陽葵の笑顔に僕は夢中だ。

そら

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最終章 終わらない月食

陽葵の笑顔に僕は…

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エピローグ

 あれから月日は流れ、6年が過ぎた。
 僕は今、栞と付き合っている。

 必ずお父さんに恩返しをする。そのために、不動産業を営むお父さんの仕事に役立つ法学部の大学を目指した。お父さんは「今でも会社の仕事を手伝ってもらっているんだから、無理しなくていい」と言ってくれたが、僕の決意は固かった。

 何より、栞が司法書士を目指していたのが大きな決め手だった。


 栞から離れたくない。栞までいなくなるなんて耐えられない。ずっとそばにいたい。だから…僕は死ぬ気で勉強をした。


 大学生になって栞は持ち前の頭脳とたゆまぬ努力で、難関と言われる司法書士の資格を大学2年生という若さで早々と獲得してしまった。対する僕は、焦りとプレッシャーに押し潰されそうになりながらも、栞の献身的なサポート――参考書の整理から模擬試験の採点、そして何より僕を信じ続けてくれる言葉に支えられ、彼女から遅れること一年、大学3年生の時になんとか同じ資格を手にすることができた。


 すべては栞のおかげだ。栞の笑顔が見たい。常に笑っていてほしい。……あの、陽葵みたいな笑顔で。


 僕と栞は無事に大学を卒業し、お父さんの会社に就職した。
栞と一緒に司法書士の知識を駆使して仕事をこなしながら、宅建の資格も獲得した。
理由は簡単だ。


 栞が喜ぶから。合格したと伝えると、彼女は陽葵のように笑うんだ。そうすれば、僕は陽葵に会える。


 1年ほど実務を経験したが、資格だけで仕事はうまく回らないことも多く、お父さんからは「人との関わり方」を学んだ。お父さんは「誠実さが大事だ。法律や理屈だけで人は救われない」と、大切なことを教えてくれる。


……誠実さ。なるほど…。
じゃあ、あの怪物みたいに心理学を勉強しよう。「救われた」と思わせることの方が、時間はかからないだろう。


 あの怪物は失敗した。
 母さんの幸せのために仕事に命をかけ、そして裏切られた…。

 僕は違う。

 栞の笑顔のために仕事をするんだ。
仕事なんてただの箱だ。その中にある道具を巧く使えばいい。最短効率で、栞の笑顔のために時間を使おう。

 それが僕だ。

 隣にいる栞に差し出された右手。その薬指には、あの銀色の指輪がひどく自然に馴染んでいる。

 僕を見つめるその陽葵のような表情、陽葵のような笑顔。

「はぁ……今日もかわいいよ、陽葵」

僕は陽葵の笑顔に夢中だ。


              本編 完結
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