陽葵の笑顔に僕は夢中だ。

そら

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5章 日月

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 教室に戻ると、教室内は騒然とした雰囲気で自習になっていた。

 僕が席に着くと、健斗が深刻な顔をして近寄ってきた。

「……悠真、これ、聞いたか?」

 健斗は言いづらそうに、スマホのニュース画面を僕に見せた。そこには「行方不明女子高生の母親ら、遺体で発見」という見出しが躍っていた。

「さっきからこの話で持ち切りなんだ。学校側もパニックになってて、今先生たちが緊急会議をしてるらしい」

「……そうか。教えてくれて、ありがとう」

 僕は短く答えると、栞の席へと向かった。

「やっぱり、もう広まってるな」

「ええ……隠し通せることじゃないもの。陽葵については、まだ『捜索中』として扱われているみたいだけど」

 栞は僕と視線を合わせないように話をしていると、教室の扉が勢いよく開き、顔を強張らせた先生が入ってきた。

「……全員、荷物をまとめろ! 今日は全校緊急下校とする。寄り道をせずに真っ直ぐ帰るように!」

 不穏な空気が広がる中、僕たちはどさくさに紛れて校庭の隅にある植え込みの影に身を隠した。

 三人きりになった静寂の中で、陽葵がぽつりと呟いた。

『……ねえ。もう、私の体は探さなくていいよ』

「……えっ? 何を言ってるんだよ、陽葵」

 思わず声を上げた僕に対して、陽葵はどこか吹っ切れたような、寂しい笑顔で言葉を続けた。

『もう私が死んじゃってるなら、今更だよ。お母さんたちも死んじゃったし……もういいよ。』

 その言葉に、胸が締め付けられるような思いがした。本当なら、一刻も早く見つけ出して、ちゃんと弔ってあげなきゃいけないはずだ。けれど、今の僕にとって一番大切なのは、こうして「形」として目の前にいてくれる陽葵との時間だった。

「……分かった。陽葵がそう言うなら、今は無理に探すのはやめよう」

「悠真くん、いいの?」

栞の問いに、僕は頷いた。

「今、陽葵がここにいる。その事実を、僕は一番大事にしたいんだ」

 僕の言葉を聞いて、栞は一拍だけ沈黙し、それから静かに頷いた。

「……そうね。警察が動いている以上、私たち子供にできることはもうないのかもしれないわね。……分かったわ。今は、陽葵の意思を尊重しましょう」

 栞はどこか安心したように陽葵の意見に同意していた。
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