Leaf Memories 〜想いの樹木〜

本棚に住む猫(アメジストの猫又)

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想い残した遅れた葉

もう届かない風鈴草

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「いつもありがとう。」

(いいえ、あなたの力で頑張れたのよ)

「君のおかげで頑張れた。」

(いいえ、あなたがすごいからよ)

「でも僕がこんなにボロボロになったのは自分のせいだ。」

(そんなこと言わないで)

「僕が弱かったからだね。」

(違うわ。私があなたを頑張らせたからよ)

「僕が強くなれてたら、きっと君に頼らなかったのに」

(私が頼って欲しかったからよ
 だから、あなたのせいじゃない)

「僕は無力だね。」

(あなたは無力じゃないわ)

「この腕をとってしまって、君に渡したいのにな。」

(そんな事しないでほしいわ)

「僕が無力なせいだから、君を傷つけてしまったんだよね。」

(傷つけてしまったのは私の方よ
 あなたのせいじゃないわ)

「僕が君の全ての傷を受けてたらよかったのに…。」

(そんなこと言わないで)

「君を壊してしまった僕を、君は許してほしくないのに。」

(それでも許すわ)

「僕を許してくれる君が目に見えて分かってしまうんだ。僕は馬鹿だね」

(馬鹿じゃないわ)

「本当にいつもありがとう。」

(私こそよ)

「いつも、僕のためにしてくれる君になにを返せばいいのか分からないんだ。」

(もう泣かないで)

「僕はだめだね。
 涙がとまらないや。」

(泣いてもいいの)

「君を傷つけた奴に報復するなんて出来ない僕を許して。」

(勿論許すわ
 そんなことしてほしくないもの)

「僕は出来損ないだね。」

(そんな事ないわ
 私を守ってくれたじゃない
 それだけで私は十分よ)

「本当に、ありがとう。」

(ええ)

「ほんとうにありがとう…っ」

(もう泣かないで)

「僕を殴ってくれたっていいんだよ。」

(殴ったりしないわ
 代わりに抱きしめてあげたいくらいよ)

「こんな僕を優しくなんてしちゃいけないんだ。」

(優しくしてもいいでしょう?)

「不思議だね。
 君に抱きしめられてるような感覚がしちゃうや。」

(抱きしめてるもの)

「涙が止まらないのに、もう止めることなんて出来ないよ。」

(泣きたい時に泣くのが1番よ)

「僕はほんとに馬鹿だ。」

(大丈夫、大丈夫よ)






「僕が死ねばよかったんだ。」








 あなたを抱きしめても抱きしめても、安心してくれないあなたに私は涙を流す事が出来なかった。
 きっと涙を流してあなたと共に泣くのが1番なのに、そんな事も出来ない私を許してほしいの。

 私を助けようとしてくれたあなたを、私が守ってあげられた事が私の誇り。そう伝えられたらよかったのに、あなたに何度伝えてもこの声は届かないの。
 「ありがとう」さえも伝わらないあなたに、なにをどう伝えればいいのか分からないわ。



 この声さえ届いていれば、あなたは泣かずにすんだのかしら。

 この声さえ届いていれば、あなたが辛くならなかったのかしら。

 この声さえ伝わっていれば、あなたは抱きしめ返してくれるのかしら。

 この声さえ伝わっていれば、あなたは私を乗り越えられるのかしら。



 何も分からないの。あなたを守れたことに安堵してしまった私が、あなたの心を護ってあげられなかったんだと知ってしまったのに、もうなにも出来なくなってしまったから。
 明日なんてない私が明日もあるあなたに、なにをどうしたらいいのか分からないの。涙が出ないせいであなたを苦しめている実感が強くなるばかりだわ。

 そんなの当たり前なのに、あなたが涙してくれるのを辛くて苦しくてどうする事も出来なくなってしまった私を決して許してくれず、あなたばかり許して欲しいと言ってくるから、もう私に明日もないんだと分かってしまうの。
 「許して欲しい」とも「ありがとう」ともなにも私が言えないのが辛くて、あなたが苦しんでるのを見るしか出来ないの。
 もうどれだけ叫んでもあなたの手さえ届かないから。









 あなたが「ごめん」と何度も言うその声を続かせてしまうのは、



 私がもう誰も幸せにしてあげられないのが分かるから。


 あなたを不幸にさせてしまうからなのね。





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