44 / 84
5章 日月
形
しおりを挟む
教室に戻ると、教室内は騒然とした雰囲気で自習になっていた。
僕が席に着くと、健斗が深刻な顔をして近寄ってきた。
「……悠真、これ、聞いたか?」
健斗は言いづらそうに、スマホのニュース画面を僕に見せた。そこには「行方不明女子高生の母親ら、遺体で発見」という見出しが躍っていた。
「さっきからこの話で持ち切りなんだ。学校側もパニックになってて、今先生たちが緊急会議をしてるらしい」
「……そうか。教えてくれて、ありがとう」
僕は短く答えると、栞の席へと向かった。
「やっぱり、もう広まってるな」
「ええ……隠し通せることじゃないもの。陽葵については、まだ『捜索中』として扱われているみたいだけど」
栞は僕と視線を合わせないように話をしていると、教室の扉が勢いよく開き、顔を強張らせた先生が入ってきた。
「……全員、荷物をまとめろ! 今日は全校緊急下校とする。寄り道をせずに真っ直ぐ帰るように!」
不穏な空気が広がる中、僕たちはどさくさに紛れて校庭の隅にある植え込みの影に身を隠した。
三人きりになった静寂の中で、陽葵がぽつりと呟いた。
『……ねえ。もう、私の体は探さなくていいよ』
「……えっ? 何を言ってるんだよ、陽葵」
思わず声を上げた僕に対して、陽葵はどこか吹っ切れたような、寂しい笑顔で言葉を続けた。
『もう私が死んじゃってるなら、今更だよ。お母さんたちも死んじゃったし……もういいよ。』
その言葉に、胸が締め付けられるような思いがした。本当なら、一刻も早く見つけ出して、ちゃんと弔ってあげなきゃいけないはずだ。けれど、今の僕にとって一番大切なのは、こうして「形」として目の前にいてくれる陽葵との時間だった。
「……分かった。陽葵がそう言うなら、今は無理に探すのはやめよう」
「悠真くん、いいの?」
栞の問いに、僕は頷いた。
「今、陽葵がここにいる。その事実を、僕は一番大事にしたいんだ」
僕の言葉を聞いて、栞は一拍だけ沈黙し、それから静かに頷いた。
「……そうね。警察が動いている以上、私たち子供にできることはもうないのかもしれないわね。……分かったわ。今は、陽葵の意思を尊重しましょう」
栞はどこか安心したように陽葵の意見に同意していた。
僕が席に着くと、健斗が深刻な顔をして近寄ってきた。
「……悠真、これ、聞いたか?」
健斗は言いづらそうに、スマホのニュース画面を僕に見せた。そこには「行方不明女子高生の母親ら、遺体で発見」という見出しが躍っていた。
「さっきからこの話で持ち切りなんだ。学校側もパニックになってて、今先生たちが緊急会議をしてるらしい」
「……そうか。教えてくれて、ありがとう」
僕は短く答えると、栞の席へと向かった。
「やっぱり、もう広まってるな」
「ええ……隠し通せることじゃないもの。陽葵については、まだ『捜索中』として扱われているみたいだけど」
栞は僕と視線を合わせないように話をしていると、教室の扉が勢いよく開き、顔を強張らせた先生が入ってきた。
「……全員、荷物をまとめろ! 今日は全校緊急下校とする。寄り道をせずに真っ直ぐ帰るように!」
不穏な空気が広がる中、僕たちはどさくさに紛れて校庭の隅にある植え込みの影に身を隠した。
三人きりになった静寂の中で、陽葵がぽつりと呟いた。
『……ねえ。もう、私の体は探さなくていいよ』
「……えっ? 何を言ってるんだよ、陽葵」
思わず声を上げた僕に対して、陽葵はどこか吹っ切れたような、寂しい笑顔で言葉を続けた。
『もう私が死んじゃってるなら、今更だよ。お母さんたちも死んじゃったし……もういいよ。』
その言葉に、胸が締め付けられるような思いがした。本当なら、一刻も早く見つけ出して、ちゃんと弔ってあげなきゃいけないはずだ。けれど、今の僕にとって一番大切なのは、こうして「形」として目の前にいてくれる陽葵との時間だった。
「……分かった。陽葵がそう言うなら、今は無理に探すのはやめよう」
「悠真くん、いいの?」
栞の問いに、僕は頷いた。
「今、陽葵がここにいる。その事実を、僕は一番大事にしたいんだ」
僕の言葉を聞いて、栞は一拍だけ沈黙し、それから静かに頷いた。
「……そうね。警察が動いている以上、私たち子供にできることはもうないのかもしれないわね。……分かったわ。今は、陽葵の意思を尊重しましょう」
栞はどこか安心したように陽葵の意見に同意していた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる