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CⅩⅩⅩⅢ 星々の格式と置換編 前編(5)
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第1章。過去の事実の開示(2)
ミカルの高位者、レリウス大公と両宰相が、話し合いをしている同じ時刻、
新帝国のアマト・エリース・キョウショウ・そしてフレイアも、たき火を囲み
話を重ねていた。
「大公陛下が、
セプティやアマト君に対して、コウニン王国へ暗殺の依頼をしたことを、
アマト君に話すとはね。」
キョウショウは、新帝国の將として、判断を決めかねている。
レリウス大公が、ミカルの頂点に位置する人物と考えれば、
その冷徹までの合理性、自分の命に頓着しない胆力、
9割の賞賛と1割の畏怖を感じている。
逆にこのことで、レリウス大公は、新帝国の器量の大小をも試している。
回答次第では、ミカルと新帝国の間で、隠された中立協定が
結ばれるかもしれないとも、想像はする。
「なんか、助けたのがバカみたい。」
エリースは、たき火に薪を勢いよく投げ入れながら、怒りを言葉にのせている。
魔力を加えてもいないだろうに、炎が激しく立ち上がる。
「エリースの思いは当然だとしても、あのおふたりの妖精さんこそ、
なぜ大人しくしているの?」
フレイアは当然の疑問を、アマトに投げかける。
「それをぼくから聞いて、はじめラティスさんは、ぼくにも感じるような、
怒りの背光を噴き上げていたんですが・・・。
ラファイアさんが、何か精神波でなだめたみたいで・・・。」
「それで?」
フレイアはアマトに結果を話すことを求める。
「急に、『アマト、生きていりゃ、ま、そんなこともあるわよ。』
と明るく言い出して・・・。」
アマトは、わけわからないという思いを、表情に浮べる。
「まさか、新帝国の戦略上、ミカルの大公をどうこうするのは、まずいと。」
と、驚くフレイアに、エリースは、
「あのふたりが、人間世界の都合なんか、考えるわけないでしょう。」
と、即座に強く否定する。
「ラファイアさんが先に動いたと、そして、コウニン王国が絡んだとすれば、
もろ理由は、ルリだね。」
キョウショウが、遠い目をしながら、意見を述べる。
「つまり、・・・」
アマトは、自分の辿り着いた結論に、目を背けたくなり、
周りに助けを求めるが・・・。
「理由は、最高においしい香茶の淹れ手の、今後ともの確保ね。」
アマトの想いを、フレイアがバッサリ切り捨てる。
「じゃあ、義兄ィの感情より、あのふたりは、美味しい香茶をえらんだわけ!」
エリースの顔色が、真っ赤に染まる。ほっとけば、すぐにでも、
例のふたりのところに、飛んでいこうかとの勢いである。
「まあ、起こらなかった過去と起こり得ない未来に怒って、
魔力を爆発させても、それってなんになるのとの想いが、
ラファイアさんの考えなのかもね。」
直接否定して、エリースの心に火を注いではいけないと、年長者としての余裕で、
キョウショウは湾曲的に話を逸らす。
「ラティスさんも、アマト君に手を出させはしないとの揺るぎない自信が
あるから、ラファイアさんに同意したんでしょうしね。」
キョウショウの意図を見抜いて、フレイアもその流れに協力する。
「今騒いだら、ルリさんの居場所が無くなるし。」
と、アマトまで流れにのったことで、エリースの怒りは収まってゆく。
「だいたい義兄ィは、あのふたりの勝手気ままを、ほんといつまで
許すつもりなのよ。まったくあまいんだから。」
場が収まってきたのを感じて、キョウショウは話を締めにはいる。
「皇都に帰還して、応対はイルムに任せるしかないわね。
イルムだったらミカルに、最も高く売りつけるだろうからね。」
・・・・アマトは思う。
『ひとの世には、表と裏があるんだな。レリウス大公は、生きづらくなったら、
ミカルを頼れと言ってくれた。しかし、少し前まではミカルの暗殺名簿に
僕らの名を記載していたんだから。』
『そう、ぼくは、妖精契約に失敗したあの夜、ユウイ義姉ェとエリースの命だけは
守ろうと、ラティスさんが差し出してくれた手を握った。
そのことに後悔はしていないけど・・・。』
どうしようもなく、歴史の渦から抜け出せない事を、
アマトは、この夜も感じさせられていた。
第2章。キョウショウのため息
「ふう~。これでいいか。」
その後、キョウショウは、鉄馬車に籠り、イルムとルリへの書状を
したためていた。
レリウス大公が、流れの暗殺者に襲われたと推定される、経過と結果
そしてその後の対応について書き記した第一報は、
複数のやり方で、皇都に出している。
今度の書状は、伝説級の水の妖精エメラルアと、
名を持つ水の超上級妖精のルコニアの現時点でわかる事を、
ふたりの妖精とエリースへの聞き取りから、考察したもの。
『水の妖精エメラルア。また、新しい伝説の妖精ね。
それも、ルリが立ち会った暗黒の妖精アピスや、
ファウス妃の契約妖精 火の妖精ルービスより、
はるかに自分の意思で、人間界に関わろうとしている。』
『そう、どう考えても、アマト君には、極上級の妖精たちを
引き寄せる何かがある。』
キョウショウは、イルムやルリとのやり取りを思い出す。
『アマト君が、妖精契約の場で、契約ができなかったというのは、誤解ね。』
『誤解?』
『わたし達は、妖精契約には、人間のエーテル量の大小がその成否のカギと
思っていた。確かに最上級と言われる妖精たち、
エリースのエーテル量の大きさから言えば、
超上級といわれる妖精たちも、契約する人間を選ぶ基準は
エーテルの大小なのかもしれない。』
『だが、伝説級、いや極上級の妖精は、人間の力を借りずとも、
この世界のエーテルを吸収できると思うわ。』
『ラティスさんもラファイアさんも、秘密にしてるけどね。』
『というと、選ぶには、別の基準があると。』
『そう言う事よ、ルリ。』
『仮に、それを器とよぶわね。アマト君はそれがたぶん大きいの。
それも信じられないぐらいにね。あのラティスさんと契約したあと、
一度アマト君は死にかけているわ。
ノープル学院の入学試験の武闘方式の実技試験の際にね。』
そこでわたしは、『暗黒の妖精が契約しているのに、信じられないわ。』
と、言ったはず。
『キョウショウ、ラティスさんの魔力量をもってしても、アマト君の器を
満たすことができなかった。だから、連動が上手くいっていなかった。』
『そのあとラファイアさんの魔力量を加えて、初めてアマト君の器が
満たされた。』
『むろん、器というのは、わたしの勝手な思い込み。
別の何かがあるのかもしれないし、
ふたりの日頃のアマト君への態度をみてると、
気まぐれというのが、正解なのかもしれないけれど。』
いや違うわイルム、器の話は真実に近いと思う。
けど、ラファイアさんの魔力量を加えても、器は満たされていない。
その隙間こそが、伝説級の妖精たちを渦の中心に集めるように
巻き込んで、アマト君の前に、集めてくる・・・。
「ん、精神波か・・・。」
キョウショウは、聞き耳をたてる。
・・・・・・・・
≪あんたたち、いつまでレクリエーションを続けるつもりだったのよ。≫
≪はっ、だいたいエリース、何であんたが邪魔に入ってくるの。≫
≪仕方ないじゃないの、リーエが泣きついてきたんだから。
バカふたりを止めてくれってね。≫
≪エリース。バカってだれよ、バカって。≫
≪そうですよ、エリースさん。そこは単数形でしょう。≫
≪だいたいリーエ、あいつは超上級妖精の誇りはないの。人間に泣きつくなんて。≫
≪エリースさん、わたしもめんどくさいから、アマトさんに
泣きつきたかったですよ。≫
≪何いってんの、ラファイア。あんた当事者でしょうが。≫
≪理解してあげてエリース。ラファイアは、そういうお年頃なのよ。≫
≪お年頃!?あんたたちふたりとも、何千歳になるのよ。≫
≪エリースさん、妖精に年を聞くなんて野暮ですよ。≫
・・・・・・
聞こえてきた駄々洩れの精神波のやりとりに、
キョウショウは大きくため息をついていた。
ミカルの高位者、レリウス大公と両宰相が、話し合いをしている同じ時刻、
新帝国のアマト・エリース・キョウショウ・そしてフレイアも、たき火を囲み
話を重ねていた。
「大公陛下が、
セプティやアマト君に対して、コウニン王国へ暗殺の依頼をしたことを、
アマト君に話すとはね。」
キョウショウは、新帝国の將として、判断を決めかねている。
レリウス大公が、ミカルの頂点に位置する人物と考えれば、
その冷徹までの合理性、自分の命に頓着しない胆力、
9割の賞賛と1割の畏怖を感じている。
逆にこのことで、レリウス大公は、新帝国の器量の大小をも試している。
回答次第では、ミカルと新帝国の間で、隠された中立協定が
結ばれるかもしれないとも、想像はする。
「なんか、助けたのがバカみたい。」
エリースは、たき火に薪を勢いよく投げ入れながら、怒りを言葉にのせている。
魔力を加えてもいないだろうに、炎が激しく立ち上がる。
「エリースの思いは当然だとしても、あのおふたりの妖精さんこそ、
なぜ大人しくしているの?」
フレイアは当然の疑問を、アマトに投げかける。
「それをぼくから聞いて、はじめラティスさんは、ぼくにも感じるような、
怒りの背光を噴き上げていたんですが・・・。
ラファイアさんが、何か精神波でなだめたみたいで・・・。」
「それで?」
フレイアはアマトに結果を話すことを求める。
「急に、『アマト、生きていりゃ、ま、そんなこともあるわよ。』
と明るく言い出して・・・。」
アマトは、わけわからないという思いを、表情に浮べる。
「まさか、新帝国の戦略上、ミカルの大公をどうこうするのは、まずいと。」
と、驚くフレイアに、エリースは、
「あのふたりが、人間世界の都合なんか、考えるわけないでしょう。」
と、即座に強く否定する。
「ラファイアさんが先に動いたと、そして、コウニン王国が絡んだとすれば、
もろ理由は、ルリだね。」
キョウショウが、遠い目をしながら、意見を述べる。
「つまり、・・・」
アマトは、自分の辿り着いた結論に、目を背けたくなり、
周りに助けを求めるが・・・。
「理由は、最高においしい香茶の淹れ手の、今後ともの確保ね。」
アマトの想いを、フレイアがバッサリ切り捨てる。
「じゃあ、義兄ィの感情より、あのふたりは、美味しい香茶をえらんだわけ!」
エリースの顔色が、真っ赤に染まる。ほっとけば、すぐにでも、
例のふたりのところに、飛んでいこうかとの勢いである。
「まあ、起こらなかった過去と起こり得ない未来に怒って、
魔力を爆発させても、それってなんになるのとの想いが、
ラファイアさんの考えなのかもね。」
直接否定して、エリースの心に火を注いではいけないと、年長者としての余裕で、
キョウショウは湾曲的に話を逸らす。
「ラティスさんも、アマト君に手を出させはしないとの揺るぎない自信が
あるから、ラファイアさんに同意したんでしょうしね。」
キョウショウの意図を見抜いて、フレイアもその流れに協力する。
「今騒いだら、ルリさんの居場所が無くなるし。」
と、アマトまで流れにのったことで、エリースの怒りは収まってゆく。
「だいたい義兄ィは、あのふたりの勝手気ままを、ほんといつまで
許すつもりなのよ。まったくあまいんだから。」
場が収まってきたのを感じて、キョウショウは話を締めにはいる。
「皇都に帰還して、応対はイルムに任せるしかないわね。
イルムだったらミカルに、最も高く売りつけるだろうからね。」
・・・・アマトは思う。
『ひとの世には、表と裏があるんだな。レリウス大公は、生きづらくなったら、
ミカルを頼れと言ってくれた。しかし、少し前まではミカルの暗殺名簿に
僕らの名を記載していたんだから。』
『そう、ぼくは、妖精契約に失敗したあの夜、ユウイ義姉ェとエリースの命だけは
守ろうと、ラティスさんが差し出してくれた手を握った。
そのことに後悔はしていないけど・・・。』
どうしようもなく、歴史の渦から抜け出せない事を、
アマトは、この夜も感じさせられていた。
第2章。キョウショウのため息
「ふう~。これでいいか。」
その後、キョウショウは、鉄馬車に籠り、イルムとルリへの書状を
したためていた。
レリウス大公が、流れの暗殺者に襲われたと推定される、経過と結果
そしてその後の対応について書き記した第一報は、
複数のやり方で、皇都に出している。
今度の書状は、伝説級の水の妖精エメラルアと、
名を持つ水の超上級妖精のルコニアの現時点でわかる事を、
ふたりの妖精とエリースへの聞き取りから、考察したもの。
『水の妖精エメラルア。また、新しい伝説の妖精ね。
それも、ルリが立ち会った暗黒の妖精アピスや、
ファウス妃の契約妖精 火の妖精ルービスより、
はるかに自分の意思で、人間界に関わろうとしている。』
『そう、どう考えても、アマト君には、極上級の妖精たちを
引き寄せる何かがある。』
キョウショウは、イルムやルリとのやり取りを思い出す。
『アマト君が、妖精契約の場で、契約ができなかったというのは、誤解ね。』
『誤解?』
『わたし達は、妖精契約には、人間のエーテル量の大小がその成否のカギと
思っていた。確かに最上級と言われる妖精たち、
エリースのエーテル量の大きさから言えば、
超上級といわれる妖精たちも、契約する人間を選ぶ基準は
エーテルの大小なのかもしれない。』
『だが、伝説級、いや極上級の妖精は、人間の力を借りずとも、
この世界のエーテルを吸収できると思うわ。』
『ラティスさんもラファイアさんも、秘密にしてるけどね。』
『というと、選ぶには、別の基準があると。』
『そう言う事よ、ルリ。』
『仮に、それを器とよぶわね。アマト君はそれがたぶん大きいの。
それも信じられないぐらいにね。あのラティスさんと契約したあと、
一度アマト君は死にかけているわ。
ノープル学院の入学試験の武闘方式の実技試験の際にね。』
そこでわたしは、『暗黒の妖精が契約しているのに、信じられないわ。』
と、言ったはず。
『キョウショウ、ラティスさんの魔力量をもってしても、アマト君の器を
満たすことができなかった。だから、連動が上手くいっていなかった。』
『そのあとラファイアさんの魔力量を加えて、初めてアマト君の器が
満たされた。』
『むろん、器というのは、わたしの勝手な思い込み。
別の何かがあるのかもしれないし、
ふたりの日頃のアマト君への態度をみてると、
気まぐれというのが、正解なのかもしれないけれど。』
いや違うわイルム、器の話は真実に近いと思う。
けど、ラファイアさんの魔力量を加えても、器は満たされていない。
その隙間こそが、伝説級の妖精たちを渦の中心に集めるように
巻き込んで、アマト君の前に、集めてくる・・・。
「ん、精神波か・・・。」
キョウショウは、聞き耳をたてる。
・・・・・・・・
≪あんたたち、いつまでレクリエーションを続けるつもりだったのよ。≫
≪はっ、だいたいエリース、何であんたが邪魔に入ってくるの。≫
≪仕方ないじゃないの、リーエが泣きついてきたんだから。
バカふたりを止めてくれってね。≫
≪エリース。バカってだれよ、バカって。≫
≪そうですよ、エリースさん。そこは単数形でしょう。≫
≪だいたいリーエ、あいつは超上級妖精の誇りはないの。人間に泣きつくなんて。≫
≪エリースさん、わたしもめんどくさいから、アマトさんに
泣きつきたかったですよ。≫
≪何いってんの、ラファイア。あんた当事者でしょうが。≫
≪理解してあげてエリース。ラファイアは、そういうお年頃なのよ。≫
≪お年頃!?あんたたちふたりとも、何千歳になるのよ。≫
≪エリースさん、妖精に年を聞くなんて野暮ですよ。≫
・・・・・・
聞こえてきた駄々洩れの精神波のやりとりに、
キョウショウは大きくため息をついていた。
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