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第3話 全裸の女

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辺境都市レベリーは、外壁に守られた要塞でもある。外壁の入り口は、東西南北にある巨大な門であり、その門には複数人の兵隊が警備や検閲をおこなっている。このアナステラの世界で忌み嫌われる転生者もここで捕まることは多い。門やその周囲で捕らえられた転生者は、皆全て辺境伯城に幽閉される。
ここで捕らえられた転生者は、絞首刑、火炙り、串刺しと、皆一様に助からない。稀に女の転生者が幽閉され、奴隷として権力者に飼われる。ただ、女の奴隷の行末だって明るい未来は待ってはいない。そのため、ハンター達はある種の同情心で、転生者を捕らえるのではなく、生き恥を与えないという意味で殺めるという手段を取るものも多い。
そのため、事実上、転生者は遅かれ早かれ死を迎える。

都市の人々は、転生者達の辿る道のせいか絶対に関わろうとはしない。余程のモノ好きか、余程のクソ童貞以外は絶対に関わろうとはしないだろう。





「とりあえず、これ着ろ!」

サイロは女にマントを渡した。女は「ありがと」と言ってマントに包まった。その後、ナロが女の腰回りに縄を巻きつけ、マントの固定兼女の拘束をした。

「裸マントに縄とか、とてもイヤラシイと思うんのだけど。あと、思えば、サイロくんは露出プレイでの初体験を迎えた訳だよね。これかなりのアブノーマル度高いよね」

しかし、サイロもナロも女の返事をせず、代わりにサイロが言った。

「早く行くぞ」
「ピュアボーイにはまだ早かったか」
「………」

サイロが縄を引っ張ると、女はワザとらしく小さく叫んだ。

「キャァッ!
縄プレイなんて、早熟すぎるぅ!」
「サイロ、もっと引っ張っても良いぞ」

サイロとナロは一刻も早く帰りたくなった。

こんなはずではなかっな。サイロとナロはもっと沢山の獲物を狩る予定だった。その証拠に、サイロは剣だけでなく、伽石や、毒瓶、1日分の食料等々、持っていたのだ。北東森林は、日帰りで回れる程狭くはない。それを考慮しての散策だったが、どうやら出番は今度ということになりそうだ。この悲しさはどこにぶつければいいのか。女はどこ吹く風である。

ただ、一つ明確なことは、この女をレベリーまで連れて行くことだ。サイロの頭の中では、もう既に今後の計画と、次回のハンティングへのイメージが描かれていた。そして、その絵を塗り潰す様にナロが女に会話をふっかけた。

「そういえばお前は何て名前だ?」
「アタルだよ」
「アタル?変な名前だな」
「そうか?サイロとかナロの方が変じゃないか?」
「いやいや、何を言ってんだよこの女は。サイロも何か言ってやれ」
「………」
「サイロくんは俺の魅力に負けて何も言えないみたいだな。おチビさん」
「おい、今なんて言ったんだ。変態女!」
「変態女?いやいや、俺はさっきまで聖母マリアと同じ処女だったんだぞ。そんな俺を変態呼ばわりするなんて、罰当たりもいいところだぞ!チビ助!」

こんな調子で歩いていると、段々と辺境都市レベリーが見えてきた。レベリーは岩壁に囲まれた要塞でもある。
これでこの女ともお別れなのか。サイロはそう思った。サイロの人生で恐らく一番美しく、不思議と臆することなく話すことができ、それでいて、初めてを捧げあった女。サイロは少しだけ寂しく思った。
サイロはふと、気になることを思い出した。



~~~
あの性交の後、
しばらくして、この女は月明かりの下、涙を流しながらまるで産まれたての子山羊の様に立ち上がった。その光景は、サイロは初めて神秘的で耽美とも言える艶かしさがあった。
そして、女は、あろうことか自身の秘部に細い指を突っ込んだ。そして何度か身体を小さく痙攣させた。その度に、女の肌に薄っすらと浮かぶ汗が月光を反射した。
サイロの脳裏は、困惑と背徳感、そして興奮が渦巻いて絡み合った。
女は、無心に自身の秘部をかき回し、そして、遂に、白濁の汁を股から垂らした。タラリと股から垂れた白濁は重力に従って、ゆっくりと落ちていき、地面に糸を垂らして着地する。

ポタリ


すると女は、真っ赤な顔をして、絵も知れぬ羞恥に悶えた顔に変わった。サイロは女の表情やそのエロシズムから目を離すことが出来なかった。女は、開いていた股を急いで閉じ、顔を下げて、地面にペタリと女の子座りをした。女の顔は綺麗な赤髪で影になった。

「うっ、うっ、ぅ」

声にもならない声の後、少しだけ水音が聞こえた。静かな湖の側で、女は幼女の如く小さく震えた。顔には汗のせいか赤髪が肌に数本張り付いていた。股下には湿った土が見えた。

それを見たサイロは再び勃ったのだった。
~~~



今にして思えば、あれはなんだったのだろうか。

「女!お前はあの後、何をしてたんだ?」

サイロは聞いてしまった。

「いや、なんか、ゴム付けてなかったし、やっぱり妊娠するのって怖いからさ。
精子を掻き出してた。なんか気持ち悪くてな」
「ってことは、セックスした後の女はみんなそうするのか?みんな、漏らすのか?」
「知らんわ。漏らすって言うな」

何だこの会話。精子を掻き出しても避妊はできないぞ。ナロは頭を抱えて2人の会話を聞いていた。サイロは少しだけ顔を赤らめて言った。

「次は俺が掻き出してみてもいいか?」
「え?あっ、いや、それはなんか恥ずかしい。てか、童貞が過ぎるぞ!セクハラで訴えてやるぞ!」
「もう童貞じゃないし、セクハラって何だ?意味わからん」
「………。
セクハラって異世界では通じないのか。
まぁ、少年、一つだけ言っておくが、今みたいな発言は他の女にはするなよ!痛い目にあうぞ」

女は何故か、サイロを心配する両親みたいな表情になっていた。

レベリーの外壁に沿って、歩きながら話していると、段々と衛兵の姿が見える。徐々に大きくなる衛兵の姿に、一同はこの旅の終わりを感じ取った。
女はサイロを無視して、ナロに話しかけた。

「それよりさ、俺は今後どうなっちゃうわけ?」
「まぁ、とりあえず売られるわな」
「なんかエロ同人誌みたいで、興奮するな」
「………、」
「続けて」
「買われた後は知らねー。貴族様の考える事なんて一介の小市民に分かるわけないだろ」
「あっ、もし可愛い貴族の女とかだったら、その女に調教されるって事だよな?
それって風俗でいう1時間2万くらいのSMコースを毎日長時間受けられるって事だよな!
おい、ご褒美か?」

サイロとナロにとっては極めて不可解なことに、この女はニタニタと上の空だった。幸か不幸かこの世界では"風俗"や"SM"って単語は当然通じはしない。
ただ、ナロは言った。

「そんなに良いもんじゃないぞ。第一、調教されたがっている奴隷を調教すると思うか?俺なら、そんな奴はゴメンだ」
「一理ある。今から清楚な感じでいくわ」

女はキラリと目を輝かせた。




一同は、レベリーの門に到着した。
門の脇には、数人の衛兵が通行者に対して検閲を行なっており、その検閲を複数の衛兵が見ていた。

サイロは衛兵1人に話しかけた。

「ハンターだ。転生者を捕まえた。レベリー留置場までの先導を頼む」

サイロの一声は、瞬く間に衛兵並びに通行人の注目を集めた。衛兵達がワラワラと集まりだした。

「少年、後ろの赤髪の女が転生者か?」
「そうだ」
「よし、分かった。付いて来い」

衛兵はサイロを門の隣にある小さな扉に誘導した。そして衛兵は言った。

「まずはココで武器を所持していないかを探る。まずは、女、マントを取れ」

すると、意外なことに女は小鳥のさえずりの様に綺麗な声を漏らした。

「いや、ダメっ、」

すると、衛兵が戸惑った。ただ、サイロにはなんとなく女の声がワンテンポ遅れて、少しだけワザとらしさというものを感じた。

「女よ、すまない。決まりなんだ。従ってもらう」

衛兵は少しだけ嫌そうな顔つきをしたが、力を込めて女からマントを剥ぎ取った。すると、案の定、女は全裸になってしまった。

年頃と言っていい健康的な身体。2つの美乳と、細っそりとした手足。この世界では珍しい程に白く、全てが整った顔立ちに、紅の美しい髪。衛兵達は息を飲んだ。
薄っすらと生えている下の毛も紅に染まっており、少しだけ湿った光が人々の背徳感を産んだ。女は、何故か隠そうとともせず、歴戦の勇者の如く男の様に立っていた。

「満足ですか?」

女の"私は屈しません"という心の強さに、衛兵達はこの女の真なる強さを感じた。
衛兵達はなんとなく申し訳なさそうに女にマントを返した。

「これからお前を隊長の場所まで移送する。今みたいな検査は今後沢山あるだろう。今のうちに覚悟しておけ」

一連のやり取りを見たサイロは少しだけ女を不憫に思った。
かけてやる言葉なんてサイロには持ち合わせていない。女にとって、全裸をこんなに大勢の人の目に晒してしまうということは、最悪婚儀にも関わる。
サイロは罪悪感を胸に女の顔を見た。

すると、そこにはなんだかとても嬉しそうな表情の女がいた。まるで、プレゼントを待っている幼女の如く、何か良いことを純粋に待ちわびている少女の瞳がそこにあった。

ナロは頭を抱えて、心の中で、"清楚な感じでいく"って言ったばかりじゃないか!とツッコミを入れた。

サイロの心配とは、相反して、露出癖の女は嬉しそうであった。
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