8 / 12
第一章
5.いざ異世界へ──
しおりを挟む
「さて、決心できたことですし、色々決めてしまいましょう。」
そう言って天使さんは、すっと右手で軽く空中をノックする。
出てきたのは、1枚の大きな羊皮紙とインクペンだった。
「......なんかそういうところだけファンタジー溢れてますよね…。」
「それはそうでしょう。何故なら貴方はもうファンタジーな世界に足を踏み入れて居るのですから。」
何故か嬉しそうに微笑みながら言う。
嗚呼、その眩しすぎる笑顔は、微笑みの爆弾...いや、辞めよう。ジェネレーションギャップを感じる人が殆どだ。
「それで、一体何を決めるんですか?」
そう言うと、待ってましたと言わんばかりに、天使さんはキリッとした顔で説明を始めた。
「まずは、転生する種族です。人間、獣人、魔族、悪魔、妖精、精霊の六つの種族が選べますが、基本的には魔族、悪魔、妖精、精霊には転生出来ません。」
「なんでです?」
「それは貴方の前世の種族が人間で、それらの種族は人間に近しい体の構造をしていないからです。」
成程要するに、人間としての記憶が残っている僕には、人間とは違う体に転生すると上手く魂と体がくっつかないみたいな感じか。
「そんな所でしょう。」
「僕だからなんとなく察しますけど、もうちょっとちゃんと説明して下さいよ!」
「普段『文字』などという低次元の意思疎通媒体でコミュニケーションとってないんですよ。解ればいいんです解れば!」
適当な天使だなぁ…
「それで、種族はどうしましょうか。後で決めますか?」
普通なら、全部最後まで聞いて、よく考えて答えを出すのが得策なのだろうが、僕はあえてここで決める。
「じゃあ、『獣人』で。」
僕は、前世にて不幸な運命を辿ったのだが、それでも真
っ黒だったという訳でもない。
僕には自殺する数ヶ月前まで、猫を飼っていたのだ。
少し青が混ざっている白い毛並みに、碧い瞳の雑種の猫だ。
僕にとってその猫と音楽だけが生きがいで、何度も自殺をしようと思って踏みとどまって来れたのは、僕の意思と精神が強かったということだけではないと思っている。
多分それとは全く関係ないのだが、何故か無性に『獣人』というものになりたいと思うのだ。
別にいつでも隣にモフれる対象がいるというシチュエーションを夢見た訳では無い。絶対に。
「本当んいいんですか?まあいいんですけど...」
僕の食い気味な姿勢に若干引きつも、容認してくれた。
「では、次に『権限』という名の『スキル』について説明します。それらは先天的あるいは後天的に、その世界から権限、特権が与えられます。例えば、人間だったら先天的に『顕現者』の権限を持っていますし、魔王だったら『魔王ノ覇気』、精霊だったら『霊ノ力』を持っています。その権限の効果は様々で、要するに貴方が今想像しているような『スキル』とほぼ一緒です。」
決して転〇ラを想像していた訳では無い。
「それで、僕はその『権限』とやらを選べるんですか?」
何故か心が疼く。
僕は生まれて初めて中二病患者の心がわかったような気がした。
「勿論ですが、ひとつだけですよ?あんまり選ばれると私達天使がとても困ることになるんです。.....上司に怒られるだけですが。」
「もう既にやらかしてるんだから、別に良くないですか?」
「私の上司は『それとこれとは別だから』って言うんです。理不尽ですよ全く。てめぇら上司の失態を私達天使に毎回毎回、毎回毎回押し付けて来て都合が悪い時には『コレコレは別だから』とかほざきやがって......」
怖い目で羊皮紙を睨む天使さん。
インクペンがギリギリと音を立てて曲がり始める。
ようはどの世界でも次元でも、やることはだいたい変わらないってことだ。悲しい。
僕は天使さんをなだめ、その『権限』を決めるために、権限名と大体のその効果が書かれた本を借り、ざっと読んでみる。
「......この『時空操作』って言うのはどうだろう。」
「あー、それですか。名前だけの権限六位のスキルですよ。実際には空間拡張と縮小による体感時間操作で、上手く使えば時間を止めたように早く動くことが出来る権限です。」
「どこかの吸血鬼が主のメイド長みたいですねそれ」
「実際にその感覚であってますよ。そっくりそのまま同じ能力だと思っても支障はないですし。」
名前だけと言っていたが、案外使えそうなスキルだ。
「じゃあそれにします。」
「マジですか?」
「いや別にいいじゃんか!ロマンですよ。ロマン。」
「マロン梨~、ですか。」
「何のネタですか。知りませんよそんな下らないネタ!!」
「知らないんですか?ちび〇〇子ちゃんですが。」
「......」
天使とはこう見えて結構暇なのではないか?
「では、先天的な権限も決まりましたね。」
そう言って、すっと立ち上がる天使さん。
「最後に、貴方の信念を聞かせて下さい。それで、貴方は転生の準備が整います。」
僕は少し、どきりとした。
「......もう、会えないと思いますか?」
天使さんは微笑んで、
「何言っているんですか。これからが本番なのですよ?そんな悲しい顔をしたって、私はついていけませんから。」
ついていけませんから──
その言葉に、僕は少しだけ笑った。
「仕事はサボれないですからね。」
「上司のケツ拭きも飽き飽きなんですけどね。」
ニヤリと腕を組んで笑う天使さんは、少し寂しそうだった。
「まあ、きっと会えるんじゃないですか?貴方が悟りを開いてこっちに来てくれればの話ですけど。」
それは難しいだろうな──
「まあ、そのうち悟りますよ。教名は『トヨミネ教』で決定ですかね。」
「そんなダサい名前の教団が会ってたまるものですか。もっとかっくいい名前にして下さいよ。」
そう言って、天使さんは後ろを向く。
「ほら!御託はいいので早く宣言して下さいよ!貴方の信念を!」
少しずつ僕の体が、光に包まれていく。
「アレクボライアントさん──」
彼女は後ろを向いたままだ。
「ありがとうございました。」
僕は、そう一言告げ、回れ右をする。
もう光は、僕を完全に包み込んでいる。
「僕の信念は──」
目を瞑り、
息を吸い、
吐いて
開ける──
「二度と、不幸をさせない──」
僕の視界を光が埋めつくし、そこで僕は気を失った──
そう言って天使さんは、すっと右手で軽く空中をノックする。
出てきたのは、1枚の大きな羊皮紙とインクペンだった。
「......なんかそういうところだけファンタジー溢れてますよね…。」
「それはそうでしょう。何故なら貴方はもうファンタジーな世界に足を踏み入れて居るのですから。」
何故か嬉しそうに微笑みながら言う。
嗚呼、その眩しすぎる笑顔は、微笑みの爆弾...いや、辞めよう。ジェネレーションギャップを感じる人が殆どだ。
「それで、一体何を決めるんですか?」
そう言うと、待ってましたと言わんばかりに、天使さんはキリッとした顔で説明を始めた。
「まずは、転生する種族です。人間、獣人、魔族、悪魔、妖精、精霊の六つの種族が選べますが、基本的には魔族、悪魔、妖精、精霊には転生出来ません。」
「なんでです?」
「それは貴方の前世の種族が人間で、それらの種族は人間に近しい体の構造をしていないからです。」
成程要するに、人間としての記憶が残っている僕には、人間とは違う体に転生すると上手く魂と体がくっつかないみたいな感じか。
「そんな所でしょう。」
「僕だからなんとなく察しますけど、もうちょっとちゃんと説明して下さいよ!」
「普段『文字』などという低次元の意思疎通媒体でコミュニケーションとってないんですよ。解ればいいんです解れば!」
適当な天使だなぁ…
「それで、種族はどうしましょうか。後で決めますか?」
普通なら、全部最後まで聞いて、よく考えて答えを出すのが得策なのだろうが、僕はあえてここで決める。
「じゃあ、『獣人』で。」
僕は、前世にて不幸な運命を辿ったのだが、それでも真
っ黒だったという訳でもない。
僕には自殺する数ヶ月前まで、猫を飼っていたのだ。
少し青が混ざっている白い毛並みに、碧い瞳の雑種の猫だ。
僕にとってその猫と音楽だけが生きがいで、何度も自殺をしようと思って踏みとどまって来れたのは、僕の意思と精神が強かったということだけではないと思っている。
多分それとは全く関係ないのだが、何故か無性に『獣人』というものになりたいと思うのだ。
別にいつでも隣にモフれる対象がいるというシチュエーションを夢見た訳では無い。絶対に。
「本当んいいんですか?まあいいんですけど...」
僕の食い気味な姿勢に若干引きつも、容認してくれた。
「では、次に『権限』という名の『スキル』について説明します。それらは先天的あるいは後天的に、その世界から権限、特権が与えられます。例えば、人間だったら先天的に『顕現者』の権限を持っていますし、魔王だったら『魔王ノ覇気』、精霊だったら『霊ノ力』を持っています。その権限の効果は様々で、要するに貴方が今想像しているような『スキル』とほぼ一緒です。」
決して転〇ラを想像していた訳では無い。
「それで、僕はその『権限』とやらを選べるんですか?」
何故か心が疼く。
僕は生まれて初めて中二病患者の心がわかったような気がした。
「勿論ですが、ひとつだけですよ?あんまり選ばれると私達天使がとても困ることになるんです。.....上司に怒られるだけですが。」
「もう既にやらかしてるんだから、別に良くないですか?」
「私の上司は『それとこれとは別だから』って言うんです。理不尽ですよ全く。てめぇら上司の失態を私達天使に毎回毎回、毎回毎回押し付けて来て都合が悪い時には『コレコレは別だから』とかほざきやがって......」
怖い目で羊皮紙を睨む天使さん。
インクペンがギリギリと音を立てて曲がり始める。
ようはどの世界でも次元でも、やることはだいたい変わらないってことだ。悲しい。
僕は天使さんをなだめ、その『権限』を決めるために、権限名と大体のその効果が書かれた本を借り、ざっと読んでみる。
「......この『時空操作』って言うのはどうだろう。」
「あー、それですか。名前だけの権限六位のスキルですよ。実際には空間拡張と縮小による体感時間操作で、上手く使えば時間を止めたように早く動くことが出来る権限です。」
「どこかの吸血鬼が主のメイド長みたいですねそれ」
「実際にその感覚であってますよ。そっくりそのまま同じ能力だと思っても支障はないですし。」
名前だけと言っていたが、案外使えそうなスキルだ。
「じゃあそれにします。」
「マジですか?」
「いや別にいいじゃんか!ロマンですよ。ロマン。」
「マロン梨~、ですか。」
「何のネタですか。知りませんよそんな下らないネタ!!」
「知らないんですか?ちび〇〇子ちゃんですが。」
「......」
天使とはこう見えて結構暇なのではないか?
「では、先天的な権限も決まりましたね。」
そう言って、すっと立ち上がる天使さん。
「最後に、貴方の信念を聞かせて下さい。それで、貴方は転生の準備が整います。」
僕は少し、どきりとした。
「......もう、会えないと思いますか?」
天使さんは微笑んで、
「何言っているんですか。これからが本番なのですよ?そんな悲しい顔をしたって、私はついていけませんから。」
ついていけませんから──
その言葉に、僕は少しだけ笑った。
「仕事はサボれないですからね。」
「上司のケツ拭きも飽き飽きなんですけどね。」
ニヤリと腕を組んで笑う天使さんは、少し寂しそうだった。
「まあ、きっと会えるんじゃないですか?貴方が悟りを開いてこっちに来てくれればの話ですけど。」
それは難しいだろうな──
「まあ、そのうち悟りますよ。教名は『トヨミネ教』で決定ですかね。」
「そんなダサい名前の教団が会ってたまるものですか。もっとかっくいい名前にして下さいよ。」
そう言って、天使さんは後ろを向く。
「ほら!御託はいいので早く宣言して下さいよ!貴方の信念を!」
少しずつ僕の体が、光に包まれていく。
「アレクボライアントさん──」
彼女は後ろを向いたままだ。
「ありがとうございました。」
僕は、そう一言告げ、回れ右をする。
もう光は、僕を完全に包み込んでいる。
「僕の信念は──」
目を瞑り、
息を吸い、
吐いて
開ける──
「二度と、不幸をさせない──」
僕の視界を光が埋めつくし、そこで僕は気を失った──
0
あなたにおすすめの小説
没落領地の転生令嬢ですが、領地を立て直していたら序列一位の騎士に婿入りされました
藤原遊
ファンタジー
魔力不足、財政難、人手不足。
逃げ場のない没落領地を託された転生令嬢は、
“立て直す”以外の選択肢を持たなかった。
領地経営、改革、そして予想外の縁。
没落から始まる再建の先で、彼女が選ぶ未来とは──。
※完結まで予約投稿しました。安心してお読みください。
無能妃候補は辞退したい
水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。
しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。
帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。
誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。
果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか?
誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
悪役令嬢の騎士
コムラサキ
ファンタジー
帝都の貧しい家庭に育った少年は、ある日を境に前世の記憶を取り戻す。
異世界に転生したが、戦争に巻き込まれて悲惨な最期を迎えてしまうようだ。
少年は前世の知識と、あたえられた特殊能力を使って生き延びようとする。
そのためには、まず〈悪役令嬢〉を救う必要がある。
少年は彼女の騎士になるため、この世界で生きていくことを決意する。
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜
日々埋没。
ファンタジー
「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」
かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。
その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。
レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。
地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。
「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」
新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。
一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。
やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。
レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。
異世界転生した女子高校生は辺境伯令嬢になりましたが
初
ファンタジー
車に轢かれそうだった少女を庇って死んだ女性主人公、優華は異世界の辺境伯の三女、ミュカナとして転生する。ミュカナはこのスキルや魔法、剣のありふれた異世界で多くの仲間と出会う。そんなミュカナの異世界生活はどうなるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる