推し彼は、浅葱色。

ひつじの夢

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第一話 日常が非日常になった日~浅葱色の君、目の中葵紋~ 後編

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放課後。日直を終え、帰る支度をしていた時。ニコとリコが心配そうに、葵を探しに来たようだ。

「葵ー!!クッソ探したんだけど?」
「葵、カラオケ行こーよ?」

「ごめん!!まだ、やることがあるんよ~。…また今度、な?」

「そっかぁ~。んじゃ、また誘う~☆」

名残惜しそうな表情でニコとリコが帰った後、教室に戻ってきた総司を見て、一人の女子が話しかけてきた。

「あ、あのっ!!その羽織……新選組、ですか?」

「ん?……えっとー」

「小針田《こばりだ》です」

「あ、そうそうそう!!小針田さん!!…どうしたん?」


彼女はこちらを見て、恥ずかしそうに、モジモジしている。


…そっか。コイツに話しかけようと、勇気を出しているんだな。



振り向いた総司の顔を覗き、驚いて、持っていたペンケースを落とす。


「…っ⁉ご、ごめん!!大丈夫⁉」


彼女は落としたペンケースを拾い、キーホルダーに付いたホコリを入念に払う。
転んだ子供を労わるように、キーホルダーに話しかけている。



「す、すみません……」


「小針田さん、コイツのこと、知ってるの?」

「は、はい!!……私、新選組の、ファンなんですっ!!」

「……って言っても、刀のキャラクター、だけど……」


「へぇ~。んじゃあ、小針田さん。クイズしよう!」


半ば強引に手を引き、すみれを話の中に引きずり込む。


ででんっ。


「沖田総司の持ち刀は?」

すみれは小さく、息を吸う。
そして、目を輝かせ、少しだけ背筋を伸ばし、答えた。

「…加州清光、大和守安定。ちなみに、両方打刀」


チラリと総司に目を向けると、総司は目を見開き、その後ふふふっと笑っていた。


「どう、正解?正解か?」

「…いかにも」


大丈夫。たぶん、コイツは今、知らない世界に来ているだけだ。…彼は何も、悪くない。


ふとした瞬間。葵は、総司と目が合ったことに気付く。
だけど、総司は視線を泳がせていて、焦点が定まっていない。


その視線をたどると、ある物を不思議そうに見つめていた。



「葵どの……」

「なーに?」

「その瓶……何が入っているのですか」


総司は、葵が飲んでいるペットボトルを指さしている。


…そっか。ペットボトルを知らない時代だよな。


「これー?ミルクティー。…甘いお茶」

「みるく、てぃー?お茶なのに……甘い。…興味深いですね」



……ひょっとして。
コイツ、お茶が甘いっていう概念がないのか?

何でだろうか。
コイツ……今、めっちゃ可愛く見える。




「んじゃ今度、アンタにも奢ったげる」

「……それは、誠ですか」

「うん、そ。誠」


総司の声が、わずかに弾んだ気がした。
にっと笑い葵は、ペットボトルを鞄に入れ、教室を後にする。


「つかさぁ、総司。…アンタ、行く先あんの?」


第二話へ、続く。



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