君と歩んだ地獄手記。

秋月

文字の大きさ
上 下
4 / 13
第一章

破邪の太刀

しおりを挟む
獄卒が部屋を出て行ってからしばらく経ち、麟太郎は部屋の机に置手紙があることに気が付いた。

「クローゼットに君の服を用意した。いつまでも血なまぐさい服を着られちゃこっちが参っちゃうからね」

麟太郎は手紙を素早く破いてごみ箱に捨て、クローゼットを確認すべくクローゼットの取っ手に手を掛けた。
扉を開けるとそこには黒の軍服とともに外套が共に添えられてある。麟太郎はサッと軍服に袖を通して外套を羽織り、部屋の隅にある等身大の鏡で自身の服装を確認して外へ向かっていくのであった。






出口の扉を越えると西洋の街並みが広がっている。眼前には大きな石橋が架かっており、その真ん中で獄卒が黄昏ているのが見えた。麟太郎が橋の中心部に近づくと獄卒は彼に気づいたようでこちらにチラリと一瞬目をやり、やがてすぐにまた視線を川の方へ戻す。

「この街の郊外には君の殺した兵士の亡者がいる。俺たちは今なおさまよい続ける亡者をあの世へ送り審判を受けさせないといけない。」
獄卒はもたれかかっていた橋の柵から離れ歩き始めた。

「具体的には何をすればいいんだ」
凍えるような寒さの中、少しでも暖をとるために麟太郎はポケットに手を突っ込みながら尋ねた。
「現世でさまようのをやめてあの世へ来てくださいってお願いする。簡単だろ?」
「それですんなり従ってくれるのか?」
獄卒は笑いながら言いう
「もちろん例外はあるさ。交渉が失敗したら少々手荒だが道具を使って解決をする。いいものを見せよう」

そう言うと、パチンッと指を鳴らした瞬間、突如として刀が現れた。その刀は太刀と言うには少々短い気がするが、柄には茶の皮が巻かれており、鞘は普通の黒鞘に見えたが、近くで見ると鮫皮が巻かれているのが分かる。
「これは破邪の太刀はじゃのたちと言って、今まで数々の悪霊を払うのに使われてきた珍しい代物だ」

麟太郎はなぜこのような便利なものがあるのにわざわざ交渉という回りくどいやり方をする必要があるのか疑問に思ったのも当然であろうが、獄卒は言う。
「残念。いくら便利な霊媒具といえども、使用回数には制限がある。破邪の太刀な場合には使用の代償として身体の一部を捧げる必要があるんだよ」
「僕の考えたことを全部読んでやがるなコイツ」と思い、なんだか悔しい気もしたが麟太郎は冷静に質問した。
「アンタの監視はいったいいつまで続くんだ?」
「言っただろ?俺は獄卒として君の監視を任されている。だから君への刑が終わるまで監視し続けるさ」

麟太郎は自分が話さなくとも獄卒との意思伝達に問題ないことに気が付いた。


それからしばらく歩いて街の郊外へ差し掛かった時、獄卒は言った。
「さぁ!亡者の目撃情報のあった場所についたから、お仕事をはじめるとしよう!」

しおりを挟む

処理中です...