アピス⁈誰それ。私はラティス。≪≪新帝国建国伝承≫≫

稲之音

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ⅬⅩⅩⅣ 使嗾編 中編(3)

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 第1章。突破


 ユウイのお言葉で、暗黒と白光のふたりの妖精の間に、ほんのつかの間の
和平が締結された・・・ようにみえなくもない。


・・・・・・・・


 そんななか、ラファイアは、ため息をつきながらも、思いをとばす。

『結局、私もユウイさんには、何か弱いんですよね。』

『妖精契約をした時に、アマトさんの全感覚を、私のものとしたせい
でしょうが・・・。』

その間にも、障壁には多くの光の花が咲き、外には土埃つちぼこり陽炎かげろうが。
しかし、風の超上級妖精の音響障壁の中は、静寂せいじゃくそのものである。

「まあ、このくらいの結界の破壊、私一人で充分!」

はなれたところで、ラティスが、声高々に宣言する。、

『黒い森の時と同じような言葉を。ほんと過去の経験から学ばない方ですね。』

『リーエさんも引きつった表情で、固まっていらっしゃるじゃありませんか。』

ラファイアは、いつもと変わらない暗黒の妖精の態度に、
ふたつめのため息をつく。

「ラファイアさん、教都の結界はどうにかなりそうなのかな。」

と、アマトが心配そうな顔で、ラファイアに近寄り、たずねてくる。

『お、アマトさんが聞いてきましたね。なら、答えてあげましょう。』

「この結界は、円筒形に構築されてますね。
今は完全に閉じられた状態になってます。」

「上部と地底部からだと時間がかかりそうです。
ラテイスさんの魔力なら3昼夜ぐらいかかったら
ひょっとしたら、くだくことができるかもしれませんが。」

「側面部は、それに比べればもろいですね。ちょうど結び目があの門のところに
ありますし。私と、ラティスさんと、リーエさんで、何とかなりそうです。」

「ごめん、ラファイアさんお願いするよ。」

アマトは、自分の契約妖精に頭を下げる。

『つかの間の和平の時間は終了しました。さて、さて、ラティスさんをどう
のせるかなんですが。あれ?リーエさん、顔を反らしましたね。
やれやれです。』

さんにんの妖精のいつもの風景が展開されている。

・・・・・・・・

 それから、すったもんだがあったすえ、

「功績を独り占めするのは悪いから、あんた達にも分け前をあげる。
私は、寛大な心を持つ妖精だからね。」

と、なんとかラティスも譲歩した。
やはり、この結界を自分ひとりの魔力で、華麗に破壊したかったらしい。

そこに、ツーリアまで加わってきて、結局、ラティス・ラファイア・リーエ
そして、ツーリアの4人の魔力で、結界を破壊する事に落ち着いた。
その間、4人の魔力で、ルリが構築する多面体立体障壁をあわせて保持させる。

ルリの障壁の強度を確認して、4人の妖精が指定の位置につく。
中央上空にリーエ、右上空にラティス、左上空にラファイア、
底辺のかなめの位置にツーリア。

≪ツーリア、大丈夫なの?。≫

小さな精神波で、エリースが確認する。

≪エーテルを大量に消費すると、新しいエーテルが怒涛どとうのように
 入って来る、特にかなめの位置では。≫

≪だから逆に、一時的に調子は戻るはずよ。≫

エリースに笑顔をみせるツーリア。

≪エリース、3人の妖精さんも、私の命の残り火のはかなさに気付いている。
 だからかなめの位置を、ゆずってくれた・・・・。≫

≪わかったわ、ツーリア。≫

エリースはその場から後ずさりする。その笑顔は泣き顔にもみえる。

「3人とも、いくわよ!」

ツーリアは、小さな魔法円を浮かび上がらせた。

魔法円は、上下左右斜めに分裂していき、接点を残しながら、
中央に5個・双側方に4個・双端方に3個・合わせて19個に増えていく。
それぞれの魔法円に魔法文字が浮かび、外周に二重の円を描き出す。

ラティス・ラファイア・リーエも同じ象形しょうけいを創り出す。
ツーリアは赤金色・ラティスは白銀色・ラファイアは白金色・リーエは緑金色の、
4つの魔法円の表面が輝きだし、相互に干渉し、ひとつの巨大な魔法円に
融合拡大していく。

空間が鳴動する、魔法円の大きさが限界に達し、中央に閃光せんこうきらめいた瞬間、

「は な て !!」

ツーリアが声を上げる。

巨大な魔法円から、光の奔流ほんりゅうはじけた。
それは、大きな純白の光のいかづちと化し、教都ムランの結界に激突する。
 
その激しい光により、可視化した結界の表面が、七色の光を反射し、
妖精からの攻撃を無効化しようと、脈動しらめく。

はじきとばないじゃないの、ラファイア!?」

ラティスが声をあげる。

「へぇ~。内側から、皆さんで支えを加えていらっしゃるようですね。」

「けど、無理筋ですね。・・・3(トレース)、2(ドゥオ)、1(ウーヌス)、
0(ニヒル)!」

太陽が出現したような、激烈な光が爆発!その場のすべてのものを
おおいつくしていく・・・・・・。


・・・・光が収まった時、高くそびえた聖門も城壁も、消え去っていた。
静寂せいじゃくが、アマト達を包む。

「歴史が動いたわね。」

いつの間にかその場に戻っていた、イルムがポツリとつぶやいた。
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