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第二章②:令嬢再生プログラム、始動しました。
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翌朝、私は自室のテーブルに座らされた。
目の前には、開かれたノートと分厚い参考書が数冊。
その隣には、やる気に満ち満ちた母が、笑顔でスタンバイしていた。
「というわけで! 今日から始まるわ、“第一王女、社交界復帰プロジェクト”!」
「なんかタイトルがもうすでにしんどい……」
「まずはドレスよ! 貴族は“印象がすべて”。姿を見られた瞬間に、その日の空気が決まるの!」
そう言って母が出したのは――なんと15着の候補ドレスだった。
「ひいぃ……どこに隠してたのこの量……」
「そりゃあもう、いつかのために準備してたに決まってるでしょ!?」
(……あながち冗談じゃないのがこの人のすごいとこ)
選定会議の結果、“落ち着いた深紅のドレス+白金のレースアクセ”で決定。
派手すぎず、でも“悪役令嬢時代”の名残を一切感じさせない、誠実さと品を備えた装いだった。
「……正直、似合ってる」
鏡を見ながら、私は小さくつぶやいた。
そのとき――ドアがノックされて、兄がひょこっと顔を出した。
「お。デビュープロジェクト、進行中か?」
「お兄ちゃん……なんでそのネーミング浸透してるの……」
「いや、母が昨日パーティ名“再誕の白百合”って回覧で回してたしな。あれ、俺の暗部ネットにも流れてたぞ」
「情報の流出はやすぎでしょ!!!」
「……で、何かアドバイスくれるの?」
兄は頷いて、なぜか後ろから一冊の黒い本を取り出した。
「“社交場での暗示的言語の使い方”ってやつ。読み込んでおけ。貴族は“言外”で戦う」
「そんな中二っぽい参考書で大丈夫!? これ、発行元《黒薔薇の書斎》って書いてあるよ!? 怖いんだけど!?」
次にやってきたのは、弟。
姿勢よく立って、真面目な顔で言ったのは――
「……腰の位置がずれてる。ドレスを着た状態での歩行訓練、30分ほど必要」
「ちょっと待って!? これ、軍の訓練なの!? 社交の準備なの!?」
「社交もまた戦場。立ち姿は第一の防衛線。油断すれば足を取られる」
「もうこの家の常識怖いんだけど!!!」
母は母で、仕草の練習を始めさせてくる。
「お辞儀の角度は45度! 顎は引いて! そう、それが“品”! あと、笑顔は“眉の上がらないやつ”!」
「笑いすぎると“あざとい”になるらしいけど、笑わなすぎると“高慢”らしいです!」
「えっ、なんでそんな高度なバランス求められるの!? 貴族の世界すごく面倒!!」
「これが“階級の魔法”よ。慣れれば無敵になるから!」
その日の終わり、私はドレスの裾を踏んで3回転び、
カップを2つ割り、完璧な笑顔が“営業スマイル”と酷評された。
でも、それでも少しずつ――
(……悪くないかも)
ほんの少しだけ、社交界に立つ自分の姿が、遠くに見えた気がした。
目の前には、開かれたノートと分厚い参考書が数冊。
その隣には、やる気に満ち満ちた母が、笑顔でスタンバイしていた。
「というわけで! 今日から始まるわ、“第一王女、社交界復帰プロジェクト”!」
「なんかタイトルがもうすでにしんどい……」
「まずはドレスよ! 貴族は“印象がすべて”。姿を見られた瞬間に、その日の空気が決まるの!」
そう言って母が出したのは――なんと15着の候補ドレスだった。
「ひいぃ……どこに隠してたのこの量……」
「そりゃあもう、いつかのために準備してたに決まってるでしょ!?」
(……あながち冗談じゃないのがこの人のすごいとこ)
選定会議の結果、“落ち着いた深紅のドレス+白金のレースアクセ”で決定。
派手すぎず、でも“悪役令嬢時代”の名残を一切感じさせない、誠実さと品を備えた装いだった。
「……正直、似合ってる」
鏡を見ながら、私は小さくつぶやいた。
そのとき――ドアがノックされて、兄がひょこっと顔を出した。
「お。デビュープロジェクト、進行中か?」
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「いや、母が昨日パーティ名“再誕の白百合”って回覧で回してたしな。あれ、俺の暗部ネットにも流れてたぞ」
「情報の流出はやすぎでしょ!!!」
「……で、何かアドバイスくれるの?」
兄は頷いて、なぜか後ろから一冊の黒い本を取り出した。
「“社交場での暗示的言語の使い方”ってやつ。読み込んでおけ。貴族は“言外”で戦う」
「そんな中二っぽい参考書で大丈夫!? これ、発行元《黒薔薇の書斎》って書いてあるよ!? 怖いんだけど!?」
次にやってきたのは、弟。
姿勢よく立って、真面目な顔で言ったのは――
「……腰の位置がずれてる。ドレスを着た状態での歩行訓練、30分ほど必要」
「ちょっと待って!? これ、軍の訓練なの!? 社交の準備なの!?」
「社交もまた戦場。立ち姿は第一の防衛線。油断すれば足を取られる」
「もうこの家の常識怖いんだけど!!!」
母は母で、仕草の練習を始めさせてくる。
「お辞儀の角度は45度! 顎は引いて! そう、それが“品”! あと、笑顔は“眉の上がらないやつ”!」
「笑いすぎると“あざとい”になるらしいけど、笑わなすぎると“高慢”らしいです!」
「えっ、なんでそんな高度なバランス求められるの!? 貴族の世界すごく面倒!!」
「これが“階級の魔法”よ。慣れれば無敵になるから!」
その日の終わり、私はドレスの裾を踏んで3回転び、
カップを2つ割り、完璧な笑顔が“営業スマイル”と酷評された。
でも、それでも少しずつ――
(……悪くないかも)
ほんの少しだけ、社交界に立つ自分の姿が、遠くに見えた気がした。
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