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第三章 復讐の始まり
事前調査
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恭弥は学校から帰宅すると、ひとまず仮眠を取った。
スマホのアラームを午後七時にセットしていたが、ベッドに入ってから一時間ほどで目が覚めてしまい、眠るのをあきらめてベッドを下りた。
まだ午後の六時。夕飯の支度はまだのようだったので、それまで参考書を開くことにした。
高校では、常に学年で十番以内の成績をキープしていた。中学時代から勉強は好きで、毎日の予習復習も苦にならない。死んだ姉も同様に成績が良かった。もしあの事件がなければ、姉の未来は明るかったに違いない。恭弥は参考書に向かいながらも、そんな姉の人生を奪った者たちを決して許すまいと改めて心に誓う。
夕食後に風呂場でシャワーを浴び、黒いパーカーとベージュのチノパンに着替えた。まだ目的地に向かうには早かったので、もう一度短い仮眠を取った。今度は三十分ほどで目が覚めた。時間にまだ余裕があったため、再び参考書に向かった。
十一時になったところで、恭弥は家を出ることにした。夜遅く出かけても両親は咎めない。問題さえ起こさなければそれでいいのだ。眼鏡とマスクを着用して、そっと玄関を抜け出した。
スクーターで十分ほどの距離を走り、目的地に到着した。少し気分が高ぶっていたせいか、体感では二、三分にしか感じられなかった。
視線の先には、薄汚れた雑居ビルが立っていた。姉が勤めていた風俗店が入るビルだ。一階がラーメン屋で、その上には風俗店の他にキャバクラやガールズバーが入っているようだ。
事前に店のホームページで、営業が深夜の十二時に終わることを確認していた。あと一時間ほど待つ必要があるが、誰も営業を終えた喫茶店の前に立つ恭弥に関心を払う様子はなく、安心してこの場に立っていられた。一応、人相を隠すために、普段は授業中にしかかけない眼鏡をかけ、パーカーのフードを目深に被り、その上さらにマスクもしていた。一昔前なら不審者そのものだが、パンデミック以降マスク姿は日常の風景に溶け込んでいる。不審な行動さえしなければ、誰も気に留めないはずだ。
姉の日記によると、小島は痩せ型で不健康そうな男らしいが、外見に関する情報はそれだけだ。この限られた情報だけで特定できるか不安もあったが、恭弥はあきらめるつもりはなかった。
ビルの出口を見張っていると、私服姿の客らしき男が出てきた。続いて、グレーのスーツを着た中背の男が出てきた。その男と入れ違いに、ブルーのTシャツに短パン姿の筋肉質な男がビルに入っていった。しばらくは客の出入りが続きそうだ。
夜の十二時を過ぎると、人の出入りは極端に少なくなった。十二時半ごろに、客らしき男たちが数人出てきた。いずれも、恭弥が見張りを始めてからビルに入っていった者たちだ。
十二時四十五分ごろになって、一台の黒いワンボックスカーがビルの前に止まった。やがて、風俗嬢らしき女が四、五人ビルから出てきて車に乗り込み、ワンボックスカーは走り去っていった。
恭弥が腕時計で時間を確認すると、もうすぐ深夜の一時になろうとしていた。ビルを見張り始めてから二時間近くが経とうとしている。夜の寒さが身にしみてきて、もっと厚着をしてくればよかったと後悔した。寒さに震えながら待っていると、黒いスーツを着た男が二人出てきた。一人はかなりの肥満体で、もう一人はスポーツでもしていそうな筋肉質な体つきの男だ。どちらも店の従業員のようだったが、体型的に目的の人物ではないだろう。彼らは煙草を吸いながらビルから離れていった。
「あいつか」
ようやく小島らしき人物がビルから出てきた。痩せ型で三十代半ば、顔色の悪いやや猫背気味の男。日記の記述に近い風貌だ。派手な柄シャツを着ていて、風俗店の店長という肩書きにぴったりのやさぐれ感だ。あの男が小島だと恭弥は確信した。
小島と思われる男は、煙草を咥えながら歩き出す。恭弥はパーカーのフードを深く被り、スクーターを押しながらあとを追った。
やがて男は、大通りでタクシーを拾った。恭弥は即座にスクーターのエンジンをかけて追いかけた。
十数分後、タクシーは白い外壁のマンションの前で停車した。恭弥は十メートルほど後方でスクーターを停め、小島と思われる男がマンションへと消えるのを見届けた。
腕時計に目をやると、デジタル表示は、「01:17」となっていた。恭弥は時刻を忘れないようスマホで腕時計を撮影し、スクーターを降りてマンションへ向かった。
オートロックのない古びたマンションだった。集合ポストが並んだ奥の通路に目を向けると、小島らしき男が乗ったと思われるエレベーターが上昇しているのが見えた。階数表示が、「4」「5」「6」と上がっていき「7」で止まる。恭弥は「7」という表示もスマホに収めた。
集合ポストで七階の住人を調べる。無記名のものが多かったが、707号室に「小島」という札がついていた。
「よし!」
恭弥は小さくガッツポーズを作った。やはり、あの男が小島で間違いなさそうだ。集合ポストもスマホで撮影しておく。
昇降ボタンを押してエレベーターを呼び、七階へ向かう。古い建物だけあって、エレベーター内に監視カメラはなかった。七階に着くと、足音を殺して薄暗い廊下を進んでいく。707号室の前を通り過ぎる際、さっと玄関ドアに目を向ける。「小島」と書かれた表札がしっかり確認できた。
他の住人と顔を合わせる危険を避けるために、すぐに階下に降りることにした。今度は非常階段を使った。このマンションの構造を少しでも把握するためだ。階段を降りながら、集合ポストで本人だと確認できたのだから、わざわざ七階まで上がる必要はなかったかもなと恭弥は思う。
階下に降り立つと、建物の外観や電柱に掲示された住所、さらにエントランスの周辺もスマホで撮影した。エントランスの前には充分に身を隠せそうな生け垣があり、それを見て頭の中でプランが固まった。
「そろそろ帰るか」
あまり長居すれば不審者と疑われかねない。恭弥はスクーターに乗ると、急いでその場をあとにした。
◈
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スマホのアラームを午後七時にセットしていたが、ベッドに入ってから一時間ほどで目が覚めてしまい、眠るのをあきらめてベッドを下りた。
まだ午後の六時。夕飯の支度はまだのようだったので、それまで参考書を開くことにした。
高校では、常に学年で十番以内の成績をキープしていた。中学時代から勉強は好きで、毎日の予習復習も苦にならない。死んだ姉も同様に成績が良かった。もしあの事件がなければ、姉の未来は明るかったに違いない。恭弥は参考書に向かいながらも、そんな姉の人生を奪った者たちを決して許すまいと改めて心に誓う。
夕食後に風呂場でシャワーを浴び、黒いパーカーとベージュのチノパンに着替えた。まだ目的地に向かうには早かったので、もう一度短い仮眠を取った。今度は三十分ほどで目が覚めた。時間にまだ余裕があったため、再び参考書に向かった。
十一時になったところで、恭弥は家を出ることにした。夜遅く出かけても両親は咎めない。問題さえ起こさなければそれでいいのだ。眼鏡とマスクを着用して、そっと玄関を抜け出した。
スクーターで十分ほどの距離を走り、目的地に到着した。少し気分が高ぶっていたせいか、体感では二、三分にしか感じられなかった。
視線の先には、薄汚れた雑居ビルが立っていた。姉が勤めていた風俗店が入るビルだ。一階がラーメン屋で、その上には風俗店の他にキャバクラやガールズバーが入っているようだ。
事前に店のホームページで、営業が深夜の十二時に終わることを確認していた。あと一時間ほど待つ必要があるが、誰も営業を終えた喫茶店の前に立つ恭弥に関心を払う様子はなく、安心してこの場に立っていられた。一応、人相を隠すために、普段は授業中にしかかけない眼鏡をかけ、パーカーのフードを目深に被り、その上さらにマスクもしていた。一昔前なら不審者そのものだが、パンデミック以降マスク姿は日常の風景に溶け込んでいる。不審な行動さえしなければ、誰も気に留めないはずだ。
姉の日記によると、小島は痩せ型で不健康そうな男らしいが、外見に関する情報はそれだけだ。この限られた情報だけで特定できるか不安もあったが、恭弥はあきらめるつもりはなかった。
ビルの出口を見張っていると、私服姿の客らしき男が出てきた。続いて、グレーのスーツを着た中背の男が出てきた。その男と入れ違いに、ブルーのTシャツに短パン姿の筋肉質な男がビルに入っていった。しばらくは客の出入りが続きそうだ。
夜の十二時を過ぎると、人の出入りは極端に少なくなった。十二時半ごろに、客らしき男たちが数人出てきた。いずれも、恭弥が見張りを始めてからビルに入っていった者たちだ。
十二時四十五分ごろになって、一台の黒いワンボックスカーがビルの前に止まった。やがて、風俗嬢らしき女が四、五人ビルから出てきて車に乗り込み、ワンボックスカーは走り去っていった。
恭弥が腕時計で時間を確認すると、もうすぐ深夜の一時になろうとしていた。ビルを見張り始めてから二時間近くが経とうとしている。夜の寒さが身にしみてきて、もっと厚着をしてくればよかったと後悔した。寒さに震えながら待っていると、黒いスーツを着た男が二人出てきた。一人はかなりの肥満体で、もう一人はスポーツでもしていそうな筋肉質な体つきの男だ。どちらも店の従業員のようだったが、体型的に目的の人物ではないだろう。彼らは煙草を吸いながらビルから離れていった。
「あいつか」
ようやく小島らしき人物がビルから出てきた。痩せ型で三十代半ば、顔色の悪いやや猫背気味の男。日記の記述に近い風貌だ。派手な柄シャツを着ていて、風俗店の店長という肩書きにぴったりのやさぐれ感だ。あの男が小島だと恭弥は確信した。
小島と思われる男は、煙草を咥えながら歩き出す。恭弥はパーカーのフードを深く被り、スクーターを押しながらあとを追った。
やがて男は、大通りでタクシーを拾った。恭弥は即座にスクーターのエンジンをかけて追いかけた。
十数分後、タクシーは白い外壁のマンションの前で停車した。恭弥は十メートルほど後方でスクーターを停め、小島と思われる男がマンションへと消えるのを見届けた。
腕時計に目をやると、デジタル表示は、「01:17」となっていた。恭弥は時刻を忘れないようスマホで腕時計を撮影し、スクーターを降りてマンションへ向かった。
オートロックのない古びたマンションだった。集合ポストが並んだ奥の通路に目を向けると、小島らしき男が乗ったと思われるエレベーターが上昇しているのが見えた。階数表示が、「4」「5」「6」と上がっていき「7」で止まる。恭弥は「7」という表示もスマホに収めた。
集合ポストで七階の住人を調べる。無記名のものが多かったが、707号室に「小島」という札がついていた。
「よし!」
恭弥は小さくガッツポーズを作った。やはり、あの男が小島で間違いなさそうだ。集合ポストもスマホで撮影しておく。
昇降ボタンを押してエレベーターを呼び、七階へ向かう。古い建物だけあって、エレベーター内に監視カメラはなかった。七階に着くと、足音を殺して薄暗い廊下を進んでいく。707号室の前を通り過ぎる際、さっと玄関ドアに目を向ける。「小島」と書かれた表札がしっかり確認できた。
他の住人と顔を合わせる危険を避けるために、すぐに階下に降りることにした。今度は非常階段を使った。このマンションの構造を少しでも把握するためだ。階段を降りながら、集合ポストで本人だと確認できたのだから、わざわざ七階まで上がる必要はなかったかもなと恭弥は思う。
階下に降り立つと、建物の外観や電柱に掲示された住所、さらにエントランスの周辺もスマホで撮影した。エントランスの前には充分に身を隠せそうな生け垣があり、それを見て頭の中でプランが固まった。
「そろそろ帰るか」
あまり長居すれば不審者と疑われかねない。恭弥はスクーターに乗ると、急いでその場をあとにした。
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