悪魔付ゲーム

本棚に住む猫(アメジストの猫又)

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〜悪魔を探すなら足跡だけ〜4日目

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    目が覚めて、時計を探しながら辺りを見渡すとまだ暗くて、時計の針は3時くらいを指していた。
    サッパリとした、いい気分。とは言えないほどだけれど、昨日よりは気分は良い気がする。昨日の夜の事を思い出そうとしても、ハッキリとは思い出せなかった。

    コンコンと、小さく静かにノックする音が頭に響く。

「あ、あの…起きてますか…?
よければ、ココア飲みませんか…」
    なんだか、頼りない声だな。と思いながら、ドアを開けに行くと、走り去っていく音がして、思わず呼び止めにドアを開けるとどこにも声の主は居なくて、ドアの横にワゴンと共に丁度良い熱さの、ココアと小さな手紙。いや、メモみたいなのがあった。

《医務室で聞きました。
もし良ければですが、夜ご相談に乗ります。》

    それだけで、裏にも表にも名前が書いてなかった。そういえば、この館には見回りに来る使用人?みたいな人とか居ないのかな…?
    そう疑問を持って、目が完全に覚めてしまったからココアを飲みほすと、探検に行くかのようにストールを羽織ってオシャレな懐中電灯を片手に探索しに行った。

    会場に行く廊下まで出ると、昨日の服を着たままだったのに気づいた。いや、引きこもりニートの私にとっては、別に大した事は無いけど…、この数日間で少し価値観が変わった気がする。皮肉にも、この生活で1番人間味のある健康的な生活をしてる気がする。
    1日に2人必ず死ぬ日常が正常な事では無いのは分かってるけど…、なんだかそれを受け入れつつある自分が居る。恐怖だってあるけれど、麻痺してるみたいに怖さや、感覚が薄れていってる気がする。

    私は、自分自身を抱き締めるように座り込む。カツカツと誰かが来る音がして咄嗟に庭側の廊下の柱に隠れると、その音はどこかに行ってしまった。私は、怖くなって部屋に走って戻ると、毛布に包まった。


    リンリンと朝食の時間を知らせる音が鳴って、少しするとコンコンといつもの白いメイドさんが支度をしにやって来た。

「鈴様、お目覚めになっていたのですね。
今日のお召し物は、こちらになります。」
    白いメイドさんは、いつもの様に手際良く支度をしてくれた。でも、今日は少し違う所があった。

「…あの、このメイドさんは…」
   言い切る前に、他のメイドさんに「新しく担当になったんですよ。鈴様」と、言われてしまった。
    そして、見えてしまった。メイドさんの頬の方にスペードみたいなマークが着いていた。

「…見ましたか?」
    メイドさんにそう言われて、咄嗟に「見てません!」と否定する。いや、嘘をつかなくても良かったのでは…?いや、アクセサリー型の盗聴器とかの話があったし、良かったのかも…?
    そう、考えていたらいつの間にか支度は済んでいて、今日の服は修道女みたいな昨日とは少しタイプの違うロングドレスだった。髪の毛も巻いて、ハーフアップにしてもらっていた。

    ドアを開けると、皆が待っててくれていた。少し足りない気持ちを抑えて、笑顔で挨拶をする。

「皆、おはよ!
どうしたの?私を待つとか、らしくない事して!」
    冗談交じりに言うと、心配そうな淑(しと)さんや、荊(けい)さんが挨拶してくれた。あいつは、険しい顔をして私を見てた。鈴宮(すずみや)君は、私がドアを開けた瞬間会場に向かって行ってしまった。なんやかんや、心配してくれてるのかも?

「…おい、もう大丈夫なのか?
早く行かないと、やつに何されるか分からな…」

「はいはい。ほら、行くよ~」
    あいつが言い終わる前に、言ってやった。まぁ、私もずっとへこんでるのは足でまといになるからね。あいつは、後ろで何か言ってたけど無視して会場に向かった。


「鈴ちゃん、もう体調大丈夫な様だね♪
凍花(とうか)ちゃん、心配してたんだ~!
でも~…、無理…してるんじゃない?」
    朝ごはんを取りに行ってる時、凍花ちゃんにそう言われた。私が固まってるとじゃあね~!と、どこかに行ってしまった。

「おい、何言われたんだよ。
あれが、凍花とかいう奴か?」
    あいつが唸るように言ってきたけど、そうだよ。と言ってやった。正直、あいつの事より凍花ちゃんの言葉しか頭に入らなかった。
    「無理してるんじゃない?」ただの心配する言葉のはずなのに、私の首を絞めるかの様に私の心を締めつける言葉に聞こえた。

「鈴さん、もう…大丈夫なんですよね?」
    おずおずと淑さんは私に聞いてくれた。申し訳なさで少し苦しくなった気持ちを落ち着かせて頷く。

「大丈夫、私これでもこういうゲーム得意だし赤の他人とも言える子に、そこまで未練タラタラだと流石にロリコンって思われちゃいそうだしね」
    冗談交じりに言う私とは裏腹に、淑さんや荊さんの顔は少し曇っていた。なんだか私が2人いるかのように、もう1人の私は息が出来ない様な苦しそうにのたうち回ってる。


    朝ご飯が終わって、少し喋っているとツリーが喋りだした。相変わらず、機械のような声だな…と思った。
『昨日皆様に言ったように、これからが山場になります。
私の使用人達に、何やら質問していた方々がいたようですが…使用人もここから出られるルートや、出口は知っておりません。
なので、無能な探索や考察などお辞めになった方が、良いと思われますよ。
では、今朝の悪魔付きゲームを始める準備を致します。いつもの準備より、時間がかかります。皆様、会場前には来ないようお願い致します。では、take a sleep』

「おい!それ、どういう事だよ!」
    あいつが声を荒らげてツリーに言ったけれど、ツリーは反応しなかった。白いメイドさんに戻るよう言われて、私達、いやプレイングカードの生き残り全員が会場から出された。

「貴女、ちょっと来てください。」
    鈴宮君に腕を引っ張られて、向かうのは図書室へ行く廊下だった。本を見せられて、静かに言ってきた。

「調べて欲しい物とは違う系統の本ですよね。
貴女は、言った事も出来ない子供ですか。洋仁君の事は分かりますが、大人ならもう少し切り替えが出来るはずです。」
    多分、心にも無い事を言ってるのは分かってる。けど、心配して言ってる事も伝わってきた。私は、なんだか皆に愛されてるのかもしれない。

「…それで、この本で何を調べたのですか
それくらい、言えますよね。」
    そう言った鈴宮君の目線が少し冷たく感じた。すこし、怯えながら呟くように言った。

「こ、これ…は、ツリーがたまに言葉の最後に言う、『take a sleep』って言うのが気になって調べたの。収穫は昨日言ったように、無かった。」
    そう言って、鈴宮君から逃げる様に部屋に戻った。


=============
    洋仁がい亡くなって、約1日が経ったね。私、この館の本に脱出する事か、秘密が書いてるかもしれない。
私が調べたもう1つの本に、書いてあった。
    生きてるか死んでるか分からないけど、私達が来る前にこの悪魔付きゲームをした人が書いたメモがあった。
    とっさにそれだけちぎって、メイドさんに取られないように、肌に離さずポケットに入れてる。これを皆に伝えても、なんだか誰かに聞かれていそうで言えない…。馬鹿だよね…こういうのは、報告した方がいいのに。
=============
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