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3章 太陽の輝き…
色が消えた日
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バットを握りしめ、僕は家を飛び出した。
叩きつけるような雨が、世界から色を洗い流すように、重く冷たく体にまとわりついてきた…。
ただ、震える声で「助けて」と泣いていた陽葵の顔だけが、脳裏に焼き付いて離れなかった。
心臓が破裂しそうなほどに、全力で走る。喉が焼けるように熱い。濡れたアスファルトに足を滑らせ、激しく転倒した。掌を切り、膝を泥だらけにしても、痛みすら感じなかった。
「はぁ、はぁ……陽葵……っ!」
息を切らしながら、ようやく公園に辿り着いた。
「陽葵! 陽葵、どこだ! 僕だよ、悠真だ!」
雨音に負けないよう大声で叫び、遊具の裏、トイレの陰、茂みの奥……隅々まで必死に探し回った。けれど、どれだけ目を凝らしても、どれだけ名前を呼んでも、彼女の姿はどこにもない…。
「……嘘だろ。陽葵!」
絶望に突き動かされるように、僕は陽葵の家へと走った。
辿り着いた家は、不気味なほどに静まり返り、窓はすべて真っ暗だった。誰かがいる気配も、争ったような音も聞こえない。
「陽葵! 陽葵、いるんだろ! 返事をしてくれ!」
何度も名前を呼んだ。けれど、僕の声は無情な雨音にかき消されるだけだった。何もできない、何も見つけられない。自分の無力さが、冷たい雨とともに皮膚に染み込んでいく。
震える手で父さんに電話をかけた。けれど、何度コールしても繋がらない。
藁をも掴む思いで、次に栞の番号を呼んだ。
『……はい。悠真くんかな?』
電話に出たのは、栞ではなく、彼女の父親だった。
僕はなりふり構わず、今起きたことを、陽葵から聞いた惨状を必死に説明した。男が戻ってきたこと、お母さんが包丁を持って陽葵を追いかけていること。
「お願いです、助けてください! 陽葵が、陽葵がいなくなったんだ!」
栞のお父さんは、僕の錯乱したような訴えに驚きつつも、どこか事務的で冷静だった。
『……わかった。君の話が本当なら一刻を争う。こちらで警察に連絡し、事情を相談してみる。悠真くん、君は今すぐ家に帰りなさい。この状況で君が探し回っても、事態を悪化させるだけだ』
説得というより命令に近いその言葉に、僕は力なく従うしかなかった。
フラフラとした足取りで家に戻り、濡れた服のまま玄関に座り込んだ。
陽葵は今、どこで雨に打たれているのか。あの母親は、あの男は、今どこで何をしているのか。
一睡もできないまま、窓の外が白み始めた。
あんなに激しかった雨はすでに止んでいた…。そして、僕の世界からは光が完全に消え去っていた。
叩きつけるような雨が、世界から色を洗い流すように、重く冷たく体にまとわりついてきた…。
ただ、震える声で「助けて」と泣いていた陽葵の顔だけが、脳裏に焼き付いて離れなかった。
心臓が破裂しそうなほどに、全力で走る。喉が焼けるように熱い。濡れたアスファルトに足を滑らせ、激しく転倒した。掌を切り、膝を泥だらけにしても、痛みすら感じなかった。
「はぁ、はぁ……陽葵……っ!」
息を切らしながら、ようやく公園に辿り着いた。
「陽葵! 陽葵、どこだ! 僕だよ、悠真だ!」
雨音に負けないよう大声で叫び、遊具の裏、トイレの陰、茂みの奥……隅々まで必死に探し回った。けれど、どれだけ目を凝らしても、どれだけ名前を呼んでも、彼女の姿はどこにもない…。
「……嘘だろ。陽葵!」
絶望に突き動かされるように、僕は陽葵の家へと走った。
辿り着いた家は、不気味なほどに静まり返り、窓はすべて真っ暗だった。誰かがいる気配も、争ったような音も聞こえない。
「陽葵! 陽葵、いるんだろ! 返事をしてくれ!」
何度も名前を呼んだ。けれど、僕の声は無情な雨音にかき消されるだけだった。何もできない、何も見つけられない。自分の無力さが、冷たい雨とともに皮膚に染み込んでいく。
震える手で父さんに電話をかけた。けれど、何度コールしても繋がらない。
藁をも掴む思いで、次に栞の番号を呼んだ。
『……はい。悠真くんかな?』
電話に出たのは、栞ではなく、彼女の父親だった。
僕はなりふり構わず、今起きたことを、陽葵から聞いた惨状を必死に説明した。男が戻ってきたこと、お母さんが包丁を持って陽葵を追いかけていること。
「お願いです、助けてください! 陽葵が、陽葵がいなくなったんだ!」
栞のお父さんは、僕の錯乱したような訴えに驚きつつも、どこか事務的で冷静だった。
『……わかった。君の話が本当なら一刻を争う。こちらで警察に連絡し、事情を相談してみる。悠真くん、君は今すぐ家に帰りなさい。この状況で君が探し回っても、事態を悪化させるだけだ』
説得というより命令に近いその言葉に、僕は力なく従うしかなかった。
フラフラとした足取りで家に戻り、濡れた服のまま玄関に座り込んだ。
陽葵は今、どこで雨に打たれているのか。あの母親は、あの男は、今どこで何をしているのか。
一睡もできないまま、窓の外が白み始めた。
あんなに激しかった雨はすでに止んでいた…。そして、僕の世界からは光が完全に消え去っていた。
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