異世界にきた俺はガス欠(魔力切れ)ステータスだった

のだ!

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聖戦への備え

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要塞都市セレーネ評議会室。黒の長テーブルをはさんで、二人の人物が挨拶を交わしていた。

「お初にお目にかかる。ザイアス殿。私は、この要塞都市セレーネの評議会議長を務めているヘンリー・バスガルドと申します」
「こちらこそ、ヘンリー殿。早速の用向きで申し訳ありませんが、このセレーネを対魔法戦用に防御を強化しようと思いましてね」
「と申されますと?」
「ここセレーネに近いうちに、魔王軍が来襲する可能性が出てきましてね。その対策という訳ですよ」
「なんと!? 詳しくお聞かせ頂けませんでしょうか」

50代半ばで白髪のオールバックをしているヘンリー侯爵は瞳孔を大きく開く。セレーネは、人間族のヘンリー侯爵が代表を務めているが、彼を含む10人の評議員が存在し都市運営の方針を決めている。
残りの評議員は、ザイアスとヘンリーが会話している議会室に先ほどまでいたが、ザイアスとの一通りの挨拶が済むと議長を残し退席していた。

「勿論ですとも。先般、魔神イフリートを私が斃したことは聞き及んでいらっしゃると思いますが、イフリートが支配下に置いていたここ周辺の管理者として新たな魔神が配属されることになります」
「なるほど」

俺は、自身がエカテリーナとあったことは敢えて説明はしなかった。それを言ったら、場合によってはこの都市がパニックになることを想定の上である。

「その魔神は、間違いなく私の実力を試しにくるでしょう。その際、単騎で攻め入ることはなく、部隊を引き連れてくる可能性が高い。以前、私が襲撃された際も数十名を引き連れてきました」
「それで、ザイアス殿がいるこの都市に侵攻するであろうということですな」
「侵攻の際、彼らは得意の魔法戦を仕掛けてくるでしょう。そうなると、こちらも対魔法戦の防御をしておかなければたちどころにやられてしまうことなります」
「お話しはわかりましたが、その仕掛けに必要な要員と時間はどの程度かかるのでしょうか。評議会として必要な手配を協力させて頂きますぞ」

ここら辺は話の理解がはやいな。流石は、評議会議長ということか。

「有り難い申し出感謝いたします。では、早速ですが・・・」

魔法戦対策に必要な資材とスキルを持った要員についてザイアスは図面にて説明を行う。
片丸眼鏡をかけているヘンリーは、図面を見つつ説明に聞き入る。

なるほど。ザイアス殿は結構な知識を持っている様子。脳筋だけでないということか。皇帝陛下もそこを見込まれてのことか。

ヘンリーからすれば、貴族位を持つザイアスではあるが、いきなり皇帝からの軍事指揮権を彼に預けろとの勅命に不信を抱いていた。
が、今受けている内容は、彼がこれまで実施しようにも知りえぬ高度な魔法知識による対策であり、しかもかなり用意周到に幾十もの対策が練られている。

「説明は以上になりますが、ご不明な点はありますか」
「いや、対策の方法は理解が及びませんが、目的は理解できたつもりです」
「それで、この対策は表立って行う訳には参りませんので・・・」
「承知しましたよ。評議会としても必要最小限のメンバーに絞って行動することにしましょう。軍事機密ということですな」
「左様。ご理解いただき感謝いたします」

二人は固い握手を結ぶと、早速、それぞれの仕事に取り掛かるのであった。

-------------------------------
セレーネ冒険者ギルド応接室。

「ザイアス殿、いやザイアス男爵殿と及びすべきですかな」
「いや、マグナルドさん。ザイアスで結構ですよ」
「では、ザイアス殿。冒険者ギルドを脱退されるということですかな」
「帝国在籍になった身分で、冒険者ギルドに所属というのも立場的なものもありますし、ギルドにもご迷惑をおかけすることになりますでしょうしね」
「そうですな。ギルドとしては残念ですが、ギルドの信条は政治に関与しないですからな。しかし、冒険者ギルドの指名権を貴族の指揮権より劣後するということで、籍を形式的に残していただくわけには参りませんか」
「・・・そういう形の運用は過去に例がありましたか?」
「無論、あります。Sランク冒険者ともなれば、爵位持ちも存在しますから」
「なるほど、そういうことであれば可能な範囲で冒険者としてやっていきますよ。引き続き、マグナルドさんにはお付き合いをさせて頂ければと思いますので、よろしくお願いします」

マグナルドは、予め冒険者ギルド教会からザイアスが爵位を授かった際の対応について指示を受けており、その方針に従ったものだった。協会としては、Sランク冒険者の資質を持つ者をそうおいそれとは手放したくはないとの思惑があったからだ。

「配慮いただきありがとうございます。それで・・・話は変わりますが」

マグナルドは周囲を見渡す。

「マリナはどうされるおつもりですかな。ああみえても、いい娘なんですが」
「無論。これまで通り、本人に意向を確認したのですがギルドで働きたいということでしたので、何も変わらないですが」

マリナは、ザイアスが貴族になった事に驚きつつも、既に自身がザイアス邸で生活していることと、従来通り夜には彼に会って話をする事が出来るし、まだ彼女という立場なので生活の糧として仕事は続けていくことを希望していた。

「老婆心ながら先行き心配しておりましてな。ザイアス殿が嫁にもらっていただけると個人的には安心ですが・・・、まあ、戯言として聞き流してもらって」
「ふむ、そこが問題で。これまで私自身、結婚を避けていた・・・、妻を持たない信条でしたのでね」
「それは、何故でしょうかな」
「自身の役割として情といったしがらみに一切囚われてはいけない仕事をしていました。万一、家族を人質にとられる様なことで任務に支障がでるようであれば、私は結果的に任務を優先させてしまいかねない・・・という事情がありました」
「今もそうなのですかな」
「今は、・・・違いますね。もう、その仕事はなくなりましたから」

すでに世界の契約者ではなくなっているしな。

「ははっ。ではなにも問題ないですな、なあに私も妻は持っていませんが、常に欲しいとは思っていますよ」
「ははっ、そうですか」

マグナルドは、俺の肩を軽く叩く。

「まあ、男女の関係など当事者同士しか分かり合えぬこと故、私が口出しすることではないですがね。ただ、マリナは一途な奴でしてな、男性経験が少ない様にみえるし、振られたことを考えると不憫で」
「・・・嫌いではないですがね、ただ、ああいう人がこれまで私の周りにはいなかったので、正直面食らっているという状態です」
「これから忙しくなるかとは思いますが、デートでもされたらよかろうかと」
「デートイコール、宴席とならないように気を付けますよ」

俺達は軽く笑うのであった。
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