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第18話 俺が番だ
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『奇遇だね。僕も君のような悪魔は大っ嫌いだ』
そうハッキリと告げたブルーノは、両手を胸の前で合わせ小さな声で何やら呟いた。すると、ナタナエルの周りに次々に小さな無数の魔法陣が現れた。
「なッ、これは」
驚きを隠せないナタナエル。
魔法陣から眩く光る鎖が現れ、それはナタナエルの両足、そして両手に絡みつく。
「どうなってんだ……?」
呆気に取られる俺の牢の前で、ライオネルが小声で言った。
「こいつらは、魔王陛下討伐に選ばれた人間。弱いわけないだろう。自分の身は自分で守らせた方が早い」
「あー、なるほど」
さっきまでの弱そうなブルーノは、ライオネルの魅了で操られていただけなのか。そして今、それが解かれたブルーノは、本来の力でナタナエルに立ち向かっていると……。
「てか、ブルーノ。見た目に似合わず、普通に強いな」
鎖はナタナエルの体に食い込みながら全身に纏わりつき、更に違う魔法陣も現れ、ブルーノの容赦ない攻撃がナタナエルを襲う。
無数の爆発音と共に、ナタナエルは土煙りに包まれる。
(このまま殺しちゃっても良いけど、悪魔ってパッと見人間だからなぁ。躊躇っちゃうなぁ)
そう心の中で呟くブルーノは、今までで一番大きな魔法陣を頭上に出現させ、そこから、これまた大きな槍がナタナエル目掛けて放たれた。
「躊躇いもクソもねぇ……」
土煙が徐々に落ち着き、そのシルエットが見えてきた。
「なッ、どうやって……」
ナタナエルの黒いローブはボロボロに破れているが、鎖から逃れてピンピンしていた。
「人間のくせに中々やるじゃん。もっと広いところでやろうよ」
ニヤリと笑うナタナエルに、ブルーノは一歩たじろいだ。
さすが魔界で一二を争う悪魔。そう簡単にはいかないようだ。
戦闘が長引くのを覚悟して、ライオネルの腰についている牢の鍵を奪い取ろうと手を伸ばした時だった。
「何をしている?」
どこからともなくグレイズが現れた。
「兄者……」
「人間には危害を加えるなと言ったであろう。人間、こちらへ」
そう言って、ブルーノを手招きした。
(え、僕? てか、この男……魔王……だよね? 昨日まで僕、この男に何の警戒心もなく話しかけていたような……そして、そこにいるジークの仲間。あれも黒髪ってことは、悪魔? でも、ジークの仲間だし……うーん)
混乱しているブルーノに、ライオネルが呟いた。
「魅了」
すると、ブルーノの表情が一変。再び弱そうに怯えるブルーノに変わってしまった。
そんな彼を守るように、グレイズが前に立った。
「我は、無駄な戦闘はしたくない。この者らも近々人間界へ送り返す予定だ」
「しかし、兄者……」
「王は我だ。口答え無用」
グレイズはブルーノを牢から出し、俺の隣の牢に入れ直した。そして、鉄格子に何やら術をかけた。
(まさか、ナタナエルが我の結界を破るとは……また破られたら面倒だ。他の人間の結界も、ジークの牢のように三重に張っとくか)
(俺、贔屓されてたのか……)
嬉しいような、しかし、俺が弱いと言われているようで……複雑な気分だ。
「それでは、兄者。改めて王の座をかけて決闘を申し込みします」
「断る」
「負けるのが怖いのですか? アレッシオより弱いですもんね、ライオネルは」
何故、王の座をかけて戦うのにライオネルが出てくるのだろうか。グレイズとナタナエルが戦うのでは?
疑問に思いつつも、今はただの人間として捕まっている身分。黙っておく。
「ライオネルは強い。だからこそ言っている。其方は、次負ければ二度と王にはなれんからな」
「う……」
ナタナエルが苦渋の表情でライオネルを見た。そして、その後ろにいた俺と目があった。
「(こいつ、この間妙なこと言っていた人間だ。まるで、僕のことを知っているような口振り。殺されかけて頭がおかしくなったのかと思ったが、さっきもライオネルの名を普通に呼んでいたし……)貴様は、何者だ?」
「俺は……」
(まずい……ナタナエルは、感だけは良い。このままではジークが我の番だと……アレッシオの生まれ変わりだと、気付かれてしまう)
心中焦るグレイズは、俺を隠すように立ち、ライオネルと寄り添うように肩を組んだ。
「今は、我の番の話であろう?」
(グレイズ様……そのまま私を番にして下さい)
ライオネルは、うっとりとグレイズを見上げる。
——何だろう。この胸のモヤモヤは……。
「グレイズ……」
(ジーク、申し訳ない。其方を守るためなのだ)
グレイズが、必死で守ってくれようとしてくれているのは伝わってくる。けれど、ライオネルを番だと偽ってまで助けられたくない。何故、嘘を吐くのか。
俺は、堂々と言った。
「グレイズの番は、この俺だ! 俺の方が、何百年も前からグレイズを愛している!」
そうハッキリと告げたブルーノは、両手を胸の前で合わせ小さな声で何やら呟いた。すると、ナタナエルの周りに次々に小さな無数の魔法陣が現れた。
「なッ、これは」
驚きを隠せないナタナエル。
魔法陣から眩く光る鎖が現れ、それはナタナエルの両足、そして両手に絡みつく。
「どうなってんだ……?」
呆気に取られる俺の牢の前で、ライオネルが小声で言った。
「こいつらは、魔王陛下討伐に選ばれた人間。弱いわけないだろう。自分の身は自分で守らせた方が早い」
「あー、なるほど」
さっきまでの弱そうなブルーノは、ライオネルの魅了で操られていただけなのか。そして今、それが解かれたブルーノは、本来の力でナタナエルに立ち向かっていると……。
「てか、ブルーノ。見た目に似合わず、普通に強いな」
鎖はナタナエルの体に食い込みながら全身に纏わりつき、更に違う魔法陣も現れ、ブルーノの容赦ない攻撃がナタナエルを襲う。
無数の爆発音と共に、ナタナエルは土煙りに包まれる。
(このまま殺しちゃっても良いけど、悪魔ってパッと見人間だからなぁ。躊躇っちゃうなぁ)
そう心の中で呟くブルーノは、今までで一番大きな魔法陣を頭上に出現させ、そこから、これまた大きな槍がナタナエル目掛けて放たれた。
「躊躇いもクソもねぇ……」
土煙が徐々に落ち着き、そのシルエットが見えてきた。
「なッ、どうやって……」
ナタナエルの黒いローブはボロボロに破れているが、鎖から逃れてピンピンしていた。
「人間のくせに中々やるじゃん。もっと広いところでやろうよ」
ニヤリと笑うナタナエルに、ブルーノは一歩たじろいだ。
さすが魔界で一二を争う悪魔。そう簡単にはいかないようだ。
戦闘が長引くのを覚悟して、ライオネルの腰についている牢の鍵を奪い取ろうと手を伸ばした時だった。
「何をしている?」
どこからともなくグレイズが現れた。
「兄者……」
「人間には危害を加えるなと言ったであろう。人間、こちらへ」
そう言って、ブルーノを手招きした。
(え、僕? てか、この男……魔王……だよね? 昨日まで僕、この男に何の警戒心もなく話しかけていたような……そして、そこにいるジークの仲間。あれも黒髪ってことは、悪魔? でも、ジークの仲間だし……うーん)
混乱しているブルーノに、ライオネルが呟いた。
「魅了」
すると、ブルーノの表情が一変。再び弱そうに怯えるブルーノに変わってしまった。
そんな彼を守るように、グレイズが前に立った。
「我は、無駄な戦闘はしたくない。この者らも近々人間界へ送り返す予定だ」
「しかし、兄者……」
「王は我だ。口答え無用」
グレイズはブルーノを牢から出し、俺の隣の牢に入れ直した。そして、鉄格子に何やら術をかけた。
(まさか、ナタナエルが我の結界を破るとは……また破られたら面倒だ。他の人間の結界も、ジークの牢のように三重に張っとくか)
(俺、贔屓されてたのか……)
嬉しいような、しかし、俺が弱いと言われているようで……複雑な気分だ。
「それでは、兄者。改めて王の座をかけて決闘を申し込みします」
「断る」
「負けるのが怖いのですか? アレッシオより弱いですもんね、ライオネルは」
何故、王の座をかけて戦うのにライオネルが出てくるのだろうか。グレイズとナタナエルが戦うのでは?
疑問に思いつつも、今はただの人間として捕まっている身分。黙っておく。
「ライオネルは強い。だからこそ言っている。其方は、次負ければ二度と王にはなれんからな」
「う……」
ナタナエルが苦渋の表情でライオネルを見た。そして、その後ろにいた俺と目があった。
「(こいつ、この間妙なこと言っていた人間だ。まるで、僕のことを知っているような口振り。殺されかけて頭がおかしくなったのかと思ったが、さっきもライオネルの名を普通に呼んでいたし……)貴様は、何者だ?」
「俺は……」
(まずい……ナタナエルは、感だけは良い。このままではジークが我の番だと……アレッシオの生まれ変わりだと、気付かれてしまう)
心中焦るグレイズは、俺を隠すように立ち、ライオネルと寄り添うように肩を組んだ。
「今は、我の番の話であろう?」
(グレイズ様……そのまま私を番にして下さい)
ライオネルは、うっとりとグレイズを見上げる。
——何だろう。この胸のモヤモヤは……。
「グレイズ……」
(ジーク、申し訳ない。其方を守るためなのだ)
グレイズが、必死で守ってくれようとしてくれているのは伝わってくる。けれど、ライオネルを番だと偽ってまで助けられたくない。何故、嘘を吐くのか。
俺は、堂々と言った。
「グレイズの番は、この俺だ! 俺の方が、何百年も前からグレイズを愛している!」
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