たおやかな慈愛 ~窓のない部屋~

あさひあさり

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斎藤福寿、守咲窓華と台湾旅行する。

4 冥銭と家族

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「なんか今川焼きみたいだね」
「え、大判焼きじゃないんですか?」
「大判焼きって言い方も知っているし、なんなら回転焼きって言っている地域だってあること知っているよ。でも私にとっては今川焼きなんだよ」
「回転焼きは初めて知りましたね」
僕はそのいろいろな名前のある食べ物を途中まで食べてびっくりする。僕はこういう焼き物には甘いものが挟んであるだろうと安易に思っていた。中に入っていたのはゆでたまごだった。驚いたのは窓華さんも一緒だった。
「呪は買い物のセンスがないよ。普通中身が見えるものを買うんだよ」
僕はついごめんと謝ってしまう。でも謝るようなことでもない。
「私はタピオカジュースとか、あと台湾の大きいフライドチキンとか食べたいと思っているんだけど、フライドチキンは夜市が多いみたいだしあるかな?」
窓華さんはガイドブックの知識を僕に披露した。
「唐揚げでは駄目なの?唐揚げも有名って書いてあったよ」
「大きい方が異国感あって良いじゃん?日本にはないみたいな」
窓華さんはそう言うとタピオカの屋台の方に消えていく。
「待ってください。僕は窓華さんを見ていなきゃいけないんですから」
「分かっているよ」
それから僕らはタピオカジューズを持って、唐揚げの入った容器を持って街を歩いていた。なんか昨日までの生活が嘘のようだ。僕は近くにあるゴミ箱を見つけてそこに捨てた。海外はゴミ箱が少ないと聞いていたが、第二台北にはたくさんあるみたいだ。道端にも等間隔で何か金属の缶みたいなものがある。これは多分、ゴミ箱ではないだろうと思ってスルーしていた。

「あ、あそこ見て。ゴミ箱でお札燃やしているよ!」
僕は指さされたところを見た。さっきの道にある缶だ。確かに赤い模様をした紙を燃やしていた。結構な炎が出ていたため、気づくとびっくりしてしまった。燃やしている紙はお札と言えなくもない。僕は眼鏡に入った辞書を使って調べると、これはお札ではない。冥銭と呼ばれるものだそうだ。そのことを窓華さんに言う。
「あれはあの世で使えるお金なんですよ。冥銭って言うみたいです」
「へぇ、じゃあ私も燃やそうかな?」
窓華さんはそういって僕にお金をねだる。きっとクレカは使えないと思うので、屋台のために両替した昔のお札を渡すことになる。
「なんか、ご先祖様が使えるように燃やすから、窓華さんは自分のために燃やしても無駄だと思いますけど」
「酷い!私も燃やすけど、呪はこれを先に死ぬ私のために燃やすんだよ!」
「僕に送金しろって言うんですか?それに窓華さんはあの世を信じているなんてびっくりですよ」
あの世の世界のためにお札を燃やす文化は日本にはない。だから、ここでお金を燃やすと選択するということは、もしかしたら死んだ後のことを窓華さんなりに考えているかもしれないと僕は身勝手ながら思ったのだ。
「あったら良いなって思うだけだよ。私は性格悪いから地獄かもしれないし。ならば地獄の沙汰も金次第って言うじゃん」
「あ、窓華さんは自分が性格悪いって理解していて安心しました」
「その言い方はないよ。自分のことは自分が一番よく分かっているの」
そう言って、窓華さんは冥銭を売っているところまでやってきた。そしてたっぷり札束を買ってきた。窓華さんは誰に対してお金を燃やすのだろう。
「これが本当のお金だったらなぁ……」
「だから、あの世では使えますから潔く燃やしましょう」
と言って僕らも冥銭を燃やす。落ち着きのない窓華さんが、そのお札が燃え尽きるまでじっと見ている。僕はそんな窓華さんを見て不安になった。

「これは私のためでもあるけどさ、呪のためでもあるんだよ」
「旦那さんや桜ちゃんのためだと思っていました。ならその感情は、後悔とか償いみたいなもんですよね」
「その通りだよ。呪に迷惑かけるからせめてもの償いかな?」
燃えるお金をさっきから落ち着いて窓華さんは見ている。僕も窓華さんはきっとどこかでは反省しているのだと思ってきた。
「人並みの罪悪感があったことに僕は驚きましたよ」
「それはどうかなぁ?一応、楓と桜のためにも燃やすけど、この冥銭が使われるのは何十年後だろうね。それに私だって悪いことしたってことは分かっているよ」
窓華さんは恐ろしいほど落ち着いた声で言った。
「そうですか。窓華さんのような人でも思うところはあるんですね」
「私がここまで心開いているのに、反応はそれだけ?残酷だね、呪は」
残酷なのはどっちですか?と言おうとして僕はやめた。そのしてしまった行いは一番窓華さんが知っていることだろう。やはり命がなくなってしまうことで、この世に未練があるのだと僕は思った。この頃には台湾の風景に慣れていた。空にも地上にも乗り物が飛び交い、地上では屋台が出たりしている。こんな日本とはかけ離れた世界だというのに。

燃える冥銭を座って見ていた僕らは立ち上がって伸びをする。ものすごい勢いで燃えていたので、顔が熱い。
「さぁ、気を取り直してディナーまで歩こうよ」
「ディナーまでにお腹いっぱいとかならないでくださいよ」
「はは、私も気をつけるから呪も気をつけるんだよ」
と言って、僕らは屋台の服を見たり、小物を売っているアクセサリー店を見たりしてなかなか昼間の台北を楽しんだと思う。僕は歩き疲れたので、足つぼをやっても良いと思ったが、そんな時間すら僕らには残されていなかった。僕らは基本的に時間がないのだ。
「ガイドブックに書いてあったけど、お金の入った封筒は放置するんだって」
「警察に届けないんですか?」
「私はどうかと思うけど……」
窓華さんは少し言いにくそうにしている。僕はどうしてだろうと眼鏡の辞書で調べる。なるほど、子どもを亡くした親が天国での結婚相手を選ぶとき、お金の入った封筒を受け取った人にするらしい。
「それで結婚相手が見つかって子どもは幸せなんですかね?」
「子どもの幸せなんて考えてないと思うよ。これは親のエゴだよ」
僕らはそんな封筒を発見することもなく、平和に歩いていた。ホテルに向かうと李さんが居た。
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