引きこもり大豚令嬢は今日もマイペースに生きたい

赤羽夕夜

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しでかしたことの代償

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 「……ご、ごめんなさい、ディナサン様……」
 一方その頃、商会事務所に連れて帰られた顔面蒼白のエリーゼと、鬼の形相で冷ややかにエリーゼを見下ろすディナサン。眉間に皺を寄せたまま、そのまま数十分動かない。

 堰を切ったように、謝罪の言葉を口にすると、ディナサンは足を組み替えた。

 「それは誰に対しての言葉や?姫さんを傷つけといて、謝る相手が俺か。おまえ、自分がなにをしでかしたかわかっとん?」
 「それは……あの、デブ女がディナサン様に色目を使うからで……」

 もごもごと言葉を詰まらせながら言い訳を口にするエリーゼ。その言葉たちがディナサンのボルテージを底上げしている事態を理解できていない様子だ。

 「……姫さんはなぁ、うちを大きくしてくれた大恩人や。おまえがそうやって来ているドレスも、もろおてる給料の額の大きさも、姫さんがアドバイスくれたおかげやからでもある」
 「そんなの……だれでも考えつくことじゃないの?」
 「じゃあ、ここで姫さん以上の意見を言ってうちの商会を大きくしてみぃや。せやな……これから海外へ服飾事業の販路を広げるにはどうすればいい?」

 ディナサンは、さらりとツーブロックの髪の毛を揺らし、うっすらと目を開いた。金色の瞳がエリーゼに集中的に注がれる。

 熱意はない。ただ、彼女の答えを待っている。

 「それは……私の分野じゃない……私、デザイナーだし……」
 「おい、姫さんが意見したことは誰でも考えつくこと言うたよな?さっき言った言葉と矛盾しとるで。姫さんやったら服のデザインだけやない、どこをどうすれば売れるか、その戦略込みで立てる。ただひとつのことに特化しているおまえと比べると利用価値はもちろん、この商会……ひいては俺の優先順位も雲泥の差や」
 
 ディナサンは吐き捨てると、ポケットに仕舞っていた葉巻を取り出して、火をつける。憤りを落ち着けるために、肺に煙をすいだし、吐き出す……これを何回も繰り返す。

 今までにない冷ややかな態度。ベッドでも見せない冷徹な態度に、エリーゼはついに泣き出してしまう。

 「ごめんなさい……ディナサン……私を捨てないで。本当にやりすぎた。反省するし、お嬢様にも謝るからっ……」
 「誰かに言われて謝るという行動事態に反省の色がない証拠や。そんな態度で姫さんのとこに謝りに行くだけでもドラム商会全体の恥や。反省のない謝罪は必要ない。ただ、仕事と私情をはっきりつかん人間は正直うちにはいらんわ。出てってくれ」
 「嫌……!それだけはっ……!私、ディナサンから離れたくない!お願いします!おねが……」
 「というか、俺、おまえに興味ないし。しつこいから抱いてやっただけで、体の関係を持つ前に、恋愛は抜きゆうたよな?……もういいから。はよ荷物まとめて出ていって」

 煙を吐き捨てると同時に無情に言葉を告げるディナサン。顔色は変わらない。声も淡々としており、抑揚がない。いつもは緩急の激しい特徴ある声色なのに。

 これは本当に、自分を捨てる気なのだと。エリーゼは悟って、暗い影が落ちた。

 耳奥では「誰か~エリーゼの荷物を纏めるの手伝ったりぃ」と雑用専門の従業員を呼ぶ声がきこえた。
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