陽葵の笑顔に僕は夢中だ。

そら

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4章 日食

再会?

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 陽葵がいなくなってから十日が過ぎた。

 父さんも、警察も、学校の大人たちも。誰も信じられない。誰も僕の叫びを聞いてはくれなかった。唯一、隣にいて僕の崩壊を繋ぎ止めてくれているのは、献身的に支えてくれる栞だけだ。

 その日、僕は慢性的な寝不足の中でも、重い足取りで誰よりも早く学校へ向かった。
静まり返った早朝の校舎。廊下を歩く自分の足音が響く…。

ガラリ、と教室の扉を開けた。

 眩しい朝日の中、僕はいつものように、自分の斜め前にある「主のいない席」を、無意識に確認した。

「……え?」

そこには、誰かが座っていた。
窓の外を眺め、退屈そうに指で机を叩いている少女。あの誕生日で過ごした時と同じ、白いワンピースを着た陽葵だった。

「陽葵……!?」

 叫び声が、無人の教室に広がる。
 陽葵は驚いたように肩を揺らし、ゆっくりとこちらを振り返った。そして、僕の顔を見た瞬間、あの日々と変わらない、太陽のような眩しい笑顔を見せた。

「あ、悠真くん。おはよう! 今日は早いんだね?」

「陽葵! お前、どこにいたんだよ! 探したんだぞ、みんな、俺も、栞も……!」

溢れ出す感情を抑えきれず、僕は彼女の元へ駆け寄った。

 生きていた!無事だったんだ。どこかに閉じ込められていたけれど、自力で逃げてきたんだ。
 そんな都合のいい正解を予想した僕は、彼女の細い肩を力いっぱい抱きしめようと、両手を伸ばした。

「陽葵!!」

けれど──。

僕の両手は、確かな手応えを何一つ掴むことなく、虚空を泳いだ。
勢い余って陽葵の体を通り抜け、僕は机に手をついた…。

「……え?」

振り返ると、陽葵は座ったまま、驚いたように自分の体を見つめていた。

僕の腕がすり抜けた場所を、彼女は不思議そうに何度も手で払い、それから、朝日の光が自分の体を透過していることに気づいたようだった。

「……あれ。私、悠真くんに触れないよ?」

陽葵は、自分の透き通った両手で何度も僕に触れようとする。

「あの雨の夜のこと、あんまり覚えてないの。お母さんに追いかけられて、怖くて、必死に走って……。ふと気づいたら、この教室にいたんだ。だから、ずっと長い夢でも見ていたのかなって思ってたんだけど……」

陽葵は、ようやくすべてを悟ったように、弱々しく、けれど僕を元気づけるように無理に笑ってみせた。

「そっか……。私、死んじゃったのかな……?」

困ったように笑う彼女の背後にある黒板の文字が、白いワンピース越しにはっきりと透けて見えていた。

「ねえ…泣かないで?悠真くん。私、幽霊になっちゃったみたいだけど、こうしてまた…会えたんだから。」

彼女の指が、僕の頬に触れようとした。
けれど、その指先は僕の肌をすり抜け、ただひんやりとした不自然な冷気だけを残していった。

「嫌だよ……そんなの、嫌だ……!」

 僕はその場に崩れ落ち、声を上げて泣いた。生きていてほしかった。幽霊になっても会えたなんて、そんなことで納得できるわけがない。

 あんなに温かかった…陽葵の体温の温もりさえ2度と感じることができない…。
 
誰もいない教室で、朝日の光に溶けてしまいそうな少女が、嗚咽(おえつ)する僕の頭を優しくなでる「動作」を、何度も、何度も繰り返していた。
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