君と歩んだ地獄手記。

秋月

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第一章

現世への旅の始まり

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ピンクに色づく美しい桜並木のそばに小川があってその清流の音とともに鶯の声が響き渡る。
「お父さんお母さん 早く!」
先に走っていった娘の楽しそうな声が聞こえる。
僕の横には妻の桜がいて、桜は娘の小梅に言った。
「あまり先に行きすぎてはいけませんよ」


駅から歩き始めて20分ほど経ったとき、僕たちの目の前に桜の木に囲まれた美しい小さな公園が現れた。毎年僕たち家族はこの他の花見客のいない静かな公園で花見をすることが恒例となっていたから、この時もまたほとんど貸し切り状態で花見をした。満開の桜の下で布を敷き、桜が作った弁当をみんなで食べる。ただこれだけなのにかけがえのない幸せな時間に思えた。
途中桜が咽るというハプニングが起き、一瞬桜の姿が消えたが大したことはなさそうであったし、楽しい時間を過ごした。


小川のせせらぎの音、気持ちの良い春風に包まれながら僕と桜と小梅の三人が花見をするある春の日であった。









幸せだったころの思いが麟太郎の心を抉るように徐々に蘇り始めた。

麟太郎は勢いよく上半身をベットから起こした。
「あ、やっと起きた?」大男は相変わらず穏やかな口調で麟太郎に問いかけた。やっとお目当ての本を見つけられたようで優雅に椅子に腰かけ本を読んでいる。



呆れた顔をしながら麟太郎は言う。
「まだいたのか背の大きいアンタ」

大男はその発言には言及せず淡々と仕事を進めるべく言った。
「俺は獄卒だ。だから君の監視を任されているし、君は何をするにも俺の許可が必要になっている。君が除霊をするために武器を使用するのも、他の霊と話をするのもたいがいのことには僕の許可をとらなくちゃならない。」
麟太郎は何を唐突に言い始めるんだコイツはと思ったがとりあえず話に乗ってやることにした。
「獄卒ってのは役職の名称だろ?アンタの名前はなんだ」

獄卒は本を片手で閉じてにこやかに言った。
「今はその話はできないことになっている。獄卒というのは規則によって厳しく制限を掛けられているからすべて僕の独断で決められなんだよ。すまないね」


やはり獄卒は好青年で顔立ちが良く、軍服がよく似合っていた。


麟太郎はベットから出てベット横に備え付けてあるライトに近い椅子にゆっくりと座りながら尋ねた。
「それで、僕はこれから何をすればいい?」
獄卒は顎に手を添え一瞬、考えるポーズをとった。
「うーん、とりあえず亡者の目撃情報が後を絶たないから、最新の情報をもとに亡者を探そう」

獄卒はサッと椅子から立ちドアの方へ足早に歩いて行った。そしてドアノブをつかんで思い出すように言った。
「あっ、君の活動可能期間は現世の1年だ。1年で現世にさまよう亡者を、君が殺してきた者たちを成仏させてもらう」




行ったと思った瞬間顔をひょっこり覗かせて言った。
「あと、現世へようこそ」
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