独裁国家の王女に生まれたのでやりたい放題して生きていきます!〜周りがとんでもなさすぎて普通なのに溺愛されるんですが!?〜

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第六節:兄姉会議、リアナの教育方針でバチバチすぎる件

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「――では、これより“第六皇女リアナ・グランツェル・ヴァルトルート殿下の教育方針について”の会議を開始する」

 

その宣言とともに、王宮の一室には重々しい空気が漂った。

長い円卓の周りに座るのは――ヴァルト帝国王家の皇子皇女たち。
つまり、私の兄姉たちである。

 

(……あのね? これ、私の“教育方針会議”なんだよね??)

(なんで、今にも戦争が始まりそうな空気になってるの??)

 

私は、会議室の端の椅子にちょこんと座りながら、心の中で全力ツッコミを入れていた。
いや、もう、あまりにもカオスすぎるでしょこれ。

だって、集まってる兄姉たち――

みんな、目がマジすぎる。

 

まず、第一王子・シグルド兄さま。

「リアナの戦闘訓練を開始すべきだ」

「は?」

「王族である以上、己の身を守る術は必要不可欠。剣術の初歩から始めよう」

「え、でも、私まだ三歳……」

「関係ない。俺は四歳の頃には剣を握っていた」

「それとこれとは……」

「リアナに剣を持たせる。これは決定事項だ」

「決まってないよ!?!?」

 

次に、第二皇女・レオノーラ姉さま。

「リアナには、“毒の知識”も必要ね」

「もう聞きたくないんだけど!?」

「将来、毒殺の危険がゼロとは言えないわ。ならば、あらかじめ“耐性”をつけておくべきよ」

「ちょっと待って、それ絶対ヤバいやつ!!!」

「安心して。致死量未満のものを少しずつ摂取していけば、身体が順応するわ」

「怖い怖い怖い!!!」

 

さらに、第四皇女・ルチア姉さま。

「……魔導学の基礎から学ぶべき。知識は、力」

「あ、魔法の勉強は普通に興味あるかも」

「では、明日から高度魔術理論を――」

「いや待って待って待って!!!」

「基礎から、とは言ったが、基礎とは“学ぶべき理論の礎”のこと。基礎理論書を用意する」

「分厚い!! これ、さっきの歴史書より分厚い!!!」

 

……で、第五王子・ユリウス兄さまに至っては。

「リアナの情報収集能力を鍛えるべきだ」

「どうしてそうなるの?」

「帝国の王族である以上、“情報”を制することは極めて重要。よって、まずは暗号解読訓練から始める」

「暗号!? 三歳児に!?」

「それから、日々の会話を記録し、分析してもらう」

「何を!? どうやって!?」

「安心しろ、最初は簡単な暗号文から始める」

「ちょっと何言ってるかわからない」

 

そして、第三王子・ゼクス兄さまにいたっては。

「リアナ……君の美的感性を磨こう」

「えっ?」

「まずは石膏像を彫ることから始めよう」

「いや、芸術系!? しかもいきなり彫刻!?」

「君の手による“リアナ像”……今から完成が楽しみだ……」

「どうして私の像!?」

 

(ねえ!! みんなバラバラすぎる!!)

(っていうか、どれもこれも教育の域を超えてない!?!?)

 

私はただ、普通に……普通に勉強できればいいの!!

でも、兄姉たちはみんなガチ。
もう、今にも「リアナの教育担当は誰がふさわしいか」で戦争が勃発しそうな勢いである。

 

「……はぁぁぁ」

思わず、大きなため息が出た。

それを聞いた兄姉たちは、一斉に私を見て――

 

「……やはり、すでに“戦いの重圧”を感じ取っているのか?」(シグルド兄)
「ふふ、やはり毒のこと、怖い?」(レオノーラ姉)
「む……難しすぎたか?」(ルチア姉)
「リアナ……君の彫刻の完成を心待ちにしているよ」(ゼクス兄)
「では、情報戦の基礎から……」(ユリウス兄)

 

(ちがう!! そうじゃない!!!)

 

この兄姉たち、やっぱり全員濃すぎる。
そして、まったく意見が合わない。

 

「……えーと、私、普通に、普通の勉強がしたいな?」

 

そう言ったら、全員が沈黙した。

 

「……普通?」

「普通とは?」

「普通……つまり、“最適な学習”のこと?」

「じゃあ、やっぱり暗号解読から?」

 

(なんでそうなるの!!!)

 

この兄姉会議、結局まとまることなく、**「リアナの教育は当面“試験的に全員が関わる”」**というカオスな結論になった。

つまり――

 

明日から、毎日違う兄姉の授業が行われることになった。

 

(これもう、絶対、しぬやつ……)

 

一方、その頃。

 

「第六皇女は、次に何をする?」

「……王族内で、さらに影響力を増しているらしい」

「……ならば、“一手”打つべきだな」

 

王都の裏社会で、またひとつ――黒い策謀が動き出していた。

「――では、これより“リアナ皇女殿下の特別授業”を開始する」

 

宣言とともに、広すぎる王宮の一室に集まったのは――

私の兄姉たち(※全員クセが強い)。

 

(ねぇ、なんでこんな“戦略会議”みたいな雰囲気になってるの!?)

 

私、リアナ・グランツェル・ヴァルトルート。
たった三歳にして、兄姉たちからの“個別指導”を受けることになった。

……いや、本当はね? ただ、普通の勉強をしたかっただけなの。
読み書きとか、計算とか、そういう基本的なやつ。

 

だけど、兄姉たちが持ってきた「授業内容」が――どれもこれも“王族基準”でおかしすぎる。

 

「さて、まずは俺が剣術を教える」

そう言って立ち上がったのは、第一王子・シグルド兄さま。
ヴァルト帝国随一の戦士であり、最強の剣士とも呼ばれる男。

 

「リアナ、お前は剣を持ったことがあるか?」

「ないよ!? 三歳児だよ!?」

「ならば、今日から鍛える」

「待って、物騒なもの持たせないで!?!?」

「安心しろ。まずは“軽い剣”からだ」

 

そう言って渡されたのは、鉄製の短剣。

(普通に重いよ!?!?)

(ていうか“三歳児用の剣”とかいう発想がそもそもおかしい!!)

 

「ふむ、では、基本の構えから……」

「……えぇ……」

 

必死に短剣を握る私。
それを見た兄は、ふっと微笑んだ。

 

「……悪くない」

「いや、何が!?」

「リアナ、お前は適性がある」

「どこを見てそう判断したの!?!?!?」

 

(え、もしかして私、今後ずっと剣術やらされるの……??)

そんな絶望に浸る私の前に、次の姉が登場する。

 

「次は、私の授業ね」

第二皇女・レオノーラ姉さま。

手には、小さなガラス瓶。中身は……紫色の液体。

 

「リアナ、毒の知識は王族にとって必須よ」

「怖い怖い怖い!!! そんなこと三歳児に教えないで!!!」

「大丈夫、これは飲んでも平気」

「そもそも飲む前提がおかしい!!」

「これは“毒”ではなく、“抗毒素”。少しずつ体に馴染ませていくの」

「えぇ……」

 

(この国の“安全基準”、いろいろおかしくない??)

 

しかし、私の抗議など関係なく――

「よし、では次は私の番だ」

「君の知性を磨く時間だ」

「魔導学の基礎から始めよう」

「さあ、リアナ……まずは、この石膏を彫ってみよう」

 

兄姉たちが次々に、次々に、私に授業を仕掛けてくる!!

・剣術訓練 → とにかく体力の限界
・毒の授業 → わりと命の危険を感じる
・情報戦の講義 → 暗号文を解読させられる(読めるわけない)
・魔法学 → 最初の参考書が1000ページ越え
・芸術の授業 → 何故か「リアナ像」を作らされる(※いらない)

 

(……これ、どう考えても、生き延びるだけで精一杯なんだけど!?!?)

 

いや、もう、普通に“勉強”とかじゃない。
「王族の生存戦略」みたいな訓練が始まってるんだけど!?!?

 

そんなカオスな状況の中――
私はふと、兄姉たちの顔を見て気づいた。

 

(……あれ、みんな、私に授業してる時だけ、すっごく楽しそうじゃない?)

 

兄姉たちは普段、互いに顔を合わせるとすぐに険悪になる。
でも、今は――みんなが私の方を見て、「自分の知識を教えたい」って顔をしている。

(もしかして、これって……)

 

──私の存在が、兄姉たちを繋いでる?

 

「リアナ! 次は暗号解読だ!」
「待って、もう無理、限界……」

「だめよ、まだ毒の基礎知識が残ってるわ」
「いや、毒の勉強はやめよう???」

「リアナ、戦場で生き残るためには――」
「戦場行かないから!!」

 

(あー、もう、ほんとにこの家族……)

 

「……でもまあ、みんな仲良しそうだから、いっか」

 

私は、小さく笑った。

 

 

……だが、その頃。

王宮の外では、新たな動きが始まっていた。

 

「計画は進行中か?」

「すでに“偽の手紙”を流布済み。あとは、彼らがどう反応するか……」

「ふふ……第六皇女の“聖女伝説”も、そう長くは続くまい」

 

暗闇の中、影が笑う。

彼らの手元には、王都の貴族たちに送られた手紙。

そこには、たった一言――

 

「第六皇女の微笑みは、嘘である」

 

 

(……えっ、私、何もしてないんだけど!?!?)
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