陽葵の笑顔に僕は夢中だ。

そら

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1章 日常って大事だね。

愛で人は変わる

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 深夜の公園は、虫の鳴き声と街灯が周囲を照らしているだけだった。遠くからでも、ブランコにポツンと座る小さな人影がすぐに分かった。

「陽葵!」

 僕が息を切らせて駆け寄ると、彼女はゆっくりと顔を上げた。
 
 そこにいたのは、昼間の太陽のような面影を失った、ボロボロの少女だった。さらさらだったはずの髪は無残にかき乱され、夜の寒さに体を震わせていた…。

「……あはは、悠真くん。ごめんね、こんな時間に。……恥ずかしい格好、見せちゃった」 

 彼女はこんな時でも、まだ弱々しく笑おうとした。その不自然な明るさが、今の僕には何よりも辛い。

「……いいから、何があったか話してくれ。どうしてこんな……」

 陽葵はブランコの鎖をぎゅっと握りしめ、地面の砂を見つめながら、ゆっくりと話し始めた。

「……お母さんの彼氏ね、急に目が変わったの。お母さんがいない時、私を口説くようになってね…。気持ち悪い言葉をかけて、体を触ろうとして……。でもね、一番怖かったのはお母さんだった。あの人に捨てられるのが怖くて、逆上したの。『あんたが誘惑したんでしょ』って…。」
 
 陽葵は、自分の腕を抱きしめるようにして、肩を竦めた。

「それから毎日。お母さん、すごく狡いんだよ。顔とか人目につくところは絶対に叩かないの。制服を着れば隠れる腕とか、背中とか……そういうところばっかり、あの男と一緒に……」

 陽葵の声が、恐怖で細く震え始める。

「あざができるたびに、お母さんは私の耳元で囁くの。『そんなアザだらけで気持ち悪い体、誰にも見せられないでしょ!全てあんたが悪いんだからね。』って。
 あの日、体育の時間に倒れて悠真くんに見られちゃった時、私、本当に死ぬかと思った……。バレたら、もっとひどいことをされるって」

 陽葵は顔を覆い、言葉を震わせた。

「案の定、学校からお母さんのところに連絡がいったあと……家に帰ったら、『あんたのせいで恥をかかされた』って、何度も、何度も叩かれて……。あの男の人も、お母さんの味方をして『お前がお母さんを困らせるのが悪いんだ』って笑うの。誰も、私の言うことなんて聞いてくれない……」
 
 虐待の理由。それは、母親が愛に飢えるあまり、実の娘を「女」としての敵と見てしまったからだと。
 
 僕の父さんに相談すれば、きっと力になってくれるだろう。父さんは昔から陽葵を我が子のように可愛がっていたし、この話を聞けば、自分のことのように怒ってくれるはずだ。
 
 ……正義感の強い父さんのことだ。父さんならきっと俺より上手くできるかもしれない。いや違うな。父さんならきっと話を大事にするはずなんだ。だから…言わないほうが陽葵のためなんだ。
 
 何より、僕が彼女を助けたいと思ったんだ。誰かの力を借りるんじゃなく、僕の手で彼女をこの地獄から引きずり出したかった。


「……もう、あんな家に帰しちゃいけない」
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