引きこもり大豚令嬢は今日もマイペースに生きたい

赤羽夕夜

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安堵

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 「......ん。ここは」

 うっすらと目を開けると、真上には見慣れた天蓋。そして遅れてやってくる、頭の痛み。ずきりとした。



 私はたしか......ブルーベルを庇って。それから、どうしたんだっけ?



 続いて手に温もりを感じたので、手を見ると、ブルーベルが手を握ったまま、椅子に座り、ベッドに突っ伏すように寝ている。窓の外の景色はもう夜を回っていた。



 もしかして、ずっと看病してくれたのだろうか?......あれから結構な時間が経過したと思うが、よくついてくれたものだ。



 身じろぎをすると、ブルーベルの瞼がすらりとひらく。寝ぼけた表情で私を見ると、次第に目は開かれていく。――そして。



 「り......リーゼロッテ様っ!お目覚めになられたのですねっ......!ご無事でよかった。よかっ............うわぁ~~~~んっ!」

 「ちょっと、泣くほどのことでもないでしょ。陶器が頭に当たっただけなのに」

 「あだま”のけがば、重大な、なんで、ずよぉぉぉぉぉおぉぉ」



 ブルーベルは鮮やかな水色の髪の毛を揺らして、黒曜の瞳を潤ませる。心配させちゃったな。ぎゅうっと抱きしめられる力が強くて、少し苦しいけど、心配されるのは悪い気はしない。



 「ごめん、ごめん。でも大事ないっぽいし。終わりよければ全て良しということで。……怪我はない?」

 「あるわ”げありま”ぜん”ん”ん”ん”~ッ!!リーゼロッテ様の方が重症なんですから!」

 額に触れてみると包帯が綺麗に蒔かれている。ちょっとぷっくりと、額にたんこぶができているのが包帯とガーゼの上からわかる。



 「そういえば、あの女、結局どうなったの?」

 「ぐすっ……それがですね...…」



 涙を拭きながら、あの後の説明をしてくれた。



 あの後、医者が駆けつけて、顔にかかったお茶による軽度の火傷の手当と、額の傷の手当をした。結構な出血量だったらしいが、傷は浅く、火傷の怪我も含めて全治2週間程度の怪我らしい。



 リーゼロッテに行われていたことを、ブルーベルが1から説明すると、ディナサンは血相を変えて、額が地面につかんばかりの謝罪をかますと、部下にいってエリーゼを連行したらしい。



 あれから1日寝ていたらしく、それが昨日の出来事。3時間前までは、泊まりでディナサンもいたらしいが、日を改めるとのことで、帰ったようだった。



 「まさか、こんな事態になるなんて思いませんでした。……あの時、無理にでも首根っこひっつかんで追い出せば……」

 「それじゃ、ディナサンの面目も立たないでしょ。……今回の件で面目は丸つぶれだけど。あの時、対処しなくていいと指示を出したのは私だから、あなたが気にする必要はないから」

 

 それより、エリーゼが感情任せに問題を起こしたことが予想外だ。まぁ、感情的に暴言を吐いたり、地味な嫌がらせをしていたので、少し考えればわかったことなのかもしれないが。



 それでも、その辺は分別があると思っていた。そこまでして、ディナサンのことが好きなのだろう。その点では一途と言える。



 まるで毒恋に出てくる、主人公のライバルみたいだ。毒恋のライバルもエリーゼみたいな気持ちを抱いていたのかな……。



 そう思うと、思い人が仕事とは言え、別の女の方に傾いていると思うと、同情できなくもない。……顔や態度は憎たらしいけど。



 そうこう考えていると、おなかの音が鳴る。1日なにも食べていないのだから、腹が減るのは道理だ。



 お腹をさすると、ブルーベルはくすりと笑いを漏らして立ち上がった。



 「お目覚めになられてよかったです。今ご飯を用意しますね。胃がびっくりすると思うので、まずはおかゆを用意します」

 「ああ、いや、別にいつものご飯で……」



 目覚めたばかりこそ、カロリーの高いものが食べたい、と抗議を使用とするが、ブルーベルがいつになく強めの口調で制した。



 「駄目です!病み上がりの胃なのですから、お腹壊しますよ!」

 「……はい」



 こういう時のブルーベルって頑固だし、逆らったらなんやかんやで怖いので大人しく従っておこう。



 ご飯を食べたら、また眠たくなったので、1日中看病してくれたブルーベルを休んだのを見届けてまた寝床についた。

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