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番外編「新しい恋の予感」
沙矢と話していたら青さまがやってきた。
駐車場に車を停めて歩いてきたのだろう。
「沙矢、陽香さん、おつかれさま」
「青!」
「青さま、お疲れ様です」
「陽香さんは電車ですか?
駅まで送りますよ」
「わーい! 青さま、ありがとうございます」
駅まででも車に乗せてもらえるのはありがたい。
あっという間に駅に着いてほんのり名残惜しくなる。
後部座席から降りて助手席の側に向かった。
「青さま、ありがとうございます」
「また三人で夕食でも食べにいけるといいですね」
青さまは沙矢の親友ということで私に信頼を置いてくれている。
鼓動がうるさくなることはないが、
相変わらず罪なほど麗しい人だ。
「また明日、報告するね。ごはんも一緒しよ!」
「沙矢、ありがと。また明日ね」
婚約指輪を買いにいくのに違いない。
予想通り次に会った沙矢は婚約指輪を身に着けていた。
気恥ずかしそうにしながらも指に嵌めている。
沙矢を見つめにこにこと微笑む。
「沙矢……おめでとー!」
「ありがとう。目立つことはしたくなかったけど、
あの人が納得してくれそうになくてつけてきたの」
「沙矢は俺のモノって、公にアピールしたい。
青さまの独占欲はさすがとしか言いようがないわ」
「一気に進んでしまったわ」
沙矢は思った以上に大切にされていた。
独占欲で縛るだけじゃなくて
本気で守るという意思が伝わる。
遠からず二人は結婚するのだ。
「あのクズの元部長のおかげね。
焚きつけてくれたおかげで青さまの気持ちも
燃え上がる一方で、他の人間に渡せるか! って思ったのよ。
沙矢も嫌な目にあったけど、ある意味感謝なのかもしれないわ」
彼女が青さまに送ってもらった時は出勤時間が普段より早い。
朝にこんなに話す時間があるのは、車出来たからだ。
「前向きに考えていいってことね」
「助けてもらわなくちゃ沙矢はどうなっていたと思うの?
思い出させたくないけど。
部長の妹は吸入麻酔薬……クロロホルムを
あなたにかがせようとしたのよ。
隠しもしていなかったから捜査ですぐ出てきた」
何度思い出してもはらわたが煮えくり返る。
「手に持ってたハンカチをあてられる直前で、
助けてもらったの。危機一髪だった」
「本当に無事でよかった。
彼らの信頼関係はすごいわね」
沙矢は頷いた。
「あの二人はいなくなったんだから、
そこは安心していいところ。
沙矢は、大事な人と婚約してこれから
結婚への道を進むんだからもうマイナスはいらないの」
「……新しい課長が昼休みに来るのよね」
「櫻井部長……32歳。
T大出身で、神奈川県にある支社で課長を務めていて
今回、部長に抜擢されてこの会社にやって来るの」
「情報、早っ」
「ほかの女性社員の話を聞いただけよ。
尊敬できる感じの人ならそれでいい。
悪魔はもういらないからね」
女性社員はどこから情報を仕入れたのか。
独身だとか……。
バリバリのエリートだから、見た目で人気も出そうだ。
いくらかっこよくても職場の人だから、関係ない……。
言い聞かせながらも気になってはいる。
「四月が来る前に異動は慌ただしかったでしょうね。
でも引き受けてくれてよかった」
「そうね。私も正社員登用試験をクリアしたいし、
ちゃんとした人のもとで働けるとありがたいわ」
「私も。まだ社会人経験も浅いし、
頑張っていきたい。
ふさわしくないなんて思いたくないし言われたくないもの」
「私は沙矢も一緒ならうれしいけどね。
青さまはそういうの気にしてないだろうから、
これからもありのままでいればいいと思うわよ」
同期入社で高卒という共通点もある沙矢と一緒にこれからもがんばりたい。
「何でそんなにわかるの?」
「沙矢を見てたら伝わってくるもの。
青さまはちゃんとあなたを見つめて愛してくれてるって」
沙矢が感極まっている。
昼休みに櫻井部長が部署を訪れ挨拶にやってきた。
端麗な容姿と物腰が柔らかい雰囲気で、
女性社員が色めきだっている。
男性社員にも好感触で、どうやら以前いた春日とは真逆の
人物らしい。
「この度部長職を任されました櫻井です。
支社の方にいて東京にもなれておりませんが、
頑張っていきます。皆さん、よろしくお願いします」
盛大な拍手が巻き起こる。
(頼りがいはありそうかな?)
皆が散り散りになりそれぞれ、昼食を取りに行った。
就業後、部署は櫻井部長の歓迎会の話で盛り上がっていた。
前の部長の酷さもあり櫻井部長は皆から歓迎されている。
正直、飲み会とかはしばらく遠慮したかったが、
部長の歓迎会なら参加したいと思った。
強制参加という意味合いではないが、
用事がない限り参加は推奨される。
沙矢も参加する意思を教えてくれた。
今週の金曜日に歓迎会をすることになったのは、
残業がないことが分かっていたからだ。
無事に仕事を終えた私と沙矢は、給湯室で
お茶をしてにっこりと微笑みあう。
「沙矢、会場までは電車で一緒に行く?
足がない人は、部長が車に乗せてくれるって話だけど」
自らの歓迎会とはいえ太っ腹だと思った。
「電車で行きましょう。乗せられても三人くらいでしょうし」
「そうね」
沙矢は明らかに青さまに何か言われるのを気にしている。
「沙矢、顔に出てる。そういうことね……」
「陽香は別行動でも平気よ」
意外にそっけないことを言われた。
「何寂しいこと言ってるのよ。
一緒に行くに決まってるじゃない」
きまり悪そうな顔をした沙矢は、
小さな声で謝った。
エレベーターで一階まで降り、会社から出る。
私が先を歩き交差点を渡る。
駅の構内に入ると一瞬路線図に目をとめた。
「……青はどこの大学出たのかな」
「知らないの?」
「おそらくT大学だから、最寄り駅はT大前駅。
車を使わない日は電車に乗ってたのよ」
「……絶対そうよ。T大医学部」
現在の最寄り駅もT大前駅だ。
出身大学を知らないのは驚いたが、
彼なら言わないのも頷ける。
「やっぱりハイスぺ……うん。
それだけじゃなさそうだけどね」
「ふふ……結婚したら遊びに来てね」
「絶対行くわ」
胸がかすかに軋んだが、私が身勝手なだけ。
沙矢は婚約をし近い将来、恋人と永遠を誓い合う。
青さまと一緒にいるから沙矢は綺麗なんだ。
元々可愛かったけれど本当にあか抜けた。
また彼女の住まいに遊びに行かせてもらおう。
数分おきにやってくる電車は便利だと思う。
ゲートが開き電車に乗った。
満員電車で沙矢と手を繋いでいた。
二センチほど私の方が高い身長だ。
目線はほぼ変わらない。
胸が大きいし、羨ましいけれど
沙矢は陽香はスタイルよくていいなと言っていた。
要するにお互い隣の芝生は青い状態だ。
ふわふわと微笑む沙矢とたわいもない会話をする。
電車の中では、声を潜めながらも話している人も多い。
二駅降りた先に歓迎会の会場はあった。
店員さんに案内してもらい店内を進む。
障子を開けると座敷があり部署のメンバーがいた。
櫻井部長の姿も見える。
ひそやかな盛り上がりが伝わってくる。
靴を脱いで座敷に上がる。
櫻井部長はこちらに向けて手を振っていた。
フレンドリーな人だ。
内心、誰かと比べて首を振る。
冴島先輩は沙矢と目が合うとぎこちなく笑っていた。
合コンの時に青さまと何かあったに違いない。
沙矢は私の隣、私は櫻井部長の隣に座った。
「二人ともお疲れさま。
今日は気兼ねなく楽しんでいってね」
「部長、お疲れ様です」
それからしばらくして部署のメンバーがそろった。
ほぼ全員がこの場に揃っている。
時間が経つにつれ砕けた雰囲気になっていく中で、
私も三杯目のアルコールを注文していた。
ビールは苦手なのでカクテルとレモンサワーである。
酔っていないとは思うがとてもいい気分だった。
「仕事の後の一杯は格別ね」
「三杯目でしょう?」
「そうだぞ。そろそろ水とかソフトドリンクにしておけ。
水無月は飲まないのか?」
何やら急に距離が近くなっている。
過保護な部長である。
「私はやめておきます……」
「沙矢には無敵な王子様がいてー
羽目を外したら怒られちゃうんですよ」
ふふっと笑ったら沙矢は顔を赤らめた。
これは羞恥によるものでアルコールは関係ない。
「陽香……!」
部長がやたら気にかけてくるのは何故だろう。
「沙矢、ごめん。私、酒癖が悪いのかも」
「赤くはないし酔っぱらってはいないみたいだ。
酒を飲むとうっかり漏らしちゃうタイプなのかもしれない」
爆弾発言はしちゃったけど決めつけないでほしい。
「陽香もお料理食べましょう。
何も食べずにお酒ばかりはよくないわ」
「そうだな。軟骨のから揚げ、美味いぞ」
部長が私と沙矢に大皿から料理を取り分ける。
皆がそれぞれ自分で小皿に取る中で、
サービスが過剰だ。
「沙矢、全く飲めないわけじゃないんでしょう?
ちょっとくらい飲んでも大丈夫よ……」
「……無理はしなくていいと思うよ」
私は沙矢にお酒を勧め、部長は止めた。
「じゃあ……思いっきり薄めたこれを」
沙矢は意を決した表情でカシスオレンジを注文した。
テーブルの上にあった料理は、ほとんどなくなっている。
コース料理を頼んでいたため、テーブルの上は片づいている。
「乗らなくていいんだぞ?」
「親友と乾杯がしたいんです」
「わーい。沙矢、大好き!」
会社ではこんなに気安いやり取りができなかったから
いい機会だったのかもしれない。
沙矢の言葉に感激して伝えていた。
「私も大好き!」
二人は部長を間に挟み盛り上がった。
「思いっきり薄くして水も多くしてください」
沙矢はにこにこと店員さん(男性)に伝える。
これが青さまを心配させる原因なのか……。
いや愛想がいいだけか。
店員さんは笑顔で応じその場を下がった。
櫻井部長は女性社員に話しかけられ愛想よく応じている。
私が青さまを推しているのと同じ。
慕っているだけだ。
気さくな人柄で上司として仕事の対応もいいし、
皆から好かれている。
お酌をする女性社員を断らない。
(部長と言えどそこまで愛想よくなくていいのでは?)
「異動してきて日が浅くても、
実力があるのは皆が知ってますもんね」
私は同僚が去るのを見届けて話しかけた。
「実はいっぱいいっぱいなんだけどね。
引っ越しと異動がほぼ同時で……ばたばたで
なんにも慣れてない」
「本当に今回はありがとうございます」
沙矢が丁重に頭を下げている。
「どうして水無月さんがそこまで……」
櫻井部長は、不思議そうにしているが
何が起きて自分が呼ばれたかは一応把握しているはずだ。
知らないふりをしている。
「時間がなかったのにすぐ来てくれて、
ヒーローじゃないですか」
「本当は四月からでよかったんだけどね……
その間は課長さんの負担が大きくなるだろう?」
「……立派な人すぎる」
「人格者」
皮肉を込めたが部長はさわやかな笑みを崩さない。
アルコールの口直しか麦茶を飲み干している。
私は部長に視線を吸い寄せられていた。
惚れやすいわけじゃない。
ただ気にかかって仕方がない。
「あの……解散って何時ごろでしたっけ?」
「自由に帰っていいってことで特に決まってないよ。
君たちは電車だっけ?」
「はい。あ、いえ……私は」
沙矢が時間を気にして慌てふためいている。
「沙矢は、あの方が迎えに来るんですう」
からかってみた。
「……それなら大丈夫だね」
部長がこちらに視線を向けたので微かに俯く。
「ちょっと休ませたら駅まで送ろうと思う。
心配だから」
部下にそこまで気を遣ってくれなくていい。
私は大人なんだから自分で何とかできる。
「優しいんですね……ありがとうございます」
それでもうれしかったからそう返していた。
「お疲れさまでした。失礼します。
陽香、月曜日に会いましょうね。
メッセもちょうだい!」
「沙矢、せんせーによろしくね」
くすっと笑みが漏れる。
少し酔っているのかもしれない。
沙矢が座敷から出て帰っていく。
「先生?」
「沙矢の付き合っている人の職業です。なんでしょう?」
「……社員のプライベートを詮索するつもりはないよ」
部長は、残った社員の人数を確認した。
「櫻井部長、部署のメンバーの顔と名前が一致してるんですね」
「一日目で覚えたよ。大事な部下だから、
把握しておかなくちゃいけないだろう」
「……なるほど」
「それより大丈夫か?
斎藤、結構飲んでただろ」
「だいじょうぶですよう」
「ろれつが回ってない」
はっきり言われるとむかつく。
残っている数人にお開きにしようと告げる部長の声を聞いた。
「帰ろう。送っていくから」
今、何を言われたんだろう。
ぼんやりしていた私は、肩を叩かれて覚醒する。
「送っていくとか悪いですよ!」
「そうだよな。距離感がおかしいし」
距離感……。
部長は全員分の会計を済ませる。
歓迎会なので経費で落ちるらしい。
店を出て駐車場に向かうと沙矢と青さまがいた。
10分ほど経っていたが彼らはまだ残っていたらしい。
「……さーやー」
変な愛称で読んでみると沙矢は驚いた顔でこちらを見た。
「陽香!」
二人が側にやってくる。
青さまは私を見てそれから櫻井部長に視線を向けた。
(心配してくれているのかな?)
青さまと会うのは今日が二度目だが、
今までのイメージよりずっと人間らしいと思えていた。
「お世話になっております」
部長に一礼し、二人が歩いていく。
車に乗り込もうとする姿も遠目に見えた。
「……水無月さんは彼が迎えに来てくれたのか。
確か一緒に住んでるんだっけ?」
「……一応社員名簿に住所のってるでしょ。
とんでもない所に住んでます」
「送るよ」
さらっと流し部長は口にした。
幸い部署のメンバーはここにおらず二人きりだ。
誰にも見られていない。
「駅まで送ってくれてまた戻ってくるんですか?」
「……距離感を間違えたと後で訴えられたくはないんだけど」
「しませんし」
「部屋まで送る」
後部座席に乗せてくれ、送ってくれた。
「ありがとうございました」
「また月曜日にな」
大きな手が伸びて私の頭を撫でる。
「子供扱いはやめてください」
「……気分を害したらすまない」
ツンとした態度を取ってしまったが特に嫌悪はなかった。
「部長って既婚者じゃないですよね。既婚者なら、
余計に部下との距離感は見誤っちゃだめですよ」
「独身だよ。おやすみ」
言葉を返せなかった。
何故か胸の鼓動が暴れていたからだ。
その夜は、ぐっすり眠った。
土曜日は、久しぶりに一人でカラオケに行ってストレス発散した。
何故か恋の歌ばかり歌ってしまい後で赤面した。
買い物もして夕方まで家に帰らなかったが、
気を紛らわすことはできなかった。
翌日、ふと思い立ち沙矢に電話をかけた。
「もしもし、陽香?」
「沙矢……金曜日はごめんなさい!
ありがとう」
「私は何もしてないわよ」
「醜態さらしちゃったし……思い出したら穴に埋まりたくなる」
「大丈夫だって」
「何で、限界をわきまえずに飲んだんだろう……って考えて気がついたの。
私、櫻井部長を意識してるっぽい」
「え、そうなの!?」
「うん。送ってもらった時、部屋の前で
おやすみって頭を撫でてくれたんだけど」
「うっかりドキドキしちゃってやばいなって」
「……陽香、声から恋心がダダ洩れしてる」
「私もついに沙矢側に!?
いや、あなたの方がすごかったか」
沙矢に指摘されてしまった。
「……ごほ……っ」
むせる彼女は相変わらずかわいいのだけど。
「土曜日は冷静になりたくて
ヒトカラしたり買い物で気を紛らわせてたんだけど、
日曜日になっても、思い出すとドキドキしちゃうし。
つい沙矢に話を聞いてもらいたくて電話をかけちゃった」
「私で力になれるかわからないけど、
陽香の味方だからね」
「さーやー」
「青も時々さーやって呼ぶけど、
さーやーは新しいわ」
私は口元を押さえた。
「ぶっ……何その反応!
気が抜けたじゃないの」
「酔ってたから、そう呼んだのかと」
「さやえんどうとか言わないから安心して」
「さすがにそれは嫌」
「だよね」
笑い合う。
「沙矢が上手くいって、青さまと楽しく暮らしているのは、
親友としてもとても嬉しいのよ。
私もあやかってがんばるわ。
どうなるかはわからないけど」
「櫻井部長は、独身よ。
上司と部下、社内恋愛で環境が厳しいのはあるけれど」
沙矢に言われずとも知っている。
本人からも聞いたところだ。
「……うん。少し聞いた」
「じゃあそろそろ切るね! 沙矢、ありがとう。
また明日、会社でね」
「うん。教えてくれてありがとう」
お互い笑い合って電話を切る。
先にかけておいて勝手なものだけど。
ときめきの欠片は逃したくない。
不毛な片思いよりはマシだ。
駐車場に車を停めて歩いてきたのだろう。
「沙矢、陽香さん、おつかれさま」
「青!」
「青さま、お疲れ様です」
「陽香さんは電車ですか?
駅まで送りますよ」
「わーい! 青さま、ありがとうございます」
駅まででも車に乗せてもらえるのはありがたい。
あっという間に駅に着いてほんのり名残惜しくなる。
後部座席から降りて助手席の側に向かった。
「青さま、ありがとうございます」
「また三人で夕食でも食べにいけるといいですね」
青さまは沙矢の親友ということで私に信頼を置いてくれている。
鼓動がうるさくなることはないが、
相変わらず罪なほど麗しい人だ。
「また明日、報告するね。ごはんも一緒しよ!」
「沙矢、ありがと。また明日ね」
婚約指輪を買いにいくのに違いない。
予想通り次に会った沙矢は婚約指輪を身に着けていた。
気恥ずかしそうにしながらも指に嵌めている。
沙矢を見つめにこにこと微笑む。
「沙矢……おめでとー!」
「ありがとう。目立つことはしたくなかったけど、
あの人が納得してくれそうになくてつけてきたの」
「沙矢は俺のモノって、公にアピールしたい。
青さまの独占欲はさすがとしか言いようがないわ」
「一気に進んでしまったわ」
沙矢は思った以上に大切にされていた。
独占欲で縛るだけじゃなくて
本気で守るという意思が伝わる。
遠からず二人は結婚するのだ。
「あのクズの元部長のおかげね。
焚きつけてくれたおかげで青さまの気持ちも
燃え上がる一方で、他の人間に渡せるか! って思ったのよ。
沙矢も嫌な目にあったけど、ある意味感謝なのかもしれないわ」
彼女が青さまに送ってもらった時は出勤時間が普段より早い。
朝にこんなに話す時間があるのは、車出来たからだ。
「前向きに考えていいってことね」
「助けてもらわなくちゃ沙矢はどうなっていたと思うの?
思い出させたくないけど。
部長の妹は吸入麻酔薬……クロロホルムを
あなたにかがせようとしたのよ。
隠しもしていなかったから捜査ですぐ出てきた」
何度思い出してもはらわたが煮えくり返る。
「手に持ってたハンカチをあてられる直前で、
助けてもらったの。危機一髪だった」
「本当に無事でよかった。
彼らの信頼関係はすごいわね」
沙矢は頷いた。
「あの二人はいなくなったんだから、
そこは安心していいところ。
沙矢は、大事な人と婚約してこれから
結婚への道を進むんだからもうマイナスはいらないの」
「……新しい課長が昼休みに来るのよね」
「櫻井部長……32歳。
T大出身で、神奈川県にある支社で課長を務めていて
今回、部長に抜擢されてこの会社にやって来るの」
「情報、早っ」
「ほかの女性社員の話を聞いただけよ。
尊敬できる感じの人ならそれでいい。
悪魔はもういらないからね」
女性社員はどこから情報を仕入れたのか。
独身だとか……。
バリバリのエリートだから、見た目で人気も出そうだ。
いくらかっこよくても職場の人だから、関係ない……。
言い聞かせながらも気になってはいる。
「四月が来る前に異動は慌ただしかったでしょうね。
でも引き受けてくれてよかった」
「そうね。私も正社員登用試験をクリアしたいし、
ちゃんとした人のもとで働けるとありがたいわ」
「私も。まだ社会人経験も浅いし、
頑張っていきたい。
ふさわしくないなんて思いたくないし言われたくないもの」
「私は沙矢も一緒ならうれしいけどね。
青さまはそういうの気にしてないだろうから、
これからもありのままでいればいいと思うわよ」
同期入社で高卒という共通点もある沙矢と一緒にこれからもがんばりたい。
「何でそんなにわかるの?」
「沙矢を見てたら伝わってくるもの。
青さまはちゃんとあなたを見つめて愛してくれてるって」
沙矢が感極まっている。
昼休みに櫻井部長が部署を訪れ挨拶にやってきた。
端麗な容姿と物腰が柔らかい雰囲気で、
女性社員が色めきだっている。
男性社員にも好感触で、どうやら以前いた春日とは真逆の
人物らしい。
「この度部長職を任されました櫻井です。
支社の方にいて東京にもなれておりませんが、
頑張っていきます。皆さん、よろしくお願いします」
盛大な拍手が巻き起こる。
(頼りがいはありそうかな?)
皆が散り散りになりそれぞれ、昼食を取りに行った。
就業後、部署は櫻井部長の歓迎会の話で盛り上がっていた。
前の部長の酷さもあり櫻井部長は皆から歓迎されている。
正直、飲み会とかはしばらく遠慮したかったが、
部長の歓迎会なら参加したいと思った。
強制参加という意味合いではないが、
用事がない限り参加は推奨される。
沙矢も参加する意思を教えてくれた。
今週の金曜日に歓迎会をすることになったのは、
残業がないことが分かっていたからだ。
無事に仕事を終えた私と沙矢は、給湯室で
お茶をしてにっこりと微笑みあう。
「沙矢、会場までは電車で一緒に行く?
足がない人は、部長が車に乗せてくれるって話だけど」
自らの歓迎会とはいえ太っ腹だと思った。
「電車で行きましょう。乗せられても三人くらいでしょうし」
「そうね」
沙矢は明らかに青さまに何か言われるのを気にしている。
「沙矢、顔に出てる。そういうことね……」
「陽香は別行動でも平気よ」
意外にそっけないことを言われた。
「何寂しいこと言ってるのよ。
一緒に行くに決まってるじゃない」
きまり悪そうな顔をした沙矢は、
小さな声で謝った。
エレベーターで一階まで降り、会社から出る。
私が先を歩き交差点を渡る。
駅の構内に入ると一瞬路線図に目をとめた。
「……青はどこの大学出たのかな」
「知らないの?」
「おそらくT大学だから、最寄り駅はT大前駅。
車を使わない日は電車に乗ってたのよ」
「……絶対そうよ。T大医学部」
現在の最寄り駅もT大前駅だ。
出身大学を知らないのは驚いたが、
彼なら言わないのも頷ける。
「やっぱりハイスぺ……うん。
それだけじゃなさそうだけどね」
「ふふ……結婚したら遊びに来てね」
「絶対行くわ」
胸がかすかに軋んだが、私が身勝手なだけ。
沙矢は婚約をし近い将来、恋人と永遠を誓い合う。
青さまと一緒にいるから沙矢は綺麗なんだ。
元々可愛かったけれど本当にあか抜けた。
また彼女の住まいに遊びに行かせてもらおう。
数分おきにやってくる電車は便利だと思う。
ゲートが開き電車に乗った。
満員電車で沙矢と手を繋いでいた。
二センチほど私の方が高い身長だ。
目線はほぼ変わらない。
胸が大きいし、羨ましいけれど
沙矢は陽香はスタイルよくていいなと言っていた。
要するにお互い隣の芝生は青い状態だ。
ふわふわと微笑む沙矢とたわいもない会話をする。
電車の中では、声を潜めながらも話している人も多い。
二駅降りた先に歓迎会の会場はあった。
店員さんに案内してもらい店内を進む。
障子を開けると座敷があり部署のメンバーがいた。
櫻井部長の姿も見える。
ひそやかな盛り上がりが伝わってくる。
靴を脱いで座敷に上がる。
櫻井部長はこちらに向けて手を振っていた。
フレンドリーな人だ。
内心、誰かと比べて首を振る。
冴島先輩は沙矢と目が合うとぎこちなく笑っていた。
合コンの時に青さまと何かあったに違いない。
沙矢は私の隣、私は櫻井部長の隣に座った。
「二人ともお疲れさま。
今日は気兼ねなく楽しんでいってね」
「部長、お疲れ様です」
それからしばらくして部署のメンバーがそろった。
ほぼ全員がこの場に揃っている。
時間が経つにつれ砕けた雰囲気になっていく中で、
私も三杯目のアルコールを注文していた。
ビールは苦手なのでカクテルとレモンサワーである。
酔っていないとは思うがとてもいい気分だった。
「仕事の後の一杯は格別ね」
「三杯目でしょう?」
「そうだぞ。そろそろ水とかソフトドリンクにしておけ。
水無月は飲まないのか?」
何やら急に距離が近くなっている。
過保護な部長である。
「私はやめておきます……」
「沙矢には無敵な王子様がいてー
羽目を外したら怒られちゃうんですよ」
ふふっと笑ったら沙矢は顔を赤らめた。
これは羞恥によるものでアルコールは関係ない。
「陽香……!」
部長がやたら気にかけてくるのは何故だろう。
「沙矢、ごめん。私、酒癖が悪いのかも」
「赤くはないし酔っぱらってはいないみたいだ。
酒を飲むとうっかり漏らしちゃうタイプなのかもしれない」
爆弾発言はしちゃったけど決めつけないでほしい。
「陽香もお料理食べましょう。
何も食べずにお酒ばかりはよくないわ」
「そうだな。軟骨のから揚げ、美味いぞ」
部長が私と沙矢に大皿から料理を取り分ける。
皆がそれぞれ自分で小皿に取る中で、
サービスが過剰だ。
「沙矢、全く飲めないわけじゃないんでしょう?
ちょっとくらい飲んでも大丈夫よ……」
「……無理はしなくていいと思うよ」
私は沙矢にお酒を勧め、部長は止めた。
「じゃあ……思いっきり薄めたこれを」
沙矢は意を決した表情でカシスオレンジを注文した。
テーブルの上にあった料理は、ほとんどなくなっている。
コース料理を頼んでいたため、テーブルの上は片づいている。
「乗らなくていいんだぞ?」
「親友と乾杯がしたいんです」
「わーい。沙矢、大好き!」
会社ではこんなに気安いやり取りができなかったから
いい機会だったのかもしれない。
沙矢の言葉に感激して伝えていた。
「私も大好き!」
二人は部長を間に挟み盛り上がった。
「思いっきり薄くして水も多くしてください」
沙矢はにこにこと店員さん(男性)に伝える。
これが青さまを心配させる原因なのか……。
いや愛想がいいだけか。
店員さんは笑顔で応じその場を下がった。
櫻井部長は女性社員に話しかけられ愛想よく応じている。
私が青さまを推しているのと同じ。
慕っているだけだ。
気さくな人柄で上司として仕事の対応もいいし、
皆から好かれている。
お酌をする女性社員を断らない。
(部長と言えどそこまで愛想よくなくていいのでは?)
「異動してきて日が浅くても、
実力があるのは皆が知ってますもんね」
私は同僚が去るのを見届けて話しかけた。
「実はいっぱいいっぱいなんだけどね。
引っ越しと異動がほぼ同時で……ばたばたで
なんにも慣れてない」
「本当に今回はありがとうございます」
沙矢が丁重に頭を下げている。
「どうして水無月さんがそこまで……」
櫻井部長は、不思議そうにしているが
何が起きて自分が呼ばれたかは一応把握しているはずだ。
知らないふりをしている。
「時間がなかったのにすぐ来てくれて、
ヒーローじゃないですか」
「本当は四月からでよかったんだけどね……
その間は課長さんの負担が大きくなるだろう?」
「……立派な人すぎる」
「人格者」
皮肉を込めたが部長はさわやかな笑みを崩さない。
アルコールの口直しか麦茶を飲み干している。
私は部長に視線を吸い寄せられていた。
惚れやすいわけじゃない。
ただ気にかかって仕方がない。
「あの……解散って何時ごろでしたっけ?」
「自由に帰っていいってことで特に決まってないよ。
君たちは電車だっけ?」
「はい。あ、いえ……私は」
沙矢が時間を気にして慌てふためいている。
「沙矢は、あの方が迎えに来るんですう」
からかってみた。
「……それなら大丈夫だね」
部長がこちらに視線を向けたので微かに俯く。
「ちょっと休ませたら駅まで送ろうと思う。
心配だから」
部下にそこまで気を遣ってくれなくていい。
私は大人なんだから自分で何とかできる。
「優しいんですね……ありがとうございます」
それでもうれしかったからそう返していた。
「お疲れさまでした。失礼します。
陽香、月曜日に会いましょうね。
メッセもちょうだい!」
「沙矢、せんせーによろしくね」
くすっと笑みが漏れる。
少し酔っているのかもしれない。
沙矢が座敷から出て帰っていく。
「先生?」
「沙矢の付き合っている人の職業です。なんでしょう?」
「……社員のプライベートを詮索するつもりはないよ」
部長は、残った社員の人数を確認した。
「櫻井部長、部署のメンバーの顔と名前が一致してるんですね」
「一日目で覚えたよ。大事な部下だから、
把握しておかなくちゃいけないだろう」
「……なるほど」
「それより大丈夫か?
斎藤、結構飲んでただろ」
「だいじょうぶですよう」
「ろれつが回ってない」
はっきり言われるとむかつく。
残っている数人にお開きにしようと告げる部長の声を聞いた。
「帰ろう。送っていくから」
今、何を言われたんだろう。
ぼんやりしていた私は、肩を叩かれて覚醒する。
「送っていくとか悪いですよ!」
「そうだよな。距離感がおかしいし」
距離感……。
部長は全員分の会計を済ませる。
歓迎会なので経費で落ちるらしい。
店を出て駐車場に向かうと沙矢と青さまがいた。
10分ほど経っていたが彼らはまだ残っていたらしい。
「……さーやー」
変な愛称で読んでみると沙矢は驚いた顔でこちらを見た。
「陽香!」
二人が側にやってくる。
青さまは私を見てそれから櫻井部長に視線を向けた。
(心配してくれているのかな?)
青さまと会うのは今日が二度目だが、
今までのイメージよりずっと人間らしいと思えていた。
「お世話になっております」
部長に一礼し、二人が歩いていく。
車に乗り込もうとする姿も遠目に見えた。
「……水無月さんは彼が迎えに来てくれたのか。
確か一緒に住んでるんだっけ?」
「……一応社員名簿に住所のってるでしょ。
とんでもない所に住んでます」
「送るよ」
さらっと流し部長は口にした。
幸い部署のメンバーはここにおらず二人きりだ。
誰にも見られていない。
「駅まで送ってくれてまた戻ってくるんですか?」
「……距離感を間違えたと後で訴えられたくはないんだけど」
「しませんし」
「部屋まで送る」
後部座席に乗せてくれ、送ってくれた。
「ありがとうございました」
「また月曜日にな」
大きな手が伸びて私の頭を撫でる。
「子供扱いはやめてください」
「……気分を害したらすまない」
ツンとした態度を取ってしまったが特に嫌悪はなかった。
「部長って既婚者じゃないですよね。既婚者なら、
余計に部下との距離感は見誤っちゃだめですよ」
「独身だよ。おやすみ」
言葉を返せなかった。
何故か胸の鼓動が暴れていたからだ。
その夜は、ぐっすり眠った。
土曜日は、久しぶりに一人でカラオケに行ってストレス発散した。
何故か恋の歌ばかり歌ってしまい後で赤面した。
買い物もして夕方まで家に帰らなかったが、
気を紛らわすことはできなかった。
翌日、ふと思い立ち沙矢に電話をかけた。
「もしもし、陽香?」
「沙矢……金曜日はごめんなさい!
ありがとう」
「私は何もしてないわよ」
「醜態さらしちゃったし……思い出したら穴に埋まりたくなる」
「大丈夫だって」
「何で、限界をわきまえずに飲んだんだろう……って考えて気がついたの。
私、櫻井部長を意識してるっぽい」
「え、そうなの!?」
「うん。送ってもらった時、部屋の前で
おやすみって頭を撫でてくれたんだけど」
「うっかりドキドキしちゃってやばいなって」
「……陽香、声から恋心がダダ洩れしてる」
「私もついに沙矢側に!?
いや、あなたの方がすごかったか」
沙矢に指摘されてしまった。
「……ごほ……っ」
むせる彼女は相変わらずかわいいのだけど。
「土曜日は冷静になりたくて
ヒトカラしたり買い物で気を紛らわせてたんだけど、
日曜日になっても、思い出すとドキドキしちゃうし。
つい沙矢に話を聞いてもらいたくて電話をかけちゃった」
「私で力になれるかわからないけど、
陽香の味方だからね」
「さーやー」
「青も時々さーやって呼ぶけど、
さーやーは新しいわ」
私は口元を押さえた。
「ぶっ……何その反応!
気が抜けたじゃないの」
「酔ってたから、そう呼んだのかと」
「さやえんどうとか言わないから安心して」
「さすがにそれは嫌」
「だよね」
笑い合う。
「沙矢が上手くいって、青さまと楽しく暮らしているのは、
親友としてもとても嬉しいのよ。
私もあやかってがんばるわ。
どうなるかはわからないけど」
「櫻井部長は、独身よ。
上司と部下、社内恋愛で環境が厳しいのはあるけれど」
沙矢に言われずとも知っている。
本人からも聞いたところだ。
「……うん。少し聞いた」
「じゃあそろそろ切るね! 沙矢、ありがとう。
また明日、会社でね」
「うん。教えてくれてありがとう」
お互い笑い合って電話を切る。
先にかけておいて勝手なものだけど。
ときめきの欠片は逃したくない。
不毛な片思いよりはマシだ。
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