスターの固有素材をゲットできるかもしれないけどね。

 そういう意味ではドリルさんと行動するのはありかもしれない。
 特殊進化個体モンスターホイホイだね、ドリルさん。


 さて、まず迷宮探索再開の1歩は明日の装備受け取りからだ。

 ドリルさんが食らったのと同じと思われる当て身を受けて派手に吹っ飛んで気絶したエイド君に魔法で水をぶっ掛けて起こしてあげながらそんな事を思った。



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