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斎藤福寿、守咲窓華との初めての夜。
4 坊主めくりとティラミス
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夏の夜は短いのですぐ明けてしまったか。僕が夏の歌を引いてしまった。
「あ、それは夏の歌だよ」
「まぁ、夏の夜はから始まってるしそうなりますね」
この生活も夏の夜と同じように、終わってみれば短いと感じるのか。それとも今のような長い長い時間が過ぎたと思うのかどちらだろう。今の僕は毎日が長い。死んでしまう人に配慮して生きることは僕には難しい。一つ一つの言動に気を使ってそれで死ぬ時期を言わないようにして、僕は疲れていた。
「じゃあ、私が呪に質問するね」
「あまり答えにくいのは嫌ですよ」
「呪にとって私はどう?恋愛対象に入る?彼女さんとその同僚の霞さんと比べたら何位ぐらいの順番?」
窓華さんとは会ってから数日だし、霞さんとなんて一回しか会ってない。しかも印象は最悪だ。僕はここは彼女の詩乃が一番だと思った。
「最初から答えにくいのいくんですね」
「で、私は何番?」
「そりゃあ、彼女が一番ですよ。霞さんは問題外の三番だから、消去法で窓華さんが二位ですね」
消去法で僕は選ぶ。霞さんが恋愛対象になることはありえない。それにもちろん窓華さんだってありえない。ここは詩乃が一番で、おっかないだけの霞さんが三番だろう。これは消去法で選ぶしかない。
「消去法かよ、つまんないな。カードは持っていきな」
「はいはい」
「坊主めくりに負けたらってのも罰ゲームにしちゃう」
お酒を飲みながら僕に悪魔の提案をする。僕はこのゲームだけでヒヤヒヤしているのだ。それに窓華さんへの質問なんて思い浮かばない。窓華さんのことは調書である程度知っているわけだし……
「そこまでふざけるなら、僕は辞退しますよ」
「はいはい、分かりましたぁ」
そういって、窓華さんは引き下がる。そして僕が見ていた百人一首の説明書に気付いて、それを手に取る。僕が気になっていたことを聞いてきた。蝉丸についての扱いだ。これは家庭とか地域によって変わると聞く。僕も窓華さんも東京の人間だけど親がどこの人かは分からない。
「呪のところは蝉丸ルールどうしてた?」
「僕の家では、蝉丸を引いたらどれだけ勝っていても負けでしたね」
「何それ?理不尽じゃん」
たくさん札を持っていても、僕の家は蝉丸を引いただけで負けだった。だから僕は蝉丸が大嫌いで、裏側に爪で印をつけたぐらいだ。印を付けたから手札を取る現実は変わらないけど、引いたショックを少なくしたかった。
「このゲームよりは理不尽じゃないですよ」
「私のところの蝉丸ルールは一回休みだったなぁ」
「僕は早く終わらせたいんで、負けでいきましょう」
眠い僕は早くこのゲームを終わらせたかった。だって、こんな無駄なことをしてもマザーの判断が覆ることはない。どうせ失う人ならば思い出なんて少ない方が良いと寂しい人生を歩んできた僕は思った。
「えぇ、こんなに楽しいのに」
「僕にとってはちっとも楽しくないです」
窓華さんはこれが楽しいというのだろうか。お酒の缶の二本目に突入してまだまだ元気そうだ。こんな人が死んでしまうなんて、僕は想像できない。
「ちっ、春過ぎてを引いちゃったよ」
「好きな歌じゃないですか。良かったですね。でも、春が過ぎたら夏ですよ。夏の歌カウントになるのでは?」
「夏が来たっぽいっていう歌だから、この時期はまだ春なわけ。女の天皇が歌った和歌だから私は好きなだけだよ」
あぁ、持統天皇ってさっき言っていたな。夏がきたかも?って感じる暑さってことは、まだ春ということで良いのだろうか。僕はオプションで百人一首を覚えたわけじゃないから、そういうところ曖昧なのだけれど。
「そうか、僕が質問する番なんですね」
「好きな歌だから嬉しいことは嬉しいけど負けよね」
手札をテーブルの中央に戻しながらそんなことを言う。窓華さんは二本目の缶ももう空っぽのようだけど、追加はしないようだ。僕は一本目の缶が生ぬるくなってもそのまま飲み続けた。
「どうして窓華さんはティラミスがそんなに好きなんですか?」
「へぇ、そんなつまらないこと聞くんだ?」
「僕らってまだ何も知らないでしょ」
窓華さんというと調書で知っていたけど、ティラミスが好きなことは調書には書かれていない。だから理由が気になったのだ。どうして窓華さんはそこまで僕に励まして欲しいのかとか、理由が聞きたい。
「そうだなぁ、ティラミスは昔から好きだったよ」
「僕は苦くて嫌いでしたね」
「今は潰れちゃったケーキ屋のティラミスが好きだったの」
「もう食べられないんですか」
僕は小さいときもティラミスはそこまで好きじゃなかった。今も好きか嫌いかで言われると普通で、特段思い入れはないケーキだ。僕にとって思い入れのあるケーキは近所にあるケーキ屋のチーズケーキ。夫婦で経営している店で、奥さんの名前がチーズケーキの名前に含まれている。僕はそんな夫婦を眺めることも好きだった。
「大丈夫、その店の子どもが店を出しているから」
「なんだ、僕の心配損じゃないですか」
「その言い方は酷いかも。味が変わっちゃったんだよなぁ」
窓華さんは缶を潰しながら言う。親の店は美味しくても、代々受け継がれなくて駄目になる店もあるもんなと僕は思った。好きだったオムライスの店があった僕だけれども、子どもの世代になって味が変わり行かなくなってしまった。
「まぁ、保守的に同じ味を守るより冒険に出たって感じですか」
「そう、それとね。家庭科の授業のケーキ作りでティラミス作ったの」
「結構、面倒な工程な気がしますけど」
ティラミスというと何でできているだろう?スポンジとチーズクリーム?あとココアパウダーみたいなものも必要かな?と僕は想像していた。ケーキなんて作ったことがないから、僕は想像しかできない。
「あ、それは夏の歌だよ」
「まぁ、夏の夜はから始まってるしそうなりますね」
この生活も夏の夜と同じように、終わってみれば短いと感じるのか。それとも今のような長い長い時間が過ぎたと思うのかどちらだろう。今の僕は毎日が長い。死んでしまう人に配慮して生きることは僕には難しい。一つ一つの言動に気を使ってそれで死ぬ時期を言わないようにして、僕は疲れていた。
「じゃあ、私が呪に質問するね」
「あまり答えにくいのは嫌ですよ」
「呪にとって私はどう?恋愛対象に入る?彼女さんとその同僚の霞さんと比べたら何位ぐらいの順番?」
窓華さんとは会ってから数日だし、霞さんとなんて一回しか会ってない。しかも印象は最悪だ。僕はここは彼女の詩乃が一番だと思った。
「最初から答えにくいのいくんですね」
「で、私は何番?」
「そりゃあ、彼女が一番ですよ。霞さんは問題外の三番だから、消去法で窓華さんが二位ですね」
消去法で僕は選ぶ。霞さんが恋愛対象になることはありえない。それにもちろん窓華さんだってありえない。ここは詩乃が一番で、おっかないだけの霞さんが三番だろう。これは消去法で選ぶしかない。
「消去法かよ、つまんないな。カードは持っていきな」
「はいはい」
「坊主めくりに負けたらってのも罰ゲームにしちゃう」
お酒を飲みながら僕に悪魔の提案をする。僕はこのゲームだけでヒヤヒヤしているのだ。それに窓華さんへの質問なんて思い浮かばない。窓華さんのことは調書である程度知っているわけだし……
「そこまでふざけるなら、僕は辞退しますよ」
「はいはい、分かりましたぁ」
そういって、窓華さんは引き下がる。そして僕が見ていた百人一首の説明書に気付いて、それを手に取る。僕が気になっていたことを聞いてきた。蝉丸についての扱いだ。これは家庭とか地域によって変わると聞く。僕も窓華さんも東京の人間だけど親がどこの人かは分からない。
「呪のところは蝉丸ルールどうしてた?」
「僕の家では、蝉丸を引いたらどれだけ勝っていても負けでしたね」
「何それ?理不尽じゃん」
たくさん札を持っていても、僕の家は蝉丸を引いただけで負けだった。だから僕は蝉丸が大嫌いで、裏側に爪で印をつけたぐらいだ。印を付けたから手札を取る現実は変わらないけど、引いたショックを少なくしたかった。
「このゲームよりは理不尽じゃないですよ」
「私のところの蝉丸ルールは一回休みだったなぁ」
「僕は早く終わらせたいんで、負けでいきましょう」
眠い僕は早くこのゲームを終わらせたかった。だって、こんな無駄なことをしてもマザーの判断が覆ることはない。どうせ失う人ならば思い出なんて少ない方が良いと寂しい人生を歩んできた僕は思った。
「えぇ、こんなに楽しいのに」
「僕にとってはちっとも楽しくないです」
窓華さんはこれが楽しいというのだろうか。お酒の缶の二本目に突入してまだまだ元気そうだ。こんな人が死んでしまうなんて、僕は想像できない。
「ちっ、春過ぎてを引いちゃったよ」
「好きな歌じゃないですか。良かったですね。でも、春が過ぎたら夏ですよ。夏の歌カウントになるのでは?」
「夏が来たっぽいっていう歌だから、この時期はまだ春なわけ。女の天皇が歌った和歌だから私は好きなだけだよ」
あぁ、持統天皇ってさっき言っていたな。夏がきたかも?って感じる暑さってことは、まだ春ということで良いのだろうか。僕はオプションで百人一首を覚えたわけじゃないから、そういうところ曖昧なのだけれど。
「そうか、僕が質問する番なんですね」
「好きな歌だから嬉しいことは嬉しいけど負けよね」
手札をテーブルの中央に戻しながらそんなことを言う。窓華さんは二本目の缶ももう空っぽのようだけど、追加はしないようだ。僕は一本目の缶が生ぬるくなってもそのまま飲み続けた。
「どうして窓華さんはティラミスがそんなに好きなんですか?」
「へぇ、そんなつまらないこと聞くんだ?」
「僕らってまだ何も知らないでしょ」
窓華さんというと調書で知っていたけど、ティラミスが好きなことは調書には書かれていない。だから理由が気になったのだ。どうして窓華さんはそこまで僕に励まして欲しいのかとか、理由が聞きたい。
「そうだなぁ、ティラミスは昔から好きだったよ」
「僕は苦くて嫌いでしたね」
「今は潰れちゃったケーキ屋のティラミスが好きだったの」
「もう食べられないんですか」
僕は小さいときもティラミスはそこまで好きじゃなかった。今も好きか嫌いかで言われると普通で、特段思い入れはないケーキだ。僕にとって思い入れのあるケーキは近所にあるケーキ屋のチーズケーキ。夫婦で経営している店で、奥さんの名前がチーズケーキの名前に含まれている。僕はそんな夫婦を眺めることも好きだった。
「大丈夫、その店の子どもが店を出しているから」
「なんだ、僕の心配損じゃないですか」
「その言い方は酷いかも。味が変わっちゃったんだよなぁ」
窓華さんは缶を潰しながら言う。親の店は美味しくても、代々受け継がれなくて駄目になる店もあるもんなと僕は思った。好きだったオムライスの店があった僕だけれども、子どもの世代になって味が変わり行かなくなってしまった。
「まぁ、保守的に同じ味を守るより冒険に出たって感じですか」
「そう、それとね。家庭科の授業のケーキ作りでティラミス作ったの」
「結構、面倒な工程な気がしますけど」
ティラミスというと何でできているだろう?スポンジとチーズクリーム?あとココアパウダーみたいなものも必要かな?と僕は想像していた。ケーキなんて作ったことがないから、僕は想像しかできない。
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