異世界にきた俺はガス欠(魔力切れ)ステータスだった

のだ!

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新たなる支配者

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魔神イフリート居城跡。

強固な竜の様な鱗に覆われ翼竜の翼を持つ魔神アンラマンユが、玉座に座っていた。
「ふん、イフリートよ、中々の座り心地だぞ」
「アンラマンユ様のご着任、我ら一同、心より感謝いたしまする」

アンラマンユの前には、数百名の魔族幹部が整列していた。

「そうさな。本来、エカテリーナ陛下に次ぐ力を持つ俺様が、こんな処にくるつもりはなかったのだが。力試ししようという者がおれば、許すとのお言葉に興味が湧いてな」

アンラマンユ。
デルビア神魔国の筆頭将軍にして、エカテリーナがいなければ魔王となっていただろう実力の持ち主。
脳筋の多い将軍達の中でも知性派として有名である。武に溺れることなく知略を尽くして敵を葬りさるその行動は、エカテリーナも認めている。

あのエカテリーナが、ただの人間如きに興味を持たれるはずもなし。まして、力試しをして良いとはな。
そういう人間を俺様が代わって喰ったら、あの傲慢女も相当悔しがるだろう。
ふふっ、その光景を想像するだけで、ぞくぞくするわ。

「セレーネに攻め入られますか?」
「聖騎士とは俺が一騎打ちにするが、他の者達はお前らが好きに蹂躙するとよかろう」
「おおっ!」
「まあ、待て」

魔族幹部は、最高幹部の代表であるアンラマンユの言葉に血肉が沸き上がる。
5年前のあの蹂躙劇が再現されると思うと、嬉しくて涎がでるあり様であった。

「敵の手の内も知っておきたいな。無手で攻め込む程愚かな行為はあるまいて。斥候をだれぞ頼めるか」
「その役目、このアンドロマリウスにお任せあれ」
「アンドロマリウスか、良かろう」
「有り難き幸せ」
「さあ、宴の時まで皆の者、力を蓄えておくが良い」
「おおっ!!!」

巨大な蛇をもつ人の姿をした魔族であるアンロマリウスは、覇気があがる幹部達の中で、ひとり邪悪な笑みを浮かべ深々と頭を垂れるのであった。

--------------------
静寂な深夜。月明りのみが、要塞都市セレーネを照らしている。人影は見当たらない。
そしてのそのセレーネの城壁前に数名の影がうろついていた。

「わかっているな。くれぐれも偵察であることを忘れるな」
「はい、主様」
「いったん中に入ったら、潜伏期間は1か月程になる。無論、アンラマンユ様から指示があれば動くことになるが、では各自役割通りに頼むな」

アンドロマリウスはセレーネの城壁の下にある鉄格子上の排水口に近づくと難なく鉄格子を切り開いた。

「魔法は検知されるが、単なる物理攻撃は検知できぬからな。上空からの侵入も検知されるだろうし、この手段が一番堅い」

そういいながら、自身も平凡な中年男性の姿に変化すると素早く排水口に侵入するのであった...

--------------------------
1か月後。アンラマンユ居城。

「それで、アンドロマリウスからの報告を聞かせてみよ」
「ははっ、この報告書をご覧いただきたく」

下級の使役魔物であるガーゴイルは、アンラマンユにおずおずと近づくと、アンドロマリウスからの書状をアンラマンユに渡す。

「ふむ、やはり対魔法戦に備えた動きはしているか。魔法検索の術式と聖魔法による広域防御の付与、広域転移魔法の確認か、なかなか敵もやりおるよのう。これまでにない力の入れ様よ。ザイアスとかいう者の企てかのう」

アンラマンユは満足げな表情をしていた。

「戦いはこうでなくてはな。単に力なきものを蹂躙するのではいささか面白みが足りぬわ。では、攻撃部隊を編成するとしよう。侵攻作戦を各幹部に下知せよ」
「御意」

こうして、ザイアスの予見通り、彼が貴族となった数か月後に、アンラマンユを指揮官とした魔王軍が要塞都市セレーネに侵攻を開始した。

-------------------------
要塞都市セレーネ。ザイアス邸。

「た、大変です。ここから20キロ先で編成された魔王軍がこちらに進軍しているのが確認されました」

俺の指揮下にあるセレーネのデトロイン帝国兵士が、息を切らせて駆け込んできた。

「その数は?」

表情を変えずに冷静に報告を確認していく。

「凡そ1万」
「1万・・・、あとどれくらいで到着するかわかるか」
「侵攻速度は早く、あと2時間ほどかと」
「承知。軍広場に軍関係者を武装させて30分後に召集させよ。私はこれから評議会にいって侵軍を伝えてくる。その後、作戦を伝えるため広場に向かう」
「御意」
「それと、直ぐに城壁門は閉鎖する様に」

とうとうきたか。足元でネズミが騒いでいたのは承知していたが、意外に早かったな。

俺は、評議会に出向き魔王軍の侵攻を伝えた。評議会は事前に俺から提案を受けプランを立てていた通りに、市民へ侵攻の事実の周知と対応について動きを開始し始める。

「ここにいる同志諸君。ザイアスである。とうとう来るべき時が訪れた。あと1時間もすれば、魔王軍の斥候部隊が攻め入ってくるであろう」

俺の演説に広場は静まり返っている。

「しかし、恐れることは何もない。この事態を予測し、魔法戦に備えた対策は既に終わっている。この要塞都市に踏み入れた魔族は行動が大幅に制限され、また、この都市内で戦う諸君らには神聖魔法による加護が与えられることで、我々の戦闘は圧倒的に優位に立つことができる」

兵士達の極限の緊張感が、ザイアスの言葉により幾分和らいでいくのがわかる。

「そして魔王軍がこの要塞都市に攻め入る前に、私が斥候となり彼らにダメージを与える。従って、諸君らは基本的にはこの都市を出る必要はない。ただ、場合によっては侵入を許すこともあるやもしれない。魔神が侵入した場合は無理をせずに防御に専念すること、いざ、立ち向かわん!」
「「「「「「おおっ!」」」」」」

要塞都市セレーネの軍人数は、千人程度。敵の数はその10倍。高位魔族である魔神クラスがいれば、戦力差は圧倒的なものになる。
応援部隊の要請を軍本部に伝えてはいるが、到着にはどんなにいそいでも一週間程度は要するため、その間はなんとしても都市防衛を死守しなければならない。

数十名の騎士だけを連れ都市の城壁の外にでる。

「ネズミ共の潜伏場所はお伝えした通り。スタッガー殿、頼めますか」
「魔族は、我らが神への背信者。殲滅は審問官の仕事ゆえ、無論」
「クレメントさんは、騎士とともにカトリーヌの護衛を」
「ええ、お任せを」
「わ、私はどうすればいいにゃりか?」

私、カトリーヌは騎士さん達の重苦しい雰囲気にちびりそうです。ご主人様とクレメントさんは涼しい表情ですが。

「カトリーヌ。以前に云った通り、緊張するなとはいわないし、無理をする必要もない。怖くなったら目を閉じていればいい。私の意思は言葉でなくても伝わる」

ご主人様は、優しい表情になり頭を撫でてくる。私、そんな歳じゃありませんが、ほっとします。

「はいにゃり」
「普段できることしかできない。ただ、今、祈るのは神でなく俺に祈ってほしい。それだけだよ」

つまり、魔力供給が、きちんとご主人様に届けば良いということでしょうか
そうだよ。カトりん。
はにゃー。

心を読まれたカトリーヌは、少し赤くなりながら下を俯く。

やがて、要塞都市セレーネの遠方から土煙が立ち上ってくるのが目視できる様になり始めたのであった。
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