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竹田詩乃、母の日のプレゼントを選ぶ。
10 朝帰りとマザーを知りたい気持ち
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私はベッドで寝ている福寿を見ているのが辛くて、福寿が起きる前に朝ごはんも食べずにマンションに帰った。それが選択肢でも出ていたからそれに従った。私の両親にはメールで連絡もしてある。マンションに帰ると母親が居たようだ。
「ママ起きてたんだ?ただいま」
「詩乃、昨日はクッキーありがとうね」
「喜んでくれたなら良かったわ」
母親は私が手に持っているじゃがいもを見て驚いていた。
「それどうしたの?」
「泊まった先でもらったの」
「手作りで料理をするってことは相手は喜代也を打ってない人なの?」
一般的には喜代也を打った大多数の人間だ。喜代也を打っていない人はマザーに反対意見を持っている危険な人も居て、病気になっても治療すら受けない極端な人。反社会的な人は喜代也を打たない場合が多い。マザーのような機械に管理される生活が嫌いな昔を懐かしむ人間だ。だからスーパーマーケットで食材を買って、料理して食事を作る。なので昔のような生活をしていて貧しい人が多い。ペンダントは【福寿のことをママに少し話す】と出る。少しっていうのはどのくらいなのか?私の気持ちってどこにあるの?福寿って私のどんな存在なのだろうと思い返した。
「反社会的な人ではないよ。詳しくは言えないけど」
「ならママは安心しても良いのかしら?」
「ねぇ、マザーのマッチングで結婚してママは幸せ?パパとは共通に話せる話題ってす仕事ぐらいしかないのに?」
福寿の両親だってマッチングだってことは知っている。でも、マッチングでもここまで幸せに格差が出るのだろうか。だって、どう見ても私の両親よりも福寿の家族の方が幸せに見える。貧しいかもしれないけど、楽しく生きているように感じる。
「ママは幸せよ。だけど、詩乃はそのペンダントのせいで迷いがあるのかもね」
「今、よく遊ぶ人はこのペンダントが選んだ選択肢なの。私もこの人と出会って世界が変わったというか楽しいと感じる」
「それでも、マザーが決めていない未来は駄目よ。マザーの言う通りにすれば、みんなが幸せになれるってママは思うから」
「分かってるけど、この人と離れるのが私は辛いよ。きっと恋だもん」
この世界にマザーという判断基準がなければ、私は奈々美さんのことも好きだし福寿との将来を考えることができただろう。でも、今はマザーがすべてだ。いくら私が好きだと駄々をこねても、マッチングされなければ離れるしかない。好きになった相手の幸せを願うなら、身を引くことだって愛情だ。今の日本人はマザーの見せてくれる幸せな未来を受け入れている。私は人並み異常に幸せだ。これ以上の幸せをマザーは私に提示することはできるのだろうか。
私はコントロールベーカリーの朝食を摂る。いつものトースト風寒天と、オムレツ風寒天と牛乳風寒天。ここには偽物の食事しかない。両親の愛情もマザーの未来予測もすべてが偽物に感じる。だけど本物って何?福寿に対する気持ちは本物?
「私も日本国民だから、マザーが幸せにしてくれるんだよね?」
「そうよ。詩乃はマザーが幸せにしてくれる」
「私は今以上に幸せにはなれないと思うの」
「それは詩乃が経験不足だから言えることよ」
私は知っている。マザーができて刑務所も裁判所もなくなったけれど、死刑制度は残っていて裁判官も居る事実。マザーはどこまで人に関与しているのだろう。
「ママだって分かってるはずよ。どう考えたって、国民全員を幸せにするってマザーには無理よ。絶対に犠牲になる人ってどこかで出てくると思うの」
「そうね、詩乃の言うようにその通りかもしれないね」
「ママはマザーに関わる仕事をしているのに否定しないの?」
「誰か我慢する人が居て、そのおかげで今の日本は平和だと思うから」
やっぱり、偉大なマザーでもすべての人を幸せにすることは不可能なんだ。ママは今まで私や国民に嘘をついていたんだ。でも、立場上マザーの管理者として嘘をつくしかないだろう。もしかしたら、両親はマザーの見せる平和の身近な犠牲者なのかもしれない。だから私にあのペンダントを渡したのだ。マザーを守るという仕事の両親だから、マザーに守られた今の日本を変えることができない。でもマザーに支配された世界はおかしいって、子どもである私に理解させるためだ。私は誰かの苦労でこの平和な日本があるという、当たり前のことをようやく理解した。分かったところで今の私には何もできない。それがもどかしい。
”@竹田詩乃朝帰り。採れたてのじゃがいも。じゃいもって授業でやったように地面の下でできるみたいで土がたくさんついていた。#男友達#お泊り#普通の食材#じゃがいも#畑仕事#マザーのある日々”
”詩乃って家庭菜園するようなやばい人と知り合いなの?”
”@竹田詩乃違うよ。趣味で育ててるんだって”
”物珍しい人が居るんだね。でも、普通の食事をすすめるなんて危険だから付き合うのはやめるべきだよ”
「ママ起きてたんだ?ただいま」
「詩乃、昨日はクッキーありがとうね」
「喜んでくれたなら良かったわ」
母親は私が手に持っているじゃがいもを見て驚いていた。
「それどうしたの?」
「泊まった先でもらったの」
「手作りで料理をするってことは相手は喜代也を打ってない人なの?」
一般的には喜代也を打った大多数の人間だ。喜代也を打っていない人はマザーに反対意見を持っている危険な人も居て、病気になっても治療すら受けない極端な人。反社会的な人は喜代也を打たない場合が多い。マザーのような機械に管理される生活が嫌いな昔を懐かしむ人間だ。だからスーパーマーケットで食材を買って、料理して食事を作る。なので昔のような生活をしていて貧しい人が多い。ペンダントは【福寿のことをママに少し話す】と出る。少しっていうのはどのくらいなのか?私の気持ちってどこにあるの?福寿って私のどんな存在なのだろうと思い返した。
「反社会的な人ではないよ。詳しくは言えないけど」
「ならママは安心しても良いのかしら?」
「ねぇ、マザーのマッチングで結婚してママは幸せ?パパとは共通に話せる話題ってす仕事ぐらいしかないのに?」
福寿の両親だってマッチングだってことは知っている。でも、マッチングでもここまで幸せに格差が出るのだろうか。だって、どう見ても私の両親よりも福寿の家族の方が幸せに見える。貧しいかもしれないけど、楽しく生きているように感じる。
「ママは幸せよ。だけど、詩乃はそのペンダントのせいで迷いがあるのかもね」
「今、よく遊ぶ人はこのペンダントが選んだ選択肢なの。私もこの人と出会って世界が変わったというか楽しいと感じる」
「それでも、マザーが決めていない未来は駄目よ。マザーの言う通りにすれば、みんなが幸せになれるってママは思うから」
「分かってるけど、この人と離れるのが私は辛いよ。きっと恋だもん」
この世界にマザーという判断基準がなければ、私は奈々美さんのことも好きだし福寿との将来を考えることができただろう。でも、今はマザーがすべてだ。いくら私が好きだと駄々をこねても、マッチングされなければ離れるしかない。好きになった相手の幸せを願うなら、身を引くことだって愛情だ。今の日本人はマザーの見せてくれる幸せな未来を受け入れている。私は人並み異常に幸せだ。これ以上の幸せをマザーは私に提示することはできるのだろうか。
私はコントロールベーカリーの朝食を摂る。いつものトースト風寒天と、オムレツ風寒天と牛乳風寒天。ここには偽物の食事しかない。両親の愛情もマザーの未来予測もすべてが偽物に感じる。だけど本物って何?福寿に対する気持ちは本物?
「私も日本国民だから、マザーが幸せにしてくれるんだよね?」
「そうよ。詩乃はマザーが幸せにしてくれる」
「私は今以上に幸せにはなれないと思うの」
「それは詩乃が経験不足だから言えることよ」
私は知っている。マザーができて刑務所も裁判所もなくなったけれど、死刑制度は残っていて裁判官も居る事実。マザーはどこまで人に関与しているのだろう。
「ママだって分かってるはずよ。どう考えたって、国民全員を幸せにするってマザーには無理よ。絶対に犠牲になる人ってどこかで出てくると思うの」
「そうね、詩乃の言うようにその通りかもしれないね」
「ママはマザーに関わる仕事をしているのに否定しないの?」
「誰か我慢する人が居て、そのおかげで今の日本は平和だと思うから」
やっぱり、偉大なマザーでもすべての人を幸せにすることは不可能なんだ。ママは今まで私や国民に嘘をついていたんだ。でも、立場上マザーの管理者として嘘をつくしかないだろう。もしかしたら、両親はマザーの見せる平和の身近な犠牲者なのかもしれない。だから私にあのペンダントを渡したのだ。マザーを守るという仕事の両親だから、マザーに守られた今の日本を変えることができない。でもマザーに支配された世界はおかしいって、子どもである私に理解させるためだ。私は誰かの苦労でこの平和な日本があるという、当たり前のことをようやく理解した。分かったところで今の私には何もできない。それがもどかしい。
”@竹田詩乃朝帰り。採れたてのじゃがいも。じゃいもって授業でやったように地面の下でできるみたいで土がたくさんついていた。#男友達#お泊り#普通の食材#じゃがいも#畑仕事#マザーのある日々”
”詩乃って家庭菜園するようなやばい人と知り合いなの?”
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