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第二話「浅葱色の居候、街に出る~沖田くん、初恋の予感~」前編
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「総司、アンタさぁ……行く先、あんの?」
「……分かりませぬ」
「私は、自身が歩いた道も……分からないのです」
マジか……転生侍ってこと?
聞こえ悪く言うと、ホームレス⁉いや、コイツ、絶対無理!!
……危なっかしすぎる。放っておけない、放っておく訳ないじゃん。
私が見守らないと、きっと世間で、大騒ぎになる。
葵は、全てを受け入れる覚悟を固め、深く息を吸った。
「元はと言えば、アタシが拾った種だ。……一晩だけだからな?明日、結論出す」
「葵どの……!!ありがたき幸せ……!!」
葵の優しさに総司は、心が解けたように涙を流している。
あーもう!と仕方なさそうに葵は、タオルで彼の涙をそっと、拭う。
……可愛いヤツ。だからこそ、守って行きたいんだ。
自宅に入り、玄関でスリッパを用意する。
「とりあえず、上がって。……そんなに広い所じゃないけど、ごめん。でも、食事と寝床は用意するから、さ」
「ありがとうございます。……葵どの」
「はて?この履き物は…?」
「スリッパ。この家の中で履くの。……素足、寒いから」
「……すりっぱ?新しい単語ですね」
初めて足を踏み入れた、現代の住居。その温かさに総司は驚き、思わず呟く。
「……温かい。この時代の人々は、雨風だけではなく、寒さまでしのいで生活していたとは……」
あぁ、そっか。コイツ、時代が幕末、だもんな……エアコンも当然のごとく、ないよなー……
あの寒空の下、彼は何を思っていたのだろうか?きっと、心も寒かっただろうに違いない。
思うことは多かった葵だが、あえて語ろうとしなかった。
「とりあえずさ、ジャージを渡すから、風呂に入ってきな?」
葵はファスナーを開いたジャージを上下で渡し、身振り手振りで着方を教え、風呂場を案内した。
彼にとっては、驚きの連続だったようだ。感動の言葉が、離れたリビングにまで響く。
「やはり、湯に浸かるのは至上の贅沢ですね」
一時間ほどして。総司がジャージに身を包み、ホクホク湯気を香らせてっ戻って来た。
ジャージの着方は、合っている。
だがファスナーが開いていることにより、上半身の筋肉が露わになっている。
葵は総司の腹筋をチラリと覗き、感心していた。
すご……思っていたより、かなり鍛えていたんだな。さすが、剣の達人、だな……
「あ、葵、どの……?いかがされましたか」
総司の胸の奥が、ざわついている。
「…ううん。てかさぁ、髪の毛、アタシが手入れしてもいい?」
「良いのですか?……ありがたいですね」
葵は小さなポンプボトルを持ってきた。手に取り、とろりとワンプッシュ。
手際良い手つきで、総司の髪に塗っていく。
「これは、油……?」
「うん、そ。髪に塗ると艶、出る」
「…なるほど!!現代の人々の髪が美しいのは、これのお陰だったのですね‼」
「うん、たぶんね」
ヘアオイルの香りに総司は、嬉しさを覚えた。
葵が総司に目をやると、総司はぽろり、またぽろりと涙をこぼしはじめている。
「……総司?どうしたの」
「……この油ごときが、私の髪を強くするなんて…!!」
「いや、大げさだろ」
「そ、そんなことはございませぬ!!」
オイルを塗ったあとにブラッシングすると、総司の髪は絹糸のように艶やかに光っていた。
葵の目には、ずるいくらい綺麗に眩しく見えているようだ。その視線に総司は、ふふふっと笑っている。
「ふぁぁぁ~……眠いですね」
「あ、そうだ。コレ、飲む?」
あくびをしはじめた総司に、マグカップをひとつ、差し出す。
中身が分からない総司は、嗅いだことのない香りに目を見開いた。
「はて?変わった器に……妙な香りのお茶ですね」
「カモミールティー。コレ飲むと、落ち着くの」
「かもみーる、てぃー?お茶で精神が……整う。不思議ですね」
葵がひと口、口へ含んでみせる。飲んだあと、ホッとして笑った様子に、総司は胸がきゅんっと高鳴る気がした。
「……葵どの」
「なーに、総司」
「葵どのは、笑っていた方が可愛いですよ」
「ちょ⁉またまた~、お世辞言っちゃって」
「お世辞ではございませぬ。本心です」
珍しく総司は、食い気味に身を乗り出す。少しだけ武士の名残を顔に宿す彼は、いとも尊く見える。
総司はやっぱり、心も武士なんだな……強い。
アタシに彼を、守れるだろうか?
ちょっとだけ、葵は不安げに目を曇らせた。
「……ありがと。もう夜遅いから、寝るよ?」
「はい。はて、私はどこで寝れば良いか……」
後編へ続く。
作→二度寝 小町
「……分かりませぬ」
「私は、自身が歩いた道も……分からないのです」
マジか……転生侍ってこと?
聞こえ悪く言うと、ホームレス⁉いや、コイツ、絶対無理!!
……危なっかしすぎる。放っておけない、放っておく訳ないじゃん。
私が見守らないと、きっと世間で、大騒ぎになる。
葵は、全てを受け入れる覚悟を固め、深く息を吸った。
「元はと言えば、アタシが拾った種だ。……一晩だけだからな?明日、結論出す」
「葵どの……!!ありがたき幸せ……!!」
葵の優しさに総司は、心が解けたように涙を流している。
あーもう!と仕方なさそうに葵は、タオルで彼の涙をそっと、拭う。
……可愛いヤツ。だからこそ、守って行きたいんだ。
自宅に入り、玄関でスリッパを用意する。
「とりあえず、上がって。……そんなに広い所じゃないけど、ごめん。でも、食事と寝床は用意するから、さ」
「ありがとうございます。……葵どの」
「はて?この履き物は…?」
「スリッパ。この家の中で履くの。……素足、寒いから」
「……すりっぱ?新しい単語ですね」
初めて足を踏み入れた、現代の住居。その温かさに総司は驚き、思わず呟く。
「……温かい。この時代の人々は、雨風だけではなく、寒さまでしのいで生活していたとは……」
あぁ、そっか。コイツ、時代が幕末、だもんな……エアコンも当然のごとく、ないよなー……
あの寒空の下、彼は何を思っていたのだろうか?きっと、心も寒かっただろうに違いない。
思うことは多かった葵だが、あえて語ろうとしなかった。
「とりあえずさ、ジャージを渡すから、風呂に入ってきな?」
葵はファスナーを開いたジャージを上下で渡し、身振り手振りで着方を教え、風呂場を案内した。
彼にとっては、驚きの連続だったようだ。感動の言葉が、離れたリビングにまで響く。
「やはり、湯に浸かるのは至上の贅沢ですね」
一時間ほどして。総司がジャージに身を包み、ホクホク湯気を香らせてっ戻って来た。
ジャージの着方は、合っている。
だがファスナーが開いていることにより、上半身の筋肉が露わになっている。
葵は総司の腹筋をチラリと覗き、感心していた。
すご……思っていたより、かなり鍛えていたんだな。さすが、剣の達人、だな……
「あ、葵、どの……?いかがされましたか」
総司の胸の奥が、ざわついている。
「…ううん。てかさぁ、髪の毛、アタシが手入れしてもいい?」
「良いのですか?……ありがたいですね」
葵は小さなポンプボトルを持ってきた。手に取り、とろりとワンプッシュ。
手際良い手つきで、総司の髪に塗っていく。
「これは、油……?」
「うん、そ。髪に塗ると艶、出る」
「…なるほど!!現代の人々の髪が美しいのは、これのお陰だったのですね‼」
「うん、たぶんね」
ヘアオイルの香りに総司は、嬉しさを覚えた。
葵が総司に目をやると、総司はぽろり、またぽろりと涙をこぼしはじめている。
「……総司?どうしたの」
「……この油ごときが、私の髪を強くするなんて…!!」
「いや、大げさだろ」
「そ、そんなことはございませぬ!!」
オイルを塗ったあとにブラッシングすると、総司の髪は絹糸のように艶やかに光っていた。
葵の目には、ずるいくらい綺麗に眩しく見えているようだ。その視線に総司は、ふふふっと笑っている。
「ふぁぁぁ~……眠いですね」
「あ、そうだ。コレ、飲む?」
あくびをしはじめた総司に、マグカップをひとつ、差し出す。
中身が分からない総司は、嗅いだことのない香りに目を見開いた。
「はて?変わった器に……妙な香りのお茶ですね」
「カモミールティー。コレ飲むと、落ち着くの」
「かもみーる、てぃー?お茶で精神が……整う。不思議ですね」
葵がひと口、口へ含んでみせる。飲んだあと、ホッとして笑った様子に、総司は胸がきゅんっと高鳴る気がした。
「……葵どの」
「なーに、総司」
「葵どのは、笑っていた方が可愛いですよ」
「ちょ⁉またまた~、お世辞言っちゃって」
「お世辞ではございませぬ。本心です」
珍しく総司は、食い気味に身を乗り出す。少しだけ武士の名残を顔に宿す彼は、いとも尊く見える。
総司はやっぱり、心も武士なんだな……強い。
アタシに彼を、守れるだろうか?
ちょっとだけ、葵は不安げに目を曇らせた。
「……ありがと。もう夜遅いから、寝るよ?」
「はい。はて、私はどこで寝れば良いか……」
後編へ続く。
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