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今回は女性のみの茶会ということで、オーツ家の邸宅前でヴァレーゼ侯爵令嬢たちと待ち合わせをして、ファムファタール家へと向かった。
会場が本邸ではなく、急遽の場所が変更になり郊外のタウンハウスなのが気になる。
「夫人、メルティー様。私のせいで面倒なことに巻き込んでしまって申し訳ございません」
「何を言っているのです、伯爵。私たちの仲じゃありませんか。あまり気に病まないでくださいな」
「そうですわ。普通、社交界ではそれぞれの派閥の軋轢を深めない為にこういった場を設けるときは、それぞれの派閥を半数ずつか、ひとつの派閥で集まりを開くのが暗黙の了解です。マナー違反をしているのはファムファタール家の方ですよ。背中はお任せください、ヴァシリッサ様」
「お二人の心強いお言葉に私も勇気が湧いてきます。では、お二人の背中はせめて私に守らせてください。私の為に思う友人方に危害を加えさせませんわ」
「それは宰相夫人から頼まれた私たちのセリフなのですが……、ふふ、伯爵の言葉は心強いですわ」
到着して馬車を降り、案内されるとすでにファムファタール家の茶会の会場には招待された令嬢たちが着席していた。
この場にいる私たち以外の貴族全てが貴族派閥の人間で、敵意に満ちた視線が私たちを包む。
――なるほど、今日は徹底的に私を何かしらで吊るし上げる算段ってわけ。
「本日はお招きに応じていただきありがとうございます、伯爵、それにヴァレーゼ侯爵夫人、ヴァレーゼ侯爵令嬢。そして、急な場所の変更に応じていただき重ねてお礼申し上げます」
「こちらこそお招きいただき感謝いたします。……ですが、私たちを除いて私が知らない貴族ばかりで少し不安ですわ」
「申し訳ございません。お知り合いの方々にも声をかけたつもりだったのですが、使用人の手違いで招待状が送られておらず……、実は会場の変更もそれが理由です。お恥ずかしながら、大規模用に邸宅の庭をセッティングしてしまって、し直すにも時間がないので、タウンハウスの方に新しい会場として配置しなおしましたの。ごめんなさいね」
自分の家の財力をアピールしつつも、自分の不手際で今回の事態が起こってしまったという謝罪の言葉。流石貴族派閥筆頭の家の令嬢。一筋縄ではいかなさそうだ。
それでも、私は怯むわけにはいかない。
「いえ、お茶会を開き慣れていないのであればよくあるミスですわ。だから、令嬢が社交界に慣れていなくて「無作法」でも、先日に引き続き「無礼」を働いても我々の尊厳を守ってくださればそれで構いませんわ」
こうもあからさまなら普通の茶会なんて期待していない。どんな困難があろうとも乗り越えてみせるし、ぶち当たっても壁を破る勢いでどうにかするしかない。
そちらも無礼なら、私も無礼に傲慢に振舞わせてもらう。ここで委縮しても彼女たちの良い餌となるだけだ。
堪え性が足りないのか、メチナは片方の眉尻をピクピク、と上げた。
「寛大なお心で許していただきありがとうございます。では、こちらの席にお座りください」
すっと差したのは主催者のメチナと近い席。この会の客人の中でも上座に位置する場所だ。
3人並んで座るのを確認したメチナはパン、と手を叩き「ここでもう一方ご紹介します」と口にした。
そうして使用人に連れられて現れたのは流行遅れのピンクのドレスを着たアニスだった。
アニスがどうしてここに――、という疑問と同時に、会場変更で郊外のタウンハウスを指定したという辻褄が合致する。
なるほど、今回の吊るし上げイベントの最大の材料がアニスだから、タウンハウスを選んだってわけ。
たしかに、このタウンハウスはギリギリ王都の外にある。
王都出禁の命令に反していない。うかつだった。
「こちらはアニス・ビーンルサノ男爵。大川の下流に位置する領地を持つ男爵家の次女ですわ」
「初めまして。皆さま、ビーンルサノ男爵家、アニスです。お久しぶりですね、ヴァシリッサお姉様」
私とお姉様という単語に周囲の視線が私に集まる。彼女と私が姉妹関係であることは周知の事実ではある。
私が養女になる時に一時的に騒がれていたし、王族主催のパーティーでも彼女はやらかしていたから嫌な意味で有名だ。
それにしても、お姉様とすら思っていないのにこの女からのお姉様呼びは本当に気持ちが悪い。
「アニス、ここは公の場です。それにもうあなた方とは縁を切っております。今後は爵位で呼ぶようにお願い申し上げたはずです」
「酷いですわ。私にとってお姉様はお姉様なのに……。家族が危機に瀕しているのに、全然帰ってこないし、手紙を出しても全然返信はくれないし……。私がいつもどれだけお姉様を心配しているとおもっているの?」
野次が「家族の危機なのに手を差し伸べないというのは酷い話ですわ」「貴方には人の血が流れていないのですか」と飛んでくる。事情も知らないギャラリーがぬけぬけと。
「まぁ、私を虐げた家族に手を差し伸べろと?」
「たしかに、小さい頃はお姉様の心に傷が残る出来事はあったかもしれません。しかし、それはもう15年も前の話ではないですか」
「貴女は体験したことがないでしょう。家族に心ない言葉を浴びせられ、家族として扱われなかった心の寂しさを。冬の肌に突き刺さる寒さの中、毛布ひとつで我慢しなければいけないことを。――本当に酷くて、自分勝手なのね。貴女は」
アニスに感情を訴えても無駄だけれど、少なくともこうして反論の声をあげておかねば、後で言いように言われるだけだ。
それでなくとも、ここは敵の腹の中なのだから。
――アニスの笑みは崩れない。さらに笑みは深まる。
「そうですか。でも、少なくともお父様には感謝しておくべきだと思いますけれど。だって、お姉様はお父様の子じゃないのですから」
「……どういう意味ですか」
周囲がざわつく。貴族でも平民の血を引く貴族は純潔な貴族と比べると劣るとされている。
アニスが今、「自分の父親の子ではない」と口にしたということは、遠まわしには、誰の血を継いでいるかわからないということ。つまり、平民の血と同義だと言っていると同じことなのだ。
私がこうして伯爵の地位につけるのも、お養父様の養女ですんなりいられたのも、貴族の血を引いていることも大きな要因となっている。
平民の血を引くことは、王族派閥の人間であれば重要視する人も少ない。しかし、貴族派は貴族の伝統を重んじるので、平民の血、または誰の血を引いているかわからないともなれば糾弾するいい材料になる。
なるほど、だから、わざわざアニスをここに呼んだのね。
「まぁ、たしかに、ビーンルサノ男爵家では黒髪の子がいないので、不思議に思っていましたが……、まさか男爵の実子ではなかっただなんて……」
この場を組んだメチナは白々しく口を覆う。
貴族派の令嬢の反発の声も大きくなる。
「じゃあ、アレーナ伯爵は、貴族の血を引いてなかったということ?そんな方が領地を所有する立場にいるだなんて……」
「伯爵はその事実を知っていて意図的に隠していたの?」
自分でなにも成したことのない小娘が偉そうに。ここは弱気になるものか。
私が貴族の血を引いてようがなかろうが関係ない。
私はもう、ヴァシリッサ・アレーナだ。誰の血を引いて様が、世間体が悪かろうが、貴族派閥が騒ごうが、私は私だ。
私を愛してくれる人がいる、仲良くしてくれる人がいる、大切にしてくれる人がいる。
こんな嫌がらせに負けない。
「――私が貴族の血を引いていないなんて初めて聞きましたわ。なら、私は誰の子なの?」
「それはわかりません。少なくとも、お父様の子ではありませんわ」
「それでは、お母様の子というのは確定しているということですね?その上で父親はわからない、と。ならば私は貴族の血を引いているので、この場にいてもなんの問題もないですわ」
「でも!誰の子かわからない血を引いていますわ!」
メチナが口を挟む。私は嘲笑で返した。
「それでも「半分」の血は貴族なのは確定しています。戸籍上の出生の記録も、ビーンルサノ男爵家です。私が今この場に座っているのもなんの問題もないはずです」
「そうですわ。それに、ヴァシリッサ様は幼い頃より政治に関わり、その功績が国王陛下と宰相閣下より認められ、北方の国境の地を任されました。不毛の土地を実り豊かで経済を回せる土地へと改革した手腕があります。そこに貴族の血は関係ありませんでしたわ」
「お母様の言う通りです。メチナ様、アニス様、あなた方が今口にしていることは、アレーナ伯爵への侮辱です。今すぐ謝罪してください」
メチナははっと笑う。
「謝罪?冗談を。それより、伯爵、あなたが貴族として相応しいか疑わしいところがあります。平民の血を引いているかもしれない以上、貴族の座に座っていることは私たち貴族の面子を潰す行為に他なりません。私は貴族の名誉を賭け、アレーナ伯爵に領地戦を申し込みます」
「――なんですって?」
領地戦。領地を持つ貴族が貴族の名誉を掛けた戦を行うものだ。ここ数十年はなかったが、今回のように貴族かどうか疑わしかったり、貴族が名誉を回復するために申し込む戦だ。この戦においての特徴はその名の通り、争う領地を決戦の地として戦うということ。
通例としては、戦を申し込まれた側の土地を使う。これは申し込んだ側が対策を講じられ、有利とされているため、公平さを図る為に申し込まれた側の土地を使うとされてはいるけど、はっきりいってとても迷惑なルールだ。
私たちは数年前までセブンドア帝国との戦で緊張状態だったのに。また領民に苦を強いるというの?
断ることもできるが、断れば「戦を恐れた臆病者」として国中に知れ渡る。アレーナ領はセブンドア帝国の戦を終わらせたとして、強い領地というイメージがついているので、イメージダウンとなれば、同じ難癖をつけて他の領地がひっきりなしに領地戦を仕掛けてくる。
おそらく、メチナは領地戦のルールの穴と心理を込みで申し込んだのだろう。
アニスはあくまできっかけ。貴族派閥の人間を使って噂を拡散させ、私を戦から逃げられないようにするための作戦。
ファムファタール家は腐っても公爵家だ。私兵の数、資金、人脈はアレーナに匹敵するだろう。
王都を守護する公爵家のひとつなのだから。
今回は女性のみの茶会ということで、オーツ家の邸宅前でヴァレーゼ侯爵令嬢たちと待ち合わせをして、ファムファタール家へと向かった。
会場が本邸ではなく、急遽の場所が変更になり郊外のタウンハウスなのが気になる。
「夫人、メルティー様。私のせいで面倒なことに巻き込んでしまって申し訳ございません」
「何を言っているのです、伯爵。私たちの仲じゃありませんか。あまり気に病まないでくださいな」
「そうですわ。普通、社交界ではそれぞれの派閥の軋轢を深めない為にこういった場を設けるときは、それぞれの派閥を半数ずつか、ひとつの派閥で集まりを開くのが暗黙の了解です。マナー違反をしているのはファムファタール家の方ですよ。背中はお任せください、ヴァシリッサ様」
「お二人の心強いお言葉に私も勇気が湧いてきます。では、お二人の背中はせめて私に守らせてください。私の為に思う友人方に危害を加えさせませんわ」
「それは宰相夫人から頼まれた私たちのセリフなのですが……、ふふ、伯爵の言葉は心強いですわ」
到着して馬車を降り、案内されるとすでにファムファタール家の茶会の会場には招待された令嬢たちが着席していた。
この場にいる私たち以外の貴族全てが貴族派閥の人間で、敵意に満ちた視線が私たちを包む。
――なるほど、今日は徹底的に私を何かしらで吊るし上げる算段ってわけ。
「本日はお招きに応じていただきありがとうございます、伯爵、それにヴァレーゼ侯爵夫人、ヴァレーゼ侯爵令嬢。そして、急な場所の変更に応じていただき重ねてお礼申し上げます」
「こちらこそお招きいただき感謝いたします。……ですが、私たちを除いて私が知らない貴族ばかりで少し不安ですわ」
「申し訳ございません。お知り合いの方々にも声をかけたつもりだったのですが、使用人の手違いで招待状が送られておらず……、実は会場の変更もそれが理由です。お恥ずかしながら、大規模用に邸宅の庭をセッティングしてしまって、し直すにも時間がないので、タウンハウスの方に新しい会場として配置しなおしましたの。ごめんなさいね」
自分の家の財力をアピールしつつも、自分の不手際で今回の事態が起こってしまったという謝罪の言葉。流石貴族派閥筆頭の家の令嬢。一筋縄ではいかなさそうだ。
それでも、私は怯むわけにはいかない。
「いえ、お茶会を開き慣れていないのであればよくあるミスですわ。だから、令嬢が社交界に慣れていなくて「無作法」でも、先日に引き続き「無礼」を働いても我々の尊厳を守ってくださればそれで構いませんわ」
こうもあからさまなら普通の茶会なんて期待していない。どんな困難があろうとも乗り越えてみせるし、ぶち当たっても壁を破る勢いでどうにかするしかない。
そちらも無礼なら、私も無礼に傲慢に振舞わせてもらう。ここで委縮しても彼女たちの良い餌となるだけだ。
堪え性が足りないのか、メチナは片方の眉尻をピクピク、と上げた。
「寛大なお心で許していただきありがとうございます。では、こちらの席にお座りください」
すっと差したのは主催者のメチナと近い席。この会の客人の中でも上座に位置する場所だ。
3人並んで座るのを確認したメチナはパン、と手を叩き「ここでもう一方ご紹介します」と口にした。
そうして使用人に連れられて現れたのは流行遅れのピンクのドレスを着たアニスだった。
アニスがどうしてここに――、という疑問と同時に、会場変更で郊外のタウンハウスを指定したという辻褄が合致する。
なるほど、今回の吊るし上げイベントの最大の材料がアニスだから、タウンハウスを選んだってわけ。
たしかに、このタウンハウスはギリギリ王都の外にある。
王都出禁の命令に反していない。うかつだった。
「こちらはアニス・ビーンルサノ男爵。大川の下流に位置する領地を持つ男爵家の次女ですわ」
「初めまして。皆さま、ビーンルサノ男爵家、アニスです。お久しぶりですね、ヴァシリッサお姉様」
私とお姉様という単語に周囲の視線が私に集まる。彼女と私が姉妹関係であることは周知の事実ではある。
私が養女になる時に一時的に騒がれていたし、王族主催のパーティーでも彼女はやらかしていたから嫌な意味で有名だ。
それにしても、お姉様とすら思っていないのにこの女からのお姉様呼びは本当に気持ちが悪い。
「アニス、ここは公の場です。それにもうあなた方とは縁を切っております。今後は爵位で呼ぶようにお願い申し上げたはずです」
「酷いですわ。私にとってお姉様はお姉様なのに……。家族が危機に瀕しているのに、全然帰ってこないし、手紙を出しても全然返信はくれないし……。私がいつもどれだけお姉様を心配しているとおもっているの?」
野次が「家族の危機なのに手を差し伸べないというのは酷い話ですわ」「貴方には人の血が流れていないのですか」と飛んでくる。事情も知らないギャラリーがぬけぬけと。
「まぁ、私を虐げた家族に手を差し伸べろと?」
「たしかに、小さい頃はお姉様の心に傷が残る出来事はあったかもしれません。しかし、それはもう15年も前の話ではないですか」
「貴女は体験したことがないでしょう。家族に心ない言葉を浴びせられ、家族として扱われなかった心の寂しさを。冬の肌に突き刺さる寒さの中、毛布ひとつで我慢しなければいけないことを。――本当に酷くて、自分勝手なのね。貴女は」
アニスに感情を訴えても無駄だけれど、少なくともこうして反論の声をあげておかねば、後で言いように言われるだけだ。
それでなくとも、ここは敵の腹の中なのだから。
――アニスの笑みは崩れない。さらに笑みは深まる。
「そうですか。でも、少なくともお父様には感謝しておくべきだと思いますけれど。だって、お姉様はお父様の子じゃないのですから」
「……どういう意味ですか」
周囲がざわつく。貴族でも平民の血を引く貴族は純潔な貴族と比べると劣るとされている。
アニスが今、「自分の父親の子ではない」と口にしたということは、遠まわしには、誰の血を継いでいるかわからないということ。つまり、平民の血と同義だと言っていると同じことなのだ。
私がこうして伯爵の地位につけるのも、お養父様の養女ですんなりいられたのも、貴族の血を引いていることも大きな要因となっている。
平民の血を引くことは、王族派閥の人間であれば重要視する人も少ない。しかし、貴族派は貴族の伝統を重んじるので、平民の血、または誰の血を引いているかわからないともなれば糾弾するいい材料になる。
なるほど、だから、わざわざアニスをここに呼んだのね。
「まぁ、たしかに、ビーンルサノ男爵家では黒髪の子がいないので、不思議に思っていましたが……、まさか男爵の実子ではなかっただなんて……」
この場を組んだメチナは白々しく口を覆う。
貴族派の令嬢の反発の声も大きくなる。
「じゃあ、アレーナ伯爵は、貴族の血を引いてなかったということ?そんな方が領地を所有する立場にいるだなんて……」
「伯爵はその事実を知っていて意図的に隠していたの?」
自分でなにも成したことのない小娘が偉そうに。ここは弱気になるものか。
私が貴族の血を引いてようがなかろうが関係ない。
私はもう、ヴァシリッサ・アレーナだ。誰の血を引いて様が、世間体が悪かろうが、貴族派閥が騒ごうが、私は私だ。
私を愛してくれる人がいる、仲良くしてくれる人がいる、大切にしてくれる人がいる。
こんな嫌がらせに負けない。
「――私が貴族の血を引いていないなんて初めて聞きましたわ。なら、私は誰の子なの?」
「それはわかりません。少なくとも、お父様の子ではありませんわ」
「それでは、お母様の子というのは確定しているということですね?その上で父親はわからない、と。ならば私は貴族の血を引いているので、この場にいてもなんの問題もないですわ」
「でも!誰の子かわからない血を引いていますわ!」
メチナが口を挟む。私は嘲笑で返した。
「それでも「半分」の血は貴族なのは確定しています。戸籍上の出生の記録も、ビーンルサノ男爵家です。私が今この場に座っているのもなんの問題もないはずです」
「そうですわ。それに、ヴァシリッサ様は幼い頃より政治に関わり、その功績が国王陛下と宰相閣下より認められ、北方の国境の地を任されました。不毛の土地を実り豊かで経済を回せる土地へと改革した手腕があります。そこに貴族の血は関係ありませんでしたわ」
「お母様の言う通りです。メチナ様、アニス様、あなた方が今口にしていることは、アレーナ伯爵への侮辱です。今すぐ謝罪してください」
メチナははっと笑う。
「謝罪?冗談を。それより、伯爵、あなたが貴族として相応しいか疑わしいところがあります。平民の血を引いているかもしれない以上、貴族の座に座っていることは私たち貴族の面子を潰す行為に他なりません。私は貴族の名誉を賭け、アレーナ伯爵に領地戦を申し込みます」
「――なんですって?」
領地戦。領地を持つ貴族が貴族の名誉を掛けた戦を行うものだ。ここ数十年はなかったが、今回のように貴族かどうか疑わしかったり、貴族が名誉を回復するために申し込む戦だ。この戦においての特徴はその名の通り、争う領地を決戦の地として戦うということ。
通例としては、戦を申し込まれた側の土地を使う。これは申し込んだ側が対策を講じられ、有利とされているため、公平さを図る為に申し込まれた側の土地を使うとされてはいるけど、はっきりいってとても迷惑なルールだ。
私たちは数年前までセブンドア帝国との戦で緊張状態だったのに。また領民に苦を強いるというの?
断ることもできるが、断れば「戦を恐れた臆病者」として国中に知れ渡る。アレーナ領はセブンドア帝国の戦を終わらせたとして、強い領地というイメージがついているので、イメージダウンとなれば、同じ難癖をつけて他の領地がひっきりなしに領地戦を仕掛けてくる。
おそらく、メチナは領地戦のルールの穴と心理を込みで申し込んだのだろう。
アニスはあくまできっかけ。貴族派閥の人間を使って噂を拡散させ、私を戦から逃げられないようにするための作戦。
ファムファタール家は腐っても公爵家だ。私兵の数、資金、人脈はアレーナに匹敵するだろう。
王都を守護する公爵家のひとつなのだから。
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