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最終章
166,終わりの始まり
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レーネさんの兄であるグレーさんはランクSで実力も本物だ。
通信機から聞こえてきた声――エストリア姫から転生者疑惑をかけられるくらい強い。
転生者は彼女曰く、ユニークスキルという特殊スキルを1つもってこの世界――ウイユベールにやってくるらしい。
そのユニークスキルはユニークというだけあってどれも貴重で強力。さらには転生者は前世の記憶を保持しているのでウイユベールにない技術の知識を有していたりする時もある。もちろん前世の人生次第となるが。
そういったものは世界が変われば非常に有用なモノになる。具体的に言えば富と名声になりやすい。
しかし富も名声もどちらも痕跡が残り易いものだ。
そういった痕跡を辿る事によりエストリア姫は転生者を見つけ出し、仲間に加えている。
エストリア姫はこの国――ランドールのお姫様だ。
一般的なスキルと比べても強すぎるユニークスキルを保持する転生者を野放しにしておくのは危険と考えている。
最低でも仲間にならずともその人となりや動向などは把握したいと言っていた。
エストリア姫はグレーさんを探していたようだし、レーネさん曰く、死にそうなグレーさんの近くにいても不思議ではない。
むしろよくやったと言いたい。
なぜならエストリア姫はドリルさんに帰還用の魔道具を貸し与えている存在だ。
アレほど有用な魔道具を貸し与えるにも予備や自分用の魔道具くらいは保持している可能性が高い。
いくらドリルさんが勇者に選ばれているとはいえ、だ。それはソレ。これはコレということ。
「エリア姫! ワタリです! グレーさんの状態は!?」
「わ、わたりん!? そうか、レーネの魔道具に」
「そんな事より状態は!」
「今、妾の治癒師に治療させているところじゃ……。
じゃが……」
通信機越しのエリア姫の声は歯を食いしばって何かに耐えているような悲痛な声だった。
なんとなくだがエリア姫とグレーさんの間にある色恋の噂はほんの少しだけ真実な気がする。
でも今はそれは関係ない話だ。
「エリア姫! ラッシュの街にグレーさんを連れて飛べますか!? 飛べますよね!?
どこに飛べますか!?」
「な、なんじゃ? 確かに飛べるが……いやそうか、わたりんは治癒師として凄腕じゃったか!
いやじゃが……この怪我では……」
あっちがどこにいるかは知らないがラッシュの街は大きな街だ。
大きなオークションが何度も開かれる場所でもあるし、彼女ならアンカーを設置していてもおかしくない。
というかオレという存在の監視やそれに類する何かのためにアンカーを設置している可能性が高い。
そしてオレの考えは当たっていた。
これならなんとかなる。
死んでさえいなければ、どうとでも!
「場所は!?」
「ぼ、冒険者ギルドじゃ」
「生きてさえいればなんとか出来ます! とにかく死なせないで移動!」
「わ、わかったのじゃ!」
転移系の魔道具は一瞬で移動が出来る。
あとはオレ達が冒険者ギルドに向かうだけだ。
「ワタリさん!」
「行きますよ、レーネさん! グレーさんを助けに!」
「はい!」
目に大粒の涙を溜めていたレーネさんだけど、もうその顔に不安な様子はない。それどころか希望に満ちた顔をしているくらいだ。
だって彼女はオレの力を知っている。
鬼刃戦の話もしてあるのだ。
知っているのだ。
死んでさえいなければどうとでも出来ることを!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
屋敷にすぐさま帰還し、扉を蹴破る勢いで外に一足飛びで飛び出すとすぐに王族の不文律を発動。冒険者ギルド方面に向かって複数転移を開始した。
屋根の上を転移で高速移動し、馬車で普通に移動しても15分~20分はかかる距離を1分かからず移動しきることができた。
「エリア姫!」
「わたりん、こっちじゃ!」
冒険者ギルドのスイングドアを開けるのすらもどかしく、勢いそのままに突撃する。
ギルド内にはそこそこ人が居て、皆困惑している。
それもそうだ。ランクSが大怪我をしてロビーの中央で治癒師の治療を受けているのだから。しかも瀕死で。
まずひと目でわかったことは思っていた以上に危ないということ。
右腕が肩口からない。左足が膝からない。右足首より下がない。左頬がごっそりとなくなって口の中が見えている。
すでにロビーの床は血溜まりが出来ているし、グレーさんのHPが高いおかげか治癒師が頑張っているおかげか、またはその両方なのか。とにかく瀕死という言葉が適した有様だ。
一瞬でそこまで判断するとドアからロビーの中央よりも奥寄りのグレーさんの元へ転移した。ほんの少しの距離でも今は短縮したい。
「わたりん!? MPを無駄にす!?」
普通は転移をしたらMPを消費する。
魔道具なんかで転移する場合は消費しないが、転移系の魔道具は高価だしスキルで存在するのだから普通はMPを消費してスキルの方の転移を使ったと思うだろう。
そしてMPは魔法の生命線だ。治癒師として腕があってもMPがなければ意味が無い。
だからエリア姫の言葉は正論。
でもオレには関係ない。
冒険者ギルドのロビーというそこそこ人がいる場所ではあまりやりたくなかったが、グレーさんを今から移動している余裕は正直ないだろう。
それにこの世界に来たばかりなら絶対やらなかった事でも今のオレなら大した問題にもならない。
すでにレーネさんやらエリア姫やらグレーさんやらと知り合いになっている時点で目立たないという事は不可能だ。もう割り切っている。
鬼刃戦後のオレの怪我を治した時のような膨大なMPが全てグレーさんの怪我を治すという、奇跡に変わっていく。
エリア姫だけじゃなく、オレの話を聞いて知っているレーネさんですら目を見開いてその光景を見つめていた。
まぁ聞いただけの話と、実際に見るのとでは大きく違うよな。それにこの光景はものすごいインパクトがあるし。
骨が飛び出し、神経や筋肉が巻き付いていく。
周りにいる全ての人が息をするのも忘れるほど非現実的な光景が展開され、あっという間にこのままでは死ぬしかなかったグレーさんの怪我はその跡すら微塵も残さず消え去った。
「ふぅ」
「兄様!」
「……な、なんじゃ今のは……」
やりきったオレの声に停止していたレーネさんがグレーさんに抱きついて嬉し涙を流している。
まだグレーさんの意識は戻らないようだが、少し寝てれば起きるだろう。
それよりもエリア姫だな。
「エリア姫、場所を変えましょうか」
「あ、あぁ……わかったのじゃ」
「じゃあギルドマスター、あとの事はよろしく」
「……まぁいいだろう」
死ぬしかない大怪我を負っていた人間がほぼ一瞬で完治するという、この世界ではありえない光景に冒険者ギルド内がざわつき始めている。
最初から居たがエリア姫とグレーさんの大怪我の手前発言を控えていたのだろう、ギルドマスターに後のことは任せてさっさと退散することにした。
レーネさんとPTを組んでいるオレにPT勧誘はほぼない。
たまにあっても全て断っている。だがアレを見て恐らく、というか絶対また勧誘が増えるだろう。
死んでさえいなければ回復できるような魔法の使い手だ。逃す手はない。
しかも普通は回復の痛みでショック死するような状況をそうさせなかった。目ざとい奴ならすぐに気づく。膨大なMPを使って痛みを消していたということを。
回復魔法に伴う痛みがないのなら治療の幅は凄まじく広がり、普段は使えない戦略も使えてしまう。
これから増えるだろう勧誘、教会などからの横槍。
その辺の事をギルドマスターに後処理しておいてね、と含ませておいたのでなんとでもするだろう。
冒険者ギルドはオレを利用した地位確立でかなりの力をつけている。
具体的には屋敷に孤児院なんかを作った時の反対勢力の排除や、顎の売却や戦闘奴隷の貸し出しなんかだ。
しかもオレはこのランドール王国の姫とも知り合いでランクSのグレーさんとも知り合い。
悪いようにはできないだろう。
……まぁ丸投げとも言うけど。
さて、エリア姫になんて説明しようかな……。
通信機から聞こえてきた声――エストリア姫から転生者疑惑をかけられるくらい強い。
転生者は彼女曰く、ユニークスキルという特殊スキルを1つもってこの世界――ウイユベールにやってくるらしい。
そのユニークスキルはユニークというだけあってどれも貴重で強力。さらには転生者は前世の記憶を保持しているのでウイユベールにない技術の知識を有していたりする時もある。もちろん前世の人生次第となるが。
そういったものは世界が変われば非常に有用なモノになる。具体的に言えば富と名声になりやすい。
しかし富も名声もどちらも痕跡が残り易いものだ。
そういった痕跡を辿る事によりエストリア姫は転生者を見つけ出し、仲間に加えている。
エストリア姫はこの国――ランドールのお姫様だ。
一般的なスキルと比べても強すぎるユニークスキルを保持する転生者を野放しにしておくのは危険と考えている。
最低でも仲間にならずともその人となりや動向などは把握したいと言っていた。
エストリア姫はグレーさんを探していたようだし、レーネさん曰く、死にそうなグレーさんの近くにいても不思議ではない。
むしろよくやったと言いたい。
なぜならエストリア姫はドリルさんに帰還用の魔道具を貸し与えている存在だ。
アレほど有用な魔道具を貸し与えるにも予備や自分用の魔道具くらいは保持している可能性が高い。
いくらドリルさんが勇者に選ばれているとはいえ、だ。それはソレ。これはコレということ。
「エリア姫! ワタリです! グレーさんの状態は!?」
「わ、わたりん!? そうか、レーネの魔道具に」
「そんな事より状態は!」
「今、妾の治癒師に治療させているところじゃ……。
じゃが……」
通信機越しのエリア姫の声は歯を食いしばって何かに耐えているような悲痛な声だった。
なんとなくだがエリア姫とグレーさんの間にある色恋の噂はほんの少しだけ真実な気がする。
でも今はそれは関係ない話だ。
「エリア姫! ラッシュの街にグレーさんを連れて飛べますか!? 飛べますよね!?
どこに飛べますか!?」
「な、なんじゃ? 確かに飛べるが……いやそうか、わたりんは治癒師として凄腕じゃったか!
いやじゃが……この怪我では……」
あっちがどこにいるかは知らないがラッシュの街は大きな街だ。
大きなオークションが何度も開かれる場所でもあるし、彼女ならアンカーを設置していてもおかしくない。
というかオレという存在の監視やそれに類する何かのためにアンカーを設置している可能性が高い。
そしてオレの考えは当たっていた。
これならなんとかなる。
死んでさえいなければ、どうとでも!
「場所は!?」
「ぼ、冒険者ギルドじゃ」
「生きてさえいればなんとか出来ます! とにかく死なせないで移動!」
「わ、わかったのじゃ!」
転移系の魔道具は一瞬で移動が出来る。
あとはオレ達が冒険者ギルドに向かうだけだ。
「ワタリさん!」
「行きますよ、レーネさん! グレーさんを助けに!」
「はい!」
目に大粒の涙を溜めていたレーネさんだけど、もうその顔に不安な様子はない。それどころか希望に満ちた顔をしているくらいだ。
だって彼女はオレの力を知っている。
鬼刃戦の話もしてあるのだ。
知っているのだ。
死んでさえいなければどうとでも出来ることを!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
屋敷にすぐさま帰還し、扉を蹴破る勢いで外に一足飛びで飛び出すとすぐに王族の不文律を発動。冒険者ギルド方面に向かって複数転移を開始した。
屋根の上を転移で高速移動し、馬車で普通に移動しても15分~20分はかかる距離を1分かからず移動しきることができた。
「エリア姫!」
「わたりん、こっちじゃ!」
冒険者ギルドのスイングドアを開けるのすらもどかしく、勢いそのままに突撃する。
ギルド内にはそこそこ人が居て、皆困惑している。
それもそうだ。ランクSが大怪我をしてロビーの中央で治癒師の治療を受けているのだから。しかも瀕死で。
まずひと目でわかったことは思っていた以上に危ないということ。
右腕が肩口からない。左足が膝からない。右足首より下がない。左頬がごっそりとなくなって口の中が見えている。
すでにロビーの床は血溜まりが出来ているし、グレーさんのHPが高いおかげか治癒師が頑張っているおかげか、またはその両方なのか。とにかく瀕死という言葉が適した有様だ。
一瞬でそこまで判断するとドアからロビーの中央よりも奥寄りのグレーさんの元へ転移した。ほんの少しの距離でも今は短縮したい。
「わたりん!? MPを無駄にす!?」
普通は転移をしたらMPを消費する。
魔道具なんかで転移する場合は消費しないが、転移系の魔道具は高価だしスキルで存在するのだから普通はMPを消費してスキルの方の転移を使ったと思うだろう。
そしてMPは魔法の生命線だ。治癒師として腕があってもMPがなければ意味が無い。
だからエリア姫の言葉は正論。
でもオレには関係ない。
冒険者ギルドのロビーというそこそこ人がいる場所ではあまりやりたくなかったが、グレーさんを今から移動している余裕は正直ないだろう。
それにこの世界に来たばかりなら絶対やらなかった事でも今のオレなら大した問題にもならない。
すでにレーネさんやらエリア姫やらグレーさんやらと知り合いになっている時点で目立たないという事は不可能だ。もう割り切っている。
鬼刃戦後のオレの怪我を治した時のような膨大なMPが全てグレーさんの怪我を治すという、奇跡に変わっていく。
エリア姫だけじゃなく、オレの話を聞いて知っているレーネさんですら目を見開いてその光景を見つめていた。
まぁ聞いただけの話と、実際に見るのとでは大きく違うよな。それにこの光景はものすごいインパクトがあるし。
骨が飛び出し、神経や筋肉が巻き付いていく。
周りにいる全ての人が息をするのも忘れるほど非現実的な光景が展開され、あっという間にこのままでは死ぬしかなかったグレーさんの怪我はその跡すら微塵も残さず消え去った。
「ふぅ」
「兄様!」
「……な、なんじゃ今のは……」
やりきったオレの声に停止していたレーネさんがグレーさんに抱きついて嬉し涙を流している。
まだグレーさんの意識は戻らないようだが、少し寝てれば起きるだろう。
それよりもエリア姫だな。
「エリア姫、場所を変えましょうか」
「あ、あぁ……わかったのじゃ」
「じゃあギルドマスター、あとの事はよろしく」
「……まぁいいだろう」
死ぬしかない大怪我を負っていた人間がほぼ一瞬で完治するという、この世界ではありえない光景に冒険者ギルド内がざわつき始めている。
最初から居たがエリア姫とグレーさんの大怪我の手前発言を控えていたのだろう、ギルドマスターに後のことは任せてさっさと退散することにした。
レーネさんとPTを組んでいるオレにPT勧誘はほぼない。
たまにあっても全て断っている。だがアレを見て恐らく、というか絶対また勧誘が増えるだろう。
死んでさえいなければ回復できるような魔法の使い手だ。逃す手はない。
しかも普通は回復の痛みでショック死するような状況をそうさせなかった。目ざとい奴ならすぐに気づく。膨大なMPを使って痛みを消していたということを。
回復魔法に伴う痛みがないのなら治療の幅は凄まじく広がり、普段は使えない戦略も使えてしまう。
これから増えるだろう勧誘、教会などからの横槍。
その辺の事をギルドマスターに後処理しておいてね、と含ませておいたのでなんとでもするだろう。
冒険者ギルドはオレを利用した地位確立でかなりの力をつけている。
具体的には屋敷に孤児院なんかを作った時の反対勢力の排除や、顎の売却や戦闘奴隷の貸し出しなんかだ。
しかもオレはこのランドール王国の姫とも知り合いでランクSのグレーさんとも知り合い。
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