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斎藤福寿、守咲窓華と台湾旅行する。
6 どこかにあったかもしれない世界
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「あぁ、料理すごかったね。何も言葉が出なかったよ」
「珍しく窓華さんが無口でしたね」
「そうだよ。美味しすぎると無口になるんだね。あえて言うなら、言葉が出ないって感じかな?」
「あえてって、何度も言葉が出ないって言っているじゃないですか……」
そんな僕の言葉を遮るように、部屋に戻った窓華さんはすぐに窓際のベンチに座って言う。
「夜空が綺麗だよ。これぞ、百万ドルの夜景だよ」
「それは違う国って前も言ったじゃないですか」
「空は世界中とつながっているんだよ」
「それで?」
鎖国ので日本は孤立しているが、地球は一個だから空が繋がることは当たり前だと思った。それなのに今の日本はこんなにも異常だ。
「私が普通に生きた世界も、この地球のどこかにはあったかもしれないんだよ」
「日本で幸せになれなかったから?」
「そうだよ。だから空を見るといつも思っちゃうな」
「僕もマザーがなかったら、こんな仕事じゃなかったかもしれませんね」
なりたかった医者という職業はマザーが僕に選んでくれなかった。医者になる未来なんてもうとっくに諦めたし、今はもうあり得ない世界だけど。
「でも、私は呪と会えたことは幸せだよぉ」
「窓華さんが考える幸せの基準がいつも分かりません」
「でも、私にとっての本当の幸せは親子三人で平和に暮らすことだったかな」
僕は言葉を返すことができず、窓から空を見ていた。その夜空はとても綺麗で圧倒されるものだ。窓華さんは幸せを自分で壊したくせにと言いたい気分だが、なんだか悲しそうにしているのでやめた。責めることは間違いかもしれない。空にはうっすらと地上鉄の明かりが見える。
この空にだって、自分の物の見え方を遮るものがあるというのに、どうして空に恋い焦がれてしまうのだろう。僕だって、日本と違う世界に産まれたらもっと違ったかもと考える。でもこれは夜景を邪魔する地上鉄が邪魔しているように、完全に自由な世の中なんて、この世界のどこにもない。これくらいのことは小さいときから分かっていた。そして、台湾に来てここでも幸せになれた世界なんてないと知る。
でも、旦那さんと桜ちゃんを残して窓華さんは死んでいく。この一家は窓華さんの死によって崩れる。窓華さんは死を受けた保護人だ。僕らは海外の夜の景色の中を歩いてホテルに戻る。僕と窓華さんはお風呂に入ってバスローブに着替えて、部屋で寝る準備をしていた。寝る間際になったのに、窓華さんは昼間にコンビニで買ったスナック菓子を食べ始めた。スナック菓子のようなものならば、僕だって今も食べれると思う。僕もスナック菓子を分けてもらったら、思ったより辛くてペットボトルのお茶を飲むことになった。
「こんな辛いのよく食べれますね」
「私、適度に辛いの好きなんだよ」
「あんな料理の後にこんなジャンキーなものを。あと、予定では明日は午前中にチェックアウトですから」
「なら、早めに薬飲まないと……」
かばんをごそごそ探してポーチを出した。その中にはたくさんの薬がある。
「なんか病気でもあるんですか?」
「呪は何でも無責任に聞くね!」
僕は窓華さんがお酒を飲むことは日々の買い物で知っていたけれど、薬を服用していることは知らなかった。しかも言いたくない薬だということは、言いにくい病気だったのだろうか。無責任と言われたらその通りだ。
「すみません……」
「呪には教えてあげるよ。私は精神的におかしいの。桜子ちゃんからのカウンセリングで薬を飲むべきと言われてるのよ」
「精神的におかしいのは納得ですね。僕もこの仕事になってカウンセリングは受けることになりましたが」
「なんだ、呪も私と同じ弱い人間なんだ」
と言って、ホテルの冷蔵庫に備え付けのお酒で薬を飲んでいた。これは料金が発生するタイプのものだ。
「ホテルの備品を使わないようにって最初にコンビニ行ったでしょう。そこでお酒も買ってくださいよ」
「なんだ、あんな豪華な食事した人間なのにケチじゃん」
窓華さんはお酒の缶を口から話して吐き捨てるように言う。
「というか、お酒と薬は一緒に飲んで良いんですか?」
「長年飲んでるとさ、効かないんだよねぇ……」
「そうですか……」
僕はペットボトルの水を飲んで夜景を眺めていた。空は大きくて夜空も綺麗で、本当にこの世界のどこかには僕らが平和に暮らせる世界だってあるのかもしれない。窓華さんは荷物を仮置していたベッドに入っていた。
「珍しく窓華さんが無口でしたね」
「そうだよ。美味しすぎると無口になるんだね。あえて言うなら、言葉が出ないって感じかな?」
「あえてって、何度も言葉が出ないって言っているじゃないですか……」
そんな僕の言葉を遮るように、部屋に戻った窓華さんはすぐに窓際のベンチに座って言う。
「夜空が綺麗だよ。これぞ、百万ドルの夜景だよ」
「それは違う国って前も言ったじゃないですか」
「空は世界中とつながっているんだよ」
「それで?」
鎖国ので日本は孤立しているが、地球は一個だから空が繋がることは当たり前だと思った。それなのに今の日本はこんなにも異常だ。
「私が普通に生きた世界も、この地球のどこかにはあったかもしれないんだよ」
「日本で幸せになれなかったから?」
「そうだよ。だから空を見るといつも思っちゃうな」
「僕もマザーがなかったら、こんな仕事じゃなかったかもしれませんね」
なりたかった医者という職業はマザーが僕に選んでくれなかった。医者になる未来なんてもうとっくに諦めたし、今はもうあり得ない世界だけど。
「でも、私は呪と会えたことは幸せだよぉ」
「窓華さんが考える幸せの基準がいつも分かりません」
「でも、私にとっての本当の幸せは親子三人で平和に暮らすことだったかな」
僕は言葉を返すことができず、窓から空を見ていた。その夜空はとても綺麗で圧倒されるものだ。窓華さんは幸せを自分で壊したくせにと言いたい気分だが、なんだか悲しそうにしているのでやめた。責めることは間違いかもしれない。空にはうっすらと地上鉄の明かりが見える。
この空にだって、自分の物の見え方を遮るものがあるというのに、どうして空に恋い焦がれてしまうのだろう。僕だって、日本と違う世界に産まれたらもっと違ったかもと考える。でもこれは夜景を邪魔する地上鉄が邪魔しているように、完全に自由な世の中なんて、この世界のどこにもない。これくらいのことは小さいときから分かっていた。そして、台湾に来てここでも幸せになれた世界なんてないと知る。
でも、旦那さんと桜ちゃんを残して窓華さんは死んでいく。この一家は窓華さんの死によって崩れる。窓華さんは死を受けた保護人だ。僕らは海外の夜の景色の中を歩いてホテルに戻る。僕と窓華さんはお風呂に入ってバスローブに着替えて、部屋で寝る準備をしていた。寝る間際になったのに、窓華さんは昼間にコンビニで買ったスナック菓子を食べ始めた。スナック菓子のようなものならば、僕だって今も食べれると思う。僕もスナック菓子を分けてもらったら、思ったより辛くてペットボトルのお茶を飲むことになった。
「こんな辛いのよく食べれますね」
「私、適度に辛いの好きなんだよ」
「あんな料理の後にこんなジャンキーなものを。あと、予定では明日は午前中にチェックアウトですから」
「なら、早めに薬飲まないと……」
かばんをごそごそ探してポーチを出した。その中にはたくさんの薬がある。
「なんか病気でもあるんですか?」
「呪は何でも無責任に聞くね!」
僕は窓華さんがお酒を飲むことは日々の買い物で知っていたけれど、薬を服用していることは知らなかった。しかも言いたくない薬だということは、言いにくい病気だったのだろうか。無責任と言われたらその通りだ。
「すみません……」
「呪には教えてあげるよ。私は精神的におかしいの。桜子ちゃんからのカウンセリングで薬を飲むべきと言われてるのよ」
「精神的におかしいのは納得ですね。僕もこの仕事になってカウンセリングは受けることになりましたが」
「なんだ、呪も私と同じ弱い人間なんだ」
と言って、ホテルの冷蔵庫に備え付けのお酒で薬を飲んでいた。これは料金が発生するタイプのものだ。
「ホテルの備品を使わないようにって最初にコンビニ行ったでしょう。そこでお酒も買ってくださいよ」
「なんだ、あんな豪華な食事した人間なのにケチじゃん」
窓華さんはお酒の缶を口から話して吐き捨てるように言う。
「というか、お酒と薬は一緒に飲んで良いんですか?」
「長年飲んでるとさ、効かないんだよねぇ……」
「そうですか……」
僕はペットボトルの水を飲んで夜景を眺めていた。空は大きくて夜空も綺麗で、本当にこの世界のどこかには僕らが平和に暮らせる世界だってあるのかもしれない。窓華さんは荷物を仮置していたベッドに入っていた。
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