アピス⁈誰それ。私はラティス。≪≪新帝国建国伝承≫≫

稲之音

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CCⅬⅢ 星々の紅焔と黒点編 前編(2)

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第1章。魂引かれた(2)


 ≪白光の迷宮!!≫

白光の妖精ラファイアの精神波が、夜空に響く。
だが、その響きは虚しく消え、エルメルアの姿を捕えることができない。

≪バカなの、ラファイア!障壁の魔力を使うなんて!だから逃げられるのよ。≫

≪せいぜい、あの一発いっぱつ魔芸げいの、〖白光の紅焔〗とか使いなさいよ。≫

≪い・・いっぱつ・・・魔芸げい・・・!?≫

≪ほんと、使えないんだから・・・≫

「な、何でわたしの秘魔技わざを知ってるんですか、
それも微妙に名前が違うし・・・。」

ラファイアの小声のつぶやきを、ラティスは超聴覚でとらえ、
即、精神波を返していく。

≪なに、アンタ。ほんと~、千年以上前の、あの闘いのこと覚えていないの?≫

≪わたしが、人間の家畜化に反対したあの当時、
 妖精界代表で、わたしを滅しに来た、物好きな極上級妖精って誰よ?
 アピス?ラファイス?ルービス?エメラルア?リスタル?
 〇✕△▢・・・いや、あいつだけは絶対違うわね・・・。≫

≪ま、だれも、世界観の違い以前に、そんな命がけの面倒ごとを
 引き受けはしないわ。
 まともな神経をしているならね・・・。≫

≪だけど、もうひとり、そう ただひとり、おだてられれば木に登る、
 頭の軽い妖精やつがいるじゃない。≫

≪そう、つまりアンタよ、ラファイア。
 だからわたしは、アンタの魔芸ネタのほとんどは、つかんでいるわ!≫

白光の妖精の顔色が、白く、白く変わってゆく。

≪なるほどそうですか。けど、頭の軽い・・に、バカ呼ばわり、あわせて、
 わたしの魔技わざを、・・・魔芸ネタ・・・扱いですか。
 ふふふ、ラティス・・・さん。一度、あの世とやらを見てきますか?≫

暗黒の妖精の表情にも、黒い笑いが浮かぶ。

≪ほ~う。いいわよ、ラファイア。
 千年以上前の決着けり、今日、この場、この瞬間につけてあげようか!≫

ふたりの妖精の白銀と白金の背光の広がり、互いの魔圧が、
互いを砕け散れとばかりに高なり、空間がきしみ始める。

だがその時、もうひとりの妖精のリーエが、虚空を右から左に、
<論点がずれてるようですが・・・>という連続ポーズの動きで、
対峙している、黒と白の妖精の間を、風に吹かれていくように横切ってゆき、
さらに、逆に今度は、
<これ以上の、緊張圧は、エリースさんを強制起床させてしまいますよ!>との
連続ポーズの動きで横切った。

≪・・・・・・・・。≫  ≪・・・・・・・・。≫

エリースの目覚めの悪さを経験しているふたりは、
この時間での強制起床が原因で、エリースから放たれるわけわからぬ電撃が、
通常時の3倍にあたることに思いをいたし、
この場を急速に、平穏の夜空に戻したのであった。

・・・・・・・・

 ラティス、ラファイア、リーエの三妖精は、再びたき火を囲んで座っている。

「ま、今、人間の世界にいる、アピス・ラファイス・ルービス・エメラルアが、
今回のことに絡んでくるとは思えないわ。」

「どいつもこいつも、確かに、人間の家畜化に反対の立ち位置じゃなかったけど、
かといって、積極的に賛成という感じではなかったからね。」

「確かに、われ関せずという感じ・・・らしかったからですね・・・。」

「それに、あの妖精ひとたちが、関与していたなら、
会った時点で、大上段から宣言しているでしょう。」

「考えられるのは、リスタルさんが向こうの世界にいて、
エルメルアさんでしたっけ、あの妖精ひとらを、
けしかけてきた・・・なんて、ことはないですかね?」

「ありえないでしょう。あいつが動いているんだったら、
少なくとも、極上級妖精 3妖精にんが来ていたわよ。
あいつは、そういうところは、マジ、手を抜かないだろうからね。」

たき火が、あかはじける。
自分の方へきたその火花に、風の超上級妖精のリーエは、
思わず身をすくめている。

その姿を目の端にとらえラティスはリーエに、詰問にちかい言葉をかける。

「ところで、リーエ、あんたは、ついこの前、エリースと契約したんだから、
近頃の妖精界の様子を、知っているわよね?」

ラティスの言葉に、超上級妖精のリーエは、気まずさそうに、肉体言語ポーズを始める。

「え、何々なになに、エリースと・・契約したら・・以前の・・記憶が・・消えた・・。」

「あんた、超上級妖精でしょうが。記憶がぶって、ほんと何してんよ!!」

ラティスの言葉に、超上級妖精のリーエは、地面に絵を描くポーズで、
いじける態度をとりだす。

「ラティスさん。言い過ぎですよ。相手はエリースさんですよ。
どんなことが起こったとしても、不思議はないですよ・・・。」

「ほんと、エリースにしてもユウイにしても、アマトの義姉妹きょうだいって言うのは、
どうしてこうなのよ・・・。」

「妖精界で魔力頂点を極めている、わたしとアンタも、
ま、他妖精ひとには言えない状態だし、
妖精にんとも、ほとんどというか、まるっきり、道化ものじゃないの・・・。」

「そう言われましてもね、じゃおふたりに直接、交渉されたらいかがです?」

「・・・・・と・とにかくよ。
皇都に帰ったら、ラファイスのやつにも、情報を渡して・・・。
そしたら、ラファイア。上手くしたら、あいつに全部、押し付けられるじゃない。」

したり顔で話す暗黒の妖精のラティスに、白光の妖精ラファイアは、
心の中でため息をついていた。
なぜなら、ラファイアも同じ事を、
ー面倒ごとをラファイスに押し付けることーを、
考えていたからだ・・・。


第2章。回帰


 レリウス大公軍は、あるじが逃亡した、通称<涼やかな宮城>と言われる
ヒーク伯爵の居城とその城下街に、少数の制圧兵士を配し、
自身を含めて大半の部隊は、その直前の広野に、駐屯ちゅうとんさせている。

ほぼ無血開城に近い結果に終わったせいだろうか、
天幕やたき火の周囲から、楽しそうな笑い声が、夜の野原に流れている。

・・・・・・・・

「ヒークの奴、一戦もせずに、逃げ出すとはな・・・・。」

大天幕のなか、レリウス大公のひとり言のような言葉を、
トリハ宰相、それにイルト卿・オルク卿・ウルト卿のミカルの三將、
そして、客將としてヨスクも、無言で聞き入っている。

レリウス大公の前、長机の上には、ミカル大公国の地図が、広げられている。
その地図の上に、青い駒と、多数の赤い駒が、配置されている。
また、それぞれの椅子の前に、なみなみとギム酒をいださかずきがあるが、
だれも、口をつけた様子がない。

「並列陣を引き、一度の槍合わせぐらいは、してくると思ったが・・・。」

再びのレリウス大公の言葉に、今度はトリハ宰相が反応する。

「臣が思いますに、ヒーク伯爵一族は、数代にかけてわが公国に潜り込んだ、
王国連合からの間者ではなかったかと・・・。」

ミカルの誇る三將も、宰相の言葉に深くうなずく。

「確かに、先代・先々代のヒーク伯爵の公国への態度は、
おかしいほど忠誠的だった・・・。」

「その裏で、多くの譜代ふだいの貴族・騎士たちが、次々と向こう側に、
調略させられていたのか・・・。」

けわしい顔をして座っている、ミカル大公レリウスは、ここで初めて、
さかずきに口をつけ、一気に飲み干す。

「とにかく、今回の作戦はあっけなく終わったな・・・。」

「超上級妖精の魔力・・・。の者の力が。あれほどのものとは・・・。」

宿將のイルト卿の言葉が、この場に響く。

「唯一戦陣をはってきた、カール伯率いる叛乱軍、中隊ではありましたが、
一撃のもとに戦闘不能でしたからね。」

ウルト卿の言葉が、イルト卿の言葉に続く。

風の超上級妖精のリーエの絨毯じゅうたん電撃が、紡錘ぼうすい陣をとっていた、
カール伯の兵士の3分の1を戦闘不能にし、
軍として壊滅かいめつさせ敗走させていた・・・。

「〚戦場で、超上級妖精と遭遇そうぐうしたら、逃げよ!〛という言葉は、
全くの事実でした。」

オルク卿の言葉も、ウルト卿の言葉に続く。

宿將の言葉に、レリウスは、無言で答える。
だが、その目は、トリハ宰相が地図上で動した、の駒、
公国外延部周辺外の、王国連合軍の新たな位置を追っている。

「彼らの動きは?」

「内通者、彼らから言うと協力者の回収が終われば、撤退するものと。」

「わかった。そちらの動きにも気をつけるように。」

「は!」

「トリハ。投降した者への処置は、領地規模を3分の1に、そして領地替えを、
若い子息がいる奴は、人質として強制的に学院へ入学。
それに、目付として代官を領内に受け入れさせろ。」

「あわせて、新たに旧帝国本領がわ部分と、王国連合諸国がわ部分を結ぶ
街道を造らせ、苦役として、貯蓄していた財を吐き出させる。」

「一部でも条件を受け入れぬというなら、投降した奴らに討たせろ!」

「トリハ。しばらくの間は、ここで戦後処理をしてもらう。
ヨスク殿には、トリハの警護に残ってもらう。」

「イルト・オルク・ウルト。おれたちは、2・3日中にも公都に戻る。
必要な兵はおいてゆく。」

そう命令する、レリウス大公の目は遠くを見つめ、
目の前の家臣の姿を見ていなかった。
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