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5章 日月
指輪
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指輪を見た瞬間、喉の奥から小さな声が漏れてしまった。
「……どうした?」
父さんがバックミラー越しに声をかけてくる。動揺を隠しきれないまま、僕は慌てて指輪をポケットにねじ込んだ。
「……っ、いや。ちょっと、食べ過ぎて吐きそうになった」
そんな下手な嘘をつくのが精一杯だった。家に着くと、父さんは僕の顔を覗き込み、「本当に青ざめているな。すぐに部屋で寝なさい」と声をかけてきた。僕は泥のように重い体を引きずりながら、「わかった……」とだけ言って、逃げるように自分の部屋へ駆け込んだ。
ポケットから取り出した指輪は、間違いなく僕が陽葵にあげたものだった。
どうして、父さんの車にあるんだ。
考えたくない答えが、脳裏を支配していく。陽葵を攫ったのは、父さんだったんだ。
そう悟った瞬間、激しい吐き気が襲ってきた。僕はトイレに駆け込み、さっき食べたばかりの高級な寿司をすべて吐き出した。
この家には、一秒だっていられない。
恐怖で震える足に力を込め、隠れるように家を出ようとしたその時、背後から父さんの声が響いた。
「どうしたんだ? どこか行くのか?」
心臓が跳ね上がった。僕は振り返らず、震える声を絞り出した。
「……気持ち悪いから、コンビニに薬を買ってくる」
それだけ言って、僕は逃げるように家を飛び出した。
玄関を出る直前、一瞬だけ視界に入った父さんの顔は、すべての感情が抜け落ちた無機質な仮面のようだった。
「……どうした?」
父さんがバックミラー越しに声をかけてくる。動揺を隠しきれないまま、僕は慌てて指輪をポケットにねじ込んだ。
「……っ、いや。ちょっと、食べ過ぎて吐きそうになった」
そんな下手な嘘をつくのが精一杯だった。家に着くと、父さんは僕の顔を覗き込み、「本当に青ざめているな。すぐに部屋で寝なさい」と声をかけてきた。僕は泥のように重い体を引きずりながら、「わかった……」とだけ言って、逃げるように自分の部屋へ駆け込んだ。
ポケットから取り出した指輪は、間違いなく僕が陽葵にあげたものだった。
どうして、父さんの車にあるんだ。
考えたくない答えが、脳裏を支配していく。陽葵を攫ったのは、父さんだったんだ。
そう悟った瞬間、激しい吐き気が襲ってきた。僕はトイレに駆け込み、さっき食べたばかりの高級な寿司をすべて吐き出した。
この家には、一秒だっていられない。
恐怖で震える足に力を込め、隠れるように家を出ようとしたその時、背後から父さんの声が響いた。
「どうしたんだ? どこか行くのか?」
心臓が跳ね上がった。僕は振り返らず、震える声を絞り出した。
「……気持ち悪いから、コンビニに薬を買ってくる」
それだけ言って、僕は逃げるように家を飛び出した。
玄関を出る直前、一瞬だけ視界に入った父さんの顔は、すべての感情が抜け落ちた無機質な仮面のようだった。
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