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最終章
177,集結
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紫の球体の中で無慈悲な華が咲き誇る。
咲き誇る華は刹那の間でその生涯を終えるが、その際に作り出す破壊の力は致命的と言って差し支えないレベルである。
無幻装身で作り上げているあの紫の球体がなければその威力を遺憾なく周囲に発揮し、舐めるように空間全域を焼き尽くすだろう。
これが迷宮の最下層と思われる強固で広大な一室でさえ、そう確信させるのだ。地上で花びらの盾なしで使用したらどれだけ被害が出るかわかったものではない。
そんな脅威的な威力を直径1メートルにも満たない領域で炸裂させ続けているのだから、筋力による火力特化構成ですら無傷でいられた邪神結晶にダメージを与えていることも不思議ではない。
……むしろよくもまぁ耐えているものだ。
5回目の無紫刃華で邪神結晶の形状が球形に近くなってきたように感じる。
だがその変化は無紫刃華を繰り返すごとに小さくなっていっているのは明らかだ。
どうやら破壊に至るまでにはまだまだかかるらしい。スタミナ回復ポーションの残量がちょっと心配だ。
1回の無紫刃華でスタミナ回復ポーションを複数個使用しなければいけない。
王族の不文律はスタミナが半分以上回復していなければ使えないし、その半分というのは王族の不文律を使用した瞬間に消費される。
さらに残ったスタミナを消費し、危険領域になると自動で解除されてしまう。
王族の不文律を長く使うにはスタミナが完全回復している状態がベストということになる。
そのためにはスタミナを回復させることができるこの不思議なポーションは必須である。
しかしスタミナ回復ポーションは回復量がそれほど多くはない。
作成者の腕にもよるそうで、ラッシュの街で生産されているスタミナ回復ポーションで実用範囲の回復量を超えている物は週に数個という程度でしか生産することができないのが現状だ。
必然的に他所からも取り寄せることになるが、輸送にかかる手間の関係上まだあまり集まっていない。
とはいってもオレの必殺技というに相応しい王族の不文律のためなのでかなり無理をしてでも集めている。
アイテムボックスにもかなりの数が備蓄されているが、すでにかなりの量を消費させられている。
はっきりいってこのままでは倒しきれないかもしれない。
王族の不文律を使わずに無紫刃華を使ったとしても現状の100分の1のダメージ程度にしかならないだろう。
王族の不文律を使っている現状でも時間がかかりそうなのにそれではいつになったら破壊できるのかわからなくなる。
アルにも分散して持たせているので呼び寄せて確保しておいた方がいいかもしれない。
ついでに足りないようならエリア姫に姫としての権力を使ってもらって国中から強引に集めてもらうのも手だ。
国中といわずとも王都にアンカーを設置しているエリア姫なら結構な数集められるだろうし。
現状では無紫刃華に焼かれているだけで何もできない邪神結晶が相手だ。
念のために多少距離を取って焼いていたがさらに距離を取ってアンカーを設置することにした。
魔道具無効化のスキルは孤槌舞姫の首飾りが機能していることから問題ない。
当然、アンカーを設置してもすぐにアル達が来るとは思っていない。
はぐれた際の様々な状況を想定して話をしているので帰還用魔道具を連続使用して貯蓄されているMPを無駄に消費することも避けているはずだ。
帰還用魔道具はアンカーで移動先を特定しているので、まず登録しているアンカーを特殊な魔法でリンクさせる必要がある。
このリンクをさせるのにも貯蓄されているMPを消費するし、移動の際にも莫大なMPを消費する。
そのためアンカーが設置されたのを確かめるためにリンクを何度も行うと移動するためのMPがなくなってしまうのだ。
だが遅くても30分以内には来てくれるはずだ。
それまでにスタミナ回復ポーションが尽きたらチマチマとMPを回復させながら使うしかあるまい。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ななななななんじゃこれはー!?」
「ワタリ様!」
「ワタリさん!」
13回目の無紫刃華を炸裂させたところでエリア姫の驚愕の叫びが聞こえた。
エリア姫の叫びとほぼ同時に聞こえたのはアルとレーネさんの声だ。
やっぱり心配させてしまったようで声と共にすぐに駆けつけて2人共オレの前に出て何があってもいいようにいつもの陣形を瞬時に構築する。
ちなみに今いる場所は150階層よりもずっと広い上に最下層の証拠――最下層へ未到達な迷宮ならば必ず最下層に魔石がある――となりうる大きな魔石があったり、頑丈で知られる迷宮の床が裂けていたりめくれあがっていたり……ちょっと遠い壁の一角は崩れて瓦礫の山となっていたりする。
ついでとばかりに目の前では想像も付かないほどの威力だと瞬時に判断させられるだけのエネルギーの塊が美しい姿を晒しているのだ。エリア姫の叫びも理解できる。
周りの状況よりもオレを優先させる2人の方がおかしいと思うのが普通だ。
……まぁオレの力を知っている2人だからこそ、というのもあるけど。
ところで無紫刃華は紫電を究極的な破壊のエネルギーと化して攻撃する固有スキルではあるが、雷のように発生時に轟音を発したりはしない。
無幻装身の花びらの盾が音を吸収しているわけではなく、元々音が発生しないのだ。実に静かなスキルである。その代わり多少眩しいけれど。
だから炸裂中でも普通に会話は可能である。まぁ轟音が鳴り響いていても念話などの手段があるので大した意味はないが。
「アル、スタミナ回復ポーション全部出して。そろそろなくなる」
「畏まりました」
エリア姫の顎が外れそうなほどに大きく口を開いた絶叫は無視して、アルからスタミナ回復ポーションを受け取りアイテムボックスに突っ込んでいく。
そのまま使用するには被るか飲むかしかないのでアイテムボックスから使った方が色々な意味で楽なのだ。
ついでに完璧に使いきれるという点でもアイテムボックスから使用した方がいい。
被るにも零れたり、飲むにも数滴残ったりするとその分回復量が減るのだ。
ほんの1パーセント未満程度の誤差でしかないが、今はその誤差でも重要だ。
さらに無紫刃華を炸裂させると全てのスタミナ回復ポーションを渡し終わったアルがアイギスの盾を構え直す。
今のところ反撃されたことはないがアルとレーネさんがいるだけで安心感が違う。
アルが持っていた分のスタミナ回復ポーションはそれほどの量ではなかったがないよりはずっとましな量があった。
「わたりん、すごいスキルを使っているようですわね。オークロードは倒してしまったの?」
「えぇ、普通に殴って倒しました。
でもその後に残ったのが問題で、今処理しているところです」
「そうですの。わたくしに何か出来ることは?」
「スタミナ回復ポーションを持っていたら渡して欲しいですね。あとは……反撃は今のところないのですけど、それに備えて欲しいでしょうか」
「了解ですわ」
未だ再起動を果たせずにいるエリア姫は置いておいて、ドリルさんも持っていた数個だけのスタミナ回復ポーションを渡すとアル達と共に反撃に備える。
ちなみに顎を外れんばかりに開けて停止しているエリア姫の側ではライリさんがおろおろしており、グレーさんがなんとかエリア姫を再起動させようと頑張っている。
……平和だなぁ。
でもエリア姫にはやってもらうことがあるんだからそろそろ帰って来て貰わないといけない。
確保したスタミナ回復ポーションをガンガン使って無紫刃華を再度咲かせてから、エリア姫の再起動を頑張っているグレーさんに声をかける。
「グレーさん、スタミナ回復ポーション持ってません?
ついでにエリア姫の権限とかランクSの権限とか使って今すぐかき集めてこれませんか?」
「あ、あぁ……私は数個しか残っていないが使ってくれ。オークロードと戦っている間にかなり使ってしまったからな。
王都に戻れば恐らくかなりの量は集められると思うが多少時間がかかるかもしれん」
「ではエリア姫も連れて王都に戻って集めてください。集まった分からでもいいので持って来てもらえますか?」
「了解した。この場は任せていいんだな?」
「えぇ、みんないますからなんとでもなるでしょう」
お喋りしている間に無紫刃華が終わり、スタミナ回復ポーションを消費して次の準備に入る。
「……ちなみにその信じられないほどの威力のスキルで攻撃しているあの石は何なんだ?」
「邪神結晶っていう石です。寄生して魔王を作るそうです」
「ま、魔王……? ではオークロードがあれほどの進化を遂げたのは……」
「魔王になったからですね」
グレーさんが愕然とした声を絞りだしたが、魔王なんてウイユベールでは絵本の中の話だ。
だが実際に殺されかけ、凄まじい耐久性を見せていたオークロードという存在が現実として存在していた以上これほどの説得力はない。
グレーさんとの話はコレで終わりだと言わんばかりに、無紫刃華が再度咲き誇る。
「……君は……本当に底が知れんな……」
紫の無音の残光に背を向けて呟かれたランクSの言葉は多少の呆れと強大な畏怖がこめられていた様に感じた。
咲き誇る華は刹那の間でその生涯を終えるが、その際に作り出す破壊の力は致命的と言って差し支えないレベルである。
無幻装身で作り上げているあの紫の球体がなければその威力を遺憾なく周囲に発揮し、舐めるように空間全域を焼き尽くすだろう。
これが迷宮の最下層と思われる強固で広大な一室でさえ、そう確信させるのだ。地上で花びらの盾なしで使用したらどれだけ被害が出るかわかったものではない。
そんな脅威的な威力を直径1メートルにも満たない領域で炸裂させ続けているのだから、筋力による火力特化構成ですら無傷でいられた邪神結晶にダメージを与えていることも不思議ではない。
……むしろよくもまぁ耐えているものだ。
5回目の無紫刃華で邪神結晶の形状が球形に近くなってきたように感じる。
だがその変化は無紫刃華を繰り返すごとに小さくなっていっているのは明らかだ。
どうやら破壊に至るまでにはまだまだかかるらしい。スタミナ回復ポーションの残量がちょっと心配だ。
1回の無紫刃華でスタミナ回復ポーションを複数個使用しなければいけない。
王族の不文律はスタミナが半分以上回復していなければ使えないし、その半分というのは王族の不文律を使用した瞬間に消費される。
さらに残ったスタミナを消費し、危険領域になると自動で解除されてしまう。
王族の不文律を長く使うにはスタミナが完全回復している状態がベストということになる。
そのためにはスタミナを回復させることができるこの不思議なポーションは必須である。
しかしスタミナ回復ポーションは回復量がそれほど多くはない。
作成者の腕にもよるそうで、ラッシュの街で生産されているスタミナ回復ポーションで実用範囲の回復量を超えている物は週に数個という程度でしか生産することができないのが現状だ。
必然的に他所からも取り寄せることになるが、輸送にかかる手間の関係上まだあまり集まっていない。
とはいってもオレの必殺技というに相応しい王族の不文律のためなのでかなり無理をしてでも集めている。
アイテムボックスにもかなりの数が備蓄されているが、すでにかなりの量を消費させられている。
はっきりいってこのままでは倒しきれないかもしれない。
王族の不文律を使わずに無紫刃華を使ったとしても現状の100分の1のダメージ程度にしかならないだろう。
王族の不文律を使っている現状でも時間がかかりそうなのにそれではいつになったら破壊できるのかわからなくなる。
アルにも分散して持たせているので呼び寄せて確保しておいた方がいいかもしれない。
ついでに足りないようならエリア姫に姫としての権力を使ってもらって国中から強引に集めてもらうのも手だ。
国中といわずとも王都にアンカーを設置しているエリア姫なら結構な数集められるだろうし。
現状では無紫刃華に焼かれているだけで何もできない邪神結晶が相手だ。
念のために多少距離を取って焼いていたがさらに距離を取ってアンカーを設置することにした。
魔道具無効化のスキルは孤槌舞姫の首飾りが機能していることから問題ない。
当然、アンカーを設置してもすぐにアル達が来るとは思っていない。
はぐれた際の様々な状況を想定して話をしているので帰還用魔道具を連続使用して貯蓄されているMPを無駄に消費することも避けているはずだ。
帰還用魔道具はアンカーで移動先を特定しているので、まず登録しているアンカーを特殊な魔法でリンクさせる必要がある。
このリンクをさせるのにも貯蓄されているMPを消費するし、移動の際にも莫大なMPを消費する。
そのためアンカーが設置されたのを確かめるためにリンクを何度も行うと移動するためのMPがなくなってしまうのだ。
だが遅くても30分以内には来てくれるはずだ。
それまでにスタミナ回復ポーションが尽きたらチマチマとMPを回復させながら使うしかあるまい。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ななななななんじゃこれはー!?」
「ワタリ様!」
「ワタリさん!」
13回目の無紫刃華を炸裂させたところでエリア姫の驚愕の叫びが聞こえた。
エリア姫の叫びとほぼ同時に聞こえたのはアルとレーネさんの声だ。
やっぱり心配させてしまったようで声と共にすぐに駆けつけて2人共オレの前に出て何があってもいいようにいつもの陣形を瞬時に構築する。
ちなみに今いる場所は150階層よりもずっと広い上に最下層の証拠――最下層へ未到達な迷宮ならば必ず最下層に魔石がある――となりうる大きな魔石があったり、頑丈で知られる迷宮の床が裂けていたりめくれあがっていたり……ちょっと遠い壁の一角は崩れて瓦礫の山となっていたりする。
ついでとばかりに目の前では想像も付かないほどの威力だと瞬時に判断させられるだけのエネルギーの塊が美しい姿を晒しているのだ。エリア姫の叫びも理解できる。
周りの状況よりもオレを優先させる2人の方がおかしいと思うのが普通だ。
……まぁオレの力を知っている2人だからこそ、というのもあるけど。
ところで無紫刃華は紫電を究極的な破壊のエネルギーと化して攻撃する固有スキルではあるが、雷のように発生時に轟音を発したりはしない。
無幻装身の花びらの盾が音を吸収しているわけではなく、元々音が発生しないのだ。実に静かなスキルである。その代わり多少眩しいけれど。
だから炸裂中でも普通に会話は可能である。まぁ轟音が鳴り響いていても念話などの手段があるので大した意味はないが。
「アル、スタミナ回復ポーション全部出して。そろそろなくなる」
「畏まりました」
エリア姫の顎が外れそうなほどに大きく口を開いた絶叫は無視して、アルからスタミナ回復ポーションを受け取りアイテムボックスに突っ込んでいく。
そのまま使用するには被るか飲むかしかないのでアイテムボックスから使った方が色々な意味で楽なのだ。
ついでに完璧に使いきれるという点でもアイテムボックスから使用した方がいい。
被るにも零れたり、飲むにも数滴残ったりするとその分回復量が減るのだ。
ほんの1パーセント未満程度の誤差でしかないが、今はその誤差でも重要だ。
さらに無紫刃華を炸裂させると全てのスタミナ回復ポーションを渡し終わったアルがアイギスの盾を構え直す。
今のところ反撃されたことはないがアルとレーネさんがいるだけで安心感が違う。
アルが持っていた分のスタミナ回復ポーションはそれほどの量ではなかったがないよりはずっとましな量があった。
「わたりん、すごいスキルを使っているようですわね。オークロードは倒してしまったの?」
「えぇ、普通に殴って倒しました。
でもその後に残ったのが問題で、今処理しているところです」
「そうですの。わたくしに何か出来ることは?」
「スタミナ回復ポーションを持っていたら渡して欲しいですね。あとは……反撃は今のところないのですけど、それに備えて欲しいでしょうか」
「了解ですわ」
未だ再起動を果たせずにいるエリア姫は置いておいて、ドリルさんも持っていた数個だけのスタミナ回復ポーションを渡すとアル達と共に反撃に備える。
ちなみに顎を外れんばかりに開けて停止しているエリア姫の側ではライリさんがおろおろしており、グレーさんがなんとかエリア姫を再起動させようと頑張っている。
……平和だなぁ。
でもエリア姫にはやってもらうことがあるんだからそろそろ帰って来て貰わないといけない。
確保したスタミナ回復ポーションをガンガン使って無紫刃華を再度咲かせてから、エリア姫の再起動を頑張っているグレーさんに声をかける。
「グレーさん、スタミナ回復ポーション持ってません?
ついでにエリア姫の権限とかランクSの権限とか使って今すぐかき集めてこれませんか?」
「あ、あぁ……私は数個しか残っていないが使ってくれ。オークロードと戦っている間にかなり使ってしまったからな。
王都に戻れば恐らくかなりの量は集められると思うが多少時間がかかるかもしれん」
「ではエリア姫も連れて王都に戻って集めてください。集まった分からでもいいので持って来てもらえますか?」
「了解した。この場は任せていいんだな?」
「えぇ、みんないますからなんとでもなるでしょう」
お喋りしている間に無紫刃華が終わり、スタミナ回復ポーションを消費して次の準備に入る。
「……ちなみにその信じられないほどの威力のスキルで攻撃しているあの石は何なんだ?」
「邪神結晶っていう石です。寄生して魔王を作るそうです」
「ま、魔王……? ではオークロードがあれほどの進化を遂げたのは……」
「魔王になったからですね」
グレーさんが愕然とした声を絞りだしたが、魔王なんてウイユベールでは絵本の中の話だ。
だが実際に殺されかけ、凄まじい耐久性を見せていたオークロードという存在が現実として存在していた以上これほどの説得力はない。
グレーさんとの話はコレで終わりだと言わんばかりに、無紫刃華が再度咲き誇る。
「……君は……本当に底が知れんな……」
紫の無音の残光に背を向けて呟かれたランクSの言葉は多少の呆れと強大な畏怖がこめられていた様に感じた。
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