陽葵の笑顔に僕は夢中だ。

そら

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5章 日月

愛してる…

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 何も考えられないまま、僕は栞の家の玄関先にたどり着き、壁に寄りかかるようにして座り込んだ。

 どれくらい時間が経っただろうか。帰宅した栞のお父さんが僕を見つけ、心配そうに声をかけてきた。…けれど、僕の耳には何も入ってこない。

 何度も名前を呼ばれ、ようやく顔を上げた僕のあまりの惨状に、栞のお父さんは慌てて僕を家の中へ運び入れ、栞を呼んだ。
リビングへ駆け下りてきた栞と、その隣に立っている陽葵。二人の姿を見た瞬間、僕の目からは一気に涙が溢れ出した。

「……ごめんなさい、ごめんなさい……っ」
何度も繰り返す僕を見て、栞は「とりあえず、私の部屋へ連れて行くわ」とお父さんに許可を取り、僕を二階へと促した。

 部屋に入り、扉が閉まると同時に、僕は泥を吐き出すように今日の出来事を話し始めた。電話を切ったあとに掃除をしたこと、父さんの部屋でアルバムを見たこと、母さんの過去。そして、寿司を食べながら「前の家族に戻れた」と喜んでしまったこと……。

 僕は震える手で、ポケットからあの指輪を取り出し、机の上に置いた。

「……父さんが、陽葵を殺したんだ」

 その言葉が落ちた瞬間、隣にいた陽葵が「あ……っ」と短く声を上げ、自分の頭を抱え込むようにして蹲った。

『……暗い、暗くて……ずっと、目隠しされて……』
陽葵の口から、断片的な記憶が溢れ出す。

『ずっと「愛してる」って……「どこにも行かせない」って言われて……。違う、私は悠真くんが……嫌、嫌ぁぁぁーーっ!!』

 陽葵の叫びは、霊感のないはずの栞の耳にさえ届くほどの、あまりにも悲痛で、おぞましい絶望に満ちた絶叫だった。
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