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竹田詩乃、4回目のバイト。
6 私、決めることができますか?
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外はもう明るい。私の気持ちと同じようだ。新しくまた一日が始まる。
「さぁ、一休みしたら今日も大学ですよ」
「私は卒業決まってるし、サボりたいよなぁ……」
「そんなことは僕が許しませんからね」
「なんか奈々美さんの子どもって感じよね」
母親にそんな言葉をかけられたことはない。仕事の忙しかった母親に変わって、私の面倒は祖父母がみてくれていた。福寿に母性を感じてしまうのはどうしてだろう。私は弱い福寿を守ってあげたいのだ。福寿が男であったとして、私にとってはそんなことは関係のない特別に大切な人だ。
「さぁ、大学に行きましょう」
「そうか、今日も一日が始まるのか……」
「バイトもしたし、ログボも取ったしこれから始まりますよ」
私らはマザーのある部屋の扉から離れる。そして男性にボタンを返して庁舎から出ていく。私もこんな割の良い仕事があるなんて思わなかった。課金地獄にハマった福寿だって同じだろう。だけど、私はこの仕事を福寿に相談して良かったと思った。だって二人きりになれる時間が増えた。気持ちを伝えるかどうか迷っている気持ちを前向きな方向に持っていった。
あと二回のキスで私らの行く末が分かる。私が福寿のことを心から愛している気持ちと同じように、福寿も私のことを愛してくれるだろうか。この残された切り札を私は大事にしようと思った。見捨てられないことが嬉しかった。気持ちを馬鹿にされないことが嬉しかった。それでも福寿の彼氏にはなれないのだろう。だって、状態の表示が【特に親しい友人】止まりだ。このまま状態が変化しなかったらどうしよう。
「これからコンビニ行きません?」
「もう中華まんは飽きた」
「今日の来店ポイントが加算されれば、ポイント達成なんですよ」
そういう福寿は深夜にあったことを忘れているように、私に接してきた。なら私だって福寿に普通に接しよう。私達はそのコンビニに行く。私はこのアニメは詳しくないけれど、国民的アニメとされており人気だ。
「ポイントと何が交換できるのさ?」
「エコバックですね」
「エコバックなんて買えば良いのに」
という私もポイントでもらったエコバックを使っている。買ったものもある。でも使いやすいのが一番だと思うからだ。
「それにアニメショップ行く時は、エコバックが必須って分かりましたから」
「福寿はあれからアニメショップ行ったの?」
「数回ぐらい行きましたよ」
そうだ。こいつは最初のビキナーズラックでくじで良い引きをしている。あんな引きをするなんて、最初で最後だろうけど。私は福寿がレジで交換をしているところを見ながら、この前のクリアファイルの再入荷があったと書いてあるポップを見た。こういう景品の再入荷というものは珍しい。うきうきした様子で福寿がこっちに来る。
「楽しそうで何より」
「そうですよ、僕は生きていて楽しいですよ」
レジ袋に入れられた小さなエコバックが見える。いろいろなキャラのモチーフが印刷されており、日常使いに適したものだ。
「私を殺そうとしたのに?」
「好きだから殺すってのは飛躍しすぎていたかなって思いますね。こうやって詩乃さんと居ると楽しいですから」
「そうね、お互い幸せになれれば良いわよね」
「やっぱり詩乃さんと居ると楽しいことがいっぱいです」
「それなら良かった」
私は現実を見たくなくて遠くを見て言った。そんなことにはお構いなしで福寿は楽しそうだ。私の気持ちなんて、きっと何も分かっていない。こんなに人を愛することが苦しいなんて思わなかった。
”また、福寿君をお借りしますね”
”そうね、福寿をよろしくね”
”詳しく言えないことは辛いんですけど”
”福寿が詩乃ちゃんを利用しているのか、詩乃ちゃんが利用しているか、私にはさっぱり分からないもの”
”言ったら福寿君が悲しむと思うので”
”私は福寿も詩乃ちゃんも悪い人間じゃないと思うわ”
”それも勘ですよね?”
”マザーなんてなくても親なら分かるのよ。本当の結婚相手なら良いのに”
「はぁ、奈々美さんに秘密にすることって疲れるな……」
私はスマホ片手にゲームをしながら、パソコンからメッセージに返信する。ゴールデンウィークになる。私は暇をしていた。福寿は今日もログインしているようで、数分前のログイン記録があった。もうすぐ母の日だから私は母親にお菓子を買った。コントロールベーカリーでない、普通に焼いた私が昔憧れたクッキーだ。母親だって祖母に何か贈るのだろう。あ、私も一応福寿と結婚することになってるのだから、奈々美さんに送った方が良いのだろうか。
私は今まで付き合ってきた彼氏は居るけれど、真剣に結婚を考えたことって前の彼氏しか居ない。その彼氏の母親には私も母の日を祝った。それについて、私の母親に言ったら非常識だと言われたのだ。なんか、結婚を意識しているとか、良い風に見られたいとかイメージが良くないって。
だから、私はどうしようかとネットのまとめサイトを見ていた。母の日は今週末の日曜日で、闇バイトの前の日だ。闇バイトは休み明けの月曜の夜。正式には火曜日になったとき。だから福寿と出かけて選んでもらうこともできるだろう。でも、私は福寿にただ会いたいだけかもしれない。この気持ちを抑えることができなかった夜から私はずるい人間になってしまったのだと思う。【福寿と会う】という単純明確な選択肢が出ていたけれど、会いたいなんて言えない。私は母の日だからとか言い訳をつけるしかないと思った。
”社会人初の大型連休。社畜疲れる。#社畜#ゴールデンウィーク#連休#マザーのある日々”
”初月給で家族と温泉旅行。みんなありがとう。#家族#温泉旅行#家族#大好き#感謝#マザーのある日々”
”@竹田詩乃ゴールデンウィークの予定がゲームしかない件。#エンドザ・ワールド#ゲームイベント#母の日#マザーのある日々”
「さぁ、一休みしたら今日も大学ですよ」
「私は卒業決まってるし、サボりたいよなぁ……」
「そんなことは僕が許しませんからね」
「なんか奈々美さんの子どもって感じよね」
母親にそんな言葉をかけられたことはない。仕事の忙しかった母親に変わって、私の面倒は祖父母がみてくれていた。福寿に母性を感じてしまうのはどうしてだろう。私は弱い福寿を守ってあげたいのだ。福寿が男であったとして、私にとってはそんなことは関係のない特別に大切な人だ。
「さぁ、大学に行きましょう」
「そうか、今日も一日が始まるのか……」
「バイトもしたし、ログボも取ったしこれから始まりますよ」
私らはマザーのある部屋の扉から離れる。そして男性にボタンを返して庁舎から出ていく。私もこんな割の良い仕事があるなんて思わなかった。課金地獄にハマった福寿だって同じだろう。だけど、私はこの仕事を福寿に相談して良かったと思った。だって二人きりになれる時間が増えた。気持ちを伝えるかどうか迷っている気持ちを前向きな方向に持っていった。
あと二回のキスで私らの行く末が分かる。私が福寿のことを心から愛している気持ちと同じように、福寿も私のことを愛してくれるだろうか。この残された切り札を私は大事にしようと思った。見捨てられないことが嬉しかった。気持ちを馬鹿にされないことが嬉しかった。それでも福寿の彼氏にはなれないのだろう。だって、状態の表示が【特に親しい友人】止まりだ。このまま状態が変化しなかったらどうしよう。
「これからコンビニ行きません?」
「もう中華まんは飽きた」
「今日の来店ポイントが加算されれば、ポイント達成なんですよ」
そういう福寿は深夜にあったことを忘れているように、私に接してきた。なら私だって福寿に普通に接しよう。私達はそのコンビニに行く。私はこのアニメは詳しくないけれど、国民的アニメとされており人気だ。
「ポイントと何が交換できるのさ?」
「エコバックですね」
「エコバックなんて買えば良いのに」
という私もポイントでもらったエコバックを使っている。買ったものもある。でも使いやすいのが一番だと思うからだ。
「それにアニメショップ行く時は、エコバックが必須って分かりましたから」
「福寿はあれからアニメショップ行ったの?」
「数回ぐらい行きましたよ」
そうだ。こいつは最初のビキナーズラックでくじで良い引きをしている。あんな引きをするなんて、最初で最後だろうけど。私は福寿がレジで交換をしているところを見ながら、この前のクリアファイルの再入荷があったと書いてあるポップを見た。こういう景品の再入荷というものは珍しい。うきうきした様子で福寿がこっちに来る。
「楽しそうで何より」
「そうですよ、僕は生きていて楽しいですよ」
レジ袋に入れられた小さなエコバックが見える。いろいろなキャラのモチーフが印刷されており、日常使いに適したものだ。
「私を殺そうとしたのに?」
「好きだから殺すってのは飛躍しすぎていたかなって思いますね。こうやって詩乃さんと居ると楽しいですから」
「そうね、お互い幸せになれれば良いわよね」
「やっぱり詩乃さんと居ると楽しいことがいっぱいです」
「それなら良かった」
私は現実を見たくなくて遠くを見て言った。そんなことにはお構いなしで福寿は楽しそうだ。私の気持ちなんて、きっと何も分かっていない。こんなに人を愛することが苦しいなんて思わなかった。
”また、福寿君をお借りしますね”
”そうね、福寿をよろしくね”
”詳しく言えないことは辛いんですけど”
”福寿が詩乃ちゃんを利用しているのか、詩乃ちゃんが利用しているか、私にはさっぱり分からないもの”
”言ったら福寿君が悲しむと思うので”
”私は福寿も詩乃ちゃんも悪い人間じゃないと思うわ”
”それも勘ですよね?”
”マザーなんてなくても親なら分かるのよ。本当の結婚相手なら良いのに”
「はぁ、奈々美さんに秘密にすることって疲れるな……」
私はスマホ片手にゲームをしながら、パソコンからメッセージに返信する。ゴールデンウィークになる。私は暇をしていた。福寿は今日もログインしているようで、数分前のログイン記録があった。もうすぐ母の日だから私は母親にお菓子を買った。コントロールベーカリーでない、普通に焼いた私が昔憧れたクッキーだ。母親だって祖母に何か贈るのだろう。あ、私も一応福寿と結婚することになってるのだから、奈々美さんに送った方が良いのだろうか。
私は今まで付き合ってきた彼氏は居るけれど、真剣に結婚を考えたことって前の彼氏しか居ない。その彼氏の母親には私も母の日を祝った。それについて、私の母親に言ったら非常識だと言われたのだ。なんか、結婚を意識しているとか、良い風に見られたいとかイメージが良くないって。
だから、私はどうしようかとネットのまとめサイトを見ていた。母の日は今週末の日曜日で、闇バイトの前の日だ。闇バイトは休み明けの月曜の夜。正式には火曜日になったとき。だから福寿と出かけて選んでもらうこともできるだろう。でも、私は福寿にただ会いたいだけかもしれない。この気持ちを抑えることができなかった夜から私はずるい人間になってしまったのだと思う。【福寿と会う】という単純明確な選択肢が出ていたけれど、会いたいなんて言えない。私は母の日だからとか言い訳をつけるしかないと思った。
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