幼女と執事が異世界で

天界

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最終章

163,狐槌舞姫の首飾り

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 ドリルさんが遊びに来るようになって数日。
 あれからドリルさんの迷惑な奇声は聞こえなくなった。
 さすがにオレからの伝言を受け取ったドリルさんも考えたみたいだ。でも奇声を発するのは気合を入れる関係上止められないみたいで、ギルドでも使われていた防音の魔道具を持参してやってきている。
 ちなみにドリルさんはなんと戦闘奴隷さん達TOP10のうち下から3人に1本を取る事に成功してしまっている。もちろん彼らも手加減はしていないのだが、どうやらドリルさんは気絶して帰った後に迷宮などにいってLv上げなどをして頑張っているらしい。

 何がそこまで彼女を突き動かすのか……。
 ……いやアルか。

 ならば仕方ない。戦闘奴隷さん達を降した後はオレが相手をするとしよう。そのときは木っ端微塵に叩き潰してやろう。

 ……筋力特化構成に慣れておかないとな……。

 ドリルさんを叩き潰すためにも武器がいる。筋力特化構成でも壊れないオレだけの武器が。

 ネーシャに作ってもらっている装備も今日完成するのでその出来次第ではすぐにでも叩き潰せるだろう。
 まぁまだ戦闘奴隷さん達が残っているから当分先だろうけど、準備をしておくのは悪い事ではない。






      ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






「お待ちしてました、お嬢様!」

「やっほーネーシャ。完成したって?」

「はい! こちらです!」


 ネーシャから連絡が入って鬼紫刃華を使った装備が完成したというので受け取りに来たのだが、ネーシャを始めとしてランカスター一家全員が工房に揃っていてお出迎えされてしまった。

 みんな良い笑顔でやりきった感がすごい。
 ここ数日徹夜で作業していたみたいで目の下の隈が大変なことになっているが晴れ晴れとした笑顔は何を言っても無駄だろう。

 アイギスの盾のときもそうだったが、どうにもこの職人どもはいい素材を与えると食べるのも寝るのも忘れるくらいに熱中してしまう。まったくもって職人様だぜぇ。

 ネーシャがその小さいが職人らしい豆のたくさん潰れたあとが残る手に乗せて渡してくれたのは緻密な装飾の入ったロケットペンダントだった。

 鬼紫刃華はオレの両手を合わせたくらいの大きさがあったが、このロケットはとても小さい。
 素材は一部しか使わなかったのかな?


「大きさ的に素材を少ししか使わなかったと思っているな?」

「あ、はい。他の装備も作ったんですか?」

「いや、受け取った素材の9割はコレに使っている」

「ほぉ……」


 溶かしたら小さくなったのか圧縮したのか、とにかく鬼紫刃華ほとんど全てをこのロケットに使用しているらしい。

 チャームはハート型になっていて表面には大きなハンマーを担いだ狐のマーク。
 ネーシャ印のいつものマークだ。


「お嬢様、そのチャームを開けて見てください」

「うん。……おぉ……すご……」


 ハート型のチャームを言われるままに開けてみると、そこには表面に彫られている彫刻よりもずっと緻密で精緻な彫り物が施されていた。

 中には子狐とちょうどオレの髪の長さと同じくらいの女の子が仲良さそうに戯れている彫刻が彫り込まれている。
 その緻密さはこのチャームの小ささを考えると驚くべきものだ。
 そして不思議な事に角度を変えると彫りこまれた彫刻が姿を変える。
 子狐と女の子の彫刻は4種類あり、その全てで1人と1匹は幸せそうだ。自然と頬が緩んでしまうくらいに。


「お嬢様の事を考えながら頑張りました!」

「ネーシャ、すごいよ! さすがだね!」

「えへへ……」


 これほどの震えるほどに緻密で不思議な彫り物を彫れるようになっているとはさすがはネーシャだ。鍛冶神の加護や御手だけでは決して無い。ネーシャの頑張りがあってこそだ。

 しかしこのロケットの真骨頂は別にある。


「でもでもちゃんとお嬢様の考えたとおりになるようにも作ってありますよ!」

「どれどれ」


 ネーシャにはオレの構想を元にコレを作ってもらっている。
 これほど緻密で精緻な彫り物をしてくれるとは思っていなかったけどね。


「あ、待ってください。こちらもどうぞ」

「うん? あぁそっか」


 ロケットの機能を発動させる前にネーシャが1本の棒を渡してきた。
 棒といってもこれは必需品。
 こちらの棒にも精緻な彫り物が施されていてただの棒ではないことが一目で分かる。残り1割の素材はこちらに使われているのだろう。

 準備は整ったのでさっそく機能を発動させるためにロケットに魔力を流し込む。
 するとロケットから溢れるように紫電が発せられ、オレの体を伝って棒に集中し始める。
 紫電は流し込んだ魔力の主であるオレに対して決して害は与えない。だから体を紫電が伝ってもまったく問題ない。
 もちろん服も燃えたりしない。燃えたら大変なことになるけどね……。

 棒に集まった紫電は徐々に形を整えていく。
 現れたその形はオレの身長を超えるほどの巨大な大槌。
 棒はただの棒ではなく、この『紫電の大槌の』なのだ。


「うん……見事だ」


 完成した紫電の大槌を眺め、その威容と溢れんばかりの力強さに感嘆の息が漏れる。
 しかし紫電の大槌はこの状態では重さが柄の部分しかない。
 紫電で作られた鈍器なので威力は凄まじいものであることは疑いようがないが、やはり鈍器といえばその重量による圧殺。


「えっと、ここじゃ試すのはまずいかな?」

「大丈夫だ。こっちで試してくれ」


 オレのやりたいことがしっかりと伝わっているゴーシュさんがまったく問題ないと工房の一角に設けられた石畳を指し示す。
 この間来た時にはなかったものだ。たぶんオレがここで試せるように用意してくれたんだろう。

 石畳に移動して紫電の大槌の機能を解放する。
 その機能とは埋め込まれた魔結晶の力の解放だ。

 解放した途端石畳が軋みを上げる。


「おぉ……」


 ずっしりとした重量がオレの手に圧し掛かってきて、片手では支えきれず両手でしっかりと支えなければいけないほどだ。

 ロケットではなく、紫電の大槌の柄の方のスロットに埋め込まれている魔結晶の能力は重量増加。
 あまり人気のない魔結晶ではあるがオレにとっては逆だ。

 柄に空いているスロットはなんと4つ。
 その全てに重量増加の魔結晶が埋め込まれているのだ。
 魔結晶4つ分の重量増加は相当な物なようでこのために用意してもらった石畳にはすでに大きなヒビが入っている。これはすごいな。


「さすがに4つ分の重量増加を一気に加えるとすごいな……」

「やりすぎだと思ってたけどそれを実際にもてるんだね……ワタリちゃんは……」

「さすがだねぇ」

「お嬢様ですから! えへへ」


 ランカスター一家の呆れた声に胸を張って答えるネーシャは実にご機嫌だ。
 尻尾がすごい勢いで振られている。

 まぁぶっちゃけグレートコーンよりもずっと重い。
 重量増加の解放は流し込む魔力量によって変わるので少し練習する必要があるだろう。
 でもこれなら筋力特化構成でも柄さえ無事なら使える。
 その柄も紫電を纏う事による防御力向上と再生能力があるのである程度形状が残っていればなんとかなるらしい。

 さすがに消滅するような状況ではどうにもならないが、その辺は慣れだろう。
 鬼刃を倒した時は初めてやったし、器用が素の状態だったからコントロールがまったく出来ていなかった。
 もっと器用を上げて、筋力とのバランスを取れればきっと扱えるようになる。

 そうなれば……。






      ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






 紫電の大槌の柄とロケットペンダント――狐槌舞姫の首飾りは2つで1つ。
 狐槌舞姫の首飾りを首から下げ、紫電の大槌の柄はベルトにつけてみた。
 これで武器は完成だ。あとで予備用の鈍器をいくつか見繕っておけば問題あるまい。

 さてあとは防具だけど……ランカスター一家もネーシャも実に眠そうだ。というかユユさんはすでに夢の世界へと旅立っている。
 作ってもらう予定だけどそれはまず休息を取ってからの話だろう。

 ニコニコしながらもフラフラしているネーシャを引き取って屋敷へと戻った。

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