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番外編集
番外編「痴話喧嘩とガールズトーク、藤城ドクターとの出会い」(極上Dr.コラボ)
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実家に帰ると見慣れた少年達が、弟と共にいた。
彼らは菫子の年下の友達だ。
「うわ……お前ら何でおるんや」
「あ、涼兄ちゃんお帰りなさい。篤紀くんと健太くんは、同じクラスの友達なんだ」
「すごい偶然だね」
「本当に、涼くんが爽の兄貴だったんだね」
しらじらしい二人組にため息をつく。
菫子の年の離れた友達は、弟と同じ中学どころか同じクラスとは。
涼は、台所に向かうとテーブルの椅子に座った。
「なんか聞こえてきたけど、健太くんたちと知り合いなん?」
「菫子を介して知り合った。まぁ、弟分やな」
にこにこ笑顔の母親が、顔をのぞかせ若干ひいた。
「何であんた一人帰ってくるんよ。菫子ちゃんも連れてこなあかんやろ」
「……俺一人じゃあかんのか」
「ええけど」
入院騒動以来、菫子は母にずいぶん気に入られている。
それは、うれしいことだった。菫子が嫌われるはずもないのだけど。
「あの子は、うちの子からもすかれとるやん」
「懐かれとるな」
妹も弟も菫子が大好きだ。
いじられてるのは、年上の菫子だったが、
お姉さんぶっているので気にしていないようだ。
「まさか喧嘩中やあらへんやろな。
同棲しとるのに、あんた一人で帰ってくるなんて」
「……喧嘩ちゃうわ。冷却期間なだけや」
「どうせ、あんたが悪いんやからさっさと謝って仲直りしいや」
「……言われんでもわかっとるわ」
菫子はいつも大体、ツンとしているのが常だが、
本気で怒ることはめったにない。
「菫子ちゃんは、あんたがおらんでも大丈夫な子やと思う。しっかりしてるんやもの」
「おかん……ぐさぐさ、きついこというな」
「気づいてるんちゃうの? 」
「痛いくらいにな。董子がおらんと生きていかれへんのは俺の方や」
口に出してしまえば、まさにその通りだった。
涼にとって菫子は唯一無二である。
別の人と付き合っていた時、想いをごまかしていたけど
本当は最初から、惹かれていたのかもしれない。
「……さっさとプロポーズしなさい」
「いずれはする」
「何年付き合ってるんや」
「三年や……」
「菫子ちゃんじゃなかったら捨てられとるとこやね」
「うっさい」
菫子と喧嘩をして、実家に逃げ帰るというヘタレ具合に情けなくなる。
彼女は、泣きながら怒った。
それを見て謝るしかできなかった。
理由を言わないから、いじらしい。
たぶん、心の中ではもやもや考えているだろうに。
言わなくても、わかっていた。
大学を卒業して1年と少し。
社会人になって1年がすぎたけれど、まだ決心がつかない。
彼女が確かな約束を求めていても。
「あんたの気持ちもわかるけど……私は菫子ちゃんの味方や」
「味方でおってやって」
出されたお茶を一気に飲み干し立ち上がる。
玄関には、あの二人組がいた。
「涼くん、菫子ちゃんと昨日会ったんだけど」
「外出ろ。お兄さんが奢ったるから、ゆっくり話しよか」
健太と篤紀は爽に手を振り、お邪魔しましたと挨拶をすると玄関の扉を開ける。
「おかん、ちょっと出てくるわ。飯はいらん」
その後ろから、外に出た。
歩きながら篤紀が、後ろを振り向いた。
「そういえば、すぐ下の咲来ちゃんも関西弁だけど
爽は関西弁じゃないよね」
「うん。それ思った」
「二個下の咲来はともかく爽とは年齢が離れてるから俺らの影響受けてないだけや」
「……まあ、いいけどさ」
「人がせっかく奢る言うてんのに生意気なやつらや」
「奢ってくれなんて頼んでないよ。涼くんが話を聞きたいんでしょ」
「……ファミレスやで」
篤紀は、中学になってかなり男らしくなった気がする。
身長も183センチの涼と10センチほどしか変わらない。
163ほどの健太は、20センチ違うが。
涼が先を歩き、ファミレスの自動ドアをくぐった。
運良く奥の席に案内されたのでラッキーだった。
正面に二人組を座らせる。
「ドリンクバー付けてもいい?」
篤紀が、聞いてくるから息をつく。
「好きにせえ」
ファミレスだ。たかが知れている。
メニューを見て頼むと、二人に向き直る。
「さっきの続きなんやけど」
「菫子ちゃんは、涼くんにはもったいないよね」
「もったいない」
「お前ら腹立つこと抜かすな」
「だって、本当のことだもん。何で菫子姉ちゃんは、涼くんなんか選んだんだろうって
思ってた。涼くんに初めて会った三年前のあの時からさ」
健太は、しれっと言い放った。
「そうかもしれない。菫子は、俺にはもったいないほどの女だから」
「ほら、やっぱり違和感ないじゃん」
「じゃかあしい!」
一喝すると健太と篤紀は黙り込んだ。
「……関西弁じゃない方が、いいんだろ」
「うっ……こわい」
「怖くないよ。こんな男ただのヘタレだし」
健太が怯えるのに対し篤紀は、真顔で言い返してくる。
篤紀は健太を伴い、ドリンクバーの方に歩いていった。
戻ってきた2人は子供らしく炭酸を選んでいた。
涼も水を取りに行くことにする。
「……涼くんもさ、大人になりなよ」
「ご忠告いたみいるな」
生意気な中三トリオに、吐き捨てると大股で歩いていく。
グラスに適当に氷を入れて水を注いだ。
戻ってきたら、喋っていた二人が口を閉ざした。
視線を感じ、この関係ってなんなのかと、涼は不思議に思う。
「爽くんが、早く菫子ちゃんが本当のお姉さんになったらいいのにって言ってたよ」
「……え」
「いいなあ。俺らはずっと他人のままだけど、
爽くんは、菫子姉ちゃんと姉弟になれるんだ」
「本当は、こっちが菫子ちゃんと結婚したいくらいだよ! 子供じゃなかったらね。
なんで9歳も違うのかなあ」
健太と篤紀の言葉が、重くのしかかる。
「そこまで菫子のこと……いや、まあ、俺より長い付き合いなんやし情もあるやろうけど。
健太はともかく篤紀はマジなんか? 」
「マジだよ。だって、あんな可愛い女の子いないしさあ。歳が離れてても差を感じないから」
弟のような存在に淡い恋心を抱かれているとは彼女も知らないだろう。
「篤紀にとって菫子は女の子なん」
「涼くんが、早くけじめつけないと、
もらっちゃうよ。四年なんてすぐだもん」
篤紀は挑戦的な目つきだった。
高校卒業したら、プロポーズする気のようだ。ガキの戯言でも、不愉快になる。
「篤紀……凉くんの目がやばいよ」
「ガキにくれてやるか。アホか!」
間が悪い店員が運んできた料理に、がっつく。
「涼くん、菫子ちゃんが早く帰ってこないと、しばき倒すわ!
あのでかぶつめ!って言ってたよ」
健太の物真似は、そっくりだった。声が高めだからか、よく雰囲気も出ている。
「……伝言ありがとう。お前らもさっさと飯食ったら帰れよ」
「うん。本当はおばちゃんにご飯ご馳走になるはずだったけど、
それが涼くんに代わっただけ。
だから親にも連絡はしてあるよ」
篤紀の言葉に健太も頷く。
「菫子ちゃんを幸せにしてあげてよ」
「絶対、結婚式に呼んで」
ファミレスでの食事のあと、菫子を慕う二人の少年たちの頭を撫でて別れた。
弟が増えたような感覚だった。
時は一日前に遡る。
菫子は、薫とともにカラオケに来ていた。
会社帰りに塾帰りの健太と篤紀に
会った帰りである。
会社で電話をしたら、いきなりだったにもかかわらず快く了承してくれた薫。
涼の元彼女という、不思議な縁だが、
今では菫子のかけがえのない友達だ。
親友である伊織は地方で就職してしまったし、
大学時代からの付き合いは、彼氏の涼を除けば彼女だけだ。
「むかつくー!」
「その気持ち分かるわ」
「薫さんも一年以上涼ちゃんと付き合ってたんだよね」
「まぁね。菫子ちゃんほどではないけど!
涼のことそれなりには知ってるわよ」
「一言で言えばどんな男だった?」
カラオケそっちのけでガールズトークだ。
アルコールも飲み放題のドリンクバーで、
菫子は、調子に乗って2杯もチューハイを飲んでいた。
つまみ的なフードも注文しているが。
「菫子ちゃんも納得するわよ?」
菫子は唾を飲み込んだ。
「どヘタレ」
「ぶはっ」
吹き出しかけたので慌ててナプキンで拭う。
「納得でしょ」
こくりと、頷くと薫は、話を続けた。
「生真面目で誠実だから、浮気は絶対しないわよ。
私と付き合っている時もあなたに言い寄ってないでしょ」
「なかったわ。でもごめん」
「謝る必要ないでしょ」
「涼ちゃんが阿呆なのは、薫さんもよく知ってるのね」
「肝心なところでヘタレるしね。煮え切らないのよ。なんなのかしら」
「う、うん。そうよね。昔のこと掘り返していいかな?」
「いいわよ。もう済んだ過去だから」
薫は、涼と別れて数ヶ月後には、新しい彼氏がいて、
もう結婚式の日取りも決まっている。菫子と涼とは違いすぎる。
「ノリと勢いでそうなっちゃっただけ?」
「……それだけだったら一年以上もあの男と付き合ってないわ」
薫は、からからと笑った。
菫子よりもお酒に弱いようだ。
「だよね……」
「たぶん、菫子ちゃんの時と変わらないわよ。初めての時の印象」
「えっ……そんな話したことないよ」
顔が熱いのはお酒のせいか、話の内容のせいか分からなかった。
「いやー、ないわけないのくらい分かるでしょ」
「あはは」
「私は初めてだったけど、涼は慣れてた。
だから、気遣い方もさりげなくてスマートで……」
「でも大胆だったと」
「同じよね」
二人して笑った。
「罪深い。罪深すぎるわ、草壁涼!」
「まあ、そうね」
「あ、ヘタレ以外の印象は? 私と一緒にいる時と違う一面を見せてそう。薫さんはクールだし」
「菫子ちゃんといる時の涼が本当の姿というのを前提に話すなら、
クールだったわよ。陽気な時もあったけど……」
「基本的には変わらないと思う。クールな時もある。
特に関西訛りじゃない時はクールに見えておかしいのよ」
「言えるわ! あはははは!」
薫のテンションがおかしいのは、仕事帰りで疲れているせいなのか。
昔の男の話を今カノとしているのも変な気分にさせているのかも。
菫子は、元カノである薫に対して抱いていた苦手意識が消えていた。
むしろ、憧れの方が強い。
「薫さん、水持ってくるね!」
「ありがとー」
付き合ってもらってるのは菫子の方なのに、彼女を酔わせてどうする。
水を持って戻ってくると、薫は焦点が合わなくなってきた瞳で見つめてきた。
その色っぽさにドキッとした。
「菫子ちゃんって本当にかわいい。
涼も早くヘタレ卒業しないと駄目よー」
「あ、ありがとう。ヘタレを卒業してほしいわ!」
と言いつつもヘタレでも構わないと思った。
二人に同じ姿を見せている。
それは、彼が嘘をつけない男だという証明ではないか。
生真面目過ぎるのだ。
帰ったら一人で悩んで勝手に落ちるなと言ってやろう。
菫子は、酔った薫の肩と腰を支えてカラオケボックスを出た。
彼女のマンションは徒歩で帰れる距離なので、気をつけてと念を押して駅に向かった。
そして、体調不良で目を覚ました菫子は、
まず大学病院の産婦人科に予約の電話を入れた。
妊娠したかも知れないので検査をしてほしいと伝える時は、
声が震えたが、こういう経験は初めてなので仕方ない。
予約した後、ふらふらしながら病院を目指した。
バスに乗り何とか大学病院までたどり着いたが、
受付で問診票を書いた所で意識が遠のいた。
気を失う寸前に甘い美声が耳に届い気がしたが、幻聴に違いないと薄れゆく意識の中で思った。
「大丈夫ですか? 」
「ぎゃあーー!」
詳しい検査もしてもらえると思い、大学病院に向かっていた。
病院を目指して歩いていたはずだった……。
予約入れていたらスムーズに見てもらえるだろうと。
それから、どうしたんだっけ。
無駄にいい声が聞こえるのは、気がおかしくなったのかと思ったことまでは覚えてる。
目の前に立ちふさがっているのは、やたら色気のある
嫌味なほどの美形(イケメン)。
声をかけてきた人物と同じ声だ。
台詞まで同じである。
「……それだけ元気なら大丈夫そうですね 」
至極冷静な声にいらいらした。
顔写真入りの名札ネームプレートに、
冷静な風情が似合いそうな名前だと思った。
「目の前で倒れられて、少々肝が冷えました。
私も出勤した所でした」
「あの……ここって」
「産婦人科です。受け付けしようとしていたところであなたは倒れたんですよ。
それを見かけて、ここに運びました。目的はここでいいんですよね?」
産婦人科に行こうとしていたから、
ちょうどよかった。
「はい」
「こっちを見て悲鳴をあげて倒れられたのでショックでした」
「……さ、さっきの悲鳴については、どこかのホストクラブにでも
来ちゃったのかと思っただけなので!
不可抗力です。
ホストがコスプレしてるわけじゃないんですよね」
「……はい?」
「できれば他の先生に診てもらいたいんですけど」
色香が漂ってて目もチカチカする。
茶色い髪がまぶしい。
「無理です。私が介抱したから診ているのはありません。
掲示板をご覧になってなかったのかもしれませんが、
今日の午前と午後は私の担当になっています。藤城青と申します」
「藤城先生、すみません……」
「こちらこそ。まだぺいぺいの私なんかじゃご不満でしょうが耐えてください」
どうやら謙虚な人のようだ。
確かにまだ若そうではある。
(ぺいぺいって、コード決済のことかと思ったわ!)
「そんなことないです。助けて下さりありがとうございました」
「二日酔いもあるのかと思いましたが、
ここを目指していらしたということは、産婦人科に用があったんですよね」
「はい。最近、食欲がなかったり生理が来なかったから妊娠かなって」
「……おひとりで大変でしたね」
「ちょっと彼とは喧嘩中なんです。
大学病院か、もう1つのところと迷ってこちらにうかがいました。
予約してたの伝えようとした所で倒れたみたい」
「柚月菫子さん、23歳……?」
藤城先生は、疑うような眼差しを向けた。
表情は分かりづらいが、食い入るように見てきたので、年齢を疑ったのだろう。
(いい人そうに思ったけど前言撤回だ。失礼すぎ)
「申し訳ありません。19歳くらいかと……
いや、中学生でも通りそうだったので驚きました。
早生まれだから、私と3つしか学年が変わらないですね」
「藤城先生、失礼な人ね! あなたこそ魔物じゃない」
「魔物ね。似たようなことは言われたことがありますが
初対面の方に言われるとさすがに……な」
口の端がつり上がった気がする。
「いい度胸だな」
唇の動きだけでそう言った。
私にしか読み取れなかっただろう。
(この若い医者、絶対、俺様だ!)
「……さっさと診察を始めましょう。
ベビーフェイスで可憐な柚月菫子さん」
聴診器を当てられた次は腹部エコー。看護師さんに横になってくださいと言われた。
私は、検査を受けているにも関わらず藤城先生(俺様ドクター)を見ていた。
身長が高い。涼より更に数センチ高そうだ。
細すぎず筋肉が無いわけでもないが雄々しくもない。スタイルが抜群だ。
じいっと観察していると藤城医師は、優雅に微笑んでいた。
「妊娠はされてませんよ。生理不順だっただけじゃないですかね。
もし気になる症状があったり、
検査のご希望があれば予約の上で次回ご来院ください」
そばについていた看護師が、こくりと頷く。
「……数日前から吐き気があって、妊娠かなって思ったんですよね。でも、そうじゃなくて
がっかりというよりほっとしています」
「……お相手の方とは」
「まだ結婚はしてません。だからよかったんですよね」
藤城先生は、先程の表情を一変させた。
とても優しい眼差しをしたかと思えば、
頭を撫でてきた。
「頑張りましたね。ここまで一人で不安だったでしょう」
「……はい。でも平気です。私の彼は真面目で誠実な人だから」
「喧嘩中でもあなたは相手を悪く言わないんだな」
言えるはずもない。
私に手を出したくても出せなくて、
他の人と付き合ってから気持ちに気づいたような人だ。
私も一途に思い続けていたけど彼も、
付き合った人を傷つけても自分の気持ちを偽れなかった。
泣きそうな顔をしたのに気づいたのか、
今度は荒々しく頭を撫でられた。
「今日は抱きしめてもらえよ」
丁寧さは、お仕事だから当たり前だとしても。
私が素で話したからか藤城先生も素で接してくれて嬉しいと思った。
(俺様なのは大目にみてあげる)
産婦人科での診察を受けた結果、
赤ちゃんはできていなかったけれど、安堵の気持ちが大きい。
いっそのこと、もしそうだったら彼もヘタレてはいられなかっただろう。
無責任な男ではないから逃げたりはしない。
「休憩時間だから、お茶でもどうですか?」
藤城先生は私に手を差し伸べた。
「はい。是非」
藤城先生はお茶に誘ってくれた。
大学病院にはチェーン店のコーヒーショップが、二店舗あり
彼がよく訪れるという方に連れていってくれた。
窓際の席に向かい合うと不思議な感じがした。
「俺もあなたを煩わせている男のことを言えた義理じゃないなと思ったら、
何だかほっとけなかった。少し話をしませんか?」
「はい」
「遠慮せず好きなのを頼んでくださいね」
「い、いいんですか?」
藤城先生は、小さく微笑んだ。
「ありがとうございます」
「将来、彼と一緒に藤城総合病院に来てくださると嬉しいなと思います。
産婦人科でお待ちしています」
「はい!」
彼は羽織っていた白衣を脱いで、椅子の背にかけた。
メニューを見てお互いに頼むと向き直った。
「彼のそばで生きていきたいから、私はもしもそうだったらいいなって覚悟も期待もしてたんです」
「その彼は、幸せものだな。あなたのような女性に深く想われて」
甘い顔と甘い声で、甘いことをさらっ、と言った!
「幸せならいいんですけどね」
運ばれてきたデカフェの紅茶は、とても飲みやすかった。
藤城医師は、優雅な指先でコーヒーカップを傾けている。
「お盆休みに妊娠したかもって不安になってるところに、喧嘩しちゃって彼は家出。
私が泣いて怒ったら、ごめん。一人で実家に帰るわって」
「妊娠を疑ってたのに、アルコールは飲まれたわけですよね」
指摘されて赤面した。
取り乱さないように話を続ける。
「帰る場所があるから、家出ができるんですよね」
結局、同棲はしてないけど、時間を合わせて会うし
週末は涼ちゃんの部屋に泊まることも多い。
金曜日から日曜日の夜まで一緒にいる。
抽象的に言うならお互いに帰る場所なのだ。
「でしょうね」
藤城医師は遠くを見つめた。
「……甘えてるのかな」
「きっとね。少し離れて考える時間が、ほしかったんじゃないかなと思うんです」
この人、何か分かった感じで言うなあ。実体験からかしら。
「私は自分のことばかりで、嫌になる」
「いいんじゃないですか。それに、俺こそきっと彼より逃げて甘えてばかりですしね」
「藤城先生……」
「余計なことを言いすぎました。これは、あなたと俺との秘密ですよ」
唇に指をあてる仕草に、ぐらっとした。
いや、別にそういう意味ではないけれど。
(さすがにここでは人目もあって俺様は封印したようだ)
「絶対、次は彼と一緒に来ます。
その時は先生も幸せ掴めてるといいですね」
「……そうだな。あなたなら彼女のいい友達になってもらえそうだ」
じーんときた。結婚して子供を授かったら、
彼に診てもらいたい。
藤城先生の大切な人。
もし将来、会えるなら友達になれるかな。
「……は、はい! 今度は旦那様と一緒に病院に行きます」
「二年後には実家の病院で勤務している予定です。
その頃あなたは彼ととっくに結婚しているんでしょうね」
「……だといいな」
2人で席を立つ。
優しい藤城青先生に笑顔で挨拶をする。
「柚月さん達のように、幸せになれるよう俺も努力しなくちゃいけないな」
「……大丈夫じゃないですか」
根拠もなく言ったら彼は、極上の微笑みを浮かべた。
「お大事に」
受付で支払いを終えて病院を出た。
彼のマンションの部屋に行くと鍵が開いていた。
合鍵も預かっていたがノックをしてみたら、
扉が開いて行った。
出迎えたデカブツは、ヘラヘラと笑っている。目が泳いでいるような。
「菫子おかえり。どこ行っとったん」
一緒に暮らしてはなかったが、
どちらかがお互いの部屋を訪ねるとおかえりと言うようになっていた。
「実家に逃げ帰っていたくせに、よく言うわね! 私がどこへ行こうと勝手でしょ」
あっちゃあ。ついまた可愛げないことを口走ってしまった。
「ごめん」
「え……」
「俺がだらしないから、菫子に嫌な思いばっかさせるんは、わかってる」
「……も、もういいのよ。もう……」
顔をそむけて、そばを通り過ぎようとする。
これでは、意識していると言っているようなものだ。
藤城先生と話して、少し反省したのに台無しだ。
ぐい、と掴まれた手の強さと熱さに、うろたえる。
「菫子、俺とずっと一緒にいたい?」
「……今更離れられないもの」
「阿呆でヘタレな男でもええの?」
「涼ちゃんにしかときめかないみたい」
うっかり、口に出してしまった言葉に、はっ、とする。
大学の合コンで一目惚れしてから5年、ずっとこの人しか見ていない。
「……すみれ」
腕を引かれ、抱きしめられた。
(抱きしめてって言わなくても抱きしめてくれるのよね)
大きな体。厚い胸板が、彼だと伝えてくる。
「俺が菫子といたいんや。ずっと一緒にいたい気持ちはお前にも負けへん」
踵が浮いて、スリッパが脱げ落ちた。
不安定な体勢になってしまうのは、30センチ違う身長のせい。必死でしがみつく。
目を閉じたら、キスが降ってきた。
「病院に行ってたの。大学病院……」
「そういや、この頃具合悪そうやったな。
ついていってやれんでごめんな」
抱きしめる力が強くなった。
「いいのよ。大したことなかったから」
「ほんまに?」
「子供ができてたら、涼ちゃんは喜んでくれた? 」
試すように聞くなんてずるい。
分かっているのに聞いてしまった。
「当たり前やろ……」
涼の言葉には嘘がない。嬉しかった。
「子供ができたら涼ちゃんがちゃんとしてくれるんじゃないかって思ったの。
でき婚を狙ったわけじゃないんだけど」
「……お前との子供も想像したことあるで」
涼ちゃんが私の頬を手挟む。熱い眼差しにドキッとした。
素直に今日の出来事を話すことにする。
「大学病院には、魔物がいたわ」
「幽霊か! あそこ出るんか!」
菫子は、興奮気味の涼の手をつねった。
「人間よ! 白衣の魔物。とんでもない美形で、毒がある先生(ドクター)よ」
「それは、男か?」
「若くて麗しいお顔の男性」
「菫子……ドキッとしたか?」
「涼ちゃんにしかときめかないって言ったでしょ。ドキッとなんてしないわよ!
私は男くさくて、暑苦しいくらいがいいのよ!」
褒め言葉だ。
「やったで。美しい魔物のドクターに勝った!」
「……身長は負けてるけど」
「マジか。そりゃ俺より背が高い男くらいおるやろうけど……
顔が良くて身長まで高いとはクソ嫌味な」
どんなに情けなかろうが、涼の方が、かっこいい。
「もちろん、病院の先生だから高収入で」
からかって遊ぶくらいいいだろう。
「医者と比べんな! 医学を六年も勉強した上で、卒業間際に国家資格取らなあかんのやぞ。
それからも初期研修2年やらあるし、専門医として
羽ばたけるのは30歳前や。
そりゃ、高収入やろうけど、医者になっても毎日勉強……俺ならどっかおかしゅうなるな」
「確かに私たちより学年は3つ上で、大学病院にいるのは、あと二年と言っていたわ。涼ちゃん、詳しい」
「それくらい、知っとるで」
「涼ちゃん、あのね、変な意味じゃなくて、
あの先生好きかも」
「……変な意味やったら、ショックやわ」
「近い将来、彼のいる産婦人科を訪ねられたらいいな」
「もー、あかん!可愛すぎるわ。反則やわ。
俺の子がそんなに欲しいやなんて」
「そこは自惚れなさい。だって欲しいんだもん」
「めっちゃ嬉しい」
「藤城総合病院に、異動するって言ってたわ。藤城青先生」
「……藤城総合病院の御曹司か!」
「藤城先生を知ってるの?」
「病院は、知ってて御曹司を知らんとは」
「……う、うん。興味がなかったから」
「ほっとしたわ。確かに魔物や。近づいたらあかんレベルの男や」
涼ちゃんは、畏怖している様子だった。
「見たことあるの?」
「……あらへんけど。有名やから。T大学医学部を首席で卒業したメガトン級のイケメンとか」
「メガトン……あはは。ホストみたいだったけど。白衣じゃなかったらまんまホストだわ」
「……本物見てみたいわ」
「御曹司なら、跡を継ぐために藤城総合病院に戻るってことね」
実家の病院に帰るのは後継者だからだ。
腑に落ちた。
「菫子は結婚して、藤城総合病院の
産婦人科で、俺の子が産みたいってことやろ」
「……そうよ。お馬鹿な涼ちゃんしか、私にはいないんだからね!」
「絶対に一緒になろうな」
「今すぐじゃなくていいから、早めにね」
「ああ。頼りなくてすまんな」
「お金なら私も少しずつ貯めてるからね」
身体を離した涼ちゃんは、泣きそうな顔をしたあと笑った。
「菫子を選んでよかった。俺のそばにいてくれてありがとう」
「私が捨てたら、拾ってくれる人いないもんねー」
これくらい言ってもいいだろう。
かけがえのないものを作る覚悟を
決めるんだって、信じてあげるんだもの。
抱きついたら、背中を撫でられた。
「今日は駄目」
「俺は、そんなに野獣やあらへんし、
気にせんで」
「明日ならいいわよ」
愛しくてたまらなかった。
今日は泊まっていこう。
「……菫子」
いつまでも愛してる。
耳元でささやかれてしばらくした頃、二度に渡る熱烈な求婚(プロポーズ)を受けることになる。
彼らは菫子の年下の友達だ。
「うわ……お前ら何でおるんや」
「あ、涼兄ちゃんお帰りなさい。篤紀くんと健太くんは、同じクラスの友達なんだ」
「すごい偶然だね」
「本当に、涼くんが爽の兄貴だったんだね」
しらじらしい二人組にため息をつく。
菫子の年の離れた友達は、弟と同じ中学どころか同じクラスとは。
涼は、台所に向かうとテーブルの椅子に座った。
「なんか聞こえてきたけど、健太くんたちと知り合いなん?」
「菫子を介して知り合った。まぁ、弟分やな」
にこにこ笑顔の母親が、顔をのぞかせ若干ひいた。
「何であんた一人帰ってくるんよ。菫子ちゃんも連れてこなあかんやろ」
「……俺一人じゃあかんのか」
「ええけど」
入院騒動以来、菫子は母にずいぶん気に入られている。
それは、うれしいことだった。菫子が嫌われるはずもないのだけど。
「あの子は、うちの子からもすかれとるやん」
「懐かれとるな」
妹も弟も菫子が大好きだ。
いじられてるのは、年上の菫子だったが、
お姉さんぶっているので気にしていないようだ。
「まさか喧嘩中やあらへんやろな。
同棲しとるのに、あんた一人で帰ってくるなんて」
「……喧嘩ちゃうわ。冷却期間なだけや」
「どうせ、あんたが悪いんやからさっさと謝って仲直りしいや」
「……言われんでもわかっとるわ」
菫子はいつも大体、ツンとしているのが常だが、
本気で怒ることはめったにない。
「菫子ちゃんは、あんたがおらんでも大丈夫な子やと思う。しっかりしてるんやもの」
「おかん……ぐさぐさ、きついこというな」
「気づいてるんちゃうの? 」
「痛いくらいにな。董子がおらんと生きていかれへんのは俺の方や」
口に出してしまえば、まさにその通りだった。
涼にとって菫子は唯一無二である。
別の人と付き合っていた時、想いをごまかしていたけど
本当は最初から、惹かれていたのかもしれない。
「……さっさとプロポーズしなさい」
「いずれはする」
「何年付き合ってるんや」
「三年や……」
「菫子ちゃんじゃなかったら捨てられとるとこやね」
「うっさい」
菫子と喧嘩をして、実家に逃げ帰るというヘタレ具合に情けなくなる。
彼女は、泣きながら怒った。
それを見て謝るしかできなかった。
理由を言わないから、いじらしい。
たぶん、心の中ではもやもや考えているだろうに。
言わなくても、わかっていた。
大学を卒業して1年と少し。
社会人になって1年がすぎたけれど、まだ決心がつかない。
彼女が確かな約束を求めていても。
「あんたの気持ちもわかるけど……私は菫子ちゃんの味方や」
「味方でおってやって」
出されたお茶を一気に飲み干し立ち上がる。
玄関には、あの二人組がいた。
「涼くん、菫子ちゃんと昨日会ったんだけど」
「外出ろ。お兄さんが奢ったるから、ゆっくり話しよか」
健太と篤紀は爽に手を振り、お邪魔しましたと挨拶をすると玄関の扉を開ける。
「おかん、ちょっと出てくるわ。飯はいらん」
その後ろから、外に出た。
歩きながら篤紀が、後ろを振り向いた。
「そういえば、すぐ下の咲来ちゃんも関西弁だけど
爽は関西弁じゃないよね」
「うん。それ思った」
「二個下の咲来はともかく爽とは年齢が離れてるから俺らの影響受けてないだけや」
「……まあ、いいけどさ」
「人がせっかく奢る言うてんのに生意気なやつらや」
「奢ってくれなんて頼んでないよ。涼くんが話を聞きたいんでしょ」
「……ファミレスやで」
篤紀は、中学になってかなり男らしくなった気がする。
身長も183センチの涼と10センチほどしか変わらない。
163ほどの健太は、20センチ違うが。
涼が先を歩き、ファミレスの自動ドアをくぐった。
運良く奥の席に案内されたのでラッキーだった。
正面に二人組を座らせる。
「ドリンクバー付けてもいい?」
篤紀が、聞いてくるから息をつく。
「好きにせえ」
ファミレスだ。たかが知れている。
メニューを見て頼むと、二人に向き直る。
「さっきの続きなんやけど」
「菫子ちゃんは、涼くんにはもったいないよね」
「もったいない」
「お前ら腹立つこと抜かすな」
「だって、本当のことだもん。何で菫子姉ちゃんは、涼くんなんか選んだんだろうって
思ってた。涼くんに初めて会った三年前のあの時からさ」
健太は、しれっと言い放った。
「そうかもしれない。菫子は、俺にはもったいないほどの女だから」
「ほら、やっぱり違和感ないじゃん」
「じゃかあしい!」
一喝すると健太と篤紀は黙り込んだ。
「……関西弁じゃない方が、いいんだろ」
「うっ……こわい」
「怖くないよ。こんな男ただのヘタレだし」
健太が怯えるのに対し篤紀は、真顔で言い返してくる。
篤紀は健太を伴い、ドリンクバーの方に歩いていった。
戻ってきた2人は子供らしく炭酸を選んでいた。
涼も水を取りに行くことにする。
「……涼くんもさ、大人になりなよ」
「ご忠告いたみいるな」
生意気な中三トリオに、吐き捨てると大股で歩いていく。
グラスに適当に氷を入れて水を注いだ。
戻ってきたら、喋っていた二人が口を閉ざした。
視線を感じ、この関係ってなんなのかと、涼は不思議に思う。
「爽くんが、早く菫子ちゃんが本当のお姉さんになったらいいのにって言ってたよ」
「……え」
「いいなあ。俺らはずっと他人のままだけど、
爽くんは、菫子姉ちゃんと姉弟になれるんだ」
「本当は、こっちが菫子ちゃんと結婚したいくらいだよ! 子供じゃなかったらね。
なんで9歳も違うのかなあ」
健太と篤紀の言葉が、重くのしかかる。
「そこまで菫子のこと……いや、まあ、俺より長い付き合いなんやし情もあるやろうけど。
健太はともかく篤紀はマジなんか? 」
「マジだよ。だって、あんな可愛い女の子いないしさあ。歳が離れてても差を感じないから」
弟のような存在に淡い恋心を抱かれているとは彼女も知らないだろう。
「篤紀にとって菫子は女の子なん」
「涼くんが、早くけじめつけないと、
もらっちゃうよ。四年なんてすぐだもん」
篤紀は挑戦的な目つきだった。
高校卒業したら、プロポーズする気のようだ。ガキの戯言でも、不愉快になる。
「篤紀……凉くんの目がやばいよ」
「ガキにくれてやるか。アホか!」
間が悪い店員が運んできた料理に、がっつく。
「涼くん、菫子ちゃんが早く帰ってこないと、しばき倒すわ!
あのでかぶつめ!って言ってたよ」
健太の物真似は、そっくりだった。声が高めだからか、よく雰囲気も出ている。
「……伝言ありがとう。お前らもさっさと飯食ったら帰れよ」
「うん。本当はおばちゃんにご飯ご馳走になるはずだったけど、
それが涼くんに代わっただけ。
だから親にも連絡はしてあるよ」
篤紀の言葉に健太も頷く。
「菫子ちゃんを幸せにしてあげてよ」
「絶対、結婚式に呼んで」
ファミレスでの食事のあと、菫子を慕う二人の少年たちの頭を撫でて別れた。
弟が増えたような感覚だった。
時は一日前に遡る。
菫子は、薫とともにカラオケに来ていた。
会社帰りに塾帰りの健太と篤紀に
会った帰りである。
会社で電話をしたら、いきなりだったにもかかわらず快く了承してくれた薫。
涼の元彼女という、不思議な縁だが、
今では菫子のかけがえのない友達だ。
親友である伊織は地方で就職してしまったし、
大学時代からの付き合いは、彼氏の涼を除けば彼女だけだ。
「むかつくー!」
「その気持ち分かるわ」
「薫さんも一年以上涼ちゃんと付き合ってたんだよね」
「まぁね。菫子ちゃんほどではないけど!
涼のことそれなりには知ってるわよ」
「一言で言えばどんな男だった?」
カラオケそっちのけでガールズトークだ。
アルコールも飲み放題のドリンクバーで、
菫子は、調子に乗って2杯もチューハイを飲んでいた。
つまみ的なフードも注文しているが。
「菫子ちゃんも納得するわよ?」
菫子は唾を飲み込んだ。
「どヘタレ」
「ぶはっ」
吹き出しかけたので慌ててナプキンで拭う。
「納得でしょ」
こくりと、頷くと薫は、話を続けた。
「生真面目で誠実だから、浮気は絶対しないわよ。
私と付き合っている時もあなたに言い寄ってないでしょ」
「なかったわ。でもごめん」
「謝る必要ないでしょ」
「涼ちゃんが阿呆なのは、薫さんもよく知ってるのね」
「肝心なところでヘタレるしね。煮え切らないのよ。なんなのかしら」
「う、うん。そうよね。昔のこと掘り返していいかな?」
「いいわよ。もう済んだ過去だから」
薫は、涼と別れて数ヶ月後には、新しい彼氏がいて、
もう結婚式の日取りも決まっている。菫子と涼とは違いすぎる。
「ノリと勢いでそうなっちゃっただけ?」
「……それだけだったら一年以上もあの男と付き合ってないわ」
薫は、からからと笑った。
菫子よりもお酒に弱いようだ。
「だよね……」
「たぶん、菫子ちゃんの時と変わらないわよ。初めての時の印象」
「えっ……そんな話したことないよ」
顔が熱いのはお酒のせいか、話の内容のせいか分からなかった。
「いやー、ないわけないのくらい分かるでしょ」
「あはは」
「私は初めてだったけど、涼は慣れてた。
だから、気遣い方もさりげなくてスマートで……」
「でも大胆だったと」
「同じよね」
二人して笑った。
「罪深い。罪深すぎるわ、草壁涼!」
「まあ、そうね」
「あ、ヘタレ以外の印象は? 私と一緒にいる時と違う一面を見せてそう。薫さんはクールだし」
「菫子ちゃんといる時の涼が本当の姿というのを前提に話すなら、
クールだったわよ。陽気な時もあったけど……」
「基本的には変わらないと思う。クールな時もある。
特に関西訛りじゃない時はクールに見えておかしいのよ」
「言えるわ! あはははは!」
薫のテンションがおかしいのは、仕事帰りで疲れているせいなのか。
昔の男の話を今カノとしているのも変な気分にさせているのかも。
菫子は、元カノである薫に対して抱いていた苦手意識が消えていた。
むしろ、憧れの方が強い。
「薫さん、水持ってくるね!」
「ありがとー」
付き合ってもらってるのは菫子の方なのに、彼女を酔わせてどうする。
水を持って戻ってくると、薫は焦点が合わなくなってきた瞳で見つめてきた。
その色っぽさにドキッとした。
「菫子ちゃんって本当にかわいい。
涼も早くヘタレ卒業しないと駄目よー」
「あ、ありがとう。ヘタレを卒業してほしいわ!」
と言いつつもヘタレでも構わないと思った。
二人に同じ姿を見せている。
それは、彼が嘘をつけない男だという証明ではないか。
生真面目過ぎるのだ。
帰ったら一人で悩んで勝手に落ちるなと言ってやろう。
菫子は、酔った薫の肩と腰を支えてカラオケボックスを出た。
彼女のマンションは徒歩で帰れる距離なので、気をつけてと念を押して駅に向かった。
そして、体調不良で目を覚ました菫子は、
まず大学病院の産婦人科に予約の電話を入れた。
妊娠したかも知れないので検査をしてほしいと伝える時は、
声が震えたが、こういう経験は初めてなので仕方ない。
予約した後、ふらふらしながら病院を目指した。
バスに乗り何とか大学病院までたどり着いたが、
受付で問診票を書いた所で意識が遠のいた。
気を失う寸前に甘い美声が耳に届い気がしたが、幻聴に違いないと薄れゆく意識の中で思った。
「大丈夫ですか? 」
「ぎゃあーー!」
詳しい検査もしてもらえると思い、大学病院に向かっていた。
病院を目指して歩いていたはずだった……。
予約入れていたらスムーズに見てもらえるだろうと。
それから、どうしたんだっけ。
無駄にいい声が聞こえるのは、気がおかしくなったのかと思ったことまでは覚えてる。
目の前に立ちふさがっているのは、やたら色気のある
嫌味なほどの美形(イケメン)。
声をかけてきた人物と同じ声だ。
台詞まで同じである。
「……それだけ元気なら大丈夫そうですね 」
至極冷静な声にいらいらした。
顔写真入りの名札ネームプレートに、
冷静な風情が似合いそうな名前だと思った。
「目の前で倒れられて、少々肝が冷えました。
私も出勤した所でした」
「あの……ここって」
「産婦人科です。受け付けしようとしていたところであなたは倒れたんですよ。
それを見かけて、ここに運びました。目的はここでいいんですよね?」
産婦人科に行こうとしていたから、
ちょうどよかった。
「はい」
「こっちを見て悲鳴をあげて倒れられたのでショックでした」
「……さ、さっきの悲鳴については、どこかのホストクラブにでも
来ちゃったのかと思っただけなので!
不可抗力です。
ホストがコスプレしてるわけじゃないんですよね」
「……はい?」
「できれば他の先生に診てもらいたいんですけど」
色香が漂ってて目もチカチカする。
茶色い髪がまぶしい。
「無理です。私が介抱したから診ているのはありません。
掲示板をご覧になってなかったのかもしれませんが、
今日の午前と午後は私の担当になっています。藤城青と申します」
「藤城先生、すみません……」
「こちらこそ。まだぺいぺいの私なんかじゃご不満でしょうが耐えてください」
どうやら謙虚な人のようだ。
確かにまだ若そうではある。
(ぺいぺいって、コード決済のことかと思ったわ!)
「そんなことないです。助けて下さりありがとうございました」
「二日酔いもあるのかと思いましたが、
ここを目指していらしたということは、産婦人科に用があったんですよね」
「はい。最近、食欲がなかったり生理が来なかったから妊娠かなって」
「……おひとりで大変でしたね」
「ちょっと彼とは喧嘩中なんです。
大学病院か、もう1つのところと迷ってこちらにうかがいました。
予約してたの伝えようとした所で倒れたみたい」
「柚月菫子さん、23歳……?」
藤城先生は、疑うような眼差しを向けた。
表情は分かりづらいが、食い入るように見てきたので、年齢を疑ったのだろう。
(いい人そうに思ったけど前言撤回だ。失礼すぎ)
「申し訳ありません。19歳くらいかと……
いや、中学生でも通りそうだったので驚きました。
早生まれだから、私と3つしか学年が変わらないですね」
「藤城先生、失礼な人ね! あなたこそ魔物じゃない」
「魔物ね。似たようなことは言われたことがありますが
初対面の方に言われるとさすがに……な」
口の端がつり上がった気がする。
「いい度胸だな」
唇の動きだけでそう言った。
私にしか読み取れなかっただろう。
(この若い医者、絶対、俺様だ!)
「……さっさと診察を始めましょう。
ベビーフェイスで可憐な柚月菫子さん」
聴診器を当てられた次は腹部エコー。看護師さんに横になってくださいと言われた。
私は、検査を受けているにも関わらず藤城先生(俺様ドクター)を見ていた。
身長が高い。涼より更に数センチ高そうだ。
細すぎず筋肉が無いわけでもないが雄々しくもない。スタイルが抜群だ。
じいっと観察していると藤城医師は、優雅に微笑んでいた。
「妊娠はされてませんよ。生理不順だっただけじゃないですかね。
もし気になる症状があったり、
検査のご希望があれば予約の上で次回ご来院ください」
そばについていた看護師が、こくりと頷く。
「……数日前から吐き気があって、妊娠かなって思ったんですよね。でも、そうじゃなくて
がっかりというよりほっとしています」
「……お相手の方とは」
「まだ結婚はしてません。だからよかったんですよね」
藤城先生は、先程の表情を一変させた。
とても優しい眼差しをしたかと思えば、
頭を撫でてきた。
「頑張りましたね。ここまで一人で不安だったでしょう」
「……はい。でも平気です。私の彼は真面目で誠実な人だから」
「喧嘩中でもあなたは相手を悪く言わないんだな」
言えるはずもない。
私に手を出したくても出せなくて、
他の人と付き合ってから気持ちに気づいたような人だ。
私も一途に思い続けていたけど彼も、
付き合った人を傷つけても自分の気持ちを偽れなかった。
泣きそうな顔をしたのに気づいたのか、
今度は荒々しく頭を撫でられた。
「今日は抱きしめてもらえよ」
丁寧さは、お仕事だから当たり前だとしても。
私が素で話したからか藤城先生も素で接してくれて嬉しいと思った。
(俺様なのは大目にみてあげる)
産婦人科での診察を受けた結果、
赤ちゃんはできていなかったけれど、安堵の気持ちが大きい。
いっそのこと、もしそうだったら彼もヘタレてはいられなかっただろう。
無責任な男ではないから逃げたりはしない。
「休憩時間だから、お茶でもどうですか?」
藤城先生は私に手を差し伸べた。
「はい。是非」
藤城先生はお茶に誘ってくれた。
大学病院にはチェーン店のコーヒーショップが、二店舗あり
彼がよく訪れるという方に連れていってくれた。
窓際の席に向かい合うと不思議な感じがした。
「俺もあなたを煩わせている男のことを言えた義理じゃないなと思ったら、
何だかほっとけなかった。少し話をしませんか?」
「はい」
「遠慮せず好きなのを頼んでくださいね」
「い、いいんですか?」
藤城先生は、小さく微笑んだ。
「ありがとうございます」
「将来、彼と一緒に藤城総合病院に来てくださると嬉しいなと思います。
産婦人科でお待ちしています」
「はい!」
彼は羽織っていた白衣を脱いで、椅子の背にかけた。
メニューを見てお互いに頼むと向き直った。
「彼のそばで生きていきたいから、私はもしもそうだったらいいなって覚悟も期待もしてたんです」
「その彼は、幸せものだな。あなたのような女性に深く想われて」
甘い顔と甘い声で、甘いことをさらっ、と言った!
「幸せならいいんですけどね」
運ばれてきたデカフェの紅茶は、とても飲みやすかった。
藤城医師は、優雅な指先でコーヒーカップを傾けている。
「お盆休みに妊娠したかもって不安になってるところに、喧嘩しちゃって彼は家出。
私が泣いて怒ったら、ごめん。一人で実家に帰るわって」
「妊娠を疑ってたのに、アルコールは飲まれたわけですよね」
指摘されて赤面した。
取り乱さないように話を続ける。
「帰る場所があるから、家出ができるんですよね」
結局、同棲はしてないけど、時間を合わせて会うし
週末は涼ちゃんの部屋に泊まることも多い。
金曜日から日曜日の夜まで一緒にいる。
抽象的に言うならお互いに帰る場所なのだ。
「でしょうね」
藤城医師は遠くを見つめた。
「……甘えてるのかな」
「きっとね。少し離れて考える時間が、ほしかったんじゃないかなと思うんです」
この人、何か分かった感じで言うなあ。実体験からかしら。
「私は自分のことばかりで、嫌になる」
「いいんじゃないですか。それに、俺こそきっと彼より逃げて甘えてばかりですしね」
「藤城先生……」
「余計なことを言いすぎました。これは、あなたと俺との秘密ですよ」
唇に指をあてる仕草に、ぐらっとした。
いや、別にそういう意味ではないけれど。
(さすがにここでは人目もあって俺様は封印したようだ)
「絶対、次は彼と一緒に来ます。
その時は先生も幸せ掴めてるといいですね」
「……そうだな。あなたなら彼女のいい友達になってもらえそうだ」
じーんときた。結婚して子供を授かったら、
彼に診てもらいたい。
藤城先生の大切な人。
もし将来、会えるなら友達になれるかな。
「……は、はい! 今度は旦那様と一緒に病院に行きます」
「二年後には実家の病院で勤務している予定です。
その頃あなたは彼ととっくに結婚しているんでしょうね」
「……だといいな」
2人で席を立つ。
優しい藤城青先生に笑顔で挨拶をする。
「柚月さん達のように、幸せになれるよう俺も努力しなくちゃいけないな」
「……大丈夫じゃないですか」
根拠もなく言ったら彼は、極上の微笑みを浮かべた。
「お大事に」
受付で支払いを終えて病院を出た。
彼のマンションの部屋に行くと鍵が開いていた。
合鍵も預かっていたがノックをしてみたら、
扉が開いて行った。
出迎えたデカブツは、ヘラヘラと笑っている。目が泳いでいるような。
「菫子おかえり。どこ行っとったん」
一緒に暮らしてはなかったが、
どちらかがお互いの部屋を訪ねるとおかえりと言うようになっていた。
「実家に逃げ帰っていたくせに、よく言うわね! 私がどこへ行こうと勝手でしょ」
あっちゃあ。ついまた可愛げないことを口走ってしまった。
「ごめん」
「え……」
「俺がだらしないから、菫子に嫌な思いばっかさせるんは、わかってる」
「……も、もういいのよ。もう……」
顔をそむけて、そばを通り過ぎようとする。
これでは、意識していると言っているようなものだ。
藤城先生と話して、少し反省したのに台無しだ。
ぐい、と掴まれた手の強さと熱さに、うろたえる。
「菫子、俺とずっと一緒にいたい?」
「……今更離れられないもの」
「阿呆でヘタレな男でもええの?」
「涼ちゃんにしかときめかないみたい」
うっかり、口に出してしまった言葉に、はっ、とする。
大学の合コンで一目惚れしてから5年、ずっとこの人しか見ていない。
「……すみれ」
腕を引かれ、抱きしめられた。
(抱きしめてって言わなくても抱きしめてくれるのよね)
大きな体。厚い胸板が、彼だと伝えてくる。
「俺が菫子といたいんや。ずっと一緒にいたい気持ちはお前にも負けへん」
踵が浮いて、スリッパが脱げ落ちた。
不安定な体勢になってしまうのは、30センチ違う身長のせい。必死でしがみつく。
目を閉じたら、キスが降ってきた。
「病院に行ってたの。大学病院……」
「そういや、この頃具合悪そうやったな。
ついていってやれんでごめんな」
抱きしめる力が強くなった。
「いいのよ。大したことなかったから」
「ほんまに?」
「子供ができてたら、涼ちゃんは喜んでくれた? 」
試すように聞くなんてずるい。
分かっているのに聞いてしまった。
「当たり前やろ……」
涼の言葉には嘘がない。嬉しかった。
「子供ができたら涼ちゃんがちゃんとしてくれるんじゃないかって思ったの。
でき婚を狙ったわけじゃないんだけど」
「……お前との子供も想像したことあるで」
涼ちゃんが私の頬を手挟む。熱い眼差しにドキッとした。
素直に今日の出来事を話すことにする。
「大学病院には、魔物がいたわ」
「幽霊か! あそこ出るんか!」
菫子は、興奮気味の涼の手をつねった。
「人間よ! 白衣の魔物。とんでもない美形で、毒がある先生(ドクター)よ」
「それは、男か?」
「若くて麗しいお顔の男性」
「菫子……ドキッとしたか?」
「涼ちゃんにしかときめかないって言ったでしょ。ドキッとなんてしないわよ!
私は男くさくて、暑苦しいくらいがいいのよ!」
褒め言葉だ。
「やったで。美しい魔物のドクターに勝った!」
「……身長は負けてるけど」
「マジか。そりゃ俺より背が高い男くらいおるやろうけど……
顔が良くて身長まで高いとはクソ嫌味な」
どんなに情けなかろうが、涼の方が、かっこいい。
「もちろん、病院の先生だから高収入で」
からかって遊ぶくらいいいだろう。
「医者と比べんな! 医学を六年も勉強した上で、卒業間際に国家資格取らなあかんのやぞ。
それからも初期研修2年やらあるし、専門医として
羽ばたけるのは30歳前や。
そりゃ、高収入やろうけど、医者になっても毎日勉強……俺ならどっかおかしゅうなるな」
「確かに私たちより学年は3つ上で、大学病院にいるのは、あと二年と言っていたわ。涼ちゃん、詳しい」
「それくらい、知っとるで」
「涼ちゃん、あのね、変な意味じゃなくて、
あの先生好きかも」
「……変な意味やったら、ショックやわ」
「近い将来、彼のいる産婦人科を訪ねられたらいいな」
「もー、あかん!可愛すぎるわ。反則やわ。
俺の子がそんなに欲しいやなんて」
「そこは自惚れなさい。だって欲しいんだもん」
「めっちゃ嬉しい」
「藤城総合病院に、異動するって言ってたわ。藤城青先生」
「……藤城総合病院の御曹司か!」
「藤城先生を知ってるの?」
「病院は、知ってて御曹司を知らんとは」
「……う、うん。興味がなかったから」
「ほっとしたわ。確かに魔物や。近づいたらあかんレベルの男や」
涼ちゃんは、畏怖している様子だった。
「見たことあるの?」
「……あらへんけど。有名やから。T大学医学部を首席で卒業したメガトン級のイケメンとか」
「メガトン……あはは。ホストみたいだったけど。白衣じゃなかったらまんまホストだわ」
「……本物見てみたいわ」
「御曹司なら、跡を継ぐために藤城総合病院に戻るってことね」
実家の病院に帰るのは後継者だからだ。
腑に落ちた。
「菫子は結婚して、藤城総合病院の
産婦人科で、俺の子が産みたいってことやろ」
「……そうよ。お馬鹿な涼ちゃんしか、私にはいないんだからね!」
「絶対に一緒になろうな」
「今すぐじゃなくていいから、早めにね」
「ああ。頼りなくてすまんな」
「お金なら私も少しずつ貯めてるからね」
身体を離した涼ちゃんは、泣きそうな顔をしたあと笑った。
「菫子を選んでよかった。俺のそばにいてくれてありがとう」
「私が捨てたら、拾ってくれる人いないもんねー」
これくらい言ってもいいだろう。
かけがえのないものを作る覚悟を
決めるんだって、信じてあげるんだもの。
抱きついたら、背中を撫でられた。
「今日は駄目」
「俺は、そんなに野獣やあらへんし、
気にせんで」
「明日ならいいわよ」
愛しくてたまらなかった。
今日は泊まっていこう。
「……菫子」
いつまでも愛してる。
耳元でささやかれてしばらくした頃、二度に渡る熱烈な求婚(プロポーズ)を受けることになる。
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