陽葵の笑顔に僕は夢中だ。

そら

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5章 日月

進歩

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「……どうしたら、陽葵を学校の外に連れ出せるんだろう」

 校門を通り過ぎていく生徒たちの背中を見ながら、僕はポツリと呟いた。栞もその言葉を拾い、真剣な表情で考え込む。

「そうね。もし学校の敷地外へ移動できれば、陽葵ももっと自由に動けるはずだわ。
…陽葵、今、自分が移動できる範囲がどこまでか、もう一度試してみてくれない?」

 陽葵は頷き、僕たちと一緒に校門の外へと一歩を踏み出した。けれど、校門から数メートルほど歩いたところで、彼女は透明な壁に突き当たったように足を止めた。

『……やっぱり、まだダメみたい』

 陽葵は少し残念そうに肩を落としたけれど、すぐに顔を上げて僕を見た。

『でもね、悠真くん! 前よりも、数歩だけ歩ける範囲が増えた気がするの。……もしかしたら、いつかもっと自由に、悠真くんの家や栞の家まで行けるようになるかも!』

「……その頃には、私、おばあちゃんになっていそうね」

 僕の説明を聞いた栞が、少しだけ口角を上げて微笑んだ。けれど、現実は無情だった。緊急下校で校舎は施錠され、今日はもうここに残ることは許されない。

「……仕方ないわね。今日はもう帰りましょう」

『うん。寂しいけど、仕方ないよね…。』

 陽葵は寂しさを隠すように努めて明るく笑う。僕はそんな彼女を一人にするのが耐えられず、

「俺、校庭の隅にでも残ってようかと思って」と言い出したが、すぐに二人から反対された。

「何言ってるの。校舎にも入れないのにどうするつもり? これからどんどん気温も下がるのに、無理に決まってるわ」

『そうだよ、悠真くん。風邪引いちゃうよ。そんなの、私もっと悲しいもん』

 二人に説得され、僕は観念した。

「……分かったよ。でも、明日学校に来たら、また土日で二日間学校に入れなくなる。……それまでに、なんとかして陽葵を外に連れ出す方法を調べよう」

 僕の言葉に、栞も力強く頷いた。

「ええ。私も何かヒントになりそうなものを探してみるわ。……じゃあ、陽葵また明日ね…。」

 栞は見えない陽葵にそう別れを告げた。
僕の家は学校からそれほど離れていない。いつもなら何気なく歩いているこの短い道のりが、今日ほど長く、そして心細く感じたことはなかった。

 校舎の灯りが消える。

 校門のすぐ内側で、にこちらを見送る陽葵の姿。僕が離れるにつれて、彼女の輪郭は少しずつ夕闇に溶け、小さくなっていく。何度も振り返りながら、僕は手を振るのをやめられなかった。
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