陽葵の笑顔に僕は夢中だ。

そら

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1章 日常って大事だね。

魔法使いに憧れる。

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 陽葵は僕たちの顔を見ると視線を泳がせながら、僕たちが何を言い出すか…その恐怖から逃れるように、陽葵はマシンガンのように言葉を紡ぎ始めた。

「あ、そうだ悠真くん! さっきの数学の小テスト、健斗くんがさ、名前書き忘れて出しそうになってたんだよ? もう、本当バカだよねー。それから、さっきのサッカーだって、私、あともうちょっとでゴール決められたと思わない? あーあ、テスト勉強なんてしてないで、もっと練習しとけばよかったな!」

 陽葵の声は、いつもより一段高いトーンで響いていた。
僕が腕のあざに触れようとする隙を、一ミリも与えないような、必死の問いかけだった。

「陽葵、今は無理に喋らなくていいから……」

 僕がそう遮ろうとすると、彼女はさらに声を張り上げた。

「あ! そうだ、隣のクラスの美咲ちゃん、知ってる? あの子、ついに先輩に告白したんだって! えっと……どうなったんだっけ。あっ、あと……明日は英語のテストがあるんだっけ? 最悪ー! 誰か私に天才になる魔法かけてくれないかな! で、サッカーがね……」

今の陽葵の喋り方は、もはや会話ではなかった。

 栞は、その話題の一つ一つが、意味のない話だと分かっている。
それでも結局、真実に触れないことがこの子を守る手段なのだと、思い込むことにした。

「そうね……美咲ちゃん、頑張ったのね。……英語の補習も、私がノート貸してあげるから大丈夫よ」

「本当!? さすが栞! あはは、これで明日も遊べるね!」

 陽葵は満面の笑みを浮かべた。
でも、その瞳は一度も僕たちと交わることなかった…。

「……ああ。そうだな。魔法、僕も使えたらいいんだけど」

 彼女が必死に隠そうとしている「日常」に、僕は踏み込む覚悟が持てなかった。

 保健室の窓の外では、何も知らない生徒たちの笑い声が響いていた。
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