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少し早いお引越し
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1週間が立つというのはアッと言う間で、アミュレット家からでていく日がやってきた。
お父様はもちろん、普段私に近寄りたがらない姉と妹まで見送りに来てくれた。ルーパートお兄様の姿はもちろんない。
お父様は涙ぐみ、姉や妹からは「なんで豚が公爵様との縁談が来るのよ」と悪態をついている。
姉妹が家を出ていくと言うのに最後まで気分の悪い姉妹たちだ。
そんな悪態は無視をして、お父様に手を振って今まで住んでいた離れの屋敷を後にする。
★
しばらく馬車を走らせると、岩肌と森林続きだった道が急に開けてきて、グラトニー家がある王都へと到着する。
王都の道は道中の整備されていない小石だらけの道とは違い、馬車の揺れも最小限で最適だ。私は肉が多い分、振動する度に、重さでみぞおちが苦しいのだ。
と、まぁ、そんなこんなでグラトニー家に到着した。まずはブルーベルが降り、私をエスコートしてくれる。
……これって普通公爵様の役目じゃないのだろうか。と思ったが、急な縁談と予定を組み込む非常識さなので、その辺は気にしないことにしよう。
公爵様、イケメンらしいし、私のような豚をエスコートしたところでいい醜聞だろう。いや、この縁談自体到底あり得ないことなのだけど。
馬車を降りると、老体の執事が恭しくお辞儀をして出迎えてくれる。綺麗な見た目でなければ、噂通りのデブさに執事は驚いたのだろうか、一瞬ありえないと言いたげに顔をしかめる。
おい、傷つくんだけど。……引きこもっちゃえばこっちのものだし、別に今だけ我慢すればいいんだけどさ。
すると、その態度に気づき、ずっと黙って行儀よくしていたブルーベルが、いつもの愛らしい童顔を般若のようにしかめさせた。優し気な黒曜の瞳がキッと吊り上がると、強めの足取りで執事の前に立ちはだかる。
「公爵家の使用人は礼儀も知らないんですか?女性を前にして失礼な態度です。リーゼロッテ様があなたになにか失礼な態度をしたわけでもないのに。公爵家の使用人は初対面の相手に不愉快な思いをさせる天才かなにかですか?」
「ブルーベル、ちょっと……」
執事の態度が気にくわないのか、ブルーベルは持ち前の無鉄砲さで執事に食ってかかる。嬉しいけど今は問題起こさないで!
グラトニー公爵がどういう人間なのかもわからないのにッ!
「駄目です!リーゼロッテ様!こういうやつは最初に下手に出た方が舐められるんですよ!公爵が非常識ならその使用人も非常識。なら、こちらも思ったことを伝えないと、悩み損になっちゃうじゃないですか!それに、リーゼロッテ様は一応公爵様の未来のお嫁様でしょう!」
「それはそうだな。そこの侍女の言う通りだ。使用人の躾けを徹底させよう。それで許してはくれないか」
馬車を背に、その後ろ側から声がかかる。後ろを振り向くと、逆光で顔色は伺いにくいが、アルビノの容姿、の長身のイケメンが立っていた。
堂々とした出で立ち、上の者としての風格。……一目でヴァーレンス・グラトニーその人だとわかった。
「初めまして、リーゼロッテ・アミュレットと申します」
貴族の礼儀としてドレスの端を摘まんでお辞儀をした。するとグラトニー公爵は興味のなさそうに頷いた。
「ああ、その体型と馬車の家紋ですぐにわかった。わかりやすい容姿っていいな」
悪意……はないのだろうが、言い方がなんか引っかかる。
反応に不満を感じつつも、お互いに軽い挨拶を終えると、執事にむかって公爵は声をかけた。
「離れの整備は終ったか?」
「はい。恙なく」
「そうか。では、俺はこいつと二人っきりで話がある。応接室の準備を。……おまえは、そうだな、そこの侍女に屋敷の中でも案内してやれ」
「かしこまりました」
慇懃な態度で礼を取ると、執事はブルーベルをつれて屋敷の中に消えていった。
ブルーベルは終始心配そうに視線をよこしたが、大丈夫だと手でジェスチャーすると、了承の意で会釈をした。
お父様はもちろん、普段私に近寄りたがらない姉と妹まで見送りに来てくれた。ルーパートお兄様の姿はもちろんない。
お父様は涙ぐみ、姉や妹からは「なんで豚が公爵様との縁談が来るのよ」と悪態をついている。
姉妹が家を出ていくと言うのに最後まで気分の悪い姉妹たちだ。
そんな悪態は無視をして、お父様に手を振って今まで住んでいた離れの屋敷を後にする。
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しばらく馬車を走らせると、岩肌と森林続きだった道が急に開けてきて、グラトニー家がある王都へと到着する。
王都の道は道中の整備されていない小石だらけの道とは違い、馬車の揺れも最小限で最適だ。私は肉が多い分、振動する度に、重さでみぞおちが苦しいのだ。
と、まぁ、そんなこんなでグラトニー家に到着した。まずはブルーベルが降り、私をエスコートしてくれる。
……これって普通公爵様の役目じゃないのだろうか。と思ったが、急な縁談と予定を組み込む非常識さなので、その辺は気にしないことにしよう。
公爵様、イケメンらしいし、私のような豚をエスコートしたところでいい醜聞だろう。いや、この縁談自体到底あり得ないことなのだけど。
馬車を降りると、老体の執事が恭しくお辞儀をして出迎えてくれる。綺麗な見た目でなければ、噂通りのデブさに執事は驚いたのだろうか、一瞬ありえないと言いたげに顔をしかめる。
おい、傷つくんだけど。……引きこもっちゃえばこっちのものだし、別に今だけ我慢すればいいんだけどさ。
すると、その態度に気づき、ずっと黙って行儀よくしていたブルーベルが、いつもの愛らしい童顔を般若のようにしかめさせた。優し気な黒曜の瞳がキッと吊り上がると、強めの足取りで執事の前に立ちはだかる。
「公爵家の使用人は礼儀も知らないんですか?女性を前にして失礼な態度です。リーゼロッテ様があなたになにか失礼な態度をしたわけでもないのに。公爵家の使用人は初対面の相手に不愉快な思いをさせる天才かなにかですか?」
「ブルーベル、ちょっと……」
執事の態度が気にくわないのか、ブルーベルは持ち前の無鉄砲さで執事に食ってかかる。嬉しいけど今は問題起こさないで!
グラトニー公爵がどういう人間なのかもわからないのにッ!
「駄目です!リーゼロッテ様!こういうやつは最初に下手に出た方が舐められるんですよ!公爵が非常識ならその使用人も非常識。なら、こちらも思ったことを伝えないと、悩み損になっちゃうじゃないですか!それに、リーゼロッテ様は一応公爵様の未来のお嫁様でしょう!」
「それはそうだな。そこの侍女の言う通りだ。使用人の躾けを徹底させよう。それで許してはくれないか」
馬車を背に、その後ろ側から声がかかる。後ろを振り向くと、逆光で顔色は伺いにくいが、アルビノの容姿、の長身のイケメンが立っていた。
堂々とした出で立ち、上の者としての風格。……一目でヴァーレンス・グラトニーその人だとわかった。
「初めまして、リーゼロッテ・アミュレットと申します」
貴族の礼儀としてドレスの端を摘まんでお辞儀をした。するとグラトニー公爵は興味のなさそうに頷いた。
「ああ、その体型と馬車の家紋ですぐにわかった。わかりやすい容姿っていいな」
悪意……はないのだろうが、言い方がなんか引っかかる。
反応に不満を感じつつも、お互いに軽い挨拶を終えると、執事にむかって公爵は声をかけた。
「離れの整備は終ったか?」
「はい。恙なく」
「そうか。では、俺はこいつと二人っきりで話がある。応接室の準備を。……おまえは、そうだな、そこの侍女に屋敷の中でも案内してやれ」
「かしこまりました」
慇懃な態度で礼を取ると、執事はブルーベルをつれて屋敷の中に消えていった。
ブルーベルは終始心配そうに視線をよこしたが、大丈夫だと手でジェスチャーすると、了承の意で会釈をした。
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