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その2

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あー、今日も今日とてカッコいいわー

「姉さん、なにを見ているのか知りませんがやめて下さい。人前ですよ」

あら、イクリットったら顔を赤らめてもうアルフォンス様にメロメロだわ
わかるー完璧イケメンだもん好きになるよねぇぇぇ

「泣きそうになってまで何をしてるんですか、不審だからやめて下さい。我が家門に泥を塗っていますよ。」

「テオバルト、どうせ私たちは没落するのよ、泥付きの家門だろうが付いてない家門だろうが関係ないわ」

何をしているのかというと、私は今遠くの方で剣の練習をしているアルフォンス様をこの望遠鏡から覗き込んでいる。
天文学の教室から持ち出したこの大きめの望遠鏡からは、なんとここから遠く離れて肉眼では米粒ほどだって見えないだろうアルフォンス様の姿もバッチリである。

さっきから周りの生徒が私を見てギョッとしている雰囲気を感じながらも気にせず観察する。空を見るための物を下に向けて見ているのだからそうよね。しかも今は放課後ではあるけど明るいしね。

「テオ、イクリットがついにアルフォンス様の剣術を間近で見るまでになったわ。タオルまで持ってるもの、あれは終わった後に渡すのよきっと。うっかり手が触れ合ってドキドキが止まらなくなるのだわ」

「多分渡そうとしても殿下は受け取らないと思いますし、完全に彼女は殿下のストーカーと化した片想い拗らせ女子なので姉さんがそんな切なそうな顔で観察するものでもないかと思いますよ...」

テオが溜息を吐きながら何か言っている。ストーカーなんかじゃなくて仲を深めているのよ、何を言っているの。

「イクリットが可愛いわ、2人を見ていると私胸がズキズキするもの、きっとこれから2人の邪魔をするんだわ、そんなの断罪一直線じゃない」

1週間前、イクリットが転入してきた。
けれども物語と違い、アルフォンス様と同じクラスの1組ではなく、一番教室の離れた8組に転入してきたのにはびっくりした。因みに私は3組である。さらに因みにテオは私と同じクラスである。2個下のくせに飛び級とか謎の頭の良さで姉と同じクラスとかなんなのか。

だがしかし些細な違いである。
イクリットがついにきた。
テオもなんだかんだ興味があったのか彼女のことを調べ上げて、今なら私よりも詳しい。テオ、イクリットを好きになってもアルフォンス様には勝てないわよ。

「殿下がそのセリフを聞いたら殿下も胸を痛めるんじゃないですかねぇ」

「何を言っているのテオ...あっ、イクリットがアルフォンス様に駆け寄っていくわ。ああ!転んでしまったわ痛そう。」

アルフォンス様が剣術の練習を終えたのを見計らってイクリットが駆け寄る。
駆け寄ったけど何もないところで躓いて転んでしまっていた。ものすごく痛そう。
割と近くで転んだのに殿下は気づいてないのか、見向きもせず従者からタオルを受け取って汗を拭いていた。

イクリットがちょっと涙ぐんでいるわ...
ア、アルフォンス様気づいてあげて!ヒロインは後ろよ!

「テオ、2人はすれ違っているわ!」

「すれ違ってないですよ、アルフォンス殿下は突進してくる猛牛から華麗に避けていらっしゃる状態かと」

何も見えていないくせにわかったような口を聞くテオに私は目を向ける

「テオ、最近私の話を信じてないみたいだけど、あのシーンも小説に登場するのよ。本来は躓いたヒロインを抱き止めてそのままタオルを受け取るシーンだったのに...受け取ったタオルをありがとうと少し頬を赤らめて微笑むアルフォンス様が最高にかっこよくて可愛いシーン、文章じゃなくて生で見られるかと思ったのに残念だわ。」

「それを殿下に伝えたら少し頬を赤らめて愛を囁いてくれるんじゃないですかねぇ」

溜息を吐くテオに、アルフォンス様が誰にでも甘い言葉を吐くと思うなよと睨みつけてから再び2人を見ようと望遠鏡を除いても、すでにイクリットの姿はなく、再び稽古を再開させたアルフォンス様の姿しか無かった。

かっ、カッコいい...
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